株式会社日本財務戦略センター|一次調査|2026年10月2日公開・2026年10月3日改稿|調査基準日 2026年10月3日
M&Aのトラブルは、誰に起きるのか
M&Aのトラブルは、会社を売った側だけに起きるのではありません。買った側、仲介会社、紹介した金融機関、売られた会社の従業員や取引先にも起きています。公開されている判決、国の公表資料、報道、本から、誰に何が起きているのかを整理しました。
M&Aや事業承継を考えていると、気になるのは「トラブルにならないか」ということではないでしょうか。怖いのは、誰が悪いかよりも、自分のときに何が起きるのかが分からないことだと思います。
公開されている資料を調べると、会社を売ったのに経営者保証が外れなかった、譲渡の後に会社のお金が移されてしまった、約束した代金が払われなかった、買った会社で人が辞めて事業が続かなかった、買い手と仲介会社の間で裁判になった、といった事例があります。
ところが、こうした事例を調べていくと、「悪い買い手を見抜けなかった」という一つの話には収まりません。相手が事情を知っていたと認定されたものもあれば、契約の受け止め方が食い違ったもの、買った後に事業が続かなかったもの、そして、誰の落ち度も認められないまま請求が退けられたものもあります。
そこでこのページでは、誰が悪かったのかを決めるのではなく、何がきっかけで問題が起きたのかを、実際の判決や国の公表資料、報道、本から見ていきます。
日本財務戦略センター自身も、M&Aを支援してきた中で、振り返って「こうすればもっとよかったのではないか」と思うことがあります。一方で、「これはやってきてよかった」と思えたことも多々あります。その両方を踏まえて、M&Aを「やってよかった」と思えるものにするには、何を先に知っておけばよいのか。具体的な事例から、一緒に考えてみませんか。
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<a href="https://jfsc.jp/research/ma-succession-trouble-japan/">M&Aのトラブルは、誰に起きるのか|株式会社日本財務戦略センター</a>文章での出典表記:株式会社日本財務戦略センター「M&Aのトラブルは、誰に起きるのか」(2026年10月2日) https://jfsc.jp/research/ma-succession-trouble-japan/※ JFSCが集計・加工・分析した結果(集計値・集計表・図表・指標・分析と見解)は、この条件で引用いただけます。他機関(官公庁・調査会社など)が公表した数値や文章そのものは、それぞれの元資料の利用条件に従ってください。
実際に起きていること
まずは、代表的な事例をいくつか紹介します。押すと、その事例の説明に移動します。
この先は、売り手、買い手、仲介会社、紹介した金融機関の順に、具体的な事例を一つずつ見ていきます。もし「自分と似たケースをもっと見たい」と思ったら、次の図から探してみてください。
もっと詳しく、事例を探す
下の図は、トラブルに巻き込まれた側を行に、その相手について判決・国の処分・本・報道が何を認定・評価したかを列にとって、事例を置いたものです。たとえば「売り手」の行の「知っていた」の列には、相手(買い手など)が事情を知っていたと判決で認定された事例が入ります。
行はトラブルに巻き込まれた側、列はその相手について、判決・国の処分・本・報道が何を認定・評価したかです。金色のボタンは本文の事例へ、紺色のボタンは同じ分類の事例をまとめた資料(APPENDIX)へ移動します。
事例へ移動(本文)同じ分類の事例をまとめて見る(APPENDIX)
今回調べた公開資料では確認できなかった分類です(存在しないという意味ではありません)。件数は公開裁判例のうちM&Aに関係する110件の内訳で、トラブルの起きやすさを比べる数字ではありません。
件数は、裁判所が公開している判決のうち、会社や事業の売買に関係するものとして日本財務戦略センターが読み分けた110件の内訳です。日本で起きたM&Aのトラブルの総数ではありません(調べ方は記事の後半にまとめました)。列の分け方は、法律の言葉でいう「悪意」「善意・有過失」「善意・無過失」に対応しています。ただし、置いた位置は日本財務戦略センターの判断ではなく、出典の書き方に従っています。各判決の法的な責任を、同じ基準で判定し直したものではありません。報道や本にしか出てこない事例と、裁判が続いている事例は、すべて右端の「争い中・認定なし」の列に置きました。
この図で見てほしいのは、件数の大きさではありません。三つのことが読み取れます。一つは、判決の数では、買い手が巻き込まれたものが売り手より多いことです(買い手43件、売り手28件)。二つ目は、売り手の行で最も多いのが「相手の問題は認定されなかった」の17件だということです。誰かが悪いことをしたと認められないまま、売り手の請求が退けられた判決が多くあります。三つ目は、仲介会社が当事者になった会社売買の判決が、裁判所の公開している判決には1件もなかったことです(判例誌が紹介した未公開の判決が1件だけありました)。仲介の行は、主に国の処分と報道、本で埋まっています。紹介者の行は、責任が判断された公開資料が見つかりませんでした。M&Aのトラブルは、「悪い買い手を見抜けば防げる」という一つの話には収まらない、ということです。
売り手が巻き込まれる
今回調べた事例で、売り手の側で特に目立ったのは、経営者保証が外れない、約束の代金が払われない、売った後に会社のお金が出ていく、の三つです。判決では、相手に問題があったとは認められないまま、売り手の請求が退けられたものも多くあります(28件のうち17件)。
なお、この節の事例は、売り手が見抜けなかったことを責めるために並べたものではありません。相手が悪い買い手かどうかは、契約の時点ではほとんど分かりません。それを前提に、何が起きたのかを見ていきます。
保証が、期限を過ぎても外れなかった
中小企業の借入には、社長個人が連帯保証人になっていることがよくあります。会社を売っても、保証は金融機関との契約なので、買い手が金融機関と話をつけて保証人を差し替えるか、借り換えや返済をしないと外れません。
『社喰い』(片田江康男、ダイヤモンド社、2026年)によれば、東京都足立区の内田建設は(同じ件を実名で報じた記事:ダイヤモンド・オンライン)、2023年1月にルシアンホールディングスの関係会社へ全株式を5,000万円で譲渡しました。株式譲渡契約には、内田社長の保証を「株式を譲渡した後、3カ月以内に解消する」と書かれていました。それでも保証は外れず、譲渡の直後から「親会社で資金を一括管理する」という指示で送金が続き、約1年間で約2億3,074万円が送られ、戻ってきたのは7,000万円だったとされています。内田社長が異変に気づいたのは、保証が約束の時期を過ぎても外れていなかったときでした。この件の詳しい経緯や取材の内容は、同書に紹介されています。
少なくとも、この記事で確認できた資料からは、譲渡の時点でその後の問題を予見できたとは確認できません。買い手は1年あまりで多くの会社を買っていましたが、手広く買う買い手はほかにもいます。親会社で資金をまとめて管理することも、グループ経営ではふつうに行われています。
同じ形は、上場会社の規模でも起きています。同書によれば、船井電機は、子会社だったミュゼプラチナムの借入に連帯保証を付けていて、ミュゼがまだ子会社のうちに、金融機関から履行を求められています。その後ミュゼを100万円で手放したときの契約でも、保証は「解除するよう最大限努力をする」とされていただけで、保証が残っていたことを理由に、ミュゼの取引先だった広告会社が船井電機の株式を仮差し押さえしています。
約束の支払いがなかった
譲渡代金の一部を、後払いや売上に応じた顧問料、退職慰労金として受け取る約束にして、それが払われない形です。東京地裁 令和2年7月30日判決では、パーソナルトレーニングジムの事業と商標を譲った会社が、創業者に売上に応じた顧問料を払う約束が守られなかったとして契約を解除しましたが、買い手はその後もブランド名を使って店舗の運営を続けました。判決は、買い手側が事情を知っていたと認め、7,442万円余りの支払いと商標の移転登録の抹消を命じています。
中小企業庁も、2024年8月30日の「M&Aに関するトラブルにご注意ください」で、譲渡代金を低くして残りを退職慰労金として後から払う約束が守られなかった例を公表しています。
誰の落ち度も認められなかった
売り手の行で最も多かったのが、この型です。東京地裁 平成29年3月15日判決では、有料老人ホームを運営する会社の株式を、買い手の資金が足りないため対象を一部外して3億8,000万円で譲った売り手が、契約に書かれていない清算金などを求めましたが、退けられています。この判決は、間に入った紹介者について、どちらか一方の代理人だったとは認めがたく、役割は「仲介者にとどまる」としています。
こうした判決では、相手がだましたとも、怠けたとも認められていません。契約に書いていないことは、後から求めても通りにくい、ということです。
交渉の途中で起きることもあります。東京地裁 平成25年10月17日判決では、事業譲渡の交渉相手が、移籍した元従業員の持ち出した顧客情報を使い、その後は交渉に応じなくなりました。判決は、相手側の代表者らが不正な持ち出しを「知って、又は重大な過失により知らないで」使ったと認め、賠償を命じています。
譲渡の後も取締役として残るなら
同書によれば、内田建設の内田社長は株式を譲った後も取締役として会社に残り、送金の手続きも自分でしていました。中小企業のM&Aでは、売り手がしばらく役員として残ることはよくあります。
会社法では、会社と取締役の関係は委任で(330条)、取締役は「株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない」とされています(355条)。義務を負う相手は会社で、親会社ではありません。親会社の指示であっても、会社の運転資金まで出ていくような送金は、会社のために断ることができます。親会社は株主総会でいつでも取締役を解任できますが、解任に正当な理由がなければ、解任された取締役は会社に損害の賠償を求めることができます(339条2項)。断るときは、理由を書面で示し、記録を残しておくことが身を守ることになります。
買い手が巻き込まれる
判決の数では、買い手が巻き込まれたもののほうが多くありました。
売り手が知っていて隠していた
東京地裁 平成18年1月17日判決では、消費者金融会社の全株式を買った買い手が、利益が水増しされていたことを買収の直後に見つけました。判決は、売り手がその会計処理を故意に隠していたと認め、約3億529万円の支払いを命じています。判決は「デューデリジェンスは買主の権利であって義務ではなく」と述べ、買い手が調査で見つけられなかったことを、買い手の重い落ち度とはしませんでした。
約束が果たされなかった
大阪高裁 令和6年12月20日判決では、民事再生中の菓子会社の事業を6億7,000万円で譲り受けた買い手が、商標を創業家側に1円で渡し、代わりに使用権を設定してもらう約束をしましたが、使用権は設定されませんでした。判決は、相手が初めから約束を守る気がなかったとは認めず、約束が果たせなくなった責任として100万円の賠償だけを命じています。
誰の落ち度も認められなかった
札幌地裁 令和2年12月25日判決では、調剤薬局チェーンが在宅調剤の薬局1店舗を営む会社を買いましたが、閉店に至りました。買い手は、買った薬局で不正請求などがあったとして、表明保証違反を理由に約2億5,960万円を求めましたが、判決はすべて退けました。違反は認められない(一部は、買い手がデューデリジェンス〈買収前の調査〉で知っていた)としたうえで、閉店は譲渡の前後に薬剤師が全員辞め、取引先が離れたためではないかとし、訴えた違反のために閉店したとは認められないとしています。
売り手がだましたわけでも、買い手が調べ損ねたわけでもないのに、人が辞めたことで会社の価値が消えました。買った後に事業を回せるかは、契約書だけでは守れません。2025年7月にマイスホールディングスの新たなトップとなった取締役も、『社喰い』の取材に「一番の問題は、人材の問題です。買収した先を経営する適切な人材はマイス社にはいませんでした」と答えています。
事業譲渡ならではの争い
事業譲渡の判決では、商標や特許をどちらが持つかの争いが最も多く、次いで、事業を譲った側が同じ商売を再び始める競業の争い、事業と一緒に屋号を引き継いだ買い手が、売り手の借金を払うよう求められる争い(会社法22条)、従業員の扱いをめぐる争いがありました。
上場会社が買い手の場合は、会社自身の開示で争いが分かります。株式会社イー・ロジットは2024年11月、買収した建設会社について、売り手の代表者を表明保証違反、仲介したM&A総合研究所を仲介業者としての注意義務違反として、合わせて約3.17億円の支払いを求めて提訴しました。M&A総合研究所は、イー・ロジットは「自らが選定した専門家を起用して財務・税務デューデリジェンスを実施」しており、注意義務に違反する事実はないとして、「いわゆるスラップ訴訟と考えられ」るとしています(ロジ・トゥデイ、M&A総研ホールディングスの発表)。売り手の代表者は、それより前の2024年7月に、イー・ロジットの開示に虚偽があるとして名誉毀損で提訴していました(イー・ロジットの臨時報告書)。こちらは、東京地裁が2026年8月18日に請求をいずれも棄却し、控訴されずに9月8日に確定しています。イー・ロジットが売り手の代表者とM&A総研ホールディングスに約3.17億円を求めている訴訟は、同じ開示の時点で続いています(イー・ロジットの2026年9月9日の適時開示)。
仲介会社が巻き込まれる
仲介会社が当事者になった会社売買の判決は、裁判所が公開している判決には1件もありませんでした。「仲介報酬」で見つかった判決は、すべて不動産の仲介でした。ここでは、判例誌が紹介した未公開の判決1件と、国の処分、開示、報道、本で確認できたものを並べます。
判例誌が紹介した未公開の判決に、仲介役が当事者になった例が1件あります(週刊T&Amaster 2020年11月9日号)。東京地裁 令和2年9月23日判決では、上場会社による株式の買い取りで「企業提携の仲介契約」を結んだ公認会計士が、報酬の残り約5,200万円を求めました。契約書は報酬を時価総資産をもとに計算する形でしたが、実際には双方とも時価純資産をもとに扱っており、判決は時価総資産で計算する合意があったとは認めず、請求を退けました。買い手の側も、対象の会社が現金主義で会計をしていたことを告げなかったとして約3億5,000万円を求めましたが、判決は、仲介として告げる義務はあったものの、渡した資料に記載があり買い手が知り得たとして、これも退けています。判決の原文は公開されていないため、ここでは判例誌の紹介によっています。
中小企業庁は2025年1月24日、株式会社M&A DXの登録を取り消しました。処分理由では「資金力に疑義がある不適切な買手であることを認識しながらM&Aを成立させた」とされています(中小企業庁の公表文)。
このほか、不適切な買い手とのM&Aを支援したとして、2024年10月に15機関、2025年1月に6社、2025年3月に1社、合わせて22の登録機関に注意が出されています。名称は公表されていません。公表文は「不適切な譲り受け側の排除の徹底が求められる」としていますが、知っていて進めたとは書いていません。
『社喰い』によれば、マイスホールディングスは2024年、都内の水道工事会社(同書では仮名)を11億円で買う際、買われる会社の当座貸越(銀行の借入枠)から借りたお金を代金に充てました。その会社は借入を返せず、銀行から返還を求めて訴えられています。マイスホールディングスは2025年11月、この買い方を提案したのは仲介会社だとして、M&A総合研究所に1億1,959万9,533円の支払いを求めて東京地裁に提訴しました。M&A総合研究所は同書の取材に「当社に落ち度は一切ない」と回答しています。裁判は続いています。
2026年7月には、ジャパンM&Aソリューション株式会社が、2023年に仲介した株式譲渡の売り手(個人と会社)から提訴されています。売り手は、同社が紹介した買い手とともに、仲介会社にも「本件株式譲渡過程における助言・対応等にM&A仲介業者としての義務違反があった」として、約8.16億円の賠償を求めています。同社は、義務を十分に果たしているとしたうえで、契約では、仲介会社が賠償責任を負うのは「故意又は重過失の場合に限定され」、金額も受け取った報酬(23,755,732円)が上限だと定められている、としています(同社の臨時報告書)。売り手から見れば、仲介契約の責任の範囲が、トラブルの後に取り戻せる額の上限を決めていることになります。
仲介会社が案件から降りた後に、売り手と買い手が直接契約した例も、本と報道に1件ずつあります。同書によれば、M&A総合研究所は2024年7月初め、マイスホールディングスとの案件を中止し、進めるならアドバイザリー契約を解除して当事者同士で行うよう社内に通知しました。その後に契約を解除した売り手について、同社は「売主様・買主様双方にご説明の上、合意を頂いた上で仲介契約を解約しております」と回答し、売り手は「リスクについて説明はありませんでした」と話しています。どちらが正しいかは、公開資料からは判断できません。ただ、「この取引にはリスクがある」と聞くのと、「当社はこの買い手との案件をやめた」と聞くのとでは、売り手が受け取る重さがまったく違います。同書によれば、契約を解除した後の面談にも、M&A総合研究所の担当者が同席していたとされます。仮にそうであれば、解除の後も仲介の仕事が実質的に続いていたのではないか(善管注意義務)、会社の担当者として振る舞ったことに会社が責任を負うのではないか(代理権が消えた後の表見代理や、使用者責任)、といった点が論点になる可能性があります。ただ、この件の訴訟は代表者をめぐる入口で終わっていて、こうした点が裁判で判断されたことはありません(時系列はAPPENDIX Dにまとめました。詳しい経緯は同書をご覧ください)。
同書には、買い手側の前社長の証言として、仲介会社の社内で買い手に取引を断る判定が出るようになった後、「マイス社は買いすぎだから、別の法人を出して」と言われ、子会社の名前で買収を続けた、という話も載っています。どの仲介会社かは、同書にも書かれていません。
2026年10月には、大手の仲介会社の案件で、買い手が売り手の経営者保証を外していないことを担当者らが隠し、業界団体での情報共有を避けていたと報じられました(朝日新聞)。
仲介会社の社内の不正で、顧客の名前が使われた例もあります。株式会社日本M&Aセンターは2022年2月、成約前の案件の売上を前倒しで計上し、契約書類の記名押印部分をコピー・切り貼りするなどして虚偽の報告をしていたと公表しました(詳しくは2022年の記事にまとめています)。
紹介した金融機関が巻き込まれる
金融機関や公的な窓口が仲介会社を紹介した側の責任が、判決や国の処分で判断された公開資料は見つかりませんでした。ただ、紹介から始まった案件でも、トラブルは起きています。
同書によれば、内田建設が最初に相談したのは、長年の取引先である城北信用金庫でした。信用金庫は提携する仲介会社を含む2社を紹介し、手数料の安さから内田社長が1社を選び、その仲介会社がルシアンホールディングスを紹介しました。本から読み取れる信用金庫とのやり取りは、紹介と、譲渡代金の決済が同金庫の支店で行われたこと、譲渡の後に買い手から借入を全部返すという連絡があったことです。譲渡の前に、保証の扱いを信用金庫と詰めたという記述はありません。
同書によれば、トラブルの後、信用金庫は債権者として預金を相殺し、本社の土地建物の競売を申し立てました。内田建設の代理人の弁護士は、担保で十分回収できるのに競売を急いだと批判しています。一方で、ほかの銀行は元金の返済を止める特別な対応をとったとされています。
この件で信用金庫の責任が判断された資料はありません。言えるのは、紹介することは案件を確かめることを引き受けることではない、ということと、トラブルになれば金融機関は自分の債権を守る側に立つ、ということです。『ルポ M&A仲介の罠』(藤田知也、朝日新聞出版、2025年)によれば、公的な事業承継・引継ぎ支援センターが関わった案件でも、保証が外れなかった例が2件あります。
会社は、誰のものか
M&Aのトラブルには、売り手・買い手・仲介のほかにも当事者がいます。判決では、株主が9件、債権者が7件、従業員が4件で当事者になっていました。
会社をめぐっては、三つの見方がずれています。株式は株主が持ちますが、会社の財産は会社のものです。株式を譲れば株主の地位が買い手に移り、会社の経営を支配する立場も買い手に移ります。会社のお金は、取引先や従業員への支払いの元手です。株主であっても、自分の財布のようには使えません。そして売り手の気持ちの上では、会社は家業です。トラブルの多くは、このずれから起きています。
同書によれば、ある会社(同書では仮名)は2024年8月中旬にマイスホールディングスへ売られ、翌日に4,000万円が送金され、流出は合わせて約1億1,989万円に上りました。代表者は4か月で別の人物に替わり、創業家が代表に戻ろうとしましたが、2026年2月、裁判所は新しい代表者の側の主張を認めました。株を売った後、売り手が株主として会社を取り戻すのは容易ではありません。この件の経緯は、同書に詳しく書かれています。会社としてマイスホールディングスを訴えていた裁判も、代表者が誰かという入口で終わり、送金が違法だったかどうかは判断されていません。
同書には、仲介会社が買収の候補として出す会社は「全て預金残高がある会社」で、ある仲介会社は会社の口座に資金がある売り手企業を社内で「キャッシュ案件」と呼んでいた、という買い手側の証言もあります。著者は、これを、口座に現金が多い一方で株式の譲渡価格は安い会社のことだろう、と見ています。現金のある会社を、その会社自身のお金で買えば、売り手は代金を受け取れても、つけは会社に残り、取引先と従業員が背負います。
一度親会社の口座に移ったお金は、ほかのお金と混ざります。取り戻すには、誰かが訴えなければなりません(取り戻す法律の手段はAPPENDIX Eにまとめました)。
会社を売っても、保証は自動では外れない
金融庁が公表している統計では、民間の金融機関で代表者が交代したとき、前の社長だけに保証が残る割合は、2017年度の18.6%から2025年度の39.7%に上がっています(「経営者保証に関するガイドライン」等の活用実績)。前の社長と新しい社長の両方から保証をとる二重徴求は、36.9%から3.0%に減りました。これはM&Aに限らない、代表者交代の全体の数字です。39.7%は「M&Aの39.7%で保証が残る」という意味ではありません。
| 年度 | 件数 | 保証なし | 新しい社長だけ | 前の社長だけ残る | 両方からとる |
|---|
| 2017 | ― | 9.9% | 34.6% | 18.6% | 36.9% |
| 2018 | ― | 10.4% | 41.9% | 29.3% | 18.3% |
| 2019 | ― | 10.3% | 42.6% | 34.0% | 13.1% |
| 2020 | ― | 11.1% | 48.6% | 35.4% | 4.9% |
| 2021 | ― | 9.9% | 50.3% | 35.6% | 4.2% |
| 2022 | ― | 11.0% | 47.6% | 38.1% | 3.2% |
| 2023 | ― | 17.2% | 41.0% | 39.1% | 2.7% |
| 2024 | 43,865 | 16.6% | 41.1% | 39.3% | 2.9% |
| 2025 | 40,170 | 16.7% | 40.6% | 39.7% | 3.0% |
