
M&A仲介の最大手、日本M&Aセンターが仲介した案件で、担当者が「経営者保証の解除が済んでいない」事実を隠そうとしていたことが、2026年9月に報じられました。同社は元社員を解雇処分とし、報酬の見積もりを書面で示していなかったことも認めています。
この記事では、会社の発表と、無料で公開されている報道の範囲だけを使い、会社自身が元社員の「極めて重大な行為」と認めたこの不祥事の、どこが問題だったのかを論点ごとに整理します。そのうえで、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」と、業界団体であるM&A支援機関協会の自主規制ルールが仲介会社に何を求めているかを、売り手が自分で確かめられるチェックリストにまとめました。
なお、中小M&Aガイドラインは中小企業庁が定めた指針で、協会の自主規制ルールは協会が会員に向けて定めた決まりです。どちらも法律そのものではありません。守らなかった場合の扱いは、それぞれ登録制度の取消しや協会の措置として定められており、民事上の責任があるかどうかは個別の事情によって判断されます。
日本財務戦略センターも、M&A支援機関協会の正会員で、後で説明する特定事業者リストの「本制度参加会員」です。同じ業界の一員として、評価の言葉は控え、公表された事実と制度の定めを並べることにとどめます。
<a href="https://jfsc.jp/research/nihon-ma-center-keieisha-hoshou/">日本M&Aセンターの経営者保証をめぐる件は、どこが問題だったのか ── 公表された事実と、ガイドライン・自主規制ルールから整理する|株式会社日本財務戦略センター</a>文章での出典表記:株式会社日本財務戦略センター「日本M&Aセンターの経営者保証をめぐる件は、どこが問題だったのか ── 公表された事実と、ガイドライン・自主規制ルールから整理する」(2026年9月30日) https://jfsc.jp/research/nihon-ma-center-keieisha-hoshou/公表されている事実を、時期の順に並べます。
| 時期 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 2025年11月 | 東北地方で保育園や障がい児支援施設を営む会社(売上10億円超)の株式が譲渡される。仲介は日本M&Aセンター | 朝日新聞 2026年9月14日(無料公開部分) |
| 2026年6月24日 | 譲渡した創業者の代理人の弁護士が、日本M&Aセンターに通知書を送る。1億円を超える経営者保証が解除されていないことなどを指摘 | 同上 |
| 2026年7月 | 日本M&Aセンターが、担当していた元社員を解雇処分とし、上長も処分する | 日本M&Aセンターホールディングス「一部報道について」(2026年9月14日) |
| 2026年9月14日 | 朝日新聞が報じ、同日、会社が上記の説明を公表して謝罪(「深くお詫び申し上げます」) | 同上 |
| 2026年9月28日 | 朝日新聞が、成功報酬の見積もりを書面で示していなかったことを報じ、会社も書面で示していないことを認める | 朝日新聞 2026年9月28日(Yahoo!ニュースで全文公開) |
本記事の内容は、出典リンクつきでご自由に引用いただけます(CC BY 4.0・出典に「株式会社日本財務戦略センター(JFSC)」の名称を明記)。コピー用の引用タグは ページ冒頭の枠 にあります。
会社の発表によると、元社員は売り手の担当者(発表では「譲渡企業担当者」)でした。成約後、会社の別の部署が経営者保証の解除を確認する電話をかけた際に、実際には保証が未解除なのに、事実と異なる「保証解除済み」という回答をするよう、売り手と買い手の関係者に働きかけていました。目的は、買い手がM&A支援機関協会の「特定事業者リスト」に登録されるのを避けることだった、と会社自身が説明しています。
経営者保証が期限までに外れないことは、買い手と金融機関の交渉しだいで起こり得ます。今回、会社が元社員の行為として問題にしているのは、解除されていない事実を確かめる仕組みがありながら、その確認をすり抜けるよう関係者に働きかけたことです。会社は発表の中で、この行為を「売主の重要な利益に直結する経営者保証解除を阻害し」たものとも書いています。
特定事業者リストは、M&A支援機関協会が2024年10月1日に始めた、不適切な買い手の情報を業界で共有する仕組みです。2025年4月1日には、中小企業庁の文書「不適切な譲り受け側に係る情報共有の仕組みについて」に合わせて大きく改められました(協会の説明ページ)。
