M&Aアドバイザーや事業再生コンサルの銀行交渉は非弁行為か――弁護士法72条に触れると報酬はどうなるのか、判決で確かめる

M&Aアドバイザーや事業再生コンサルの銀行交渉は非弁行為か――弁護士法72条に触れると報酬はどうなるのか、判決で確かめる

M&Aや事業承継の支援では、資金繰りに困った会社から、銀行への返済をどうするか、事業を別の会社に移せないかといった相談を受けることがあります。そのとき、アドバイザーやコンサルタントが会社に代わって銀行と債務の減免を交渉したら、弁護士法72条が禁じる行為(いわゆる非弁行為)に当たるのか。当たるとしたら、受け取った報酬はどうなるのか。この記事では、第二会社方式の助言と銀行交渉の代行で有罪となった札幌地裁 令和2年3月26日判決を中心に、非弁の契約で受け取った報酬をめぐる民事の判決と最高裁判例を、判決文で確かめます。

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<a href="https://jfsc.jp/research/ma-hanrei/ma-advisor-hiben-koui-houshuu/">M&Aアドバイザーや事業再生コンサルの銀行交渉は非弁行為か――弁護士法72条に触れると報酬はどうなるのか、判決で確かめる|株式会社日本財務戦略センター</a>文章での出典表記:株式会社日本財務戦略センター「M&Aアドバイザーや事業再生コンサルの銀行交渉は非弁行為か――弁護士法72条に触れると報酬はどうなるのか、判決で確かめる」(2026年10月13日) https://jfsc.jp/research/ma-hanrei/ma-advisor-hiben-koui-houshuu/
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先に結論

弁護士法72条は何を禁じているか

弁護士法72条は、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、訴訟事件などの「その他一般の法律事件」に関して、鑑定・代理・仲裁・和解などの法律事務を取り扱うこと、またはこれらの周旋をすることを、業とすることを禁じています(他の法律に別段の定めがある場合を除きます)。違反すると、同法77条3号により、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象になります(2026年10月13日にe-Gov法令検索で確認した現行の条文)。

争いになりやすいのは、どこからが「法律事件」に当たるかです。この記事で扱う判決は、それぞれ次のように述べています。言い回しは判決ごとに違い、どの基準をとるかを一般的に決めた最高裁判例は、この記事で読んだ範囲にはありません。

判決「法律事件」についての判決の言い回し
最高裁 平成22年7月20日決定(ビルの立退き交渉)その事件の業務について、「立ち退き合意の成否、立ち退きの時期、立ち退き料の額をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るもの」だったとして、「その他一般の法律事件」に当たるとした。一般的な定義を述べた部分はない
大阪高裁 平成13年9月27日判決(債権者対策)「法律上の権利義務に関して争いや疑義がある案件,又は新たな権利関係の発生する案件」
神戸地裁 平成13年10月29日判決(借地権の整理)争い・疑義のある案件に加え、新たな権利義務関係を発生する案件も含むとし、それなら「権利義務に関して争いがなくても」当たるとした
札幌地裁 令和2年3月26日判決(銀行交渉の代行)債権者への言動が、今後の交渉で解決しなければならない紛議を生じさせるものだとした
東京地裁 平成24年12月17日判決(株式譲渡のFA業務)論文の紹介によれば、訴訟事件などの例示に準ずる程度に争いや疑義のおそれが必要だとした(全文は未確認)

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第二会社方式と銀行交渉の代行で有罪になった事件(札幌地裁 令和2年3月26日判決)

事件の概要と時系列

被告人の一人は、東京都内に事務所を置き、判決の言葉で「トータルアドバイザー」などの名称で、多額の負債を抱えて支払に困った会社経営者などに債務整理の助言をし、その内容を実現するため自ら債権者と交渉する事業をしていました。もう一人の被告人は、その事業を補佐していました(判決は個人と会社をすべて伏字で書いています)。