金融庁「『経営者保証に関するガイドライン』等の活用実績」各年度(通期)。2025年度は2603.xlsx「公表資料」で検算
図1 代表者交代時の経営者保証の扱い(民間金融機関・通期)(クリックで拡大)本記事の内容は、出典リンクつきでご自由に引用いただけます(CC BY 4.0・出典に「株式会社日本財務戦略センター(JFSC)」の名称を明記)。コピー用の引用タグは ページ冒頭の枠 にあります。
信用保証協会の保証つきの借入では、前の社長だけに残る割合は2025年度に52.3%でした(中小企業庁の公表資料)。
ルールは、どう変わったか
M&Aは、後継者のいない会社を残す手段として増え続けています。M&A支援機関登録制度に報告された成約(譲渡側)は、2022年度の4,036件から2024年度の4,940件になりました(M&A支援機関登録制度の集計)。それとともに、トラブルに対するルールも変わってきました。事例の日付とルールの日付を、同じ表に並べます。
| 時期 | 事例 | ルール |
|---|
| 2019年12月 | | 経営者保証ガイドラインに、事業承継のときの特則 |
| 2020年3月 | | 中小企業庁が「中小M&Aガイドライン」を公表 |
| 2023年1月 | 内田建設の譲渡 | |
| 2023年9月 | | 中小M&Aガイドライン 第2版 |
| 2024年5月 | | 中小企業庁が不適切な買い手について最初の注意喚起 |
| 2024年8月中旬 | マイスホールディングスへの譲渡(同書・仮名の会社) | |
| 2024年8月30日 | | 中小M&Aガイドライン 第3版(仲介・FAによる買い手の調査、契約前の説明、最終契約前のリスクの報告、不適切な買い手の情報の組織的な共有と開示) |
| 2024年10月 | | 中小企業庁が15機関に注意。M&A支援機関協会が「特定事業者リスト」を始める。金融庁の監督指針で、保証の扱いの対象を「事業承継時」から「M&A・事業承継時」に広げる |
| 2025年1月 | | 協会の自主規制ルールの改正(最終契約書の草案に保証解除の条項、買い手の資力の調査)。初めての登録取消し(M&A DX)と6社への注意 |
| 2025年4月 | | 特定事業者リストの規約を改め、報告の条件を具体化(実行日から60営業日を過ぎても保証が解除されない、10営業日を過ぎても金融機関に相談しない、後払いの代金が期日に払われない など)。社名・法人番号・代表者名・役員名で登録し、10年以上共有 |
| 2026年4月 | | 金融庁の監督指針の改正(M&Aの前の保証の事前相談、最終契約のクロージング条件としての保証の解除、解除されなかった場合の条項への支援) |
ガイドラインの変遷
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」は、法律ではありません。ただ、M&A支援機関登録制度に登録した仲介会社などは、守ると宣言していて、違反すれば登録の取消しなどの対象になります。版ごとに、仲介会社・FAに求めることが増えてきました。買い手と経営者保証に関わるところを中心に並べます。
| 版 | 公表 | 仲介会社・FAに求めたこと(買い手と保証に関わるもの) |
|---|
| 第1版 | 2020年3月 | 支援機関向けの基本事項を示す。クロージングでは、譲渡対価が確実に入金されたことを確認する。利益相反やテール条項にも触れる。仲介会社が買い手を調べる項目は無い |
| 第2版 | 2023年9月 | 仲介会社・FAが契約上の義務(善管注意義務・忠実義務)を負い、職業倫理を守ることを明記。仲介契約・FA契約の前に、手数料(最低手数料を含む)や直接交渉の制限などの重要事項を書面で説明する。買い手を調べる項目は、まだ無い |
| 第3版 | 2024年8月 | 買い手を調べる(財務、事業の実態、反社会的勢力や過去のトラブル)。調べ方を契約前に売り手に説明し、リスクが見つかれば最終契約の前に報告して協議する。不適切な買い手の情報は組織で共有し、売り手に開示する。売り手の経営者保証の扱いは、売り手と方針を相談のうえ対応を検討する |
中小企業庁「中小M&Aガイドライン」第1版(2020年3月・Web Archiveの保存版)、第2版(2023年9月)、第3版(2024年8月)の本文
この記事で取り上げた事例の多くは、第3版より前の取引です。内田建設の譲渡(2023年1月)は第1版の時期で、マイスホールディングスへ売られた会社の件(2024年8月中旬)も第3版の公表の直前でした。当時のガイドラインには、仲介会社に買い手を調べさせる決まりがありませんでした。トラブルが報じられたあとに、ルールが追いかけてきた形です。そのため、当時の取引について仲介会社の責任を問う裁判では、ガイドラインではなく、仲介契約の中身と、民法の善管注意義務そのものが物差しになります。裁判所が公開している判決に、ガイドラインを物差しにして仲介会社の注意義務を判断した例は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。
中小M&Aガイドライン第3版は、仲介会社やFAに、買い手が代金を払えるか、M&Aの後に事業を続けられるかを調べ、仲介契約・FA契約を結ぶ前に調べ方を売り手に説明し、最終契約の前までに調べて、リスクが見つかった場合には「開示可能な範囲で」結果を報告し、取引を実行するか、契約に何を書くかを協議することを求めています(中小M&Aガイドライン 第3版 100〜103ページ)。
金融機関の側にも、2026年4月から新しく求められていることがあります。金融庁の監督指針(主要行等向けと、地方銀行・信用金庫・信用組合などが対象の中小・地域金融機関向けの両方)は、M&Aの成立の前に保証の扱いを相談するよう勧め、相談があれば丁寧に対応する態勢を求めています。さらに「前経営者の保証契約の解除又は後継者への移行がなされる場合には、M&A・事業承継の最終契約におけるクロージング条件としての明確な設定や、仮に解除・移行がなされなかった場合を想定した条項の設定等に向けた調整や支援を行う態勢」を求めています。2026年2月20日に公表され、4月1日から適用された改正です(金融庁の公表)。金融庁は改正の概要で「M&A・事業承継に際しては、経営者保証を適切に取り扱わないことによるトラブルも今なお発生しており」と書いています。内田建設の件(2023年)や、マイスホールディングスへの譲渡(2024年)のときには、この文言はまだありませんでした。
金融機関に求められているのは、保証を必ず外すことではありません。外すかどうか、何があれば外せるかを、譲渡の前に示すことです。その判断は、売り手にとって、買い手を見極める材料にもなります。
仲介会社を規制するだけでは、届かないところ
ここまでのルールは、ほとんどが仲介会社・FAと金融機関の側の義務を増やすものです。仲介会社への規制と監督は必要ですし、日本財務戦略センターもその対象です。
ただ、買い手が譲渡の後に、保証を外す、代金を払う、といった約束を守らなかったとき、その責任まで仲介会社が負うわけではありません。仲介会社の審査や説明をどれだけ厳しくしても、買い手本人が約束を守るかどうかには、直接は届きません。
契約の時点で、約束を守る意思や力がないのに、それを隠して会社を手に入れた場合には、今の法律でも詐欺罪(刑法246条)に当たる可能性があります。買った会社の取締役になった人が、自分や第三者の利益のために会社に損害を与えれば、特別背任罪(会社法960条)もあります。法律が無いわけではありません。
ところが、今回調べた範囲では、買い手がM&Aの後に保証を外す約束や代金の支払いを守らなかった件、買った会社の資金を移した件で、逮捕や起訴まで報じられた例は見つかりませんでした。ルシアンホールディングスの件でも、報じられたのは「警察も情報収集」というところまでです(産経新聞 2025年3月16日)。『社喰い』も、こうした行為をした人たちが「罪に問われることは残念ながらほぼないだろう」と書き、その理由を、株主となった買い手の「経営判断」とされてしまうからだとしています。
向きが逆の事件は報じられています。2026年5月には、売り手の元社長が、売上の無い事業を「年間売上8億円」と偽って自社株をファンドに買わせたとして、詐欺の疑いで逮捕されています(弁護士JPニュース)。売り手が嘘をついた場合は、偽った資料という形で証拠が残ります。買い手が後から約束を破った場合は、契約の時点で守る気がなかったことを示す必要があり、そこが難しいのだと考えられます。報道で見つからないことは、例が無いことの証明ではありませんが、少なくとも表に出た例は見当たりませんでした。
日本財務戦略センターとしては、民事の約束違反にとどまるものと、刑事の責任が及ぶものとの境目を含めて、取引の後に約束が守られることをどう担保するかを、制度として考える必要があると考えます。その中には、一定の場合に刑事責任を含む実効的な制裁を検討することも入ってよいと考えます。
会社を売る前に、自分を守るためにできること
相手が悪い買い手かどうかは、その時点では見抜けません。グループの中のお金の動きは、外からは見えません。一度出ていったお金は、混ざって追えなくなります。だから、相手の善意だけを前提にせず、お金が出ていく前の、決済の時点で縛っておくことが大切です。それでも防げないことはあります。
| 段階 | 確かめること |
|---|
| 仲介会社・FAと契約する前 | 買い手をどう調べるかの説明を受ける(中小M&Aガイドライン第3版で、仲介会社・FAに求められています)。仲介会社・FAが責任を負う範囲(故意・重過失の場合に限る、受け取る報酬額を上限とする、などの条項)を確かめる。業界の情報共有の仕組みに参加しているか。報酬は料率ではなく「この価格なら、いくら払うのか」を計算例で書面にもらう |
| 買い手の候補が出たとき | 買い手とその親会社の登記簿(設立日・役員)、決算公告、過去の報道を自分でも見る。代金を何で払うのか(自己資金・借入・グループの資金)を聞く。可能なら、買い手の事業所や、過去に買われた会社の元経営者に話を聞く |
| 契約の条件を決めるとき | 保証の解除を、決済と同時(クロージングの条件)にする。決済の後に外す場合は、期限を置き、期限までに外れなければ売り手が契約を解除できる、または補償を受けられる条項を入れる(中小M&Aガイドライン第3版も「契約解除条項や補償条項等」を例に挙げています)。期限の目安として、業界団体の特定事業者リストは、M&Aの実行日から60営業日を過ぎても保証が解除されないこと、10営業日を過ぎても買い手が金融機関に解除の相談をしないことなどを、報告の対象にしています(M&A支援機関協会「特定事業者の情報共有に関する規約」)。仲介会社がこのリストに参加していなくても、期限は当事者どうしの取り決めとして契約に書けます。期限までのあいだは、親会社への送金や貸付を縛っておく(解除したときに、空になった会社が戻ってこないように)。代金は、決済の日に受け取る分で納得できる額にし、後払いや退職慰労金に頼りすぎない。代金と、会社に残っている現預金を比べる |
| 最終契約の前 | 仲介会社・FAから、買い手を調べた結果を聞く。仲介会社が途中で降りたら、手数料が浮いたと考えず、降りた理由を、担当者の口頭ではなく会社名義の書面で聞く |
| クロージングの後 | 保証が外れたことを、自分で金融機関に確かめる。取締役として残るなら、決めた範囲を超える送金の指示は、書面で理由を示して断り、記録を残す |
買い手の見極め方は、悪質な買い手の交渉手口と見極め方と、LBOで「買えない買い手」に無理をさせる構造の記事でも扱っています。
買い手の側では、契約とデューデリジェンスに加えて、買った後に事業を回せるか(人が辞めないか、取引先が離れないか、許認可を引き継げるか、経営する人がいるか)を見ておくことが欠かせません。売り手の側にも、できることがあります。一つは、知っていることを開示しておくことです。判決では、売り手が知っていて隠していたと認められると、買い手が調べ損ねていても、売り手の責任になりました。もう一つは、表明保証の範囲・期間・責任の上限を決めておくことです。中小M&Aガイドライン第3版も、期間や責任上限が決まっていないと「譲り渡し側が過大な表明保証責任を負担することとなり、当事者間で争いが生じるリスクがある」として、仲介会社・FAに説明を求めています(97ページ)。人が辞めると会社の価値が消えることもあるので、売り手が残る期間や引継ぎの段取りも、先に決めておくことが大切です。
仲介会社・FAには、両方を見極めたうえで、何を調べ、何を調べていないかを書面で示すことが求められます。責任を負う範囲を契約で示しておくこと、途中で案件から降りるときにはその理由を依頼者に分かる形で伝えることも、依頼者を守ることにつながると考えます。金融機関には、保証を外すかどうか、何があれば外せるかを、譲渡の前に示すことが求められています。
買い手を調べることは大切ですが、それだけでは足りません。ここまで見てきたように、問題が起きる場所は、買い手の素性だけでなく、保証、契約、決済の後のお金の動き、事業を続ける体制にもあります。M&Aでは、取引の後で当事者の利害が変わることがあります。欲は前提にして、欲の向きを契約でそろえる。それが、この調べものから言えることです。
もちろん、おひとりで考える必要はありません。「自分の場合は大丈夫だろうか」と心配になったときは、日本財務戦略センターにご相談ください。
ほかの相談先には、M&A支援機関登録制度の情報提供受付窓口(匿名でも可。紛争の解決や助言はしない窓口です)、M&A支援機関協会の苦情相談窓口、日本弁護士連合会の「ひまわりほっとダイヤル」、各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターがあります。
この記事の調べ方
調べたのは、国の公表(処分や注意)、報道、本、裁判所が公開している裁判例、統計の5つです。トラブルが全国で何件起きているか、何割の取引で起きているかを推計したものではありません。そうした件数はどこにも公表されていないためです。資料ごとに集め方も対象も違うので、件数を資料をまたいで足し合わせることはしていません。
裁判例は、裁判所の裁判例検索で「表明保証」「株式譲渡契約」「企業買収」「デューディリジェンス」「事業譲渡」「M&A」「株式売買契約」「仲介契約」「仲介報酬」の語で取得した判決を全文で読み、会社や事業の売買に関係する110件を選びました(税務の判決は除いています)。裁判所は「本裁判例情報には、すべての判決等が掲載されているわけではありません」と断っています。和解で終わったものや訴えずに終わったものは出てこないので、判決の件数でトラブルの起きやすさを比べることはできません。
本は、事例を分類するのに必要な範囲で記述を紹介しています。詳しい経緯や取材の内容は、ぜひ各書をご覧ください(『社喰い』、『ルポ M&A仲介の罠』)。同じ件について判決や公表資料、実名の報道があるものは、そちらを主な出典にしています。
会社の名前は、国・裁判所・会社自身の発表、または実名の報道があるものに限って出し、原典にリンクしています。本にしか出てこない会社は「本書によれば」と書いています。本や報道で名前が伏せられている会社を、別の資料から特定することはしていません。個別の会社の信用や違法性を評価する記事ではありません。調査基準日は2026年10月3日です。
日本財務戦略センターも仲介とFA(売り手か買い手の一方だけにつく助言者)を行い、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録し、一般社団法人M&A支援機関協会の会員です。この問題の当事者になり得る側から、公開資料を調べたことになります。
よくある質問
Q. M&Aのトラブルは、売り手だけに起きるのですか。
いいえ。公開裁判例のうちM&Aに関係する110件では、買い手が巻き込まれた判決が43件、売り手が28件、株主・債権者・従業員などが当事者になったものが37件でした(ほかに、自分の側の役員の判断が問われた判決が2件)。仲介会社が当事者になる争いや、国の処分もあります。
Q. 会社を売れば、経営者保証は外れますか。
自動では外れません。保証は金融機関との契約なので、買い手が金融機関と話をつけて保証人を差し替えるか、借り換えや返済をする必要があります。保証の解除を、決済と同時に行う条件として契約に書いておくことが大切です。
Q. 買い手が気をつけることは何ですか。
売り手の説明が事実と違っていた場合の取り決め(表明保証)と、買収前の調査に加えて、買った後に事業を回せるかを見ておくことです。判決では、調べて知っていたことは後から取り返せないとされた例や、薬剤師が全員辞めて閉店した例がありました。
Q. 仲介会社がトラブルの当事者になることはありますか。
あります。国が登録を取り消した例が1件、注意を出した例が22件あり、買い手や売り手から仲介会社が訴えられている例もあります。ただし、裁判所が公開している判決には、仲介会社が当事者になった会社売買の判決はありませんでした(判例誌が紹介した未公開の判決が1件あります)。
Q. 金融機関に紹介された仲介会社や買い手なら安心ですか。
紹介は、案件を確かめることを引き受けたという意味ではありません。メインバンクの紹介から始まった案件で、保証が外れなかった例もあります。
Q. 親族に事業を継がせる場合も、トラブルは起きますか。
起きます。裁判例では、名義株(実際の出資者と株主名簿の名前が違う株)と遺留分をめぐる争いが目立ちます。家庭裁判所に新しく申し立てられた遺産分割の調停は、2015年の12,980件から2025年には17,297件に増えています(司法統計。株式をめぐるものが何件かは、統計からは分かりません)。親族に継ぐ場合を含めた選択肢の比べ方は後継者問題の解決策、自社株の引き継ぎ方は会社の引き継ぎ方の記事にまとめています。
Q. 相談先はどこですか。
M&A支援機関登録制度の情報提供受付窓口(匿名可)、M&A支援機関協会の苦情相談窓口、日本弁護士連合会のひまわりほっとダイヤル、各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターがあります。
APPENDIX A 報道されたM&Aのトラブル事例(18件)
見出しは、各報道の見出しをそのまま載せています(2026年10月3日に各記事のページで確認)。内容は各報道によるもので、日本財務戦略センターが事実を確かめたものではありません。
同じ買い手が複数の会社を買った件は、売り手ごとに報じられたものを1件ずつとし、総括の記事は件数に入れていません。そのため、上の表は19行で、個別の事例は18件です。
関連する報道:東京商工リサーチ 2025-07-11「M&A総研の関わりに注目集まる資金流出トラブル ~ アドバイザリー契約と直前の解約 ~」/東京商工リサーチ 2026-02-23「マイスHDがM&A総研側を提訴~M&A総研側は「全面的に争っていく」と反論~」
APPENDIX B 本に書かれた事件の内訳
| 書名 | 事件 | 悪質な買い手 | 仲介・FAの問題 | 経営者保証 | 報道との重なり |
|---|
| 藤田知也『ルポ M&A仲介の罠』朝日新聞出版、2025年7月 | 27 | 26 | 14 | 10 | 5 |
| 片田江康男『社喰い』ダイヤモンド社、2026年7月 | 13 | 12 | 8 | 5 | ― |
1つの事件に複数の型が当てはまるので、型の件数を足しても事件の数にはなりません。2冊の間で同じ売り手を扱った事件はありませんでした。
APPENDIX C 事例の資料カード(判決110件と、判決以外の事例)
裁判所の裁判例検索で取得した判決のうち、会社や事業の売買に関係する110件です。置いた分類は、判決が相手について何を認定したかに従っています。件数は、裁判になって公開された判決の内訳で、トラブルの起きやすさを比べる数字ではありません。税務の判決は対象外です。
売り手が巻き込まれた判決(28件)
相手が知っていたと認定された(3件)
令和2年7月30日 東京地方裁判所 平成30(ワ)2216
- 事件名
- 損害賠償請求事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(法人)(パーソナルトレーニングジムの元経営会社)/被告=買い手(法人)・買い手の代表者・その他(不使用取消審判の請求人)
- 何が争われたか
- パーソナルトレーニングジムの運営会社が、事業と商標権を相手方会社に譲渡し、創業者が売上連動の顧問料を受ける契約を結びましたが、顧問料不払いで事業譲渡契約を解除しました。その後、第三者名義で商標の不使用取消審判が請求され、買い手は答弁せず登録が取り消されました。裁判所は、買い手・その代表者・請求人が共謀して売り手を害する目的で登録を消滅させたと認め、再審等に要した弁護士費用を賠償させました。
- 結論
- 一部認容(認容額:429万6000円)
- この分類に置いた理由
- 当裁判所の判断1:共謀して原告を害する目的で不使用取消審決を確定させたと認定しました。
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令和2年7月30日 東京地方裁判所 平成30(ワ)19783
- 事件名
- 損害賠償等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(法人・パーソナルトレーニングジムの創業会社)/被告=買い手(法人)・代表取締役・別の個人
- 何が争われたか
- 女性向けパーソナルトレーニングジムの創業会社が、ライセンス先の会社に商標権・ノウハウを含む事業一切を事業譲渡し、創業者が売上の一定割合を顧問料として受け取る契約を結びました。買い手が顧問料の支払を拒んだため売り手は事業譲渡契約を解除しましたが、買い手はその後もブランド名を使って約60店舗を運営し続けました。裁判所は解除で商標権は売り手に復帰すべきもので、解除後の使用は使用許諾料相当額の不当利得になるとし、売上の2%相当の返還と移転登録の抹消を命じました。買い手らが共謀して不使用取消審判で商標を消したとの請求は損害の立証なしとして棄却されました。
- 結論
- 一部認容(認容額:7442万6732円(ほか商標の移転登録抹消))
- この分類に置いた理由
- 判決は、買い手が別件判決により商標権が売り手に帰属すべきことを認識しながら使用を続けたとして、利得保持の法律上の原因を欠くことにつき悪意と認定しました(第3の3(3))。
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令和7年9月17日 福岡地方裁判所 第2刑事部 令和5(わ)839
- 事件名
- 偽造有印公文書行使、詐欺、業務上横領被告事件
- 当事者の立場
- 原告=検察/被告=仲介(個人・弁護士。非上場会社株式の売却交渉と代金受領を受任した売り手側代理人)
- 何が争われたか
- 弁護士が、依頼者(非上場会社の株主)から、その会社に対する貸金請求とともに、会社代表者への株式売却の交渉・契約締結と代金受領を受任し、代表者から振り込まれた株式売買代金約1942万円を着服しました。ほかに偽造した仮差押決定書を使った供託金名目の詐取、和解金の横領など計10件、被害者6名・総額7680万円の犯行がありました。被告人は株式売買契約の受任はなかったと争いましたが、裁判所は委任状や交渉経過の連絡から委託信任関係を認め、懲役8年としました。
- 結論
- 懲役8年
- この分類に置いた理由
- 罪となるべき事実第2で、株式売買代金を自己の用途に費消する目的で着服したと認定し、補足説明1で委託信任関係を認めました。
裁判所の裁判例検索で原文を見る 関連する解説:売却代金1,941万円が弁護士口座で消えた件と、売り手の自衛策
