2021.12.06 M&A実務 プロセス手順

日本政府の中小企業M&A推進政策——税制・規制・自主規制の三層構造を経営者目線で読み解く

本記事は宅地建物取引業(宅建業・不動産会社・不動産業者・賃貸管理業)のM&A・事業承継に関する実務情報です。個別事案により判断が異なるため、具体的なご相談は弁護士税理士公認会計士等の専門家へご確認ください。

📌 3行まとめ

  • 日本政府の中小企業M&A推進政策は、後継者不在という構造課題に対応するため、「市場の量的拡大」から「市場の質の確保」へと重心を移し、税制・規制・自主規制の「三層構造」で重層的に整備されています。
  • オーナー経営者は、この三層構造を理解することで、事業承継税制補助金といった「追い風」を最大限活用し、M&A支援機関の選定や経営者保証の解除といった「守り」を固めることができます。
  • 本記事は、60代を中心とするオーナー経営者の皆様が、複雑な制度を「自社の選択肢」に翻訳できるよう、この三層構造の全体像と各論点を、経営者目線で読み解きます。

Table of Contents

序論:政策の重心は「市場拡大」から「市場の質」へ——三層構造で全体像を掴む

この章のポイント
2020年以降、政府の中小企業M&A推進政策は急速に整備されてきました。その全体像は、(1)税制、(2)規制、(3)自主規制という「三層構造」で理解するのが最も実践的です。本記事ではこの三層構造を羅針盤として、複雑な政策群を経営者の皆様がご自身の判断軸に落とし込めるよう解説します。

2020年の「中小M&Aガイドライン(初版)」制定から約6年。日本政府の中小企業M&A推進政策は、目まぐるしい速度でアップデートを重ねてきました。特に2024年8月の「中小M&Aガイドライン第3版」公表、2025年8月の「中小M&A市場改革プラン」策定、そして2026年3月の「M&Aアドバイザー個人資格試験」実施事業公募開始という一連の流れは、政策の重心が「市場の量的拡大」から「市場の質の確保」へと完全に移行したことを示しています。

オーナー経営者の皆様にとって、これらの政策は遠い霞が関の話ではありません。事業承継税制の延長、M&A補助金の活用、経営者保証の解除、信頼できるアドバイザーの選定など、ご自身の会社の未来を左右する重要な選択肢に直結しています。

しかし、個別の制度が乱立しているように見え、全体像を掴むのは容易ではありません。そこで本記事では、これらの政策群を以下の「三層構造」というフレームワークで整理し、一貫した視点で読み解いていきます。

この三層構造を理解することで、オーナー経営者の皆様は「いま検討している論点は、どの層の話か」「どの制度が自社にとって最もインパクトが大きいか」を冷静に判断できるようになります。まずは、この数年間の政策の変遷と、三層構造の全体像をインフォグラフィックで俯瞰してみましょう。