時期出来事
平成27年5月・平成28年2月頃事務所で、負債を抱えた有限会社の取締役らに助言。「銀行への返済は止めろ。銀行との交渉は全て私がやるから心配いらない。」、第二会社を作って財産や社員、顧客を移して事業を続ければ、銀行などの債権者は第二会社の財産を差し押さえられない、などと述べる
平成27年7月・平成28年3月頃銀行の支店で、会社の代理人として支店長らと債務免除または損失処理を行うよう交渉
平成28年4月頃・平成29年2月頃別の有限会社についても、同じように助言し、銀行の支店次長と交渉
平成29年5月〜12月頃株式会社の代表取締役ら顧客5名に助言(5回)
平成29年7月〜平成30年1月頃その会社ほか4社の代理人として、銀行の支店次長ら5名と電話や面会で交渉(6回)
平成29年7月〜平成30年3月税金や社会保険料を滞納していた顧客の会社について、売掛金債権を別会社へ無償で譲渡する、売上金を別会社の口座に入れる、保険契約の契約者を別会社に変えるなど
平成29年11月〜平成30年9月頃平成29年12月に破産手続が始まった顧客の会社について、元代表者と共謀し、破産管財人に対する書類の隠滅や説明の拒絶
令和2年3月26日札幌地裁が有罪判決

何が争われたか

弁護人は、弁護士法違反の部分について、共犯者全員の共謀が成立するかを争ったほか、被告人らは債権者に債務免除や損失処理を要求していない、と主張しました。被告人らの銀行への言葉は、たとえば「融資金については支払をするつもりはない。」というもので、直接の文言は、返済しないと告げるものでした。

裁判所の判断

判決は、被告人らが顧客に対し、「債務に関する支払義務の有無及び第二会社などを用いて差押えを回避する具体的な方法等についての法律的見解を述べる」とともに、会社の「代理人として債権者との間で債務免除又は損失処理を行うよう交渉を行い」、他人の法律事件に関して法律事務を取り扱うことを業とした、と認定しました。

債務免除などを要求していないという主張については、銀行への言動は、第二会社が設立されて財産が移ったこと、被告人らの側が顧客を代表して債権者に対応することを述べたうえで、信用保証協会の代位弁済や債権の譲渡・損失処理をすればよいと述べるもので、債権者が債務の履行を見込めないものとして扱うことを前提にした措置を求める趣旨が含まれている、としました。そのうえで、被告人らの行為は、顧客と債権者の権利義務関係について「今後被告人らと債権者との交渉において解決しなければならない紛議を生じさせるもの」として、他人の法律事件に関して法律事務を取り扱ったと評価できる、と述べています。

共謀については、被告人らは、非弁行為を行って「報酬を得るという目的で集まった組織」で、互いに書類の作成を手伝い、書類のサンプルを提供し合うなどしていたとして、自分が直接関わっていない案件についても共同正犯の責任を負うとしました。

量刑の理由では、被告人らは「独善的な考え方のもとに事業再生と称してこれらの行為に及んでいた」、「結局は顧客を困窮させてもいたものであって」と述べ、弁護士法違反の犯行については「弁護士制度の秩序を大きく揺るがすものである」としています。

事業を行っていた被告人は懲役3年(執行猶予なし)と罰金300万円、補佐役の被告人は懲役2年6月(執行猶予4年)と罰金150万円とされました。この刑には、弁護士法違反のほか、国税徴収法違反、強制執行妨害、破産法違反など(事業を行っていた被告人については電磁的公正証書原本不実記録などを含む)の罪が含まれています。判決が罪としたのは、こうした具体的な助言・交渉・財産の移転であり、第二会社方式という手法一般の適否を述べた部分はありません。

報酬はどうなったか

判決は、弁護士法違反の犯行について証拠上はっきり認定できる報酬を、顧客から口座に入金された合計1491万3600円としました。このうち、口座に残っていた分を没収し、すでに引き出されるなどして没収できない1431万6612円を、組織的犯罪処罰法により二人から連帯して追徴しました。