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知っていたとは認定されないが、確認・対応に問題があったとされた(4件)
令和3年10月29日 東京地方裁判所 令和1(ワ)15716等
- 事件名
- 競業行為差止等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(個人・営業譲受けを主張した元配偶者)/被告=売り手(個人・画廊経営者)・その他(売り手が代表の会社)
- 何が争われたか
- 貸画廊を個人で営む者の配偶者で経営を手伝っていた者が、代金800万円で画廊の営業と商号を譲り受けたとして、離婚後に元配偶者へ同じ地区での営業と商号使用の差止めを求めました。裁判所は、譲渡を記した手書き書面について真正な成立の推定は覆されるとして、営業譲渡契約の成立を認めませんでした。逆に、譲受けを主張した側がウェブサイトや顧客への通知で「営業譲渡を受けた」と告知したことは虚偽事実の告知(不正競争)に当たり、少なくとも過失があるとして、賠償と告知の差止めを命じました。双方の営業妨害・商標に関する請求も一部認められました。
- 結論
- 一部認容(本訴・反訴とも一部。営業譲渡契約は不成立)(認容額:譲受けを主張した側が売り手側へ128万3060円(虚偽告知)/売り手側が譲受けを主張した側へ40万6560円(営業妨害))
- この分類に置いた理由
- 譲受けを主張した側が営業譲渡の成立を信じたことには少なくとも過失があるとして、虚偽告知の不正競争責任を認めたためです(当裁判所の判断5(3))。
裁判所の裁判例検索で原文を見る
令和4年6月30日 知的財産高等裁判所 令和3(ネ)10096
- 事件名
- 競業行為差止等請求本訴・損害賠償請求反訴控訴事件、同附帯控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(個人・元妻)/被告=売り手(個人・元夫)/その他(元夫が代表の画廊会社)
- 何が争われたか
- 銀座の貸画廊を個人で営んでいた夫と、婚姻後に画廊業務を手伝っていた妻が不仲となり、妻は画廊の営業譲渡を受けたと主張して、夫の同種営業・名称使用の差止めや損害賠償を求め、画廊名を自ら商標登録して夫側の使用差止めも求めました。夫は営業譲渡はなく、妻が顧客に譲渡を受けたと告知したのは虚偽だとして反訴しました。裁判所は営業譲渡契約の成立を認めず、妻の商標権行使は信義則に反する権利の濫用とし、妻による譲渡の告知を虚偽事実の告知として損害賠償78万3060円と差止めを認めました。夫の営業妨害についても妻に一部の損害賠償が認められています。
- 結論
- 一部認容(本訴は営業妨害の損害賠償のみ、反訴は一部認容)(認容額:反訴:78万3060円(妻→夫)。本訴:原判決主文第1項の40万6560円(夫→妻))
- この分類に置いた理由
- 第4の4(争点5)で妻による営業譲渡の告知を虚偽事実の告知(不競法2条1項21号)として同法4条の損害賠償責任を認めました(故意・過失の別は原判決引用で、本判決に明示はありません)。第4の2で妻の商標出願を「正当なものとはいえない」と判断しました。
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平成25年10月17日 東京地方裁判所 平成23(ワ)22277
- 事件名
- 損害賠償請求事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(法人・事務機器販売会社)/被告=買い手(候補)(法人=仕入先メーカーの子会社)・同社代表取締役・取締役、仕入先メーカー
- 何が争われたか
- 事務機器の販売会社が、仕入先メーカーの子会社との間で事業譲渡を交渉しましたが、譲渡価格で折り合わないまま従業員の大半が退職し、修理などの顧客対応業務だけを先に子会社へ移管しました。その際、移籍した元従業員が顧客情報を無断で複製し、子会社がこれを使った上で事業譲渡の協議に応じなくなりました。裁判所は、子会社の代表者と取締役が不正取得を知って又は重大な過失により知らずに顧客情報を取得・使用したと認め、顧客情報の価値相当額の賠償を命じましたが、メーカー本体の共謀と詐欺は認めませんでした。
- 結論
- 一部認容(認容額:5296万6100円(連帯))
- この分類に置いた理由
- 裁判所は買い手候補の代表者らが不正取得を「知って、又は重大な過失により知らないで」顧客情報を取得・使用したと認定しました(第3の1(2)ウ)。
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平成27年2月19日 知的財産高等裁判所 平成25(ネ)10095
- 事件名
- 損害賠償請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(法人・事業譲渡を打診された販売会社)/被告=買い手(法人=メーカー子会社)・代表取締役・取締役
- 何が争われたか
- 事務機器の販売会社が、仕入先メーカーの子会社への事業譲渡を打診されて交渉したが、条件が折り合わず中断し、業績悪化と従業員の大量退職で顧客対応業務だけを子会社に移管しました。その際、元従業員が顧客情報約2万6千件を無断で持ち出して子会社に渡し、子会社は事業譲渡の協議に応じなくなりました。裁判所は顧客情報を営業秘密と認め、子会社の代表者らが不正開示を知って又は重大な過失で知らずに使用を続けたとして、使用料相当額の賠償を命じました(原審の約5300万円から減額)。
- 結論
- 一部認容(原判決変更・減額)(認容額:1110万4450円(連帯))
- この分類に置いた理由
- 判決は買い手側代表者らが不正開示を「知って、若しくは重大な過失により知らないで」使用したと択一的に認定し、共謀による不正取得は否定しました(第3の2・3(1)イ⑦)。
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相手の問題は認定されなかった(17件)
令和5年11月1日 知的財産高等裁判所 令和5(ネ)10044
- 事件名
- 商標権に基づく差止請求権不存在確認請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(法人の破産管財人=事業を第三者へ譲渡した音響機器メーカー)/被告=その他(商標権者=かつて当該事業を売り手に移した電機メーカー)
- 何が争われたか
- ホームAV事業を他社グループから統合していた音響機器メーカーが、その事業を第三者に譲渡したのに伴い、商標権者との使用許諾契約を合意解約しました。その後破産し、管財人が商標付きの在庫品の販売は商標権侵害にならないことの確認を求めました。知財高裁は、在庫品を販売できる期間を自ら合意しながら徒過した以上、販売は商標の使用に当たり許諾契約・解約合意にも違反し、商標権者の権利行使が信義則違反・権利濫用ともいえないとして控訴を棄却しました。
- 結論
- 控訴棄却(管財人敗訴)
- この分類に置いた理由
- 第3の2で、商標権者の権利行使は信義則違反・権利濫用に当たらないとしました。
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令和元年7月10日 知的財産高等裁判所 平成31(ネ)10020
- 事件名
- プログラム著作権確認並びに著作権侵害差止請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手/被告=その他
- 何が争われたか
- 資金難のソフトウェア会社が、事業継続支援の合意(全従業員を相手方指定会社へ移籍)とともにソフトウェアの著作権一切を11億5000万円で譲渡しました。売り手側が「非登録プログラムは譲渡対象外・錯誤無効・公序良俗違反」として、権利の転得者に著作権確認と販売差止めを求めましたが、全ての権利が譲渡対象だったと認定されました。(被告は買い手から権利を順次譲り受けた会社です)
- 結論
- 棄却(控訴棄却)
- この分類に置いた理由
- 欺罔・錯誤の主張を退け、全権利が譲渡対象と認定しました(86735と同一取引)。
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平成14年1月29日 福岡地方裁判所 小倉支部 平成10(ワ)885
- 事件名
- 株主総会決議不存在確認請求、社員総会決議不存在確認請求、株主権確認請求、社員持分権確認請求
- 当事者の立場
- 原告=売り手;買い手/被告=対象会社;売り手
- 何が争われたか
- 負債を抱えたホテル会社とパチンコ会社の旧オーナーが、融資仲介者側の会社に全株式・全持分を融資保全目的で買戻特約付きで譲渡し、融資仲介手数料・業務指導料を支払いました。旧オーナーが返済を止め無断で役員を変えたため、契約は独禁法違反で無効か、買戻権を失ったかが争われ、契約は有効で買戻権は失われたとして譲受会社を全株主・全社員と確認しました(仲介者らは別途、出資法違反で有罪判決を受けたと認定されています)。
- 結論
- 旧オーナー側の請求棄却・譲受会社側の請求認容
- この分類に置いた理由
- 担保目的の株式譲渡を有効と確認し、仲介者は別途出資法違反で有罪と認定しました。
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平成15年6月24日 東京地方裁判所 民事第48部 平成9(ワ)12659
- 事件名
- 損害賠償請求,損害賠償請求,供託金還付請求権確認請求
- 当事者の立場
- 原告=売り手(対象会社・破産後は管財人が承継)・代表者(オーナー社長)/被告=買い手(上場会社)・代表者・役員
- 何が争われたか
- ソフトウェア卸売で業界2位の非上場会社(売上約380億円)が、資金繰り難から同業3位の上場会社と合併前提の業務提携を結び20億円の融資を受けたが、合併準備の財務DDで約54億円の債務超過とされて合併は白紙となり、会社は破産しました。対象会社(管財人)とオーナー社長は、相手方が合併する気もないのに合併を装い、不当なDDで破産に追い込んで商権を奪ったとして、約42億円の損害賠償や担保に入れた売掛債権の譲渡の否認などを求めました。裁判所は、相手方には合併意思があり、DDも通常の方法で行われ、破綻の原因は膨大な債務超過と社長の態度の二転三転にあるとして請求を全て棄却し、逆に社長が「合併詐欺」と書いた文書を取引先に配ったことを信用毀損として220万円の賠償を命じました。
- 結論
- 棄却(甲事件)/反訴認容/乙事件一部認容(認容額:原告側0円(乙事件で原告代表者に220万円の支払を命令))
- この分類に置いた理由
- 判決は相手方に合併意思があり、財務DD・債権譲渡通知・第二会社方式のいずれにも不正な意図は認められないとして、詐欺・債務不履行・錯誤を否定しました。
裁判所の裁判例検索で原文を見る
平成16年6月30日 那覇地方裁判所 平成14(ワ)111
- 事件名
- 売買代金請求事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(旧空港ターミナル運営会社)/被告=買い手(新ターミナル運営会社)
- 何が争われたか
- 空港の旧ターミナルを運営していた会社が、営業を引き継ぐ第三セクターの新会社に対し、営業譲渡の一環として旧ターミナルビルを帳簿価額(約14億円)で買い取る売買予約が成立したとして代金を、予備的に買取りを早く拒絶しなかった契約締結上の過失による損害賠償を求めました。裁判所は、回答書は役員3名の私的な意見表明にすぎず売買予約は成立していないとし、新会社が拒絶を明言しなかったことも信義則違反にはならないとして請求を退けました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- 買い手が買取りを明確に拒絶しなかったことは信義則違反とはいえず、売り手が契約成立を信頼したとも認められないとして、契約締結上の過失を否定しました。
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平成18年3月30日 東京地方裁判所 平成16(ワ)25297
- 事件名
- 営業行為差止請求事件
- 当事者の立場
- 原告=対象会社(買収を打診された側・直収電話サービスの通信事業者、後に民事再生)/被告=買い手(法人・上場の通信持株会社)とその100%子会社(同時期に買収された通信事業者)
- 何が争われたか
- 資本提携先を探していた通信事業者が、アドバイザーの証券会社の打診をきっかけに大手持株会社と秘密保持契約を結んで買収交渉に入り、DDで事業内容・財務・技術情報を開示しましたが、大手は買収を見送り、別の通信会社を買収して同種の電話サービスを始めました。事業者は、DDで得た営業秘密が子会社に流用されたとして、開示差止めとサービス販売差止めを求めました。裁判所は、主張された秘密の多くは公知等で営業秘密に当たらず、子会社のサービスは機器構成等が異なり独自構築と推認でき、大手は希望買収価格で企業価値を評価できないと判断して買収を断念したもので、不正開示目的のDDとはいえないとして請求を棄却しました。
- 結論
- 請求棄却
- この分類に置いた理由
- 第4の7エで、買収断念は希望価格で評価できなかったためと推認し、DDを不正開示目的とは見られず不正開示も認められないと判断しました。
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平成20年5月20日 大阪地方裁判所 平成19(ワ)16411
- 当事者の立場
- 原告=売り手(法人・民事再生中の空調機器メーカー)/その他(工場不動産の所有会社・売り手の代表者)/被告=買い手(法人)
- 何が争われたか
- 民事再生手続中の空調機器メーカーが営業の全部を買い手に譲渡し、工場の土地建物も関連会社から売却しました。売り手側は、電力会社との共有特許の持分移転に必要な同意が得られず、代表者への実施許諾を約した覚書が履行されないから、各契約は条件不成就・錯誤で無効、または債務不履行で解除されたとして、特許権・不動産の返還と損害賠償を求めました。裁判所は、共有者の同意取得は本来売り手の義務で、同意が得られなかったのは売り手が共同研究契約上の事前承認手続を履践しなかったためであり、覚書の不履行を理由に無効・解除を主張するのは信義則に反するとして、請求を全部棄却しました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- 判断3(4)で、実施許諾の不履行は売り手が事前承認手続を履践しなかったことによる自ら招いた事態とし、買い手の責任を否定しました。
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平成23年11月8日 大阪地方裁判所 平成22(ワ)5063
- 事件名
- 特許権移転登録手続請求事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(法人・事実上倒産した食品機械会社)/被告=買い手(法人・事業の受け皿として設立された新会社)
- 何が争われたか
- 手形不渡りで事実上倒産した食品機械会社が、差押え回避も目的に、知人の休眠会社へ事業と特許を受ける権利を移し、その後、弁護士の提案で元役員を代表とする受け皿の新会社が事業を継続し、権利も新会社に移されました。新会社と対立した元代表者が、各譲渡は通謀虚偽表示で無効だとして特許権の移転登録を求めました。裁判所は、譲渡は第三者で事業を継続するための真意に基づく実態を伴うものとして、請求を棄却しました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- 第4の2で、権利の移転は売り手代表者の真意に基づく実態を伴うものと認め、受け皿会社の違法を否定しました。
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平成23年6月30日 知的財産高等裁判所 平成23(ネ)10019
- 事件名
- 損害賠償請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(法人・LPガス小売業者)/被告=取引先(仕入先・配送委託先で事業譲受けの交渉相手)
- 何が争われたか
- LPガス小売業者が、長年配送を委託していた仕入先に顧客約4000軒を1軒15万円で買い取るよう持ち掛けましたが条件が折り合わず、競合する別の業者に顧客2000軒の販売権を4億円で譲渡しました。取引終了の覚書の直後から旧仕入先が配送先の顧客に乗り換えの営業をかけ約670軒を獲得したため、小売業者が1軒20万円の割合で損害賠償を求めました。裁判所は、顧客名簿は秘密として管理されておらず、取引は覚書で終了し競業避止の合意もなく、勧誘も自由競争の範囲を逸脱しないとして請求を退けました。
- 結論
- 控訴棄却
- この分類に置いた理由
- 営業秘密性・契約上と信義則上の競業避止義務・違法な勧誘をいずれも否定したためです(第4の1〜3)。
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平成24年12月12日 知的財産高等裁判所 平成24(ネ)10060
- 事件名
- 損害賠償,損害賠償等請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=対象会社(出資を受ける側の衛星通信サービス会社)/被告=買い手(法人・上場の衛星通信大手)
- 何が争われたか
- 衛星通信サービスの中小企業が、大手衛星通信会社から34%の出資(第三者割当)と業務提携を前提に基本合意を結び、法務・財務DDに協力したが、大手は並行して海外事業者と合弁会社を設立し、出資を見送りました。中小企業はDDで営業秘密を詐取された、秘密保持契約違反、資本提携契約は成立していた等として5.6億円を求めました。裁判所は、DD時点で大手は提携を検討しており詐取ではない、DD実施で解除条件付き資本提携契約が成立する経験則はない、秘密保持契約は類似の検討を第三者と行うことを認めていたなどとして控訴を棄却しました。
- 結論
- 控訴棄却(請求棄却維持)
- この分類に置いた理由
- 判決は、DDを詐取とは認めず、秘密保持義務違反・契約成立・妨害合意・期待権侵害のいずれも否定しました(第3の2(1)〜(7))。
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平成24年4月11日 知的財産高等裁判所 平成24(ネ)10009
- 事件名
- 特許権移転登録手続請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(法人・事実上倒産した食品機械会社)/被告=買い手(法人・事業の受け皿として設立された新会社)
- 何が争われたか
- 81757の控訴審です。倒産した食品機械会社から休眠会社へ、さらに受け皿の新会社へと特許を受ける権利が移ったことについて、元の会社が通謀虚偽表示・錯誤を主張して特許権の移転登録を求めました。知財高裁は、最初の譲渡は事業を第三者で継続させることが主たる目的で、差押え回避は手段・副次的な目的にすぎず、対価の合意が不明確でも虚偽表示とはいえないとして、控訴を棄却しました。
- 結論
- 控訴棄却
- この分類に置いた理由
- 第3の2(4)で、最初の譲渡は真意に基づく有効なものとし、受け皿会社への請求を否定しました。
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平成24年9月28日 東京地方裁判所 平成21(ワ)43006
- 事件名
- 商標権侵害差止等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(共同経営から離脱し持株を譲渡した側の資産管理会社)/被告=対象会社(買い手側の共同経営者が代表)
- 何が争われたか
- アパレル会社を折半出資で共同経営していた2人のうち一方が、業績悪化の中で持株を相手方に750万円で譲渡して経営から退きました。退いた側の個人会社が、会社に対し、解消後に売った商品の商標ロイヤルティと、自社名義に無断で移された商標の登録抹消を求めました。裁判所は、無償で使ってよいとの合意は認められないとしてロイヤルティ約270万円を認めたが、商標は解消時の書類に押印して無償譲渡したものと認め、抹消請求と弁護士費用は退けました。
- 結論
- 一部認容(認容額:269万6816円)
- この分類に置いた理由
- 商標の無償譲渡は売り手自身が書類に押印して合意したと認定され、相手方の無断押印などの違法は認められませんでした(ロイヤルティは契約上の支払義務として認めただけで、故意・過失の認定はありません)。
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平成25年9月12日 大阪地方裁判所 平成24(ワ)12967
- 事件名
- 商標権移転登録手続等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=債権者(取引先=ソフトウェア会社)/被告=売り手(法人・事業譲渡を交渉していたOCR関連サービス会社)/株主(同社代表者)
- 何が争われたか
- 資金繰りに窮したデータ化サービス会社に約1億6000万円を融通していた取引先が、知財の譲渡担保と代表者保有株式の停止条件付代物弁済を受けていました。会社は担保の存在を伏せたまま基幹事業を第三者へ約10億〜20億円で譲渡する交渉を進めましたが、取引先が交渉相手に担保権の存在等を通知し、交渉は撤回されました。会社側は事業譲渡を妨害されたとして5億円の損害賠償請求権で相殺を主張しましたが、裁判所は通知は債権者の行為として社会通念上相当な範囲を逸脱しないとして退け、貸金等の支払・商標権の移転登録・株券引渡しを全部認容しました。
- 結論
- 認容(被告の相殺の抗弁は排斥)(認容額:貸金3000万円+利息・代金等 計約1億6355万円(元利・遅延損害金を含む)、商標権移転登録、株券引渡し)
- この分類に置いた理由
- 第3の3で、債権者の通知は正当な権利保全の範囲内で不法行為に当たらないとしました(売り手が担保の存在を交渉相手に伏せていた事実も認定しています)。
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平成27年4月28日 東京地方裁判所 平成26(行ウ)113
- 事件名
- 加入員減少に係る一括徴収金納入告知処分取消請求事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(法人・事業の一部を譲渡したカメラ関連会社)/被告=その他(厚生年金基金)
- 何が争われたか
- 光学カメラ関連の会社が写真機材等の輸入販売事業を基金の設立事業所でない会社に譲渡し、従業員5名が転籍して基金の加入員が減ったところ、代行割れ状態の厚生年金基金から規約に基づく一括徴収金の納入告知を受け、その取消しを求めました。裁判所は、根拠規定は憲法22条1項に反せず、事業縮小に伴う退職による加入員減少は規約の要件を満たし、事業主の主観的意図も不要などとして、請求を棄却しました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- 第3の2・3で、一括徴収関係条項は有効で適用要件も満たすとして処分の違法を否定しました。
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平成27年9月17日 東京高等裁判所 平成27(行コ)187