図1:中小企業M&A推進政策タイムライン(2020年〜2026年)
2020年 3月
中小M&Aガイドライン(初版)制定。中小企業庁が、譲り渡し側・譲り受け側・支援機関の行動指針を初めて体系化。
2021年 8月
M&A支援機関登録制度運用開始。補助金の専門家活用枠は、登録機関の利用が要件化。
2023年 9月
中小M&Aガイドライン 第2版利益相反・直接交渉禁止・専任契約期間の明確化など、仲介実務の規律強化。
2024年 8月30日
中小M&Aガイドライン 第3版。経営者保証への対応強化(事前相談義務化)、不適切な譲り受け側に関する業界内情報共有の仕組み構築を明記。
2025年 1月24日
初の登録取消行政処分。M&A DX社に対し、不適切な譲り受け側とのM&Aを成立させたとして登録取消。市場規律の厳格化を象徴。
2025年 8月5日
中小M&A市場改革プラン公表。アドバイザー個人資格試験の創設、登録制度、手数料体系の整備など5本柱を提示。
2026年 3月28日
令和8年度税制改正成立。法人版事業承継税制の特例承継計画提出期限を2027年9月末まで延長。
2026年 3月27日
M&A資格試験 実施事業 企画競争公募開始(中小企業庁)。市場改革プランの主要施策が制度実装フェーズへ。
出典:経済産業省・中小企業庁プレスリリース各種、各時点の公表資料に基づき作成。年月の表記は公表日・成立日ベース。
図2:中小企業M&A推進政策の三層構造マトリクス(2026年5月時点)
レイヤー主要施策所管経営者にとっての含意
第1層
税制
事業承継税制(法人/個人)、経営資源集約化税制、組織再編税制、退職所得課税財務省
国税庁
【直接的な金銭メリット】
納税猶予・免除や損金算入により、M&A・事業承継の実行コストを直接的に軽減できる。最も強力なインセンティブ。
第2層
規制
中小M&Aガイドライン、M&A支援機関登録制度、事業承継・M&A補助金、引継ぎ支援センター、経営者保証GL中小企業庁
金融庁
【市場の信頼性・安全性】
信頼できる支援機関を選びやすくなり、不適切な相手方を避けやすくなる。補助金で専門家費用を一部賄える。
第3層
自主規制
M&A支援機関協会、市場改革プラン、アドバイザー個人資格試験、料金体系標準化民間業界団体
(中小企業庁が後押し)
【アドバイザーの質】
担当アドバイザー個人の能力や倫理観を見極めやすくなる。手数料の比較検討が容易になる方向。

それでは、これらの政策がなぜ必要なのか、その背景にある日本経済の構造課題から順に見ていきましょう。


第1章:日本経済の構造課題——後継者不在率50.1%と「もったいない廃業」

この章のポイント
政府がM&A推進政策を強化する背景には、依然として半数の企業で後継者が不在であり、収益性があるにもかかわらず廃業を選ぶ「もったいない廃業」が年間3.5万件規模で発生しているという深刻な現実があります。最新の統計データから、この構造課題の輪郭を捉えます。

1-1. 後継者不在率50.1%——改善傾向と根深い課題の併存

帝国データバンクが2025年11月に公表した「全国後継者不在率動向調査(2025年)」によると、全国約27万社のうち後継者が「いない」または「未定」である企業の割合は50.1%でした。この数字は前年比で2.0ポイント低下し、7年連続の改善となります。

2018年には66.4%に達していた不在率が約16ポイントも改善した背景には、本記事で解説する一連の政策的後押しや、経営者の高齢化に伴う事業承継への意識の高まり、そして第三者承継(M&A)が一般的な選択肢として定着してきたことがあります。

しかし、楽観はできません。依然として国内企業の2社に1社は事業の担い手が決まっていない状態であり、特に秋田県(73.7%)のように地域によっては極めて深刻な状況が続いています。改善傾向と根深い課題が併存しているのが、日本の事業承継の現在地です。

1-2. 「脱ファミリー化」の奔流——内部昇格が初めて同族承継を上回る

同調査で特筆すべきは、後継者の属性に地殻変動が起きている点です。事業承継を終えた企業の後継者属性を見ると、「内部昇格(役員・従業員)」が36.1%となり、長年主流であった「同族承継(子息・子女など)」の32.3%を、調査開始以来初めて上回りました。

さらに、後継者候補の段階では「非同族」が41.0%と4年連続でトップを走り、初めて4割を超えています。これは、日本の事業承知が「家業を継ぐ」という伝統的なモデルから、能力本位で社内外から後継者を探す「脱ファミリー化」へと大きく舵を切っていることを示しています。

オーナー経営者の皆様にとって、これは「親族に後継者がいない=廃業」という思考停止に陥る必要がなくなったことを意味します。社内の有能な役員・従業員への承継や、外部の企業へのM&Aが、今や事業承継の王道の一つとなりつつあるのです。