登録される理由は、協会の規約で決まっています。経営者保証に関するものは次のとおりです。
このほか、分割払いの対価や退職慰労金の不払い(4号事由)、悪質な行為(5号事由)も登録の理由になります。1〜4号にあたるときは、協会に報告された時点ですぐに登録されます。5号は、協会の調査と買い手の弁明を経て判断されます。
経営者保証は、M&Aが成立しても自動的には外れません。外すには、買い手が借入先の金融機関と交渉して、保証人を差し替えるか、借り換えや返済をする必要があります。
また、「60営業日」は、金融機関がその期間内に解除しなければならないという意味ではありません。最終契約で解除を合意していたのに、その期間を過ぎても解除されていなければ買い手の登録事由になる、という定めです。当事者どうしで解除の期限を延ばす合意をしても、登録は止まりません。反対に、最終契約で「解除の対象外」と明確に合意した保証は登録の対象になりませんが、条件付きの解除や努力義務の合意は対象になります(協会FAQ 問2・問4)。
登録されるのは、社名、法人番号、代表者名、役員名、登録日、登録の理由などで、最低でも10年間残ります。リストを見られるのは協会の会員などの利用者(2026年9月25日時点で134社)で、一般には公開されていません。利用者は、新しい案件を引き受けるかどうかを判断するときに、このリストを使います。
大事なのは、この仕組みが会員からの報告で動くことです。案件を担当した会員が、登録の理由が生じたことを知ったら協会に報告しなければならず、そこで初めて登録されます。今回の元社員の行為は、この報告の入り口をふさぐものでした。会社自身も、発表の中で「特定事業者リストの実効性を揺るがしかねない、極めて重大な行為」と書いています。
9月28日の報道によると、売り手は担当者と「(最低報酬額の)2千万円程度」と話した覚えがありました。ところが、具体的な金額は株式譲渡の翌日にメールで届いた請求書で初めて示され、税込みで6千万円を超えていました。会社は「概算額は口頭で説明したと考えている」としつつ、見積もりを書面で示していないことは認めています。
書面で示すことは、三つの段階で求められていました。
報酬の額が最終的に決まるのは成約の後です。それでも、同社の成功報酬(仲介手数料)は、譲渡価額ではなく譲渡企業の「時価総資産額」を基準にするレーマン方式です(同社の料金ページ)。料率は、5億円以下の部分が5%、5億円超10億円以下の部分が4%、10億円超50億円以下の部分が3%と段階的に下がります。基準が決算書の総資産なので、譲渡価額がいくらで着地するかにかかわらず、成約の前から報酬はかなりの精度で試算できます。
請求額から逆算すると、税込み6千万円(税抜き約5,450万円)になるのは、時価総資産がおよそ13億円の場合です(5億円×5%+5億円×4%+約3.2億円×3%)。売り手が覚えていた2千万円は、時価総資産4億円の場合の報酬にあたります。これは公表された金額と料率からの試算で、実際の資産の額は公表されていません。
報道によると、契約前の重要事項説明をしたのは、担当者とは別の経験の長い上席社員でした。この社員も試算書は作っていなかったとみられています。最低報酬の話が出ていたことはうかがえますが、この案件の総資産ならいくらになるか、という説明までしたのかどうかは分かりません。
試算書を手渡したときに控えを残す、メールで送るときに管理部門を宛先に加える、といった確認の仕組みがあれば、今回のような「口頭で説明した」「聞いていない」という食い違いを防げた可能性があったのではないでしょうか。公表された経緯からは、担当者個人の説明だけでなく、決まりが守られたかを会社として確認する手順が十分に機能したのか、という管理体制上の論点も生じます。
会社が公表している確認の手順は、買い手の資力の確認、保証解除の確実性の確認、最終契約書への期限の明記、成約後の保証解除の全件確認で、いずれも資金と経営者保証に関するものです。報酬の説明が書面で行われたかを確かめる手順は、公表された内容には含まれていません。
確認の手順が、成約後という出口の側だけでなく、契約を結ぶ入口の側にもあれば、説明の食い違いは起きにくくなります。ただ、この件でも契約前の重要事項説明は行われていました。料率や最低報酬を書面で読み上げるだけでは、売り手が「自分の会社ならいくらになるか」をつかめるとは限りません。売り手と信頼関係を築いている段階で、担当者の口から具体的な額を切り出すのは、実務では難しい面もあります。