- 事件名
- 加入員減少に係る一括徴収金納入告知処分取消請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(法人・光学機器メーカー)/被告=その他(厚生年金基金)
- 何が争われたか
- 光学機器メーカーが事業の一部を基金に加入していない会社へ譲渡し、従業員がその会社へ移ったため、所属する厚生年金基金から加入員減少を理由とする一括徴収金の納入告知を受けました。会社は、基金が既に解散方針を決めており継続基準方式の計算は不公平で、退職者は自由意思で再就職しただけだと主張しましたが、高裁は、規約上は事業譲渡で加入員が減れば足りるとして控訴を棄却しました。
- 結論
- 控訴棄却
- この分類に置いた理由
- 基金の処分は規約どおりで違憲・違法はないとされ、売り手が一括徴収金を負担したためです(第3の1(2)ア〜ウ)。
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平成29年3月15日 東京地方裁判所 平成27(ワ)14906
- 事件名
- 損害賠償等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(オーナー個人)・売り手側の承継会社/被告=買い手(法人)・対象会社
- 何が争われたか
- 有料老人ホーム7施設を運営する会社の全株式(関連会社株式と医療法人の承継を含む)をオーナーが買い手に譲渡する際、買い手の資金不足で1施設を対象から外して代金を4億5000万円から3億8000万円に減額し、その施設は行政手続後にオーナー指定の新会社へ事業譲渡しました。オーナー側は、分離完了までの施設の利益・譲渡前分の介護保険料収入・過去の利益など約1億円、入居者の保証金等約1600万円の支払と、紹介誌への虚偽説明による営業妨害の損害1680万円を求めました。裁判所は基本合意書と株式譲渡契約に定めた以外の清算の合意は認められず、オーナーは事情を知り得たのに条件を提示しなかったとし、虚偽説明も認めず、請求をすべて棄却しました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- 黙示の合意・不当利得・虚偽説明のいずれも認めず、買い手と対象会社の違法や過失を認定しませんでした(売り手の主張はむしろ買い手に不測の損害を与えると判断しています)。
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平成29年4月27日 知的財産高等裁判所 平成28(ネ)10107
- 事件名
- 不正競争行為差止,プログラム著作権確認各請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手/被告=その他
- 何が争われたか
- 88823と同じソフトウェア譲渡(事業継続支援の合意つき・11億5000万円)について、売り手側が営業秘密部分は譲渡対象外、対価が廉価で暴利行為、支援継続を装った欺罔で公序良俗違反と主張し、権利の転得者に販売差止め等を求めました。裁判所は、全事業を全従業員ごと指定会社に移す取引で、全ての権利が譲渡対象と認定しました。
- 結論
- 棄却(控訴棄却)
- この分類に置いた理由
- 暴利・欺罔の主張を退けました(88823と同一取引)。
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相手が知っていたか・問題があったかの認定がない(4件)
令和4年3月31日 大阪地方裁判所 令和3(ワ)8236
- 事件名
- 商標使用料請求事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(法人)(事業譲渡後も商標を保有して使用を許諾した会社)/被告=その他(事業の譲受会社の破産管財人)
- 何が争われたか
- スニーカー事業を新設会社に譲渡した会社が、商標権は手元に残して譲受会社に使用を許諾し、年3000万〜4000万円の使用料を受けていました。譲受会社が再生手続を経て破産し、破産管財人が契約を解除したため、売り手は未払使用料3300万円を財団債権として請求しました。裁判所は解除で契約が遡って消滅したとして請求を棄却しました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- 第4の1:破産法53条の解除で契約が消滅したとして、相手方の主観は判断していません。
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令和7年2月20日 東京地方裁判所 令和5(ワ)13626
- 事件名
- 診療代等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(法人=院長が急逝した歯科医療法人)/被告=その他(勤務歯科医師=承継交渉の相手方)
- 何が争われたか
- 歯科医院を運営する医療法人の理事長兼院長が急逝し、勤務医が自分を開設者として届け出て診療を再開、その後覚書で一時的に医院の経営と歯科衛生士の雇用を引き継ぎました。法人側は継続するなら事業譲渡が前提として条件を示したが折り合わず、勤務医は退去して近くで開業し、カルテや売上記録が見当たらなくなりました。裁判所は、勤務医が受け取った診療代金の一部を法人に引き渡していないとして約259万円などの支払を命じましたが、カルテ持出しによる2250万円の請求は営業秘密の立証がないとして退けました。
- 結論
- 一部認容(認容額:258万7000円+572万0246円+16万9746円)
- この分類に置いた理由
- 判決は準委任契約上の受取物引渡義務の不履行を推認しただけで、業務上横領や不法行為(故意・過失)は認めていません(第4の3(2)、7)。
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平成16年7月8日 最高裁判所 平成15(受)1259
- 事件名
- 株主総会決議不存在確認,株主権確認請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人2社・元財務経理担当で資産管理を受任していた個人が全株を保有)/第2事件では売り手が原告/被告=売り手(個人・自動車メーカー創業者の妻と子)/対象会社(非上場・自動二輪部品等)
- 何が争われたか
- 創業家の妻と子が資産管理を全面的に任せていた元経理担当者の提案で、非上場会社の全株式を「関係する会社」に合計2億円で売りましたが、買主は実はその受任者が全株を持つ会社で、対象会社は26億円余の預金と約10億円の純資産を持っていました。原審は錯誤・詐欺を否定しましたが、最高裁は、純資産と比べて極めて安価で、売主側に価値と買主の支配関係の錯誤がうかがわれ、受任者が労せず多額の利益を得たことなどから、欺罔・錯誤について十分審理せず否定したのは審理不尽として、原判決を破棄し差し戻しました。
- 結論
- 破棄差戻し
- この分類に置いた理由
- 理由4は欺罔・錯誤を直ちに否定できないとして審理不尽で差し戻しただけで、詐欺・錯誤の有無は判断していません。
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平成22年1月26日 知的財産高等裁判所 平成20(行ケ)10091
- 事件名
- 審決取消請求事件
- 当事者の立場
- 原告=その他(商標権者=事業譲受けを主張する側)/被告=売り手(法人)(亡くなったデザイナーのブランド会社)
- 何が争われたか
- 亡くなった海外のアクセサリーデザイナーのブランドについて、日本で類似商標を登録した会社が、デザイナー生前の事業譲渡契約により事業と権利が関係会社に移ったと主張し、商標無効審決の取消しを求めました。裁判所は遺言書・事業譲渡契約書・領収書の写しはいずれも信用できず、事業譲渡の事実は認められないとして請求を棄却しました。
- 結論
- 棄却(無効審決維持)
- この分類に置いた理由
- 当裁判所の判断:契約書写し等は信用できないとしましたが、相手方の主観は判断していません。
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買い手が巻き込まれた判決(43件)
相手が知っていたと認定された(15件)
令和4年5月27日 東京地方裁判所 令和2(ワ)14627
- 事件名
- 損害賠償請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手側(対象会社を吸収合併した会社)/被告=売り手(元オーナー・元代表取締役)
- 何が争われたか
- 秋田のラスク製造販売会社のオーナー社長が、M&A仲介会社の仲介で全株式を同業の会社に譲渡し代表として残ったが、経営方針の対立で退任する際、元配偶者と共謀し、虚偽の理由で取り寄せた会社の印鑑証明書を使って会社の商標権を元配偶者名義に移しました。対象会社を吸収合併した買い手側が損害賠償を求め、裁判所は共謀を認定して百貨店カタログ掲載拒否による逸失利益や抹消訴訟費用など963万円余の賠償を命じました。
- 結論
- 一部認容(認容額:963万6770円)
- この分類に置いた理由
- 元オーナーが虚偽の説明で印鑑証明書を入手し、元配偶者と共謀して商標権を移転したと認定されました。
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令和6年1月18日 東京地方裁判所 令和5(ワ)70280
- 事件名
- 商標権移転登録手続等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(営業資産の譲受人・海外法人)/被告=売り手(法人)・代表者
- 何が争われたか
- 遮熱塗料を製造する中小企業が、投資会社をスポンサーとするM&Aの一環で、特許権・商標権を含む営業資産一切を海外の販売会社へ譲渡する契約を結びました。ところが売り手側は「稟議用の資料にすぎず契約は成立していない」と主張し、移転登録をしないまま第三者へ商標の専用使用権を設定し、買い手の海外ライセンシーに契約を打ち切るよう働きかけました。買い手が移転登録と損害賠償を求め、裁判所は契約の成立を認め、売り手会社の行為を故意の不法行為、代表者を悪意の任務懈怠(会社法429条)として請求を全額認めました。
- 結論
- 認容(認容額:2173万3929円(ほか商標権・特許権持分の移転登録))
- この分類に置いた理由
- 判決は売り手会社の専用使用権設定とライセンス終了の働きかけを「故意」による不法行為とし、代表者には職務を行うについて「悪意」があったと認定しました。
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令和元年5月16日 東京高等裁判所 平成29(ネ)2968
- 事件名
- 各取締役に対する損害賠償請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(上場会社)・株主/被告=買い手の取締役・監査役(元経営陣)
- 何が争われたか
- 東証一部上場の精密機器メーカーが、巨額の含み損を簿外ファンドに移して隠し、その穴埋めのために国内のベンチャー3社を実際の価値をはるかに超える価格で買い、英国の医療機器会社の買収ではFAに異常に高額な報酬(優先株の買取り等)を払って資金をファンドに還流させました。会社と株主が旧経営陣に、ファンドの金利・手数料、違法配当、罰金・課徴金、疑惑を追及した社長の解職による信用毀損などの賠償を求めました。控訴審は、損失隠しを担った元財務担当役員らに違法配当相当額と罰金・課徴金の支払を命じる一方、金利・手数料は損害の発生が認められないとし、事情を知らずに解職に賛成した他の取締役の責任も否定しました。
- 結論
- 一部認容(控訴審で一部変更・一部取消し)(認容額:586億7296万8936円(違法配当相当額・元財務担当役員2名に連帯)+6億1986万円(罰金・課徴金の拡張請求分)。原審認容の信用毀損1000万円も維持)
- この分類に置いた理由
- 損失隠しを担った元役員らは、国内3社の株式取得と優先株の買取りが損失隠しの解消のためと知悉し、発覚を防ぐ目的で社長の解職を主導したと認定されました。
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平成17年11月15日 東京高等裁判所 平成14(あ)1396
- 事件名
- 被告人Aに対する公正証書原本不実記載,同行使,有印私文書偽造,同行使,被告人Bに対する公正証書原本不実記載,同行使各被告事件
- 当事者の立場
- 原告=その他(検察)/被告=売り手(株式を譲渡担保に供した元一人株主)・協力者
- 何が争われたか
- 資金繰りに窮したプロパンガス等の販売会社の代表者が、関連会社に燃料部門を6億3000万円で営業譲渡し、その関連会社の全株式を卸元会社へ1000万円で譲渡する形で融資を受けました。返済が滞った後、元代表者らが卸元に無断で関連会社の役員を入れ替える議事録を作って変更登記をしました。裁判所は、株式の譲渡は貸金の譲渡担保で株主共益権は卸元に帰属する合意があったとし、被告人らはそれを認識していたとして公正証書原本不実記載罪の成立を認めました。
- 結論
- 上告棄却(有罪維持)
- この分類に置いた理由
- 判決は、元一人株主に株主共益権の行使権限がなく、被告人両名もそれを認識していたと認定しました。
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平成18年1月17日 東京地方裁判所 民事第37部 平成16(ワ)8241
- 事件名
- 損害賠償等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手/被告=売り手
- 何が争われたか
- 消費者金融会社の全株式を簿価純資産を基準に買い取った原告が、対象会社が決算対策として和解債権の返済金を元本から利息に充当し直し、貸倒引当金も積まずに利益を水増ししていたことを買収直後に発見しました。裁判所は財務諸表の正確性・情報開示などの表明保証違反を認め、売り手がこの処理を故意に秘匿していたとして、デューディリジェンスで発見できなかった買い手に重大な過失は無いと判断しました。水増し額2億7538万円余にシステム修正費・弁護士費用等を加えた全額を認めました。
- 結論
- 一部認容(請求元本は全額認容・遅延損害金の起算日のみ後ろにずれました)(認容額:3億0529万3523円(連帯))
- この分類に置いた理由
- 売り手が利益水増しを故意に秘匿したと認定しました。
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平成22年7月2日 東京地方裁判所 平成21(ワ)5988
- 事件名
- 求償金等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(個人)・買い手の受け皿会社/被告=売り手(法人)・代表者・取締役
- 何が争われたか
- 健康飲料1品目を製造販売する負債過多の老舗会社が、唯一の事業を個人に3億円で譲渡し、会社の負債は売り手が処理すると約したが、会員への預託金返還や製品贈呈を怠り、譲受け会社が肩代わりを余儀なくされました。売り手は「株式譲渡にすぎない」と争い、顧客に「会社を乗っ取られた」などと虚偽の文書を配りました。裁判所は事業譲渡契約と認め、肩代わり分の償還、商標の移転登録、営業誹謗の差止めと損害賠償を命じ、代表者にも事情を知りながら任務を怠ったとして会社法429条の責任を認めました(他の取締役2名と謝罪広告・製造差止めは棄却)。
- 結論
- 一部認容(認容額:3805万8029円(売り手会社・代表者連帯)+110万円・275万円(営業誹謗))
- この分類に置いた理由
- 売り手代表者が負債処理義務の事情を知悉しながら任務を怠ったと認定し、営業誹謗も虚偽の事実の告知・流布と認定しました。
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平成23年6月23日 知的財産高等裁判所 平成22(ネ)10060等
- 事件名
- 求償金等請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(個人)・買い手から事業を承継した会社/被告=売り手(事業譲渡会社)・売り手代表者
- 何が争われたか
- 経営に行き詰まった健康飲料メーカー(会員から集めた預託金返還債務約7億5000万円・負債総額約25億円)が、唯一の事業を工場・商標・在庫ごと3億円で譲渡し、代金で自社の債務を処理し買い手には承継させない約束でした。売り手代表者は代金を自宅建築費に回して預託金を返さず、買い手側の新会社が会員への無料贈呈・代物弁済を肩代わりし、その求償と、売り手の競業・営業誹謗の差止め等を求めました。裁判所は覚書を事業譲渡契約と認め、債務は承継していないとして求償(残代金と相殺後)と代表者の第三者責任を認め、黙示の競業避止特約による製造販売差止めも認めました。
- 結論
- 控訴棄却(附帯控訴により製造販売差止めを追加認容・商標権移転登録、不動産の所有権移転登記も認容)(認容額:3495万8029円(会社・代表者連帯。求償残額)+営業誹謗の損害 買い手個人110万円・買い手会社275万円(原判決引用))
- この分類に置いた理由
- 判決は、売り手代表者が事業譲渡前に預託金返還等を行うべき事情を「知悉しながら」任務を怠り、代金を自宅建築費に優先充当し、虚偽事実で買い手を誹謗したと認定しました(会社法429条責任・不正競争)。
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平成24年3月30日 東京地方裁判所 平成21(ワ)47445
- 事件名
- 専用実施権設定登録抹消登録等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=対象会社(買収後)/被告=その他(専用実施権者・通常実施権者)
- 何が争われたか
- ポイントシステムの特許を持つ小規模会社の株式90%を投資会社が買い取る際、売り手のオーナーは専用実施権契約が2か月前の予告で解約できると説明し保証書まで差し入れたが、買収後に解約を通知すると、実施権者が期間制限を削除する覚書を持ち出しました。裁判所は、この覚書は売り手オーナーが顧問契約への不安から実施権者と共謀して買収を妨げる目的で作成した通謀虚偽表示で無効と認め、実施権の登録抹消を命じました。
- 結論
- 認容
- この分類に置いた理由
- 売り手オーナーが実施権者と共謀し、買収を妨げる目的で内容虚偽の覚書を作成したと認定しました。
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平成26年7月17日 大阪地方裁判所 平成23(ワ)9238等
- 事件名
- 損害賠償請求事件
- 当事者の立場
- 原告=対象会社(甲事件)/買い手(上場人材会社)とその子会社(乙事件)/被告=買い手の子会社・元従業員ら(甲事件)/対象会社と売り手株主ら(乙事件)
- 何が争われたか
- 全国にパソコン教室を展開する非上場会社(売上約13億円)の創業家株主が、上場人材会社に全株式を2段階で6億3500万円で売る契約をしたが、1段階目の後に売り手側が2段階目を拒み合意解約となりました。解約時の合意で買い手側は教材を継続利用でき教育事業参入にも異議を述べないとされたが、対象会社は買い手の新設子会社の教材を著作権侵害、元従業員の転職を違法引抜きとして賠償を求め、取引先や監査法人・証券取引所に侵害を吹聴しました。裁判所は、解約は売り手側の一方的都合で、教材利用は合意に基づき適法、引抜きもないとして対象会社の請求を棄却し、逆に対象会社の告知を虚偽事実の流布として買い手側に計310万円の賠償を命じました。売り手株主への違約金1億円の請求は棄却されました。
- 結論
- 甲事件 棄却/乙事件 一部認容(認容額:310万円(買い手の子会社200万円+買い手110万円))
- この分類に置いた理由
- 対象会社は自ら教材利用を許諾しながら侵害を取引先等に吹聴し、その態様は敵意・害意を伴う執拗かつ悪質なものとして虚偽事実の告知(不正競争)と認定されました。
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平成28年11月11日 東京地方裁判所 平成27(ワ)2617
- 事件名
- 競争行為差止等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(個人)/被告=売り手(法人)・代表取締役
- 何が争われたか
- 婦人用中古衣類の買取・販売サイトを運営する会社が、ネット事業の売買仲介サイトに売却情報を載せ、個人の買い手に在庫・ドメイン・ノウハウ・顧客対応を含めて723万円で譲渡しました。売り手は契約直前に新サイトのドメインを取り、契約で設けさせた1か月の引継期間中に旧サイトの顧客約100名へ新サイト開設のメールを送りました。裁判所は契約を会社法上の事業譲渡と認め、売り手に不正の競争の目的があったとして同一事業の差止めを命じましたが、損害との因果関係は立証がないとして賠償請求と代表者個人への請求は棄却しました。
- 結論
- 一部認容(差止めのみ)
- この分類に置いた理由
- 判決は、売り手が譲渡後に同様のサイトを運営しないかのように装い、顧客を奪う目的で同一事業をしたとして「不正の競争の目的」を認定しました(第3の3(3))。
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平成28年12月7日 東京地方裁判所 平成27(ワ)7051
- 事件名
- 不正競争行為差止等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・洗剤販売会社)/被告=売り手(法人・洗剤メーカー)
- 何が争われたか
- 洗剤メーカーが看板商品のシリーズを含む営業全部を別会社に譲渡した後、6年ほどたって同じ商品名を含む表示で洗剤の販売を再開しました。売り手は、譲渡契約で引き継がれたはずの金融負債を買い手が払わなくなったとして譲渡契約の解除も主張しました。裁判所は、債務を除外する覚書により解除の前提を欠くとし、売り手の販売は譲渡の目的に反して買い手ののれんの利用を妨げるもので「不正の競争の目的」によると認め、会社法21条3項に基づく差止めと不正競争防止法に基づく損害賠償を命じました。
- 結論
- 一部認容(差止め・損害賠償)(認容額:803万4148円)
- この分類に置いた理由
- 裁判所は売り手が買い手の顧客を奪う活動を始めたと認定し、会社法21条3項の「不正の競争の目的」を認めました(第4の1(2))。
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平成29年4月27日 東京地方裁判所 平成24(ワ)174
- 事件名
- 取締役に対する損害賠償請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(上場会社)・株主(代表訴訟)/被告=買い手の元取締役・監査役(相続人含む)
- 何が争われたか
- 光学機器等を製造する上場会社が、簿外ファンドに移した金融資産の含み損を解消するため、国内の小規模3社の株式を実際の価値をはるかに超える価格で取得し、海外医療機器メーカー買収のFA報酬名目で巨額のワラント・優先株買取りを行いました。会社と株主が元役員らに損害賠償等を求めました。裁判所は、3社株式取得と優先株買取りは専ら損失分離状態の解消意図で行われたもので取締役の善管注意義務・忠実義務違反と認めたが、支出額を上回る預金・出資金の払戻しを受けているとして買収関連の損害は否定し、違法配当・自己株式取得、罰金・課徴金、疑惑を指摘した社長の解職による信用毀損の責任を認めました。