1-3. 黒字廃業51.1%——年間3.5万件の「もったいない廃業」

一方で、事業承継が間に合わずに市場から退出する企業も後を絶ちません。「2025年版中小企業白書」(中小企業庁)によれば、2024年の休廃業・解散件数は約7万件と高水準で推移しています。さらに深刻なのはその内実です。休廃業・解散した企業のうち、直前期の損益が黒字だった企業の割合は51.1%にものぼります。

これは、単純計算で年間約3.5万社の企業が、収益を上げ、雇用を維持し、取引先に価値を提供できる状態にありながら、後継者が見つからない等の理由で事業を畳んでいるという「もったいない廃業」の現実を示しています。

政府がM&A推進政策に力を入れる最大の理由は、この「もったいない廃業」を防ぐことにあります。廃業によって失われる雇用、技術、取引網、そして地域経済の活力を、M&Aという手法で次世代に引き継ぐこと。これが、一連の政策の根底に流れる思想です。

1-4. 放置すればGDP22兆円が喪失する可能性

中小企業庁は、この問題を放置した場合、2025年頃までの累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があるという試算を以前から示しています。この試算はやや古いデータに基づくものですが、事業承継問題が個社の経営課題にとどまらず、日本経済全体の持続可能性を揺るがすマクロな課題であることを象徴する数字として、今なお重く受け止められています。

こうした構造課題を背景に、政府は「三層構造」の政策パッケージを構築してきました。次章からは、その第一層である「税制レイヤー」から、具体的な制度内容を経営者目線で見ていきましょう。

なお、個別の事業承継や廃業の判断には、複雑な税務・法務・財務の論点が絡み合います。具体的な検討にあたっては、必ず弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。


第2章:税制レイヤー——M&A・事業承継を直接後押しする「カネ」の話

この章のポイント
この章では、三層構造の根幹をなす「税制レイヤー」を解説します。令和8年度税制改正で延長された事業承継税制、令和9年3月末まで適用される経営資源集約化税制など、M&Aの実行コストに直接影響する制度を、オーナー経営者が「自社のケースで使えるか」を判断するための勘所を整理します。

三層構造の中で最も強力かつ直接的なインセンティブが、この「税制レイヤー」です。税金は経営の根幹をなすコストであり、その負担を軽減する制度は、M&Aや事業承継の意思決定に絶大な影響を与えます。ここでは、オーナー経営者が押さえておくべき主要な5つの税制について解説します。

2-1. 法人版/個人版事業承継税制——相続税・贈与税の納税猶予・免除

事業承継における最大の税務ハードルの一つが、後継者が自社株式を相続・贈与される際に課される高額な相続税・贈与税です。事業承継税制は、この負担を実質的にゼロにできる可能性がある、極めて強力な制度です。

2-2. 中小企業事業再編投資損失準備金(経営資源集約化税制)——M&Aの投資額を損金に

これは、M&Aの「譲り受け側(買い手)」を対象とした税制ですが、譲り渡し側のオーナーも知っておくことで、買い手候補の投資意欲を理解し、交渉を有利に進める材料になり得ます。通称、経営資源集約化税制と呼ばれます。

2-3. 組織再編税制——合併・会社分割等の税務上の取扱い

M&Aは株式譲渡だけでなく、合併会社分割株式交換といった多様な手法(スキーム)で行われることがあります。これらの手法を用いる際に、税務上の大きな障害とならないように設計されているのが組織再編税制です。

2-4. 役員退職所得課税——オーナーの「手残り」を最大化する鍵

M&Aによる会社譲渡は、オーナー経営者にとって創業者利潤を確定させる「出口」でもあります。その際、譲渡対価の受け取り方として、株式の譲渡代金だけでなく、「役員退職金」を組み合わせることが一般的です。この退職金に対する課税(退職所得課税)の仕組みを理解することは、手残りを最大化する上で極めて重要です。