検察官は、同じ期間のほかの非弁行為で得た報酬も含めて2320万3526円の追徴などを求めましたが、判決は、没収・追徴は認定された犯罪事実による犯罪収益に限られるとして、訴因に書かれていない行為の報酬は対象にしませんでした。

なお、この判決が控訴されたか、確定したかは、2026年10月13日時点の公開情報では確認できていません。

非弁の契約で受け取った報酬は、返さなければならないか

土台:最高裁 昭和38年6月13日判決

最高裁は、債権の取立てを委任され、訴訟の弁護士の選任、仮差押え・仮処分の手続、和解などによる解決の一切を任され、取り立てた額から訴訟費用を引いた残りの半額を報酬とする契約について、原判決の判断を「当裁判所もこれを正当として是認する。」としました。原判決の判断は、弁護士の資格のない者がこうした契約をすることは「弁護士法七二条本文前段同七七条に抵触するが故に民法九〇条に照しその効力を生ずるに由なきものといわなければならない」というもので、それは「上告人が右のような契約をなすことを業とする場合に拘らないものである」としていました。

返還を命じられた例①:倒産に絡む「債権者対策」(大阪高裁 平成13年9月27日判決)

取引先の会社の倒産に連鎖して財産を失わないよう、弁護士でない者らが依頼者側の「債権者対策」を引き受けました。判決によれば、保証債務の一部弁済、支払猶予、保全処分の取下げなどの債権者との個別交渉、競売された動産の買戻交渉、不動産の仮装の移転登記などを行い、その期間は対象の土地・建物についてだけでも少なくとも1年5か月に及び、利得は総額2128万1654円でした。

判決は、これを「任意整理や倒産手続に移行するようなまさしく法律事件」についての法律事務だとし、反復継続していて業務性を帯びるとして、「同条には刑罰法規(同法77条)があることも考慮すると,同契約は公序良俗に反する無効なものと言うべきである」と判断しました(「資産隠しの点を考慮するとなおさらである。」とも付け加えています)。

受け取った側は、依頼者の強い要請に応じたのだから返還請求は信義則に反すると主張しましたが、判決は、仮装の移転登記などの手法は受け取った側が発案したものと考えられ、「控訴人に比べて,被控訴人らの不法性が低いとは到底言えず」として退けました。ただし、返還が命じられたのは、請求の対象だった土地・建物からの収入に当たる分を案分した合計466万6976円(2人分)で、請求額の一部にとどまります。

返還を命じられた例②:借地権の整理(神戸地裁 平成13年10月29日判決)

宅地建物取引の会社の代表者が、土地の所有者から、阪神・淡路大震災のあと借地権の整理(借地人から借地権を買い取り、立ち退いてもらって更地にすること)を引き受け、現金と土地を受け取りました。

判決は、借地権の整理は新たな権利義務関係を発生する案件で、「権利義務に関して争いがなくても」法律事件に当たるとし、契約は弁護士法72条に違反して公序良俗に反し、無効としました。

そのうえで、依頼者も自らの意思で契約を結んでおり不法性があるとして、民法708条ただし書(不法の原因が受け取った側にだけある場合)には当たらないとしました。しかし、受け取った側の不法の程度は軽微とはいえず、不法な利益をそのまま持たせることは社会通念上著しく妥当性を欠くとして、信義則により返還請求を認め、その範囲は「受益者と給付者の不法の程度を彼此勘案し,その割合に応じた制約を受ける」としました。依頼者の不法性を3割とみて、給付の7割の返還を命じています(第1事件の現金分1516万9000円、土地の代金相当額の7割の1120万円など)。

無効でも返ってこない例:税務当局との交渉(大阪高裁 平成13年12月14日判決)