- 結論
- 一部認容(認容額:586億7596万8936円(分配可能額超過の配当・自己株式取得、会社法462条)+7億1986万円(罰金・課徴金)+1000万円(信用毀損))
- この分類に置いた理由
- 判決は、元社長・財務担当役員らが損失隠しの解消を目的と知りながら事業価値を過大評価して株式取得額をつり上げ、優先株買取りを了承・実行したと認定しました。
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平成29年6月15日 東京高等裁判所 平成28(ネ)2636
- 事件名
- 損害賠償請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・東証一部上場の光学機器メーカー)/被告=その他(経営コンサルタント=ファンド運用者・アドバイザー)
- 何が争われたか
- 上場会社が巨額の含み損を簿外ファンドで隠し、さらに新規事業のベンチャー3社の株式を実態とかけ離れた高値で取得してのれん計上することで損失を解消しようとした件で、ファンドの業務執行組合員・アドバイザーとして関与した元証券会社出身のコンサルタントらに損害賠償を求めました。裁判所は、コンサルタントらは損失隠しを認識して意思を通じて加功し、故意に不当な報酬を得ていたと認定しました。株式の高値取得による差額は資金が会社の支配下で循環しただけで損害に当たらず、罰金・課徴金の転嫁も信義則上許されないとして主位的請求は棄却し、支払った手数料・報酬相当(予備的請求)の一部10億円を認容しました。
- 結論
- 一部認容(主位的請求棄却・予備的請求認容)(認容額:10億円(連帯))
- この分類に置いた理由
- 第3(判断)の⑹⑺で、控訴人らが隠れ損失を認識したうえ意思を通じてスキームに加功し「故意に不当な利益を得ていた」と認定しました。
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平成29年6月15日 知的財産高等裁判所 平成28(ネ)10114等
- 事件名
- 競業行為差止等請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(個人)/被告=売り手(法人)
- 何が争われたか
- 86278の控訴審です。中古衣類の買取・販売サイトの事業を譲り受けた個人に対し、売り手会社が引継期間中に顧客へメールを送り、新サイトへ誘引して同一事業を続けました。売り手は譲渡対象はロリータ系だけでガーリー系は除外したと主張しましたが、裁判所は契約書・売上実績表・実際に送った在庫から両方が対象だったと認めました。差止めを維持したうえ、顧客の一部が失われたとして、買い手の経験不足など売上減少の他の要因を斟酌し逸失利益の約3割を認めました。
- 結論
- 一部認容(差止め維持+賠償を追加)(認容額:196万7400円)
- この分類に置いた理由
- 判決は、売り手が引継期間中に顧客を自社サイトへ誘引することを意図して休止期間を設けさせたと認定し、不正の競争の目的を認めました(第3の3(2))。
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平成30年3月5日 大阪地方裁判所 平成28(ワ)648
- 事件名
- 不正競争行為差止等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・医薬品配置販売会社)/被告=従業員(売り手の元従業員3名)/その他(元従業員が設立した競合会社)
- 何が争われたか
- 医薬品配置販売の会社が、100%子会社の解散に伴いその配置販売業を事業譲渡で引き継ぎましたが、子会社の元従業員らは引継先に移らず、退職直後に競合会社を設立・入社して旧顧客に営業しました。買い手は顧客情報の不正取得・使用(不正競争防止法)と、退職時の誓約書による競業避止義務違反を主張しました。裁判所は、誓約書は事業譲渡に伴い競業避止義務の相手方を買い手に承継させる趣旨と解し、元従業員3名の違反と、1名による顧客リストの持ち出し・使用、競合会社の重過失を認めて損害賠償を命じました。
- 結論
- 一部認容(認容額:318万6491円(元従業員1名と競合会社が連帯)、違約金174万円・46万円・52万円(元従業員各人))
- この分類に置いた理由
- 第3の3(争点3)で元従業員1名による顧客情報(ルート一覧)の持ち出し・不正使用を認定し、競合会社に重過失を認め、第3の6で誓約書に基づく競業避止義務違反を認定しました(他の元従業員2名の情報不正使用は否定しています)。
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知っていたとは認定されないが、確認・対応に問題があったとされた(2件)
令和5年2月3日 東京地方裁判所 令和2(ワ)13631
- 事件名
- 損害賠償請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・システム開発会社)/被告=売り手(個人・売り手会社の元代表者)/その他(元代表者が代表を務める競合会社)
- 何が争われたか
- 電子カルテ事業を始めるため、経営破綻した開発会社から医療システムの販売・開発事業を譲り受けた会社が、その事業をもとに自社の電子カルテを開発しました。譲渡会社の元代表者は譲渡後に買い手の契約社員となり、退職後は自分が代表を務める会社で、買い手の電子カルテとほぼ同一のシステムを買い手が商談していた診療所に販売しました。裁判所は、販売委託契約違反や誓約書・和解違反の主張は退けましたが、買い手が改良後のシステムの著作権を持ち、元代表者側は旧システムの再許諾も受けておらず複製権侵害に当たるとして、315万円の損害賠償を命じました。
- 結論
- 一部認容(認容額:315万円(連帯))
- この分類に置いた理由
- 第3の7で権原のない複製を不法行為と認定し、元代表者の供述は客観的事実に反するとしましたが、故意か過失かの別は明示していません(共同不法行為責任については第3の8)。
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令和6年12月20日 大阪高等裁判所 令和5(ネ)2014
- 事件名
- 商標移転登録抹消登録等請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人)(民事再生会社から事業を譲り受けた会社)/被告=その他(売り手の元代表者の孫・創業家の親族会社と親族)
- 何が争われたか
- 民事再生中の老舗菓子会社の事業を、スポンサーが設立した会社が6億7000万円で譲り受け、元代表者の商標権も1円で譲り受けました。創業家の商標共有化計画に沿って、買い手は商標を元代表者の孫に1円で譲渡し、代わりに専用使用権の設定を受ける契約をしましたが、孫は設定登録をせず創業家の親族会社らに持分を譲渡しました。裁判所は錯誤無効や登録抹消は認めず、専用使用権の設定は履行不能になったとして孫に100万円の損害賠償だけを命じました。
- 結論
- 一部認容(控訴審で変更)(認容額:100万円)
- この分類に置いた理由
- 第3の2・7:当初から履行しない意思は証拠上認められませんが、持分譲渡で債務を履行不能にした債務不履行を認定しています。
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相手の問題は認定されなかった(7件)
令和2年12月25日 札幌地方裁判所 平成29(ワ)1617
- 事件名
- 損失補償請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手/被告=売り手
- 何が争われたか
- 調剤薬局チェーンが在宅調剤専門の薬局1店舗を営む会社の全株式を買い取った後、薬歴簿の不備による加算料の不正請求、医師の同意のない処方変更、患者負担金の減免、無資格者の調剤があったとして、売り手(法人株主とその代表者)に表明保証違反の損失補償(のれん相当額など)を求めました。裁判所は、不正請求は誤記程度で指定取消しに当たらず、負担金減免は買い手がデューデリジェンスで知っていた、残る2点は事実が認められないとして違反を否定しました。さらに薬局の閉鎖は、譲渡前後に薬剤師全員が退職して取引先が離れたためとみられ、仮に違反があっても損失との因果関係はないとしました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- 表明保証の違反を否定し、閉店は薬剤師の退職によるもので因果関係はないとしたためです。
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令和5年11月30日 大阪地方裁判所 令和4(ワ)4903
- 当事者の立場
- 原告=その他(近隣の葬儀会社=商標権者)/被告=買い手(法人・葬儀会館の運営を引き継いだ葬儀会社)
- 何が争われたか
- 経営不振の葬儀会社が約20年使ってきた葬儀会館の屋号について、会館の運営を引き継いだ別の葬儀会社が使い続けていたところ、近隣の同業者がその屋号を商標登録して使用差止めを求めました。旧運営会社の代表者は、引継ぎ先との顧問契約を結ぶ一方で、近隣同業者から屋号の商標登録の可否を尋ねられ「いいんじゃないですか」と答えていました。裁判所は、屋号は出願時に先使用権の要件となるほど広く知られていたとはいえないとして、事業を承継したかを判断するまでもなく先使用権を否定し、旧代表者の了解を得た出願で妨害の意図もないとして権利濫用も否定し、差止めと廃棄を命じました。
- 結論
- 認容(差止め・廃棄)
- この分類に置いた理由
- 第3の3(2)で、商標権者は旧運営会社代表者の了解を得て出願しており殊更に被告の権利を妨害する意図は認められないとして、権利濫用を否定しました。
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平成17年7月29日 東京地方裁判所 民事第8部 平成17(ヨ)20080
- 事件名
- 株式分割差止仮処分命令申立事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・上場、対象会社の筆頭株主で公開買付けを実施)/被告=対象会社(上場の建設コンサルタント)
- 何が争われたか
- 上場の持株会社が、上場の建設コンサルタント会社の株式を市場で買い集めて筆頭株主となり、過半数取得を目指す公開買付けを始めたところ、対象会社の取締役会が1対5の株式分割を決議したため、その差止めの仮処分を申し立てました。裁判所は、株式分割は公開買付けの効力発生を定時株主総会後に引き延ばすものにとどまり、目的の達成を法的に妨げるものではないから、株主の地位に実質的変動を及ぼさず、取締役会が権限を濫用したとまではいえないとして、申立てを却下しました。
- 結論
- 却下(被保全権利の疎明なし)
- この分類に置いた理由
- 第3の2・3で、株式分割は株主の地位に実質的変動を及ぼさず、取締役会の権限濫用ともいえないとしました。
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平成19年6月28日 東京地方裁判所 民事第8部 平成19(ヨ)20081
- 事件名
- 株主総会決議禁止等仮処分命令申立
- 当事者の立場
- 原告=株主(敵対的公開買付けを行った米国系投資ファンド)/被告=対象会社(上場の調味料メーカー)
- 何が争われたか
- 上場の調味料メーカーの株式約10%を持つ投資ファンドが子会社を通じて全株式の公開買付けを始めたのに対し、会社は株主総会の特別決議で、ファンド関係者だけが行使できない新株予約権を全株主に無償で割り当てる対抗策を決めました。ファンドは株主平等原則違反・著しく不公正な方法であるとして差止めの仮処分を求めました。裁判所は、ファンドには買付価格を基準とする適正な対価が交付され経済的利益は確保されている、総会の判断が明らかに合理性を欠くとはいえず手段も相当であるとして申立てを却下しました。
- 結論
- 却下(申立て却下)
- この分類に置いた理由
- 裁判所は新株予約権無償割当てが株主平等原則にも定款にも反せず、著しく不公正な方法にも当たらないとして、対象会社側の違法を認めませんでした(第3の2(3)・3(4))。
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平成20年4月25日 東京地方裁判所 平成18(ワ)28616等
- 事件名
- 損害賠償本訴,商標使用権確認反訴請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(株式取得後に対象会社を吸収合併した会社)/被告=その他(フランチャイズ本部)
- 何が争われたか
- 持ち帰り弁当フランチャイズの地域本部の会社が、商標権を持つ会社の株式を前所有者から買い取り、のちに吸収合併して商標権者となったうえで、商標を使い続けるフランチャイズ本部に使用料相当額(一部請求9519万円)の損害賠償を求めました。裁判所は、商標権者と本部の間には創業時から無償・独占の黙示の使用許諾合意があり、株主の変動でも終了せず、合併で買い手が包括承継したとして、請求を棄却し、本部の使用権を確認しました。
- 結論
- 棄却(反訴は一部認容)
- この分類に置いた理由
- 本部の標章使用は黙示の使用許諾合意に基づくもので、違法・過失は認められず請求が棄却されました。
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平成25年7月16日 大阪地方裁判所 平成24(ワ)6658等
- 事件名
- 特許権譲渡代金返還請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・冷凍冷蔵機器メーカー)/被告=売り手(法人・冷凍設備の開発会社)
- 何が争われたか
- 冷凍冷蔵機器メーカーが、冷凍設備の開発会社から特許4件・商標2件・出願中の権利・実験設備・技術資料を1500万円で譲り受け、技術顧問契約も結びました。のちに別会社から自社製品の特許侵害を警告されて和解したため、譲渡は詐欺・錯誤によるとして既払金1155万円の返還を求めました。裁判所は、売り手側は契約前から別会社の特許を侵害するおそれを繰り返し指摘しており欺罔はなく、買い手の期待は表示されていない動機の錯誤だとして請求を棄却し、未払代金等の支払を命じました。
- 結論
- 本訴棄却・反訴認容(認容額:436万0812円(売り手への未払代金・管理費用等))
- この分類に置いた理由
- 売り手に欺罔行為はなく、錯誤も表示のない動機の錯誤で買い手自身の判断の誤りとされたためです(第3の2・3)。
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平成29年8月4日 東京高等裁判所 第11刑事部 平成28(う)414
- 事件名
- 業務上横領
- 当事者の立場
- 原告=検察/被告=仲介(企業合併コンサルティング会社の代表取締役・取締役・従業員の個人3名)
- 何が争われたか
- 企業合併に関するコンサルティング会社の役員らが、顧問契約に基づき顧客会社の出納経理を担当中、顧客会社の預金計3億8000万円を、学校法人M&A等の投資を行うために設立された会社の口座へ送金させたとして業務上横領で起訴され、一審は有罪としました。高裁は、一審が当事者の争点にしていない全体的考察で不法領得の意思を認めたのは不意打ちの訴訟手続違反であり、各送金は顧客会社代表者の承諾ないし権限に基づくもので、承諾がなかったとする代表者供述は信用できないとして、原判決を破棄し被告人全員を無罪としました。
- 結論
- 原判決破棄・無罪
- この分類に置いた理由
- 第4(訴訟手続の法令違反)と第5(事実誤認)で、送金は代表者の承諾ないし権限に基づく有効なものとして横領の成立を否定しました。
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相手が知っていたか・問題があったかの認定がない(19件)
令和3年1月26日 東京地方裁判所 令和1(ワ)24336
- 事件名
- 商標権移転登録手続請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・自動車部品製造販売)/被告=売り手(個人=事業を譲渡した会社の代表取締役・商標権者)
- 何が争われたか
- 自動車部品の販売会社が、買い手に対する売掛金の滞納を整理する合意の中で、ブランド事業を買い手に引き継がせ、代表者や従業員も買い手に雇用されました。数年後、退職した代表者がブランドの商標権は譲渡していないと主張して使用中止を求めたため、買い手が移転登録を求めました。裁判所は、合意の内容は事業譲渡であり、事業に不可欠な国内商標権だけを代表者に留保するのは極めて不自然で、国際登録分は現に名義移転していることなどから、商標権も譲渡されたと認めて請求を認容しました。
- 結論
- 認容(商標権の移転登録手続)
- この分類に置いた理由
- 第3の2で譲渡合意の成立を認めたのみで、売り手代表者の故意・過失は判断していません。
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令和3年1月8日 東京地方裁判所 平成31(ワ)2034
- 事件名
- 損害賠償請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人)(事業部門を譲り受けた元取締役の会社)/被告=売り手(法人)(食品機械メーカー)
- 何が争われたか
- 食品機械メーカーが関東の事業部門を、その部門の元取締役が設立した会社に譲渡し、契約書に10年間の競業禁止を定めました。売り手は休眠していた別の部門は譲渡対象外として関東で事業を再開しました。裁判所は、契約書の草案を作った売り手が残す資産を区別していない以上、関東の事業全体が譲渡対象だとして競業差止めを認めましたが、損害は立証がないとして賠償請求は棄却しました。
- 結論
- 一部認容(差止め認容・損害賠償棄却)
- この分類に置いた理由
- 第4の1(2):契約上の競業避止義務違反を認定しましたが、売り手の主観は判断していません。
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令和5年10月20日 東京地方裁判所 令和3(ワ)11323
- 当事者の立場
- 原告=買い手(事業の譲受会社)/被告=売り手(事業の譲渡会社)
- 何が争われたか
- 親族経営の精肉・焼肉の会社が二つのグループに分かれる際、精肉店部門を新設会社に事業譲渡しました。譲受会社が、焼肉店部門に残った譲渡会社の精肉・惣菜の販売店舗に対し、会社法21条1項に基づく競業の差止めを求めました。裁判所は、対面販売かパック陳列かという販売方法の違いでは市場・顧客は分かれず同一の事業に当たり、競業を許す別段の合意も認められないとして、20年間の差止めを認めました。
- 結論
- 認容(認容額:(差止め:令和18年10月31日まで2市で精肉・惣菜販売の禁止))
- この分類に置いた理由
- 同一事業の営業(法定の競業避止義務違反)は認定しましたが、譲渡会社の故意・過失には触れていません。
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令和5年8月28日 大阪地方裁判所 令和2(ワ)9135
- 事件名
- 商標移転登録抹消登録等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・民事再生会社の事業譲受会社)/被告=その他(売り手の創業家一族=商標の譲受人とその共有者)
- 何が争われたか
- 民事再生中の老舗菓子会社から、スポンサーが設立した会社が事業を6億7000万円で譲り受け、創業家から商標も譲り受けました。買い手はその一部の商標を創業者の孫に1円で譲渡し、代わりに無償の専用使用権の設定を受ける契約(譲渡禁止特約つき)をしましたが、登録をしないうちに孫が商標の持分を別系統の親族と親族会社に移転しました。裁判所は、移転は合意に基づくもので登録のない特約は優越しないとして抹消請求を棄却し、専用使用権の設定は履行不能となったが、親族側には先使用権があり買い手がもともと独占使用できなかった以上、損害の発生も認められないとして損害賠償も棄却しました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- 第4の2(1)で専用使用権設定義務の履行不能を認めつつ「帰責事由がない場合は格別」として帰責事由は判断せず、損害不発生で請求を退けました。
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平成17年3月11日 東京地方裁判所 平成17(ヨ)20021
- 事件名
- 新株予約権発行差止仮処分命令申立事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・上場IT企業)兼株主/被告=対象会社(上場ラジオ放送会社)
- 何が争われたか
- ラジオ放送会社に対し、グループのテレビ局が子会社化を目的とする公開買付けを行っている最中に、IT企業が市場の時間外取引で発行済株式の約3割を買い付け、約35%を持つ株主となりました。対象会社の取締役会がテレビ局に発行済株式の約1.44倍の新株予約権を割り当てると決めたため、IT企業が差止めを求めました。裁判所は、発行は現経営陣の支配権維持を主たる目的とするもので、IT企業の支配権取得により企業価値が著しく毀損されることが明らかともいえないとして、不公正発行に当たると判断し差止めを認めました。
- 結論
- 認容(仮処分・5億円の担保が条件)
- この分類に置いた理由
- 新株予約権の発行が支配権を争う株主の持株比率を下げ現経営陣の支配権を維持することを主たる目的とすると認定されたためです(第3の2(2)イ)。
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平成20年1月23日 東京地方裁判所 平成17(ワ)25884
- 事件名
- 特許権移転登録等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・上場繊維会社のグループ会社)/被告=売り手(法人・ペット用品メーカー)
- 何が争われたか
- ペット用品メーカーとそのグループ会社から営業(事業)を譲り受けた買い手が、契約に基づき特許権・意匠権・商標権の移転登録などを求めたところ、売り手は対価の支払がないとして同時履行の抗弁で争いました。裁判所は、知財の対価は営業権の対価(売り手分6300万円)に含まれ、契約後に売り手側の会計士との間で負債等を引き継がない修正合意も成立しており、対価は支払済みと認めて、請求を全部認容しました。
- 結論
- 認容(認容額:(移転登録手続・権利確認))
- この分類に置いた理由
- 判断2で対価支払と修正合意の成立を認めましたが、売り手の故意・過失には触れていません。
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平成21年10月20日 知的財産高等裁判所 平成20(ネ)10024等
- 事件名
- 特許権移転登録等請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・上場繊維会社のグループ会社)/被告=売り手(法人・ペット用品メーカー)