2-5. 株式譲渡所得税——シンプルだがインパクトの大きい税金

M&Aの最も一般的な手法である株式譲渡において、オーナー個人が受け取る譲渡代金から取得費などを差し引いた利益(譲渡所得)に対して課される税金です。

以上のように、「税制レイヤー」はM&A・事業承継の経済合理性を根底から支える重要な要素です。これらの制度は専門性が高く、適用の可否判断や手続きは極めて複雑です。必ず、M&A税務に精通した税理士・公認会計士に相談し、最適なタックスプランニングを立てるようにしてください。


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第3章:規制レイヤー——市場の「交通整理」を担う公的ルールと支援

この章のポイント
この章では、三層構造の2層目にあたる「規制レイヤー」を解説します。中小企業庁が定める中小M&AガイドラインやM&A支援機関登録制度は、いわば市場の交通ルールです。登録取消事例、補助金、公的相談窓口といった具体的な制度を理解し、安全にM&Aを進めるための羅針盤とします。

税制がM&Aの「アクセル」だとすれば、「規制レイヤー」は市場の健全性を保つための「ガードレール」や「交通標識」に相当します。中小企業庁や金融庁が主導するこれらのルールや支援策は、オーナー経営者の皆様が安心してM&Aのプロセスを進めるための土台となります。

3-1. 中小M&Aガイドライン第3版——最新の行動指針

中小M&A市場における関係者(譲り渡し側、譲り受け側、支援機関)の行動指針として、中小企業庁が策定したものが中小M&Aガイドラインです。2024年8月30日に公表された第3版(2026年5月時点で運用中)は、特に以下の2点で市場の規律を強化しました。

3-2. M&A支援機関登録制度——「国のお墨付き」の見える化

M&Aアドバイザーは国家資格ではなく、誰でも名乗れることから、サービスの質にばらつきがあるのが長年の課題でした。この課題に対応するため、2021年8月に始まったのがM&A支援機関登録制度です。

3-3. 登録取消行政処分——ルール違反には厳しい措置

登録制度は、ただ登録させるだけでなく、ルール違反者には厳しい措置を講じることで実効性を担保しています。その象徴的な事例が、2025年1月24日に公表された株式会社M&A DXに対する、制度開始以来初の登録取消処分です。

3-4. 事業承継・M&A補助金——専門家費用を国が一部負担

M&Aには、アドバイザリー報酬やデューデリジェンス(DD)費用など、決して安くない専門家コストがかかります。この負担を軽減するために用意されているのが事業承継・M&A補助金です。(2024年度に「事業承継・引継ぎ補助金」から名称変更)

3-5. 事業承継・引継ぎ支援センター——公的な無料相談窓口

「民間のM&A会社に相談するのはまだ敷居が高い」と感じるオーナー経営者のために、全国47都道府県に設置されているのが事業承継・引継ぎ支援センターです。

3-6. 業法による規律——士業の独占業務との境界線

M&Aの実務は、弁護士法、税理士法、公認会計士法といった業法とも密接に関わります。例えば、最終契約書の作成・レビューは弁護士の独占業務(弁護士法72条)、税務申告や具体的な税務相談は税理士の独占業務(税理士法52条)です。


第4章:自主規制レイヤー——業界が自らを律する「質の向上」への動き

この章のポイント
この章では、三層構造の最上層にあたる「自主規制レイヤー」を解説します。国の規制(第2層)を補完し、より高いレベルの品質を目指す民間の動きです。M&Aアドバイザー個人資格試験の創設や料金体系の透明化など、オーナー経営者が「誰を信じて任せるか」を判断するための新しい基準が生まれつつあります。

国の法律(税制レイヤー)や行政指導(規制レイヤー)だけでは、現場の実務の隅々まで品質を担保することは困難です。そこで重要になるのが、M&A支援業界自身が、より高い倫理観と専門性を目指して自主的にルールを設ける「自主規制レイヤー」の動きです。これは、市場の成熟度を示すバロメーターとも言えます。