滞納税額が延滞税を含めて約6億2500万円に上っていた依頼者が、資格のない者に税務当局との交渉を頼みました。受けた側は、定期預金の解約金や預託金から、合計3億0811万6854円を報酬として取得しました。

判決は、この委任契約は弁護士法72条に違反し、「報酬額の多寡を問わず,公序良俗に反して無効というべきである」としました。しかし、交渉の手段は、貸付金を保証債務の履行による求償権に見せかけたり、架空の債権を作ったりする「いわば違法な脱税行為そのもの」で、報酬は「違法行為の対価として収受されたものというほかなく」、不法原因給付(民法708条)にあたるとして、返還請求を認めませんでした。依頼者は脱税工作を頼んでいないと主張しましたが、判決は、弁護士や税理士が身近にいたのに資格のない者に税務交渉を頼んだことや、虚偽の書類に署名していたことなどから、依頼者も脱税工作を容認していたと推認しています。依頼者は、交渉に関わった弁護士にも賠償を求めましたが、これも退けられました。

相手方との合意(和解)の効力:最高裁 平成29年7月24日判決

認定司法書士が、扱える額(140万円)を超える過払金について依頼者を代理し、貸金業者と裁判外の和解を結んだ事件です。最高裁は、その委任契約は弁護士法72条に違反し、民法90条に照らして無効になるとしたうえで、和解契約の効力は委任契約とは別に判断すべきだとし、「当該和解契約は,その内容及び締結に至る経緯等に照らし,公序良俗違反の性質を帯びるに至るような特段の事情がない限り,無効とはならないと解するのが相当である」と判断しました。委任契約が無効になる結果、「当該認定司法書士は委任者から報酬を得ることもできないこととなる」とも述べています。

この判決が扱ったのは認定司法書士と過払金の和解です。M&Aの場面で、資格のない者が関わって結ばれた合意の効力がどうなるかを直接判断したものではありません。

4件の民事判決を並べると

判決引き受けた業務委任契約報酬の行方
最高裁 昭和38年6月13日債権の取立て、訴訟・保全手続・和解の一切無効(原判決を是認)最高裁の判決文からは、請求の中身と金額は確認できない
大阪高裁 平成13年9月27日倒産に絡む債権者との個別交渉、仮装の移転登記など無効一部の返還を命じる(2人で計466万6976円)
神戸地裁 平成13年10月29日借地権の整理(借地人との交渉)無効給付の7割の返還を命じる
大阪高裁 平成13年12月14日滞納税の減額交渉(中身は脱税工作)無効不法原因給付として返還を認めず(約3億0811万円)

最高裁 昭和38年判決は、事件名が損害賠償請求で、上告を棄却して契約を無効とした原判決を是認したものです。原判決の全文は確認できておらず、誰が何を請求した事件かは、最高裁の判決文からは確認できません。

株式譲渡のFA業務で、非弁の主張が退けられた例(東京地裁 平成24年12月17日判決)

この判決は裁判所のウェブサイトに全文がなく、次の内容は、『琉大法學』第106号(2022年)の論説『弁護士法72条の「法律事件」の解釈』(琉球大学学術リポジトリ)が紹介している事案の概要と判断の要旨によるものです。事件番号は確認できていません。

論説によれば、自分が経営し株式を持っていた会社の株式を別の会社に売る際、売り手がアドバイザリー契約を結び、委託手数料105万円と報酬2520万円を払いました。売り手は、担当者から株式譲渡契約に約定解除権が付いていると説明されて誤信し、解除できずに不利な条件での合意解除に応じざるを得なかったとして、説明義務違反による損害賠償を求め、予備的に、アドバイザリー契約は弁護士法72条違反で無効だとして報酬などの返還を求めました。

判決は、「その他一般の法律事件」には訴訟事件などの例示に準ずる程度に争いや疑義のおそれが必要だとし、この事件では、売り手と買い手の間で法的紛議が生ずることが不可避だったことをうかがわせる証拠はなく、アドバイザーの業務は株式譲渡契約の契約書の作成について助言や協力をしていたものに限られるとして、弁護士法72条の「法律事件」に当たらないとした、と紹介されています。説明義務違反の請求について判決がどう判断したかは、論説の紹介からは確認できていません。