方法の一つは、契約書や試算書に、料率表だけでなく計算例を載せておくことです。たとえば同社の料率なら、時価総資産が4億円のとき報酬は税抜き2千万円、約13億円のときは税抜き約5,450万円になります。計算例が双方の署名する契約書に載っていれば、売り手は契約の時点で自分の会社がどのあたりになるかを見当づけられ、後から「聞いていない」という食い違いも起きにくくなります。計算例を契約書そのものに載せている仲介会社もあり、例えば弊社、日本財務戦略センターも、アドバイザリー契約書に報酬の計算例を記載しています。試算書を管理部門から送るなど、担当者個人に任せず会社の手順として組み込むことにも、担当者が額を切り出しにくいという難しさを取り除く意味があると考えられます。
ご自身の会社の場合にレーマン方式の報酬がいくらになるかは、日本財務戦略センターの報酬シミュレーターで試算できます。
会社の発表によると、日本M&Aセンターでは成約後、すべての案件について、担当のコンサルタントとは別の部署が経営者保証の解除状況を電話で確認していました。受託の審査で買い手の資金力を確かめる、基本合意の段階で資金調達と保証解除の確実性を確かめる、最終契約書に保証解除の期限を書く、といった確認も設けていたとしています。
元社員は、この確認の電話をすり抜けるために、売り手と買い手の関係者に口裏を合わせてもらう必要がありました。売上を上げる側(アクセル)とは別に、止める側(ブレーキ)が形だけでなく存在していたことは、公平のために書いておくべき点です。
ただ、公表されている流れを見ると、実際に問題が表に出たのは、売り手の代理人の弁護士からの通知書がきっかけでした。ブレーキはあったものの、担当者が意図してすり抜けようとした場合には止めきれなかった、ということになります。会社も「このような事態を未然に防止し、また早期に検知することができなかったことを管理体制上の課題として重く受け止めて」いると書いています。
この件で最も分かりにくいのは、動いたのが売り手の担当者だったことです。
経営者保証を外すのは買い手の仕事で、外れなければ特定事業者リストに載るのも買い手です。一方で、成約後に確認の電話を受けるのは保証人である売り手です。「解除済みと答えてください」と頼める立場にいたのは、売り手と日頃やりとりをしていた売り手の担当者でした。
売り手の担当者は、ソーシングの段階から売り手とやり取りし、案件を進める立場です。そのため、一般的には売り手側の利益を守る立場だと考えられます。それにもかかわらず、公表された内容では、買い手が特定事業者リストに登録されることを避けるために動いていたとされています。なぜそこまでしたのかは、公表されていません。同社は売り手と買い手で担当者を分けていますが、同じ案件の買い手の担当者が、売り手の担当者からどのような役割を求められていたのか、事情を知っていたのかも、明らかになっていません。処分が公表されているのは元社員とその上長だけです。調査の続報が待たれます。
担当者を分けるのは、交渉で一方に肩入れしないための工夫です。担当が分かれていること自体が今回の問題の原因だったとまでは、公表資料から判断できません。ただ、経営者保証の解除は、保証人は売り手、外すのは買い手という形で両方にまたがる仕事です。成約後にこの約束を最後まで見届ける責任を誰が負うのかを明確にしておくことには、実務上の意味があります。
中小M&Aガイドラインは、仲介者が「不当に一方当事者の利益又は不利益となるような利益相反行為を行ってはならない」としています(pp.99-100)。担当者が特定の買い手に有利になるよう動いたのであれば、この定めに照らして問題になり得ます。どちらだったのかは、まだ分かりません。
会社の発表は「社内調査を実施し、2026年7月に同元社員を解雇処分としました」としています。懲戒によるものかどうかは書かれていません。
会社が経緯を公表したのは、解雇処分から約2か月後、報道の当日でした。
解雇後の元社員からどのように事情を聴いているのか、第三者を含む追加の調査を行うのか、解雇に至るまでの調査を誰がどの範囲で行ったのかなど、調査の方法については公表されていません。
M&A支援機関協会の代表理事は、日本M&Aセンターの代表取締役会長である三宅卓氏です(協会のサイト、2026年9月30日時点)。9月28日の報道によると、協会は内容を確認して対応を検討するとしています。
協会が2025年10月に施行した措置規程では、自主規制ルールに違反した会員への措置として、戒告、是正命令、資格停止、退会勧告、除名などが定められています。そのうえで、「理事が対象会員又はその関係会社の役職員である場合は、当該理事は本条の手続きに関与できない」(第4条4項)としています。規程の上では、代表理事はこの件の手続きに関われません。