- 何が争われたか
- 35625の控訴審です。ペット用品の営業を譲り受けた買い手が知財の移転登録等を求め、売り手は対価未払いを理由に同時履行の抗弁を主張しました。知財高裁は、買い手が振り込んだ1億4700万円は知財を含む営業権の対価の弁済と評価でき、負債を引き継がない修正合意も成立しているとして、同時履行の抗弁を退け、控訴を棄却し、買い手の附帯控訴(追加の商標権等)も認容しました。
- 結論
- 控訴棄却・附帯控訴認容(買い手勝訴)(認容額:(移転登録手続・権利確認))
- この分類に置いた理由
- 第3の3(4)で対価支払済みとして抗弁を退けましたが、売り手の主観は判断していません。
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平成21年3月31日 東京高等裁判所 平成20(受)442
- 事件名
- 組合員代表訴訟事件
- 当事者の立場
- 原告=株主(新設合併後の組合の組合員=代表訴訟)/被告=売り手側役員(被合併組合の元理事・監事とその相続人)
- 何が争われたか
- 4つの農業協同組合が新設合併した際、合併契約に、財務書類に故意又は重過失による誤りや隠れた瑕疵があって新組合が損害を受けたときは、その組合の役員が個人として連帯して賠償する条項が置かれていました。合併後、一つの組合で貸倒引当金が約3億8000万円過少だったことが判明し、組合員が元役員らに代表訴訟を起こしました。最高裁は、合併契約に賛成した理事等は個人として条項に基づく責任を負う意思表示をしたものと認め、条項は引当不足額を新組合にてん補させる趣旨を含むとして原判決を破棄し、故意・重過失の有無などの審理のため差し戻しました。
- 結論
- 破棄差戻し
- この分類に置いた理由
- 最高裁は責任の根拠と条項の趣旨を示しただけで、元役員らの故意・重過失は差戻審で審理させるとしました(第4)。
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平成22年1月26日 知的財産高等裁判所 平成20(行ケ)10409
- 事件名
- 審決取消請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(ブランド事業の転得者・米国法人)/被告=売り手(法人)=創業デザイナーの会社
- 何が争われたか
- 米国のシルバーアクセサリーブランドについて、創業デザイナーの死後、その元パートナー側から事業を譲り受けたと主張する会社が、創業者の会社の日本での商標登録の無効を求めました。原告は創業者が生前に事業と権利一切を20万ドルで譲渡したとする事業譲渡契約書・遺言書・領収書の写しを出しましたが、原本はなく、裁判所は写しの内容の不自然さや米国訴訟で一度も主張されていないことなどから信用できないとし、事業譲渡を認めませんでした。無権利者からの承継にすぎないとして請求を棄却しました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- 判決は事業譲渡の事実を認めなかっただけで、相手方(創業者の会社)の主観や落ち度は判断していません(第4の2(1)〜(4))。
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平成22年1月26日 知的財産高等裁判所 平成20(行ケ)10303
- 事件名
- 審決取消請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・事業譲受人とされる会社から権利を譲り受けたと主張する会社)/被告=その他(創業デザイナーの妻・相続人で、元の事業会社の代表者)
- 何が争われたか
- 米国の銀製装身具ブランドの創業デザイナーの死亡直前に、ブランド事業と諸権利を友人の会社へ20万ドルで譲渡する事業譲渡契約が結ばれたとして、その会社から権利を譲り受けたと主張する会社が、日本で同じ商標を登録した創業者の妻(元の事業会社の代表者)に対し、商標登録の無効を求めた審決取消訴訟です。契約書と領収書の原本は無く写しのみで、譲渡の有無が争われました。裁判所は、元の事業会社が事業を続けていたことなどから事業譲渡の事実を認めず、原告側は無権利者からの譲受けにすぎないとして請求を棄却しました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- 裁判所は事業譲渡の事実自体を認めなかっただけで、相手方(創業者の妻)の故意・過失は判断していません(第5の2(4))。
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平成24年9月27日 東京高等裁判所 平成23(行コ)261
- 事件名
- 公害防止事業費負担決定取消請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・戦時中に化学部門の営業譲渡を受けた化学メーカー)/被告=その他(区)
- 何が争われたか
- 区内の工場跡地でダイオキシン汚染が見つかり、区は、1945年に営業譲渡でその工場を引き継ぎ1970年頃まで操業した化学メーカーだけに対策費用の負担(約1億5825万円)を決めました。高裁は、営業譲渡では法人格は承継されず、譲渡前に工場を操業した会社も負担者の基準に当たるのに譲受会社だけに負担させたのは費用負担計画に基づかず違法としました。さらに、営業譲渡で債務一切を引き受けていても、公害防止事業費の負担は施行者の決定で初めて生じる公法上の負担で、譲受人には移らないとしました。
- 結論
- 控訴棄却(負担金決定の取消しを維持)
- この分類に置いた理由
- 処分の違法は費用負担計画との不整合という法的評価で、区の故意・過失は判断していないためです(第3の7・9)。
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平成25年12月24日 東京地方裁判所 平成24(ワ)9237
- 事件名
- 商標権移転登録抹消手続等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=売り手(法人・アパレル会社)/被告=買い手(法人・事業の受け皿として設立された新会社)
- 何が争われたか
- 資金繰りに行き詰まったアパレル会社の代表者が、事業を存続させるため弟を代表とする新会社を設立させ、商標権・内装・什器・取引先との契約・従業員を移しました(融資元の承諾を得るため新会社が保証金・商標代・内装代の計750万円を負担)。代金の支払直後、兄が電子メールで「事業譲渡はご破算」と三つの選択肢を示し、弟が一つを選ぶ返信をしたため、兄の会社が解消合意の成立を主張し、商標移転登録の抹消や使用料等を求めました。裁判所は、メールは感情の表出にすぎず解消の申込みではないとして請求を棄却し、契約書に記載のない什器も譲渡対象と認めました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- 兄の会社側のメールを解消の意思表示と認めなかったが、故意・過失は判断していないためです(第3の1(2))。
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平成27年12月8日 東京地方裁判所 平成26(行ウ)381
- 事件名
- 特別掛金賦課処分取消請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・吸収合併存続会社=印刷会社)/被告=その他(厚生年金基金)
- 何が争われたか
- 印刷会社が同業の会社を吸収合併したところ、消滅会社が加入していた厚生年金基金が、規約の「脱退の申出」に当たるとして存続会社に約1億1386万円の特別掛金を課しました。存続会社はその取消しを求めました。裁判所は、規約の「脱退の申出」は任意脱退を指し、吸収合併で適用事業所が全喪した場合はこれに当たらないとして、納入告知を取り消しました。
- 結論
- 認容(特別掛金1億1385万5759円の納入告知を取消し)
- この分類に置いた理由
- 裁判所は規約の解釈で賦課を違法としただけで、基金の故意・過失は判断していません(第3の1(4))。
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平成29年12月25日 知的財産高等裁判所 平成29(ネ)10081
- 事件名
- 債務不存在確認請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人)(電機メーカーの商号と事業を譲り受けた会社)/被告=その他(米国特許権者)
- 何が争われたか
- 電機メーカーの商号と事業を譲り受け、譲渡会社の債務を負わない旨の登記をした会社が、米国で特許侵害訴訟を起こされたため、日本で損害賠償債務の不存在確認を求めました。買い手は譲渡会社の事業について責任を承継するかが問題になると主張しましたが、裁判所は日本の国際裁判管轄を否定ないし特別の事情があるとして訴えを却下した原判決を維持しました。
- 結論
- 控訴棄却(訴え却下維持)
- この分類に置いた理由
- 第3の3:管轄の判断のみで、相手方の主観・承継の有無は判断していません。
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平成30年7月19日 知的財産高等裁判所 平成30(行ケ)10028
- 事件名
- 審決取消請求事件
- 当事者の立場
- 原告=その他(電子掲示板の運営会社=事業の転得者を主張)/被告=売り手(個人)(電子掲示板の創設者=事業譲渡人とされた者)
- 何が争われたか
- 大手電子掲示板の運営会社が、創設者が掲示板事業を海外法人に譲渡し、その法人から自社が譲り受けたと主張して、創設者の登録商標の無効を求めました。裁判所は、契約書等の処分証書が無く合意内容も不明で、譲渡後も創設者が運営に関与していたことから、事業譲渡の事実を認めず請求を棄却しました。
- 結論
- 棄却(審判不成立審決維持)
- この分類に置いた理由
- 当裁判所の判断:事業譲渡の事実を認めず、相手方の主観は判断していません。
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平成30年7月19日 知的財産高等裁判所 平成30(行ケ)10029
- 事件名
- 審決取消請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(電子掲示板事業の転得者・海外法人)/被告=売り手(個人)=掲示板の創設者
- 何が争われたか
- 著名な匿名電子掲示板の創設者が掲示板の名称を商標登録したところ、運営を引き継いだと主張する海外法人が無効審判を請求しました。原告は、創設者がシンガポール法人に掲示板事業を譲渡し(ドメイン登録者の変更、創設者のブログや著書の「譲渡完了」の記載)、さらに原告に譲渡されたと主張しました。裁判所は、契約書がなく合意内容も不明で、譲渡後も創設者が運営に関与していたことがうかがわれるとして事業譲渡を認めず、請求を棄却しました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- 判決は事業譲渡の事実を認めなかっただけで、創設者の主観や落ち度は判断していません(第5の2・3)。
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平成31年2月20日 東京地方裁判所 平成30(ワ)6962
- 事件名
- 不正競争行為差止請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・聴覚機器メーカー=子会社株式と事業の譲受人)/被告=売り手(法人・特許権者=経営再建中に子会社株式を譲渡)
- 何が争われたか
- 経営再建中の会社が、支援先の聴覚機器メーカーに販売子会社の株式を譲渡し、子会社との間で特許の実施許諾契約や、事業再編による譲渡を事前承認する覚書を結んでいました。その後メーカーが子会社から事業を譲り受けて製品を売り出すと、元親会社はウェブサイトや取引先への書面で特許・意匠権侵害だと告知し、取引先は販売を停止しました。裁判所は、メーカーが元親会社から購入した部品を付属させて販売していたにすぎず特許権・意匠権は消尽しているとして、侵害の告知は虚偽であると認め、告知・流布の差止めを命じました。
- 結論
- 一部認容(差止め)
- この分類に置いた理由
- 第3の2(4)で告知内容を虚偽と認定しましたが、差止め(不競法3条)のため被告の故意・過失は判断していません。
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昭和34年12月25日 名古屋高等裁判所 昭和30(オ)171
- 事件名
- 土地建物所有権移転等請求
- 当事者の立場
- 原告=買い手(株式の譲受人ら)/被告=売り手(株式の譲渡人の相続人)
- 何が争われたか
- 土地建物会社の株式の譲渡に際し、会社が解散したときは株式譲渡契約が失効し、株式の返還と引換えに会社の土地建物を譲受人側へ移転するという特約が結ばれていました。会社が解散登記をしたため、譲受人らが譲渡人に土地建物の所有権移転と登記を求め、原審がこれを認めました。最高裁は、訴えの変更の手続や事実認定を争う上告理由をすべて退けて上告を棄却しました。
- 結論
- 上告棄却
- この分類に置いた理由
- 特約の成立と履行期の到来を認めた原審の認定を是認しただけで、相手方の故意・過失には触れていません。
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昭和46年10月12日 東京高等裁判所 第一六民事部 昭和42(ネ)2132
- 事件名
- 株式および株主名簿名義書換請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(同業のタクシー会社)/被告=対象会社
- 何が争われたか
- タクシー会社の元取締役らが、経営者と不仲になったことから、保有株式(発行済の約3割)と転換社債を同業のタクシー会社に1500万円で譲渡しました。対象会社は、全株買取りが前提で解除の約定があった、取得は独禁法違反だとして株主と認めませんでしたが、裁判所はいずれも認めず、買い手の株主権を認めた一審を維持しました。
- 結論
- 控訴棄却(買い手の請求認容を維持)
- この分類に置いた理由
- 対象会社の解除・独禁法違反の主張を証拠不十分・該当なしとして排斥しただけで、対象会社の故意・過失は判断していません。
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会社の関係者(株主・債権者・従業員など)が当事者になった判決(37件)
株主(9件)
令和6年12月19日 東京地方裁判所 令和1(ワ)11335
- 事件名
- 参加申出事件
- 当事者の立場
- 原告=株主(上場精密機器メーカーの株主・株主代表訴訟)/被告=その他(有限責任監査法人=会社の元会計監査人)
- 何が争われたか
- 上場精密機器メーカーが金融商品の含み損を簿外ファンドへ移し、国内ベンチャー3社株式の高値取得と英国医療機器メーカー買収のFA報酬(株式オプション・ワラント購入権等)を通じてその損失を穴埋めしていた事件で、株主が当時の会計監査人に対し、監査を怠ったとして会社への損害賠償を求めました。裁判所は、時価情報の確認、残高確認、国内3社株式の取得、FA報酬に関する監査報告書の意見表明、引継ぎ、違法配当等の阻止のいずれについても善管注意義務違反は認められないとして、原告と参加人の請求をいずれも棄却しました。
- 結論
- 請求棄却(原告・参加人とも)
- この分類に置いた理由
- 第4の4〜9で、監査人の各義務違反をいずれも否定しました(第4の9(3)ほか)。
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令和元年5月23日 神戸地方裁判所 平成26(ワ)2580
- 事件名
- 株主代表訴訟
- 当事者の立場
- 原告=株主(買い手グループ親会社の株主)/被告=その他(親会社の元代表執行役・元取締役)
- 何が争われたか
- 上場する衣料品販売会社の株主が、子会社2社への計15億2000万円の貸付け・増資が回収不能になったとして、当時の代表執行役らに善管注意義務違反の損害賠償を求めました。うち一方の子会社は、資金繰りの苦しい上場メーカーからLED照明事業を事業譲渡で譲り受けて合弁化しており、譲受け前に外部専門家による財務DDを行わなかったことが争点の一つとなりました。裁判所は、売り手が上場会社で財務状況がある程度開示され、売り手の資金難が譲渡理由として前提とされていたこと等から、財務DDを外部に依頼することが必須とまではいえず、取得価額が不当に高額だった事実もないとして、経営判断の過程・内容に不合理はないとし、請求を全部棄却しました。
- 結論
- 棄却(善管注意義務違反なし)
- この分類に置いた理由
- 第3の2(第7決議)で、財務DDの不実施は不適切とまでいえず不相当な価額での譲受けもないとして善管注意義務違反を否定しました。
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平成17年11月11日 東京地方裁判所 民事第8部 平成17(ヨ)20103
- 事件名
- 株主総会招集禁止仮処分命令申立事件
- 当事者の立場
- 原告=株主(創業家の相続人・非上場持株会社株式の準共有者の権利行使者)/被告=その他(非上場のグループ持株会社の代表取締役・個人)
- 何が争われたか
- 鉄道・ホテルの企業グループを統括する非上場持株会社が、株式移転で持株会社を作り投資ファンドを割当先とする増資と合併・株式交換を重ねる再編を計画し、その株式移転決議のための臨時株主総会を招集しました。創業者の相続人は、株主名簿上の株主の多くが名義株で真実の株主に招集通知が来ないとして総会の開催禁止を求めました。裁判所は、認諾された49株について招集手続の違法は疎明されたとしましたが、取締役の善管注意義務違反は疎明がなく、会社に回復できない損害と保全の必要性も疎明がないとして却下しました。
- 結論
- 却下
- この分類に置いた理由
- 第3の3で善管注意義務違反の疎明なし、第3の4で保全の必要性なしとして却下し、名義株の扱いの故意・過失は今後の本案で立証すべきとして判断していません(第3の2(3)オ)。
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平成17年3月11日 東京地方裁判所 刑事第2部 平成16特(わ)741
- 事件名
- 証券取引法違反
- 当事者の立場
- 原告=その他(検察官)/被告=その他(被告人=上場会社の創業者・代表取締役)
- 何が争われたか
- 東証1部上場の害虫駆除会社の創業者が、自社株の相場操縦の後始末で会社から60億円を借り、その貸付金を隠すため、監査法人の公認会計士らと共謀し、価値が多くとも6億5000万円の会社の全株式を60億円で買収したように装って有価証券報告書に虚偽記載しました。意向に沿う株価算定書や財務DD報告書を公認会計士に作らせ、契約書の日付も遡らせていました。裁判所は有罪とし、会社はその後民事再生に至り多数の従業員が職を失ったと認定しました。
- 結論
- 有罪(懲役3年・執行猶予5年、追徴3億1082万円)
- この分類に置いた理由
- 判決は被告人らが貸付金を隠すため謀議を重ね、買収を仮装して虚偽の有価証券報告書を提出したと認定しました(罪となるべき事実第2、量刑の理由2(2))。
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平成17年3月4日 東京地方裁判所 刑事第2部 平成16特(わ)1505
- 事件名
- 証券取引法違反
- 当事者の立場
- 原告=その他(検察官)/被告=その他(被告人=コンサルティング会社の元代表取締役)
- 何が争われたか
- 上場の害虫駆除会社の代表者への60億円の貸付金を隠すため、コンサルティング会社の代表者である被告人が、会社の代表者や監査法人の公認会計士と共謀し、貸付金を企業買収ファンドへの預け金と偽った半期報告書を出し、さらに被告人が経営する価値6億5000万円以下の会社の全株式を60億円で買収したように装って有価証券報告書に虚偽記載しました。株価算定書や財務デューディリジェンス報告書も意向に沿って作らせていました。裁判所は懲役1年6月・執行猶予3年としました。会社は後に民事再生を申し立てました。
- 結論
- 有罪(懲役1年6月・執行猶予3年)
- この分類に置いた理由
- 裁判所は被告人らが謀議を重ね買収を仮装した組織的な犯行と認定しました(量刑の理由2(1)ア)。
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平成17年6月15日 東京高等裁判所 第15民事部 平成17(ラ)942
- 事件名
- 新株予約権発行差止仮処分決定認可決定に対する保全抗告
- 当事者の立場
- 原告=株主(海外投資ファンド)/被告=対象会社(ジャスダック上場の計測機器メーカー)
- 何が争われたか
- 敵対的買収者の出現前に全株主へ新株予約権を発行する事前防衛策について、株主である投資ファンドの申立てで発行を仮に差し止めた決定に対し、会社が保全抗告しました。裁判所は、発行により既存株主が受忍すべきでない損害を受けるおそれがあり、会社は損害発生の可能性等を十分検討すべきだったのにその検討や疎明がないとして、著しく不公正な方法による発行に当たると判断し、抗告を棄却しました。
- 結論
- 棄却(保全抗告棄却・差止め維持)
- この分類に置いた理由
- 第3の2(2)(3)で、会社は株主の損害発生の可能性等を十分検討すべきだったのに検討・疎明がないと指摘し、不公正発行と認定しました(故意・害意の認定はありません)。
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平成17年6月1日 東京地方裁判所 民事第8部 平成17(ヨ)20050
- 事件名
- 新株予約権発行差止仮処分命令申立事件
- 当事者の立場
- 原告=株主(海外投資ファンド・保有2.85%)/被告=対象会社(ジャスダック上場の計測機器メーカー)
- 何が争われたか
- ジャスダック上場会社が、敵対的買収者が現れる前の事前の防衛策として、全株主に新株予約権を発行する取締役会決議をしたところ、株主である投資ファンドが発行の差止めを求めました。新株予約権は、買収者が出現した際に行使されると既存株主の持株比率が約3分の1に希釈されうる仕組みでした。裁判所は、買収者が現れていない段階で発行により買収者以外の株主に不測の損害を与えるのは事前の対抗策として相当性を欠き、著しく不公正な発行に当たるとして、無担保で発行を仮に差し止めました。
- 結論
- 認容(仮処分決定・発行差止め)
- この分類に置いた理由
- 第3の2で事前の対抗策としての相当性を欠くとして不公正発行を認定しましたが、取締役の故意・過失や主観は判断していません。
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平成28年4月18日 東京地方裁判所 平成25(ワ)20031
- 事件名
- 損害賠償等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=対象会社(共同出資で設立した飲食店会社・過半数株主が代表)/被告=その他(元代表取締役=少数株主・元個人事業主)・その他(店舗の賃貸人)