M&A仲介・FAの報酬が非弁で否定された判決は、見つからなかった

日本財務戦略センターは、2026年10月に、裁判所のウェブサイトの裁判例検索と、ウェブ上の判例紹介を調べました。その範囲では、M&Aの仲介やFAの報酬が、弁護士法72条違反を理由に否定された判決は見つかりませんでした。M&Aのアドバイザリー契約で非弁の主張が出た例として確認できたのは、上の東京地裁 平成24年12月17日判決(非弁の主張を退けた)だけです。税理士法違反を理由に、民事上の報酬が否定された判決も見つかりませんでした。

見つからなかったことは、そうした判決がないことを意味しません。裁判所のウェブサイトに載る判決は一部で、判例誌やデータベースにだけ載っている判決もあります。

M&Aの現場で確かめること(判決から導ける示唆)

以下は判決から導いた確認事項で、裁判所が述べたものではありません。個別の業務が弁護士法72条に触れるかどうかは、弁護士にご確認ください。

  1. 債権者と減免を交渉する場面を、最初に切り分ける:札幌地裁の事件では、会社の代理人として銀行と債務免除や損失処理を交渉したことが、法律事務の取扱いとされました。再生型のM&Aや事業承継で、金融機関と返済条件や債権放棄を話し合う必要がある案件では、その交渉を誰が担うかを最初に決めておきます。
  2. 「返済は止めろ」「差し押さえることはできない」といった法的な見通しを示さない:札幌地裁の判決は、支払義務の有無や差押えを避ける方法についての「法律的見解」を述べたことを、罪となる事実の一部に挙げました。会社の財産をどの会社に移すかという話は、債権者との関係で法的な問題になり得ます。
  3. 紛争になりそうな相手方との交渉かどうかを見る:立退き交渉の最高裁決定は「法的紛議が生ずることがほぼ不可避」な案件を法律事件としました。M&Aでも、株主間の争い、従業員や取引先とのトラブル、相手方が条件を争っている交渉などは、契約書の作成への助言と同じには扱えない可能性があります。東京地裁 平成24年判決(論説の紹介による)は、紛議が不可避といえない場面での契約書作成への助言・協力についての判断です。
  4. 報酬の対象を書面で明確にする:民事の判決では、委任契約が無効になると、受け取った報酬は不当利得として返還を求められることがありました。どの業務に対する報酬かが曖昧だと、無効とされる部分の範囲も争いになり得ます。
  5. 相手方との合意が残るとは限らない:最高裁 平成29年判決は、特段の事情がない限り和解契約は無効にならないとしましたが、これは認定司法書士の過払金の和解についての判断です。資格のない者が交渉して結んだ合意の効力が争われる事態を避けることが先決です。

日本財務戦略センターの対策:当社は、M&Aの支援機関として、最初の面談で、金融機関への返済条件の変更や債権放棄の相談、株主・従業員・取引先との紛争が案件に含まれていないかを確かめます。含まれている場合は、その部分を弁護士に依頼する段取りを案件の初めに組み、当社が担う業務(M&Aの取引条件の整理と当事者間の連絡調整、候補先の探索、進行管理など)と報酬の対象を、契約の前に書面で示します。金融機関との債務の減免の交渉や法的な紛争の解決は弁護士にご依頼いただき、契約書の作成も弁護士などの専門家と連携して、適法に進めます。

関連する事件として、上場会社が子会社株式の売却でアドバイザーに代金の約38%を払った事件を、子会社株式の売却でアドバイザーに代金の約38%を払ったらで、仲介・アドバイザーをめぐる判決を株式譲渡のトラブル・判例74件の分析の類型6で整理しています。