問われるのは、この規程どおりに手続きが進んだことが、ほかの会員や顧客から見て分かる形で示されるかどうかです。協会は2022年3月にも、日本M&Aセンターに対して売上高の不適切な計上を理由に勧告を出しており、三宅氏は同じ日に代表理事を辞任しています(協会の公表文)。当時の件の経緯は、日本財務戦略センターの2022年の記事で整理しています。
日本M&Aセンターは、中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録し、手数料体系を公表しています(登録データベースの内容を整理したページ)。登録した支援機関は中小M&Aガイドラインを守ることになっており、顧客の利益を害する事実やそのおそれがある場合には、登録が取り消されることがあります。取り消されると公表され、最長2年間は再び登録できません(登録制度の公募要領・取消要領)。
中小企業庁は、2025年1月24日に、資金力に疑いのある不適切な買い手と知りながらM&Aを成立させたとして、登録支援機関1社の登録を取り消し、社名を公表しています。一方、2026年9月1日の注意喚起では、事業者の名前を伏せて所在地の都道府県だけを公表し、同じような事案が再び確認された場合には「社名公表や登録の取消しを含めた対応を検討します」としています。今回、中小企業庁が処分の対象にするのか、するとして名前を公表するのかは、業界全体への信頼にも関わるため、注目されるところです。
中小企業庁は、M&A仲介の資格制度も検討しています。2026年7月21日の検討会(第5回)の資料では、倫理や行為規範の講習を必須にし、登録者の名前を公表し、倫理違反があれば登録を取り消す、という案が示され、法制化を目指す方向性が示されています。ただ、この案が縛るのは個人の行為です。今回のように、会社の中で成約が評価される仕組みの中で起きた問題に、資格制度がどこまで手を届かせられるかは、まだ見えていません。
中小M&Aガイドライン(第3版)は、報酬の書面での説明(p.88)や利益相反の禁止(p.99)のほかに、買い手の調査と、不適切な買い手の情報の共有についても、仲介者に次のことを求めています。
| 求められていること | 原文の頁 |
|---|---|
| 仲介契約の前に、買い手についてどのような調査をするのか、その概要を売り手に説明する。遅くとも最終契約の前までに調査し、リスクを見つけたら売り手に報告して協議する | pp.101-102 |
| 不適切な買い手の情報を得たら、担当者の段階にとどめず組織として共有し、その買い手への支援を慎重に検討する体制をつくる | p.102 |
| 業界内の情報共有の仕組み(特定事業者リストなど)に参加しているかどうかを、契約の前に依頼者に説明する | p.103 |
今回の件は、この情報共有の仕組みに報告が上がる前の段階で、確認をすり抜けようとしたものでした。ガイドラインが仲介者に求めていることの全体(契約前の17項目、手数料、利益相反、経営者保証など)は、中小M&Aガイドライン第3版が仲介会社に求めていること(原文の頁つき)で一覧にしています。
2026年9月30日時点で公表されていることと、公表されていないことを分けると、次のとおりです。この件の評価は、今後の調査や公表の内容によって変わる可能性があります。
| 公表されていること | 公表されていないこと |
|---|---|
| 元社員を解雇処分とし、上長も処分した | 解雇が懲戒によるものか、元社員がなぜそうしたのか |
| 元社員には、業務プロセスに反するほかの行為も確認された | その行為の中身 |
| 保証は解除されていなかった | 買い手と金融機関の交渉の経緯 |
| 売り手の担当者が、買い手の登録回避を働きかけた | 買い手の担当者が何を知っていたか |
| 報酬の試算書を書面で示していなかった | 契約前に、口頭でどこまで説明したか |
| 会社は管理体制上の課題を認め、再発防止策を講じている | 同じような案件がほかにあったか |
| 協会は対応を検討している | 協会と中小企業庁が最終的にどう判断するか |
中小M&Aガイドラインと協会の自主規制ルールが仲介会社に求めていることを、売り手が確かめる順に並べました。
| 時期 | 確かめること | 根拠 |
|---|---|---|
| 仲介契約の前 | 報酬の料率、基準となる額(譲渡額・純資産・移動総資産など)、最低手数料、発生のタイミングを書面で説明されたか | 中小M&Aガイドライン p.88 |
| 仲介契約の前 | 自分の会社の場合にいくらになるか、試算書(計算書)を受け取ったか | 協会 契約重要事項説明規程 第七条 |
| 仲介契約の前 | 仲介会社が買い手からも手数料を受け取るか、その内容の説明があったか | 中小M&Aガイドライン p.91 |