- 何が争われたか
- 串かつ店を個人で営んでいた者が出資者と会社を設立し(出資者60株・本人40株)、本人が代表取締役となって既存店の事業を会社に移し、新店も出したが、出資者が会社の預金を自分の口座に引き揚げたことから対立しました。本人は代表取締役のまま新店の内装・什器等を自分個人に移し、賃貸借も個人名義に切り替えて営業を続け、既存店も個人で営業しました。裁判所は、新店の移転は株主総会の承認のない事業の重要な一部の譲渡かつ利益相反取引に当たるとしましたが、店は赤字で損害はのれん10万円にとどまるとし、既存店は対価の定めがなくても会社に譲渡されていたと推認して、競業避止義務違反による利益約300万円などの賠償を命じました。賃貸人の共同不法行為は否定しました。
- 結論
- 一部認容(賠償・商標使用差止め・動産引渡し)(認容額:401万9542円(競業避止義務違反300万8898円・お手盛り報酬74万1600円・商標出願取下げ16万9044円・のれん10万円))
- この分類に置いた理由
- 株主総会の承認なく事業の重要な一部を自分に譲渡し利益相反取引・競業をしたとして会社法423条の任務懈怠責任を認めましたが、売上金の横領は認めなかったためです(当裁判所の判断2・3・6)。
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昭和48年3月1日 最高裁判所第一小法廷 昭和47(ク)5
- 事件名
- 株式買収価格決定に対する抗告事件の決定に対する特別抗告
- 当事者の立場
- 原告=株主または会社(抗告人。本文に立場の記載なし)/被告=その他(相手方の記載なし)
- 何が争われたか
- 営業譲渡等・合併に反対した株主の株式買取請求(商法245条ノ3、349条で準用)について、裁判所が買取価格を決定した手続をめぐり、抗告人が、価格決定は訴訟事件で非訟手続で審理するのは裁判を受ける権利・公開の対審を定めた憲法32条・82条に違反すると主張しました。最高裁は、価格決定は裁判所が後見的立場から裁量で「公正なる価格」を形成する非訟事件の裁判であり、非訟手続で審理しても違憲ではないとして抗告を棄却しました。
- 結論
- 抗告棄却
- この分類に置いた理由
- 手続の合憲性だけを判断し、価格の当否や当事者の主観は判断していません。
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債権者(7件)
令和2年12月10日 東京地方裁判所 平成30(ワ)39933等
- 事件名
- 損害賠償等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=債権者(音楽著作権管理団体)/被告=売り手(法人・雑誌発行事業を譲渡した出版社)
- 何が争われたか
- 歌謡情報誌の出版社が20年以上にわたり複製部数を過少申告していたとして、著作権管理団体が使用料相当額等の賠償を求めました。出版社は交渉中に、その債務を対象から除外して同誌の発行事業を誌名を商号に用いた新会社へ譲渡しており、管理団体は新会社にも会社法22条類推・23条の2等で連帯責任を追及しました(新会社とは和解)。出版社は、管理団体が新会社名義の利用許諾を拒んで紛争に巻き込み業務委託契約を失わせたとして反訴しましたが、裁判所は事業譲渡の内容に疑問を持ったのは無理からぬところで不法行為に当たらないとし、本訴を全部認容、反訴を棄却しました。
- 結論
- 認容(本訴)・棄却(反訴)(認容額:1億4443万1632円+遅延損害金)
- この分類に置いた理由
- 第3の2で超過部数発行を認定したが、債務除外の事業譲渡について詐害意思等は判断していません(譲受会社とは和解)。
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平成22年11月18日 東京地方裁判所 平成21(ワ)1193
- 当事者の立場
- 原告=その他(海外の家具デザイン権利者・製造販売会社)/被告=買い手(法人)(育児用品の事業譲受会社)
- 何が争われたか
- 海外の家具メーカー等が、子ども用いすの形態模倣で育児用品会社を訴え、同社が事業を譲り受ける前に旧会社が販売した分の責任も負うと主張しました。裁判所は譲受後の販売分について不正競争を認めて損害賠償を命じましたが、譲受会社は旧会社の債務について免責の登記をしているから譲受前の分は責任を負わず、免責を主張することも信義則に反しないとしました。
- 結論
- 一部認容(譲受前の分は棄却)(認容額:244万5333円(譲受後の販売分))
- この分類に置いた理由
- 争点4:22条2項の免責登記により責任はないとし、信義則違反も否定しました(主観は判断していません)。
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平成23年9月29日 東京地方裁判所 平成20(ワ)35836
- 事件名
- 業務禁止等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=債権者(健康器具販売会社・貸付先の債権者)/被告=その他(元取締役、元取締役が設立し事業を譲り受けた会社)
- 何が争われたか
- 健康器具販売会社が、退職した元取締役とその設立会社に対し、顧客名簿の不正使用による販売の差止め・損害賠償と、元取締役が移籍先の会社(原告の貸付先)の事業を第三者経由で自分の新会社に譲渡させて破産させ、原告の貸付金回収を不能にしたとする債権侵害の損害賠償を求めました。裁判所は、顧客名簿の使用については労働契約違反・不正競争を認めて差止めと損害賠償を命じました。一方、事業譲渡は金融機関からの融資と輸入販売権の維持のためで、総債権者を害する意図があったとはいい難く、低額販売等への元取締役の関与も認められないとして、債権侵害の請求は棄却しました。
- 結論
- 一部認容(顧客名簿部分は認容、詐害的事業譲渡部分は棄却)(認容額:440万2099円(連帯)、861万0900円(元取締役)=いずれも顧客名簿部分)
- この分類に置いた理由
- 第3の5(2)で、事業譲渡は融資と輸入販売権維持のためで総債権者への害意はいい難く、低額販売等への共謀も認められないとして、不法行為を否定しました。
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平成24年9月19日 福岡地方裁判所 平成23(ワ)5336
- 事件名
- 貸金請求事件
- 当事者の立場
- 原告=金融機関(債権者・譲渡会社への貸主)/被告=買い手(法人=事業譲受会社)
- 何が争われたか
- コーヒー関連商品の販売会社が、事業の全部を無償で、譲渡の10日前に設立された会社に譲渡し、契約では商号と譲渡前の債務を承継しないと定めました。譲受会社は元の商号の頭に地域名を付けた商号を使い、商標とロゴも引き継ぎました。譲渡会社に貸付けていた銀行が譲受会社に返済を求め、裁判所は、元の会社がもともとその地域一円を商圏としており地域名の付加に新しさはなく、商標・ロゴも使っているとして商号の続用を認め、全額の支払を命じました。契約で債務を承継しないと定めても結論は変わらないとしました。
- 結論
- 認容(認容額:6634万7000円)
- この分類に置いた理由
- 判決は商号の続用を客観的に判断しただけで、譲受会社の主観や落ち度は判断していません(第4の1〜3)。
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平成25年7月9日 東京地方裁判所 平成21(ワ)40515等
- 事件名
- 各不正競争行為差止等請求,承継参加申立事件
- 当事者の立場
- 原告=取引先(ゲームメーカー・ソフト販売会社)/債権者/被告=その他(マジコン販売会社とその代表者、事業を引き継いだ姉妹会社)
- 何が争われたか
- 携帯型ゲーム機メーカー等が、コピーゲームを動かす装置(いわゆるマジコン)の販売業者らに差止めと損害賠償を求めました。販売会社の代表者は、税関やメーカーの追及を逃れるため、休眠会社の商号・本店・役員を元会社と同じにして事業を移し、元会社を解散・清算結了させていました。裁判所は、両社は実質同一で、債務を免れる目的の会社制度の濫用であるとして別法人だとの主張を信義則上許さず、両社と代表者の連帯責任を認めました。清算手続でメーカーに債権申出の催告をしていないため元会社の法人格も消滅していないとしました。
- 結論
- 一部認容(認容額:3825万円(元会社・事業を引き継いだ会社・代表者の連帯)。別グループ被告に5737万5000円)
- この分類に置いた理由
- 第3の2(3)で事業移転と元会社の解散を「債務の免脱を目的としてされた会社制度の濫用」と認定し、同(4)で代表者の故意・悪意を認定しました。
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平成27年1月29日 東京地方裁判所 平成24(ワ)21067
- 事件名
- 著作権侵害差止等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=その他(家具ブランドの権利者)/被告=その他(並行輸入販売サイトの運営者個人)
- 何が争われたか
- 家具ブランドの権利者が、ブランド名入りのドメインで商品写真や説明文を無断掲載していた販売サイトの運営者に、差止めと損害賠償を求めました。運営者は、侵害をやめると約束する念書を出した直後に、実体の不明な海外法人へサイト事業を譲渡したので以後の責任は無いと主張しました。裁判所は、譲渡先が事業を行っている客観的証拠が無く、運営者が譲渡後も事業に深く関わっていたことから、信義則上事業譲渡を主張できず責任を免れないとして、差止めと24万円の賠償を命じました。
- 結論
- 一部認容(差止め・24万円)(認容額:24万円)
- この分類に置いた理由
- 裁判所は著作権侵害について少なくとも過失を認め(第3の4(1)ア)、事業譲渡は信義則上主張できないとしました(第3の1(2))。故意や通謀虚偽表示は認定していません。
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平成28年12月19日 名古屋高等裁判所 金沢支部 平成27(受)1394
- 事件名
- 不当利得返還請求事件
- 当事者の立場
- 原告=その他(信用保証協会)/被告=金融機関
- 何が争われたか
- 金融機関の融資に信用保証協会が保証した直前に、借り手の会社が事業を他者に譲渡して中小企業者の実体を失っていたが、金融機関も保証協会も知りませんでした。会社は破産し、代位弁済した保証協会が錯誤無効を理由に返還を求めました。最高裁は、実体の有無は保証契約の内容とはなっておらず錯誤はないとして保証協会の請求を棄却し、金融機関の調査義務違反は免責条項の問題になるとしました。
- 結論
- 保証協会の請求棄却(原判決破棄・自判)
- この分類に置いた理由
- 理由4:錯誤を否定しました。金融機関の調査義務違反や借り手の主観は判断していません。
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従業員(4件)
平成19年1月18日 東京高等裁判所 平成16(受)380
- 事件名
- 賃金債権確認請求事件
- 当事者の立場
- 原告=従業員/被告=売り手(法人・事業を譲渡して解散した信用農協)
- 何が争われたか
- 経営悪化で事業譲渡と解散が避けられなくなった信用農協が、譲渡前に退職者が増えて事業継続が困難になるのを防ぐため、選択定年制による割増退職金付きの退職申出をすべて承認せず制度を廃止しました。申出をしていた従業員が割増退職金債権の確認を求め、原審は認容しましたが、最高裁は、制度上承認するかどうかに特段の制限はなく、不承認の理由も不十分とはいえないとして、原判決を破棄し請求を棄却しました。
- 結論
- 棄却(原判決破棄・第1審判決取消し)
- この分類に置いた理由
- 理由4で、承認するかどうかに制限はなく不承認の理由も不十分ではないとして違法を否定しました。
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平成19年5月29日 横浜地方裁判所 平成15(ワ)1833
- 事件名
- 地位確認請求事件(通称 日本アイ・ビー・エム会社分割)
- 当事者の立場
- 原告=従業員(労働組合員)/被告=売り手(法人・外資系コンピュータメーカーの日本法人)
- 何が争われたか
- 外資系コンピュータメーカーの日本法人が、親会社と国内電機メーカーの合弁合意に基づき、HDD事業を新設分割で子会社とし、6日後にその株式を合弁会社へ譲渡しました。HDD部門の従業員らは、承継を拒否する権利があり、協議も不十分で、分割は実質的な事業譲渡で権利濫用・脱法だとして、元の会社での地位確認と慰謝料を求めました。裁判所は承継拒否権を否定し、5条協議・7条措置に違法はなく、分割と株式譲渡の組合せも脱法行為・権利濫用に当たらないとして請求を棄却しました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- 5条協議・7条措置に違法はなく、会社分割は脱法行為・権利濫用に当たらないとされ、請求が退けられたためです(第3の4〜7)。
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平成20年6月26日 東京高等裁判所 平成19(ネ)3596
- 事件名
- 地位確認請求控訴事件(通称 日本アイ・ビー・エム会社分割)
- 当事者の立場
- 原告=従業員/被告=売り手(法人・分割会社=外資系コンピューター会社)
- 何が争われたか
- コンピューター会社が、ハードディスク事業を他の電機メーカーとの合弁会社に移すため、同事業を新設分割で子会社に切り出し、その株式を合弁会社に譲渡しました。分割計画書で承継対象とされた従業員らは、承継拒否権の行使や、労働者との協議・理解協力の手続違反、権利濫用などを理由に、元の会社での地位確認と慰謝料を求めました。裁判所は、承継拒否権は認められず、7条措置と5条協議に違反する瑕疵もなく、分割は権利濫用・脱法でもないとして控訴を棄却しました。
- 結論
- 控訴棄却(請求棄却)
- この分類に置いた理由
- 裁判所は分割会社の協議・説明に労働契約承継法7条・改正法附則5条違反の瑕疵はなく、不法行為も成立しないと判断しました(第3の2)。
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平成26年4月22日 大阪地方裁判所 平成24(ワ)998等
- 事件名
- 賃金等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=従業員(売り手の元従業員・譲受会社へ移籍した発明者)/被告=売り手(法人)
- 何が争われたか
- 立体映像の空中投影技術を開発していた小規模会社が、事業が行き詰まり、特許を受ける権利・取引関係・ノウハウ・備品を含む事業全部を他社に5000万円で譲渡しました。開発を一人で担っていた従業員は譲渡先に移籍し、元の会社に未払賃金と職務発明の相当対価2000万円を求めました。裁判所は、5000万円の全額が特許の対価ではなく、従業員の移籍も前提とされていたことから使用者利益は2000万円が上限とし、相当対価は約232万円で既払いの1450万円を超えないとして従業員の請求を棄却しました(会社の貸金・立替金の反訴は一部認容)。
- 結論
- 棄却(本訴)/一部認容(反訴)(認容額:反訴 518万2000円+219万0122円(従業員が支払う側))
- この分類に置いた理由
- 判決は売り手が職務発明対価を既に十分支払っていたとし、未払賃金も認めず、売り手の違法・落ち度を認定していません(第4の2・3)。
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その他(17件)
令和3年10月28日 大阪地方裁判所 第14刑事部 令和1(わ)5184
- 事件名
- 業務上横領
- 当事者の立場
- 原告=検察/被告=その他(被告人=東証一部上場の不動産会社の代表取締役・個人)
- 何が争われたか
- 学校法人の経営権を取得したい人物が、借りた資金で旧理事側から経営権を得た後、学校の土地を売って手付金で借入れを返すというスキームを組み、手付金21億円が横領された事件で、資金18億円を貸し付けた上場不動産会社の代表者が共謀者として起訴されました。裁判所は、被告人は資金が理事交替に必要なものと認識していたが具体的な使途の認識は立証されておらず、学校法人の債務になると認識していても不合理ではないとして、故意に合理的な疑いが残るとし無罪としました。
- 結論
- 無罪
- この分類に置いた理由
- 第2の6・7で、被告人に横領の故意があったと認めるには合理的な疑いが残るとして無罪としました(他の共犯者による横領自体は争いなく認定されています)。
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令和3年8月25日 大阪高等裁判所 第6刑事部 令和3(う)258
- 事件名
- 業務上横領
- 当事者の立場
- 原告=検察/被告=その他(被告人=学校法人の元理事長・個人)
- 何が争われたか
- 学校法人の経営権を得たいが資金のない被告人が、共犯者から借りた18億円で旧経営陣に支払うなどして理事長となり、学校の土地を31億円余で売却して手付金21億円を共犯者の会社口座経由で送金し横領しました。原判決は懲役5年6月とし、高裁も、計画的で悪質な主犯であり、旧理事長側への10億円は経営権取得という被告人の利益のための支出と評価し、量刑不当の控訴を棄却しました。
- 結論
- 控訴棄却(懲役5年6月の原判決維持)
- この分類に置いた理由
- 3で、被告人が共犯者らと共謀して計画的に手付金21億円を横領した主犯であるとする原判決の認定・評価を是認しました。
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令和6年10月10日 知的財産高等裁判所 令和6(ネ)10044
- 事件名
- 特許権移転登録手続請求控訴事件
- 当事者の立場
- 原告=対象会社/被告=その他(特許権の転得者)
- 何が争われたか
- ヘアーアイロンの特許出願をしていた中小企業で、株式が旧株主から元代表者、さらに別会社へと譲渡された後、元代表者が不存在の株主総会決議で代表者に就いたとして特許を受ける権利を第三者に譲渡し、特許権はさらに大手企業側へ転売されました。会社が転得者に特許権の移転登録を求めたが、裁判所は、虚偽の外観作出に会社側の重い帰責性があり、転得者は善意無過失として民法94条2項類推適用により請求を退けました(控訴棄却)。
- 結論
- 控訴棄却
- この分類に置いた理由
- 転得者は元代表者に代表権がなかったことについて善意無過失と認定され、会社側の請求が退けられたためです。
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令和7年1月14日 東京地方裁判所 刑事第1部 令和5刑(わ)730
- 事件名
- 業務上横領
- 当事者の立場
- 原告=その他(検察官)/被告=その他(被告人=太陽光発電開発会社の代表者・SPCの職務執行者)
- 何が争われたか
- 太陽光発電の開発会社の代表者が、開発案件の事業権利と用地の譲受け(代金5億円)について売主から契約解除の通知を受け紛争になっていることを伏せて、投資会社に案件の特別目的会社(SPC)へ10億円を出資させました。投資会社はSPC持分のほぼ全部を取得し、プロジェクトファイナンスの取得を条件に開発会社が持分80%を10億円で買い取る約定でした。代表者は出資金のうち4億2000万円を自社と別案件の借入返済等に流用し、内容虚偽の請求書等を出しました。裁判所は出資金の使途は案件の開発費に限定されていたと認め、業務上横領罪で懲役6年としました。
- 結論
- 有罪(懲役6年)
- この分類に置いた理由
- 業務上横領の故意と不法領得の意思を認定し、紛争の不告知と内容虚偽の証憑の提出も認定したためです(事実認定の補足説明2(5)・(7)、4)。
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令和7年1月29日 知的財産高等裁判所 令和6(行ケ)10078
- 事件名
- 審決取消請求事件
- 当事者の立場
- 原告=その他(廃業した化粧品店会社の元代表者の承継人)/被告=その他(元取締役の子=新店舗の経営者)
- 何が争われたか
- 老舗化粧品店を営む同族会社が過半数株主の意向で解散・閉店し、存続を望んだ元取締役の子が直後に同じ屋号を含む名称で新店舗を開きました。元代表者側は事業を承継させた事実はないとして商標の取消しを求めましたが、解散時の合意書は屋号の一部使用を認めていました。裁判所は混同のおそれを認めず請求を棄却しました。
- 結論
- 棄却(審決維持)
- この分類に置いた理由
- 第4の4(2):混同のおそれがないため、故意の有無は判断していません。
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令和8年5月18日 東京地方裁判所 東京地方裁判所刑事第15部 令和6刑(わ)1261
- 事件名
- 業務上横領
- 当事者の立場
- 原告=その他(検察官)/被告=その他(被告人=買い手名義人・就任後の代表者)
- 何が争われたか
- コールセンター会社の全株式の約98%を、経営から締め出されていた実質的支配者の指示で被告人が1000万円で譲り受け、その代金が対象会社の口座から送金された件で、被告人が業務上横領で起訴されました。裁判所は、被告人が送金を指示したとも、送金時に会社の資金と認識していたとも認められないとして無罪としました。実質的支配者が被告人を株主・代表者に据えて会社を私物化し、会社は数か月で破産したことが認定されています。
- 結論
- 無罪
- この分類に置いた理由
- 被告人について送金時の故意を認めず無罪とし、過失も認定していません(実質的支配者による私物化は認定しています)。
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令和8年5月7日 静岡地方裁判所 沼津支部 刑事部 令和3(わ)372
- 事件名
- 破産法違反被告事件
- 当事者の立場
- 原告=その他(検察官)/被告=買い手(法人)代表者
- 何が争われたか
- 経営難で競売が相次ぐ離島のホテル会社の株式のほぼ全部を、債務保証業の会社が1円で買い取り子会社化しました。子会社に債権者から破産申立てがあると、買い手の代表者は日付を遡らせた事業譲渡契約書を作ってホテル建物を自社グループへ譲渡済みと装い、敷地の賃貸借も解除させました。裁判所は、株式譲渡で会社全体を取得した以上別途資産を譲り受ける必要はなく建物譲渡の事実はないとして、詐欺破産罪で有罪(執行猶予付き)としました。
- 結論
- 有罪(懲役3年・執行猶予4年)
- この分類に置いた理由
- 被告人に故意及び総債権者を害する目的があったと認定されたためです(第3の5)。
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平成11年6月10日 最高裁判所第一小法廷 平成10(あ)1146
- 事件名
- 証券取引法違反被告事件
- 当事者の立場
- 原告=検察/被告=その他(買い手企業の監査役兼顧問弁護士・個人)
- 何が争われたか