4-1. 中小M&A市場改革プラン——「個人の質」に踏み込む5本柱

2025年8月5日に経済産業省が公表した「中小M&A市場改革プラン」は、自主規制レイヤーの方向性を決定づける重要な文書です。このプランは、これまでの「機関単位」の登録制度から一歩進んで、「アドバイザー個人」の能力と倫理に焦点を当てているのが最大の特徴です。その骨子は以下の5本柱からなります。

  1. 経営資源の散逸の回避:後継者不在による廃業を防ぐという大目標の再確認。
  2. M&Aアドバイザー個人向け資格試験の創設:アドバイザーの能力を客観的に測る統一試験を導入。
  3. 資格試験合格者の登録制度:合格者の氏名を公表し、倫理規程の遵守や定期的な講習を義務付ける。
  4. 手数料のあり方検討:料金体系の開示を標準化し、オーナーが比較検討しやすい環境を整備。
  5. 不適切譲り受け側への対応強化:ガイドライン第3版で示された情報共有の仕組みを具体化。

オーナー経営者の皆様にとって、このプランは「どの会社に頼むか」だけでなく、「どの担当者に任せるか」という、よりパーソナルなレベルで専門家を選別する物差しを提供してくれるものになります。

4-2. M&Aアドバイザー個人資格試験——能力の「見える化」へ

市場改革プランの中核をなすのが、M&Aアドバイザー個人資格試験の創設です。2026年3月27日には、中小企業庁がこの試験の実施事業者を公募する手続きを開始しており、制度化が本格的に動き出しました。

4-3. 一般社団法人 M&A支援機関協会(MAAA)——業界団体の自主規律

国の制度設計と並行して、民間の業界団体も自主的な規律強化を進めています。その代表格が、2024年4月に設立された一般社団法人 M&A支援機関協会(MAAA)です。

4-4. 料金体系の透明化・標準化——「いくらかかるか」を分かりやすく

中小M&Aの手数料は、成功報酬の計算に用いられる「レーマン方式」が一般的ですが、その料率や最低報酬額、着手金・中間金の有無などは支援機関によって様々で、不透明さが指摘されてきました。

この自主規制レイヤーの充実は、M&A市場が無法地帯から、ルールと倫理に則ったプロフェッショナルな市場へと成熟していくプロセスそのものです。オーナー経営者の皆様は、こうした業界の自浄作用にも目を配ることで、より安心して任せられるパートナーを見つけやすくなります。


第5章:三層をまたぐ実務論点——制度を組み合わせて「自社の最適解」を導く

この章のポイント
実際のM&A・事業承継では、税制・規制・自主規制の各レイヤーが複雑に絡み合います。この章では、経営者保証、士業との連携、PMI(統合後経営)といった具体的なテーマを取り上げ、複数のレイヤーを横断して考える実践的な視点を提供します。

これまで見てきた三層構造は、それぞれが独立しているわけではありません。むしろ、実際のM&Aの現場では、これらのレイヤーが相互に影響し合います。オーナー経営者が最善の意思決定を下すためには、この「層をまたぐ視点」が不可欠です。ここでは、3つの代表的な実務論点を取り上げ、レイヤー横断的な考え方を解説します。

5-1. 経営者保証の解除——「規制」と「税制」の合わせ技

オーナー経営者にとって、M&Aの最大の目的の一つが「個人保証からの解放」です。このテーマは、規制レイヤーと税制レイヤーが密接に連携する典型例です。

5-2. 士業との連携——「業法(規制)」と「実務」の最適な分担

M&Aは総合格闘技であり、M&Aアドバイザーだけで完結するものではありません。弁護士、税理士、公認会計士といった士業専門家との連携が不可欠です。

5-3. PMIと補助金活用——「統合実務」と「規制(公的支援)」の連動

M&Aは、契約書に印鑑を押して終わりではありません。むしろ、そこからが本当のスタートです。譲渡した会社と買い手企業が一体となってシナジーを生み出していくプロセス、PMI(Post Merger Integration、統合後経営)の成否が、M&Aの価値を最終的に決定づけます。