判決の出典

札幌地裁 令和2年判決、大阪高裁の2判決、神戸地裁判決について、上級審の有無や確定したかどうかは、2026年10月13日時点の公開情報では確認できていません。大阪高裁 平成13年9月27日判決は原判決の理由を引用する形で書かれており、原判決の全文は確認できていません。会社名と個人は、判決の伏字か立場で書いています。

よくある質問

Q. M&Aアドバイザーが依頼者に代わって銀行と交渉すると、非弁行為になりますか?

交渉の中身と状況によります。札幌地裁 令和2年3月26日判決は、会社の代理人として銀行と債務免除や損失処理を交渉したことを、他人の法律事件に関して法律事務を取り扱ったものとし、弁護士法違反で有罪としました。この事件では、返済をしない旨を告げ、第二会社への財産の移転を前提に代位弁済や損失処理を求めるなど、判決が債権者との紛議を生じさせるものとした事情がありました。個別の業務が当たるかどうかは、弁護士にご確認ください。

Q. M&A仲介やFAの報酬が、非弁行為を理由に否定された判決はありますか?

日本財務戦略センターが2026年10月に裁判所のウェブサイトとウェブ上の判例紹介を調べた範囲では、見つかりませんでした。株式譲渡のアドバイザリー契約で依頼者が弁護士法72条違反による無効を主張した東京地裁 平成24年12月17日判決は、論文の紹介によれば、契約書の作成への助言や協力にとどまる業務は、弁護士法72条にいう「法律事件」に当たらないとして、その主張を退けています。

Q. 弁護士法72条に違反する契約で払った報酬は、取り戻せますか?

取り戻せた例と、取り戻せなかった例があります。大阪高裁 平成13年9月27日判決と神戸地裁 平成13年10月29日判決は、契約を無効として返還を命じました(神戸地裁は依頼者の不法性を3割とみて7割の返還)。一方、大阪高裁 平成13年12月14日判決は、契約を無効としながら、中身が脱税工作で依頼者もそれを容認していたとして、不法原因給付により返還を認めませんでした。

Q. 資格のない者が交渉して結んだ相手方との合意は、無効になりますか?

最高裁 平成29年7月24日判決は、認定司法書士が弁護士法72条に違反して結んだ裁判外の和解契約について、内容や締結の経緯から公序良俗違反の性質を帯びる特段の事情がない限り無効にならないとしました。ただし、これは認定司法書士による過払金の和解についての判断で、ほかの場面にそのまま当てはまるとは限りません。

Q. 第二会社方式は違法なのですか?

札幌地裁 令和2年判決が罪としたのは、支払義務の有無や差押えを避ける方法についての法律的見解を述べ、会社の代理人として銀行と交渉したこと、滞納処分や強制執行を免れる目的で売掛金や売上金を別会社に移したことなどの具体的な行為です。判決に、第二会社方式という手法一般の適否を述べた部分はありません。

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この記事は、裁判所が公開している判決文(2026-10-13時点)をもとに、判決が認定した事実と判断を整理したものです。判決の評価にあたる言葉は、判決の文言をカギカッコで引用したものに限っています。判決に出てくる個人は、判決自身の伏せた表記か続柄だけで書いています。株式会社日本財務戦略センターが当事者の主張の当否や、現在の会社・商品について評価するものではありません。上級審や確定の有無は、記事中に書いたもの以外は確認できていません。個別の契約や紛争については、弁護士などの専門家にご相談ください。
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五十嵐悠一
監修・執筆責任者
株式会社日本財務戦略センター 代表取締役。京都大学経済学部経営学科(マーケティングゼミ専攻)卒。損害保険ジャパン本店営業部(企業リスク・法務)を経て、東証上場M&A仲介会社にて多数の成約に従事。2020年に株式会社日本財務戦略センターを創業し、M&A・事業承継・財務戦略を専門としています。中小企業庁 M&A支援機関登録事業者/一般社団法人M&A支援機関協会 正会員です。