- 上場の織物加工会社の親会社2社が、M&A仲介業者に依頼して紹介された買い手企業に対し、第三者割当増資と親会社保有株の売却によるM&Aを進めました。買い手側で交渉の一切を委任されていた監査役兼顧問弁護士が、公表前に知人名義で対象会社株式を買い付けたとして起訴されました。最高裁は、社長が第三者割当増資を行う方針を決めて外部に明らかにした時点で、実現が確実でなくても「株式の発行を行うことについての決定」に当たるとし、決定はなかったとした原判決を破棄して差し戻しました。
- 結論
- 破棄差戻し
- この分類に置いた理由
- 理由四・五は「決定」の解釈を示して差し戻しただけで、被告人の有罪・故意は判断していません。
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平成13年10月12日 名古屋高等裁判所 平成13(ネ)181
- 事件名
- 損害賠償請求控訴
- 当事者の立場
- 原告=対象会社(法人・非上場の鉄鋼関連会社)/被告=その他(対象会社の元取締役・社長代理だった個人)
- 何が争われたか
- 会社の元取締役が、会社の手形・現金を持ち出したとして会社から返還を求められて敗訴が確定した一方、自分は会社株式の過半等を2億円で買い受け手付金1億円を払ったと主張し、手付倍戻しを被保全債権として会社の不動産を仮差押えし、2億円の支払等を求めて提訴しましたが、売買契約の成立は否定されて敗訴が確定しました。会社はこれらの応訴・仮差押え・提訴が不法行為だとして賠償を求めました。名古屋高裁は、元取締役は領収証等を無権限で作成し手付金受領の事実がないことを知りながら仮差押えと提訴をしたと推認し、弁護士費用等1010万円の限度で賠償を命じました(信用毀損による営業損害は因果関係なしとしました)。
- 結論
- 原判決変更・請求一部認容(認容額:1010万円+遅延損害金)
- この分類に置いた理由
- 第3の3(2)イで、元取締役が領収証等を無権限で作成し手付金受領の事実がないことを知りながら仮差押えをしたと推認しました。
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平成15年10月21日 東京地方裁判所 刑事第4部 平成15特(わ)2997
- 事件名
- 証券取引法違反
- 当事者の立場
- 原告=検察/被告=その他(個人・TOB代理人の証券会社でM&A部門の次長)
- 何が争われたか
- 証券会社の企業提携部(M&A案件を扱う部署)の次長だった個人が、親会社による上場子会社株式の公開買付けの代理人契約を受けた職務の中で公開買付けの決定を知り、公表前に妻名義で対象会社株4800株を買い付けました。裁判所はインサイダー取引を認定し、M&A部門の次長として顧客の秘密を厳正に管理すべき立場にありながら安易に利益を追求したとして、懲役1年2月(執行猶予3年)・罰金70万円・追徴約892万円を言い渡しました。
- 結論
- 有罪(懲役1年2月・執行猶予3年、罰金70万円、追徴891万5293円)
- この分類に置いた理由
- 罪となるべき事実で、公表前に利益を得ようと企てて買い付けた故意の犯行と認定しています(量刑理由)。
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平成15年3月28日 東京地方裁判所 民事第34部 平成13(ワ)16314
- 事件名
- 損害賠償
- 当事者の立場
- 原告=その他(スポーツクラブの会員=再生債権者)/被告=売り手(再生債務者の代表取締役)・その他(申立代理人弁護士)
- 何が争われたか
- 親会社の生命保険会社の破綻で行き詰まった高級スポーツクラブ運営会社(9期連続赤字・約22億円の債務超過)が、民事再生手続の中で銀行をアドバイザーに大手5社の非公開入札を行い、最高条件の同業大手にクラブ事業を2億円で営業譲渡しました。会員らは、譲渡先の選定と価格が親会社の利益のためで不公正だとして、代表取締役と申立代理人弁護士に慰謝料各50万円を求めました。裁判所は、再生計画の認可決定が確定しており、非公開入札や2億円の価格も監督委員の補助の会計士が合理的と評価していることなどから違法はないとして棄却しました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- 譲渡先の選定方法・条件・価格・説明のいずれも合理的で、特定債権者の利益を図る目的などの特段の事情も認められないとして、違法を否定した判断です。
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平成19年7月9日 東京高等裁判所 第15民事部 平成19(ラ)917
- 事件名
- 株主総会決議禁止等仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・米国系投資ファンド)兼株主/被告=対象会社(上場調味料メーカー)
- 何が争われたか
- 米国系投資ファンドが調味料メーカーの全株式を対象に公開買付けを行ったのに対し、対象会社は株主総会の特別決議で、ファンド関係者だけが行使できない新株予約権を全株主に無償で割り当て、ファンド関係者には1個396円の金銭を交付する防衛策を決めました。ファンドは株主平等原則違反・不公正発行として差止めを求めましたが、高裁は、ファンドを濫用的買収者と認め、防衛策には必要性と相当性があるとして抗告を棄却しました。
- 結論
- 抗告棄却(差止め認めず)
- この分類に置いた理由
- 高裁がファンド関係者を濫用的買収者と認め、公開買付けを信義誠実の原則に抵触する不当なものとしたためです(第3の4(3))。
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平成24年6月1日 東京地方裁判所 平成21(ワ)16761等
- 事件名
- 損害賠償請求事件
- 当事者の立場
- 原告=対象会社(出資を受ける側・衛星通信サービスの事業者)/被告=買い手(法人・出資を検討した大手衛星通信事業者とその合弁子会社)
- 何が争われたか
- 衛星通信サービスを国内で提供する事業者が、大手衛星通信事業者から資本参加(出資比率の検討)と業務提携を打診され、独占交渉権を与えて法務・財務のデューデリジェンスに協力しました。大手側は海外の衛星サービス会社との合弁設立に方針を変えて提携を打ち切り、その合弁会社が同じ事業に参入しました。事業者は、DDは提携中止を決めた後の口実で営業秘密を詐取したなどと主張しましたが、裁判所は、DD開始時に中止は決まっておらず、資料は返還済みで、提出情報は営業秘密に当たらないとし、基本合意は出資の確約ではなく期待も法的保護に値しないとして請求を棄却しました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- DDによる詐欺的取得・秘密保持契約違反・妨害をいずれも認めず、期待権侵害も否定したためです(第3の1〜8)。
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平成27年9月11日 東京地方裁判所 平成25(ワ)20534
- 事件名
- 損害賠償請求事件
- 当事者の立場
- 原告=その他(事業を切り出された上場コンサルティング会社)/被告=その他(独立した元役員・元執行役員と設立した新会社)
- 何が争われたか
- 上場コンサルティング会社では、親会社の債務超過で株式が第三者に渡った後、役員持株会が株式を買い戻したが、その帰属をめぐり親会社と役員が対立し、中心の役員が退任して新会社を設立しました。会社は顧客契約の売上の大半を新会社側に支払う業務委託契約を結び、顧問弁護士は株主総会決議が要る事業譲渡ではないと判断していました。その後20名のコンサルタントが退職し、会社は引き抜きや顧客情報の不正使用などを理由に元役員らに合計約12億円の賠償を求めました。裁判所は、大量退職は役員の退任と親会社の支配への不安によるもので引き抜きは認められず、顧客情報の秘密管理性も無いとして請求を棄却しました。
- 結論
- 棄却
- この分類に置いた理由
- 裁判所は引き抜き・営業秘密の不正取得・虚偽説明のいずれも認めず、元役員らの違法を否定しました(第4の2・3)。
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平成28年9月6日 東京高等裁判所 平成27(受)766
- 事件名
- 損害賠償請求事件
- 当事者の立場
- 原告=その他(匿名組合員=出資者)/被告=その他(匿名組合の営業者・その代表者と弟=株式の売主)
- 何が争われたか
- 不動産会社が匿名組合契約で3億円を出資した営業者(コンサル会社)が、その出資金で新会社を設立し、新会社に営業者の代表者とその弟から、会社分割で切り出したパソコンリサイクル事業の会社の株式を1億5000万円で買い取らせました。出資者は利益相反取引で損害を受けたとして賠償を求めました。最高裁は、売主が営業者の関係者で、市場価格がなく出資者が価格決定に関与できず、出資額の半分以上に及ぶ一連の行為は出資者の利益を害する危険が高く、出資者の承諾を得ない限り善管注意義務違反になるとして、承諾の有無を審理させるため差し戻しました。
- 結論
- 破棄差戻し(一部上告却下)
- この分類に置いた理由
- 第4項で承諾がない限り善管注意義務違反と判断しましたが、承諾の有無は未審理のまま差し戻したため、違反は確定していません。
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平成29年7月18日 東京地方裁判所 平成29(ヨ)20068
- 事件名
- 新株発行差止仮処分命令申立事件
- 当事者の立場
- 原告=その他(創業家株主ら)/被告=対象会社(上場会社)
- 何が争われたか
- 同業他社との合併を前提とする経営統合を進める上場石油元売会社に対し、統合に反対し約3分の1の株式を持つ創業家株主らが、公募増資は持株比率を下げて拒否権を奪う不公正発行だとして差止めの仮処分を求めました。裁判所は、経営陣に支配権争いで有利な立場に立つ目的があったと一応推認しつつ、統合相手の株式取得のためのブリッジローン返済という資金調達の必要性が認められ、不当な目的が主要な目的とまではいえないとして申立てを却下しました。
- 結論
- 却下
- この分類に置いた理由
- 経営陣に支配権維持の目的があったと一応推認しつつも主要目的とは認めず、不公正発行(違法)を否定しました。
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昭和35年10月28日 広島高等裁判所 昭和34(オ)1085
- 事件名
- 約束手形金請求
- 当事者の立場
- 原告=その他(約束手形金の請求者)/被告=その他(手形の相手方)
- 何が争われたか
- 約束手形金請求で、上告人は契約の成立を主張しましたが、原審は発電事業譲渡の提案交渉があったことは認めつつ、交渉の結果契約が成立した事実は認められないと判断しました。最高裁は原判決の結論を維持し上告を棄却しました。
- 結論
- 上告棄却
- この分類に置いた理由
- 理由:契約成立を否定したのみで、相手方の主観は判断していません。
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自分の側の役員の判断が問われた判決(2件)
平成22年3月26日 さいたま地方裁判所 第6民事部 平成19(ワ)2817
- 事件名
- 損害賠償等請求事件
- 当事者の立場
- 原告=買い手(法人・上場の時計メーカー)/被告=その他(買収に賛成した買い手の元取締役5名・元代表者の妻)
- 何が争われたか
- 上場の時計メーカーが、債務超過の雑貨販売会社の全株式を創業家から無償で取得し、直後に1億円を増資したが、増資金は対象会社の主要仕入先(メーカーの大株主が経営)への期限前弁済に回り、対象会社は約3か月後に破産しました。メーカーは買収に賛成した元取締役らに損害賠償を求めました。裁判所は、仕入先に資金を還流させる目的までは認めませんでしたが、対象会社が依存する仕入先の財務状況の調査を怠り、監査役会から会計・法務・ビジネスDDの不足を指摘されながら補わずに決議したとして善管注意義務違反を認めました。元代表者が妻に自宅を贈与した行為は詐害行為として取り消されました。
- 結論
- 一部認容(認容額:1億0750万円(連帯)+自宅の贈与取消し)
- この分類に置いた理由
- 判決は元取締役らの特別背任(資金還流目的)を否定し、調査・分析を十分に行わなかった不注意な誤りとして善管注意義務違反を認定しました(第3の1(2)ウ・エ、(3))。
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平成27年6月30日 名古屋地方裁判所 民事第7部 平成24(ワ)1138
- 事件名
- 損害賠償請求事件
- 当事者の立場
- 原告=その他(上場持株会社=映像・音楽ソフトのレンタル等。上場子会社株式の売り手)/被告=その他(元代表取締役会長・元代表取締役社長・元取締役副社長の個人3名)
- 何が争われたか
- 上場会社の元役員3名が、取締役会決議を経ずに、顧問を名乗る人物の関係会社と共同事業コンサルティング・上場子会社株式の譲渡アドバイザリー・複合機導入などの業務委託契約を結び、会社の資金を支出したとして、会社が損害賠償を求めました。子会社株式の譲渡では、売却代金合計約3億0505万円に対し着手金と成功報酬で合計1億1865万円(約38%)を支払っていましたが、裁判所は、業務の実体は株式買受人の紹介以外は不明で報酬に見合う業務提供はなく、1億円未満に分割して取締役会決議を回避したのも合理性がないとして、善管注意義務違反を認めました。他の契約の多くも、人物に不正に金員を得させる目的の架空契約、または自己保身目的の支出と認定され、請求の大部分が認容されました。
- 結論
- 請求一部認容(認容額:合計で元会長4億5265万5000円・元副社長3億3340万5000円・元社長2億8415万5000円(連帯部分を含む)+遅延損害金。うち株式譲渡アドバイザリー契約分は3名連帯で1億2705万円(弁護士費用を含む)+遅延損害金)
- この分類に置いた理由
- 第3の3(被告らの故意又は過失)で株式譲渡アドバイザリー契約の締結・支出について「故意あるいは少なくとも過失」を認めるにとどまり、故意を確定していません(他の契約は第3の4〜8で不正目的の架空契約・自己保身の故意を認定しています)。
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仲介会社が巻き込まれた事例(判決以外)
裁判所が公開している判決には、仲介会社が当事者になった会社売買の判決はありませんでした。判例誌が紹介した未公開の判決1件と、国の処分、会社の開示、報道、本で確認できたものです。
相手が知っていたと認定された
- 2025年1月24日 中小企業庁が株式会社M&A DX の登録を取消し。処分理由は「資金力に疑義がある不適切な買手であることを認識しながらM&Aを成立させた」等(公表文)
確認・対応に問題があったとされた
- 2024年10月 不適切な譲り受け側とのM&Aを支援した15の登録機関に注意(名称非公表)
- 2025年1月24日 同じく6社に注意(名称非公表)
- 2025年3月14日 同じく1社に注意(名称非公表)
相手の問題は認定されなかった
- 東京地裁 令和2年9月23日(判決原文は未公開・事件番号不明):上場会社による株式の買い取りで仲介契約を結んだ公認会計士が報酬の残り約5,200万円を請求し、報酬の計算方法の合意が認められず棄却。買い手の反訴(約3億5,000万円・現金主義の会計処理を告げなかったとして)も、資料に記載があり買い手が知り得たとして棄却(週刊T&Amaster 2020年11月9日号の紹介)
争い中・認定なし
- 2024年11月 株式会社イー・ロジットが、売り手の代表者とM&A総合研究所を提訴(約3.17億円)。M&A総合研究所は「スラップ訴訟と考えられる」と表明(ロジ・トゥデイ、同社の発表)。2026年9月9日の時点で係属中。なお、売り手の代表者がイー・ロジットの開示を名誉毀損として訴えた訴訟(2024年7月提訴)は、2026年8月18日に東京地裁が請求を棄却し確定(イー・ロジットの2026年9月9日の適時開示)
- 2025年11月 マイスホールディングスがM&A総合研究所を提訴(1億1,959万9,533円・山本設備産業〔『社喰い』での仮名〕の件)。M&A総合研究所は「当社に落ち度は一切ない」と回答(『社喰い』)
- 2026年7月 2023年の株式譲渡の売り手(個人と会社)が、買い手とジャパンM&Aソリューションを提訴(約8.16億円)。同社は契約上、責任は故意・重過失に限られ、上限は受領報酬23,755,732円と主張(同社の臨時報告書)
- 2024年 仲介会社が案件を中止した後、売り手と買い手が直接契約した例(『社喰い』・東京商工リサーチ)。時系列は APPENDIX D
- 『社喰い』によれば、仲介会社の社内で取引を断る判定が出た後、別の法人の名前で買収が続けられた(買い手側の前社長の証言)
紹介者(金融機関・公的センター)が関わった事例
争い中・認定なし
- 内田建設(東京都):メインバンクの信用金庫が仲介会社を紹介。トラブルの後、同金庫は預金の相殺と競売の申立て(『社喰い』、ダイヤモンド・オンライン)
- 公的な事業承継・引継ぎ支援センターが関わった案件で、保証が外れなかった例が2件(新潟県・大阪府。『ルポ M&A仲介の罠』)
紹介した側の責任が判決や国の処分で判断された公開資料は、見つかりませんでした。
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APPENDIX D 仲介会社が降りた後に直接契約された例の時系列
『社喰い』(片田江康男、ダイヤモンド社、2026年)の記述による時系列です。売り手の会社と関係者は、同書でも仮名です。面談の場所は頭文字に、売り手の会社の出来事の日付は「上旬・中旬」の形にしました。正確な場所と日付は、同書に記載されています。詳しい経緯は同書をご覧ください。
| 日付 | 売り手の会社と仲介会社 | 買い手(マイスホールディングス)とルール |
|---|
| 2023年10月 | 売り手の社長がM&A総合研究所の担当者と初めて面談 | |
| 2023年11月 | M&A総合研究所とアドバイザリー業務契約 | |
| 2024年初め | M&A総合研究所が買い手としてマイスホールディングスを紹介 | |
| 2024年4月上旬 | 1回目の面談(ホテルHの会議室)。M&A総合研究所の担当者がお膳立て | |
| 2024年6月 | | M&A総合研究所を通じて3社を買収 |
| 2024年7月初め | | M&A総合研究所が社内に通知(マイスとの案件は中止。進めるならアドバイザリー契約を解除して当事者同士で) |
| 時期は不明 | M&A総合研究所との契約を解除(同社「売主様・買主様双方にご説明の上、合意を頂いた上で仲介契約を解約しております」/売り手「リスクについて説明はありませんでした」) | |
| 2024年8月上旬 | 2回目の面談(空港Hの会議室)。M&A総合研究所の担当者も同席 | |
| 2024年8月中旬 | 株式をマイスホールディングスに売却(仲介なし・当事者同士の契約) | |
| 2024年8月中旬 | 売却の翌日、会社の口座から4,000万円を送金 | |
| 2024年8月30日 | | 中小M&Aガイドライン 第3版 |
| 2024年10月1日 | | 特定事業者リストの運用開始 |
| 2024年12月中旬 | 代表者が別の人物に替わる | |
| 2024年12月末 | 資金が足りなくなる(流出は合わせて約1億1,989万円) | |
| 2025年1月中旬 | 創業家が代表に戻る(登記) | |
| 2025年2月上旬 | 売り手の会社が、マイスホールディングスと前社長ら7者を提訴 | |
| 2026年2月 | 裁判所が新しい代表者の側の主張を認める。会社としての訴訟も終わる | |
APPENDIX E 会社のお金を取り戻す法律の手段
いずれも、誰かが裁判所に申し立てないと動きません(条文は2026年10月3日にe-Gov法令検索で確認)。
| 手段 | 誰が | 何ができるか |
|---|
| 詐害行為取消権(民法424条) | 会社の債権者 | 債権者を害すると知りながら行われた財産の移転を、取り消すよう求める |
| 否認権(破産法160条ほか) | 破産管財人 | 破産の前に会社から出ていった財産を取り戻す |
| 役員等の第三者に対する責任(会社法429条) | 会社の債権者など | 役員に悪意または重大な過失があったとき、その役員個人に賠償を求める |
| 会社分割で残された債権者の請求(会社法759条4項・764条4項) | 分割した会社に残された債権者 | 害すると知りながら行われた分割について、承継した会社に、承継した財産の価額を限度に支払いを求める |
APPENDIX F 調べ方と出典
- 国の公表:中小企業庁・M&A支援機関登録制度事務局の公表文(2024年5月、2024年8月30日、2025年1月24日、2025年3月14日、2026年9月1日)。中小M&Aガイドライン 第3版(2024年8月)。
- 金融庁:「『経営者保証に関するガイドライン』等の活用実績」、主要行等向けの総合的な監督指針。
- 裁判例:裁判所の裁判例検索で2026年10月1日〜2日に取得した判決のうち、会社や事業の売買に関係する110件を全文で読み分けました。税務の判決は対象外です。
- 報道:朝日新聞、日本経済新聞、東洋経済オンライン、ダイヤモンド・オンライン、日経ビジネス、共同通信の配信、地方紙、東京商工リサーチなど。記事を開いて見出しと日付を確かめたものだけを対象にしました。有料記事は、無料で公開されている範囲だけを使っています。
- 本:藤田知也『ルポ M&A仲介の罠』(朝日新聞出版、2025年7月)、片田江康男『社喰い』(ダイヤモンド社、2026年7月)。
- M&A支援機関協会:特定事業者リストの説明ページ、協会の名称変更と自主規制ルールの改正に関する発表(2024年9月)。
監修・執筆責任者
株式会社日本財務戦略センター 代表取締役。京都大学経済学部経営学科(マーケティングゼミ専攻)卒。損害保険ジャパン本店営業部(企業リスク・法務)を経て、東証上場M&A仲介会社にて多数の成約に従事。2020年に株式会社日本財務戦略センターを創業し、M&A・事業承継・財務戦略を専門としています。日本CFO協会認定 プロフェッショナルCFO M&Aエキスパート/中小企業庁 M&A支援機関登録事業者/一般社団法人M&A支援機関協会 正会員/中小M&Aガイドライン第3版 遵守宣言済です。
この記事は、2026年10月3日時点で公表されている国の資料、裁判所が公開している裁判例と統計、金融庁・中小企業庁の統計と指針、無料で公開されている報道、2冊の書籍(藤田知也『ルポ M&A仲介の罠』朝日新聞出版、片田江康男『社喰い』ダイヤモンド社)をもとに集計・整理したものです。トラブルの発生件数や発生率を推計したものではありません。判決の分類は、各判決が相手について何を認定したかに従ったもので、日本財務戦略センターが法的に判断したものではありません。報道と書籍の内容は各出典によるもので、株式会社日本財務戦略センターが事実を確かめたものではありません。特定の会社や個人の信用や違法性を評価するものでもありません。株式会社日本財務戦略センターは仲介とFAを行い、M&A支援機関登録制度に登録し、一般社団法人M&A支援機関協会の正会員です。個別の契約や紛争については、弁護士などの専門家にご相談ください。
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