このように、三層構造の各レイヤーは、実務の現場で有機的に結びついています。一つの論点を考えるときも、「これは他のレイヤーにどう影響するか?」という複眼的な視点を持つことが、複雑なM&A・事業承継を成功に導く鍵となります。


第6章:「脱ファミリー化」時代の経営者の選択

この章のポイント
内部昇格が同族承継を上回るというデータが示すように、事業承継は「脱ファミリー化」の時代を迎えました。これは、オーナー経営者の選択肢が大きく広がったことを意味します。親族外承継(内部昇格・第三者承継)という新しい潮流の中で、経営者が向き合うべき現実的な論点を整理します。

第1章で見たように、日本の事業承継は「内部昇格(36.1%)が同族承継(32.3%)を初めて上回る」という歴史的な転換点を迎えました(帝国データバンク 2025年調査)。親族に後継者がいないことが、もはや事業継続を諦める理由にはならない時代です。この「脱ファミリー化」の潮流の中で、オーナー経営者はどのような選択肢を持ち、それぞれどのような論点に向き合うべきなのでしょうか。

6-1. 選択肢1:内部昇格(役員・従業員への承継)

長年連れ添った役員や従業員に会社を託す内部昇格は、企業文化や経営理念の継続性が保ちやすいという大きなメリットがあります。しかし、そこには特有のハードルも存在します。

6-2. 選択肢2:第三者承継(M&A)

外部の企業に会社を譲渡するM&Aは、創業者利潤を最大化できる可能性があり、また、自社単独では難しかった成長を実現できるというメリットがあります。一方で、最も重要なのは「誰に託すか」というパートナー選びです。

6-3. 選択肢は一つではない——ハイブリッドな承継

現実には、これらの選択肢は排他的なものではありません。例えば、事業の中核部分は信頼できる役員に内部昇格で承継させ、ノンコア事業はM&Aで切り出して売却する、といったハイブリッドな形も考えられます。また、一度はM&Aを検討したものの、良い相手が見つからずに内部昇格に方針転換する、あるいはその逆のケースもあります。

重要なのは、早期から複数の選択肢をテーブルの上に並べ、それぞれのメリット・デメリットを冷静に比較検討することです。そして、その検討プロセスを、三層構造で見てきたような公的制度や市場のルールを熟知した専門家と共に進めることです。「脱ファミリー化」の時代は、オーナー経営者にとって、より戦略的に、そしてより自由に、自社の未来を描ける時代でもあるのです。


結び:制度を「自分の選択肢」に翻訳する——三層チェックリストの活用

本記事では、日本政府の中小企業M&A推進政策を、「税制」「規制」「自主規制」という三層構造のフレームワークで読み解いてきました。

後継者不在率が依然として50%を超え、黒字廃業が社会問題となる中で、国、行政、そして民間業界は一体となって、中小企業の事業承継を後押しする重層的なセーフティネットを構築してきました。これらの制度は、もはや単なる「情報」ではありません。オーナー経営者の皆様が、ご自身の会社の未来を切り拓くための具体的な「道具」です。

事業承継税制という強力な税制優遇、M&Aの実行コストを軽減する補助金、安心して相談できる支援機関を選ぶための登録制度、そしてアドバイザー個人の能力を認証する新たな資格制度——。これらの道具を、ご自身の状況に合わせてどう使いこなすか。複雑な制度を「自分の選択肢」に翻訳する作業こそが、これからのオーナー経営者に求められる重要な経営判断です。

最後に、M&Aや事業承継の検討を始めるにあたり、オーナー経営者の皆様がセルフチェックできるリストを三層構造に沿って作成しました。このリストを参考に、ご自身の現在地を確認し、次の一歩を踏み出すきっかけとしていただければ幸いです。

図3:経営者目線の優先順チェックリスト——三層構造で考える最初の一歩

第1層:税制レイヤー(自社の金銭的インパクトの把握)

  • 自社の株価が現在いくら位か、概算でも把握しているか?(顧問税理士への相談)
  • 株式を譲渡した場合の、個人の手残り税後キャッシュフローを試算したか?
  • 親族・従業員への承継の場合、事業承継税制(特例)の適用可能性を検討したか?
  • 役員退職金を活用したタックスプランニングの選択肢を検討したか?