| 仲介契約の前 | 仲介契約書に、利益相反の禁止行為(一方当事者への便宜、情報の秘匿など)を行わない義務が書かれているか | 中小M&Aガイドライン pp.99-100 |
| 交渉の間 | 経営者保証について、弁護士や借入先の金融機関に事前に相談できると説明されたか。その相談先が秘密保持の対象から外されているか | 中小M&Aガイドライン pp.96-97 |
| 最終契約の前 | 最終契約書で、保証の解除が買い手の「義務」になっているか(「努力義務」になっていないか)、期限があるか | 協会 広告・営業規程 第十二条の二、中小M&Aガイドライン pp.96-97 |
| 最終契約の前 | 保証の扱いについて書面で説明を受け、確認書に署名したか | 協会 広告・営業規程 第十二条3項 |
| 成約後10営業日 | 買い手が金融機関に保証解除の相談をしたか | 特定事業者リスト 2号事由 |
| 成約後60営業日 | 保証が実際に解除されたか | 特定事業者リスト 1号事由 |
| 成約後 | 仲介会社からの確認には、解除されていなければ「されていない」と事実どおり答える | 特定事業者リストの仕組み |
| 困ったとき | 中小企業庁の情報提供受付窓口に寄せられる(匿名も可。紛争の解決はしない) | M&A支援機関登録制度 |
| 困ったとき | M&A支援機関協会の苦情相談窓口に相談できる(協会の幹事会員・正会員の支援に関する苦情と、不適切な買い手についての情報提供を受け付ける) | M&A支援機関協会 |
登録制度に登録した支援機関は、顧客がこの窓口に情報を寄せたことだけを理由に、秘密保持義務違反として訴えるなどの不利益な扱いをしないと約束しています(公募要領)。
Q. 日本M&Aセンターで2026年9月に報じられた不祥事は、どのような内容ですか
同社の元社員(売り手の担当者)が、M&Aの成立後に経営者保証の解除状況を確かめる社内の電話確認に対して、実際には解除されていないのに「保証解除済み」と虚偽の回答をするよう、売り手と買い手の関係者に働きかけていた件です。目的は、買い手がM&A支援機関協会の「特定事業者リスト」に登録されるのを避けることだったと、会社自身が2026年9月14日に公表しています。9月28日には、成功報酬の見積もりを書面で示していなかったことも報じられ、会社も書面で示していないことを認めています。
Q. 日本M&Aセンターの元社員は懲戒解雇されたのですか
会社の発表は「2026年7月に同元社員を解雇処分としました」としており、懲戒解雇かどうかは書かれていません。上長についても「厳正な処分」を行ったとしていますが、処分の内容は公表されていません。
Q. この件で、M&A支援機関協会や中小企業庁による処分は出ていますか
2026年9月30日時点で、M&A支援機関協会と中小企業庁のどちらからも、この件についての措置は公表されていません。9月28日の報道によると、協会は内容を確認して対応を検討するとしています。協会の措置規程では、会員の役職員を兼ねる理事は手続きに関与できないと定められています。中小企業庁のM&A支援機関登録制度には、登録の取消しと公表の仕組みがあります。
Q. M&Aで会社を売れば、経営者保証は自動的に外れますか
外れません。経営者保証は、会社の借入について経営者個人が金融機関と結んでいる保証の契約で、株式を譲渡しただけでは解除されません。外すには、買い手が借入先の金融機関と交渉して、保証人を差し替えるか、借り換えや返済をする必要があります。最終契約で解除を合意していても、実際に解除されたかどうかは別に確かめる必要があります。
Q. M&Aで経営者保証が残るのは危険ですか
解除されないまま会社を譲り渡すと、経営から離れた後も、会社の借入について売り手個人の保証が残ります。買い手のもとで会社が返済できなくなった場合、保証人として請求を受ける可能性があります。そのため、最終契約の前に、解除を買い手の義務とする条項と期限があるかを確かめ、成約後も実際に解除されたかを確認することが大切です。M&A支援機関協会の特定事業者リストでは、解除を合意していたのに実行日から60営業日を過ぎても解除されない場合などに、買い手が登録されます。
Q. 会社を売る前に、経営者保証について何を確認すればよいですか
最終契約書で、保証の解除が買い手の「義務」になっているか(「努力義務」になっていないか)、解除の期限が書かれているかを確かめてください(協会 広告・営業規程 第十二条の二)。弁護士や借入先の金融機関に事前に相談できることも、仲介者が説明すべき事項です(中小M&Aガイドライン pp.96-97)。成約後は、実行日から10営業日以内に買い手が金融機関に相談したか、60営業日以内に実際に解除されたかを確かめます。成約後に誰がいつ解除を確認するのかを、仲介会社に事前に聞いておくと安心です。
Q. M&Aで経営者保証をめぐるトラブルを防ぐには、どうすればよいですか
最終契約書で、保証の解除を買い手の「義務」とし、期限を書いておくことが出発点です(協会 広告・営業規程 第十二条の二)。期限までに解除されなかった場合の扱いは、署名の前に弁護士と確認しておくと安心です。成約後は、保証が外れたことを金融機関からの書面などで確かめてください。仲介会社から確認の連絡があれば、外れていなければ「外れていない」と事実どおり答えます。今回の件のように、担当者から事実と異なる回答を求められたときは、その場で応じず、やり取りを記録に残して、仲介会社の別の窓口や弁護士、中小企業庁の情報提供受付窓口に相談してください。今回の件も、会社の確認の電話はすり抜けられ、問題が表に出たのは、売り手の代理人の弁護士が送った通知書がきっかけでした。
Q. 特定事業者リストとは何ですか
M&A支援機関協会が2024年10月1日に始めた、不適切な買い手の情報を協会の会員などで共有する仕組みです。経営者保証の解除を合意していたのに、M&Aの実行日から60営業日を過ぎても解除されない場合や、10営業日を過ぎても買い手が金融機関に解除の相談をしない場合などに、担当した会員が協会に報告し、買い手が登録されます。登録された情報は最低10年間残り、一般には公開されていません。
Q. 仲介会社に成功報酬の見積もりを書面で求めることはできますか
求めることができます。中小M&Aガイドライン(第3版)は、報酬の料率、基準となる額、最低手数料、発生のタイミングを書面を交付して説明することを仲介者に求めています(p.88)。M&A支援機関協会の自主規制ルールは、会員に対し、報酬がどれくらいになるかの計算書(試算書)を契約時に示すことを求めています(契約重要事項説明規程 第七条)。
Q. 最終契約書で経営者保証の解除が「努力義務」になっていたら、どうすればよいですか
M&A支援機関協会の自主規制ルールは、最終契約書の案に経営者保証の解除を買い手に義務付ける条項を入れること、買い手が努力義務に弱めようとした場合には会員が売り手に積極的に助言することを求めています(広告・営業規程 第十二条の二)。中小M&Aガイドラインも、弁護士や借入先の金融機関に事前に相談できることを説明するよう仲介者に求めています(pp.96-97)。署名の前に、弁護士に契約書を確認してもらうことをおすすめします。
Q. M&A仲介会社とのトラブルや、対応に問題があると感じたときは、どこに相談できますか
相談先は主に三つあります。中小企業庁のM&A支援機関登録制度には、情報提供受付窓口があります(Webで受付・匿名でも可)。窓口は個別の紛争を解決するものではありませんが、寄せられた情報は登録の取消しなどの判断に使われます。登録制度そのものについての問い合わせ先は、M&A支援機関登録事務局(電話03-4570-8692、平日10時〜17時)です。仲介会社がM&A支援機関協会の会員であれば、協会の苦情相談窓口にも相談できます。個別の請求や交渉については、弁護士にご相談ください。
<a href="https://jfsc.jp/research/nihon-ma-center-keieisha-hoshou/">日本M&Aセンターの経営者保証をめぐる件は、どこが問題だったのか ── 公表された事実と、ガイドライン・自主規制ルールから整理する|株式会社日本財務戦略センター</a>文章での出典表記:株式会社日本財務戦略センター「日本M&Aセンターの経営者保証をめぐる件は、どこが問題だったのか ── 公表された事実と、ガイドライン・自主規制ルールから整理する」(2026年9月30日) https://jfsc.jp/research/nihon-ma-center-keieisha-hoshou/この記事は、2026年9月30日時点で公表されている会社の発表、無料で公開されている報道、中小企業庁と一般社団法人M&A支援機関協会の公開資料だけをもとに整理したものです。特定の会社や個人を評価したり、非難したりするものではありません。報道で伝えられた内容は報道時点のもので、調査の結果によって変わる可能性があります。株式会社日本財務戦略センターは一般社団法人M&A支援機関協会の正会員であり、特定事業者リストの本制度参加会員です。個別の契約や紛争については、弁護士などの専門家にご相談ください。
記載に誤りがある可能性があります。お気づきの点がありましたら、お問い合わせよりご連絡ください。速やかに確認のうえ対応いたします。
横にスクロールして拡大部分を見られます。クリックで閉じる