第2層:規制レイヤー(安全なプロセスの確保)

  • 経営者保証の解除について、メインバンクに事前相談または情報提供を行ったか?
  • 相談を検討しているM&A支援機関が、中小企業庁の登録制度に登録されているか確認したか?
  • 事業承継・M&A補助金の活用可能性(対象経費、申請要件)を調べたか?
  • まず何から始めればよいか不明な場合、事業承継・引継ぎ支援センターへの相談を検討したか?

第3層:自主規制レイヤー(信頼できるパートナーの選定)

  • 支援機関の料金体系(レーマン方式の料率、最低報酬等)がウェブサイト等で明瞭に開示されているか?
  • 支援機関が、中小M&Aガイドライン第3版の遵守を明確に宣言しているか?
  • 担当アドバイザー個人の経験や専門性(将来的な資格含む)は十分か?
  • 複数の支援機関から話を聞き、セカンドオピニオンを得ることを検討しているか?

中小企業庁M&A支援機関として登録され、一般社団法人 M&A支援機関協会に正会員として加盟する同社は、譲り渡し側オーナーの立場に立ち、これらの制度的追い風を「自社の選択肢」に翻訳するご相談を承っています。秘密厳守、初回相談は無料です。ご判断の撤回は最後まで自由ですので、まずはお気軽にお声がけください。

なお、本記事で解説した内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法務・税務・財務上の助言ではありません。具体的な意思決定にあたっては、必ず弁護士・税理士・公認会計士・司法書士行政書士等の各専門家と協議の上、慎重にご判断ください。



業種別 政策活用の論点——17業種の経営者目線

この章のポイント
三層構造(税制・規制・自主規制)の制度的追い風は、業種ごとに「どこが効きやすいか」が異なります。業種別の主要論点を整理し、業種特化LP(株式譲渡・許認可承継・労務/財務DDの実務)への内部リンクをまとめます。

建設業

建設業許可の承継は、2020年10月の建設業法改正で「建設業許可の譲渡及び承継等の認可」制度が整備されたことで、空白期間なしの承継が可能になりました(規制レイヤー)。譲り受け側の経営業務の管理責任者・専任技術者要件、財産的基礎(純資産500万円以上等)の確認は、デューデリジェンス(DD)の重要論点です。経営者保証ガイドラインに基づく金融機関相談も、地方公共団体の入札参加資格との連動で慎重な進行が必要。建設業向けM&A特化LPは建設業特化のM&A論点を整理しています。

宅地建物取引業

宅建業(不動産業)免許は法人格に紐づくため株式譲渡では原則維持されますが、専任の宅地建物取引士の人数要件(業務に従事する者5名に1名以上)と保証金(営業保証金1,000万円・主たる事務所、または保証協会加入)の継承が論点です。譲り受け側の財産的基礎・反社チェックも厳格。事業承継・M&A補助金の専門家活用枠で許認可関連の弁護士・行政書士費用を一部カバー可能(規制×税制クロス)。宅建業(不動産業)向けM&A特化LPに詳細。

介護事業

介護保険指定事業者の指定承継は、合併・分割・事業譲渡それぞれで届出様式と都道府県・市町村の確認手続きが異なります(規制レイヤー)。報酬請求の実績・運営基準違反履歴・人員配置基準(常勤換算)のDDが特に重要。後継者不在率が業界平均を上回る業種であり、事業承継・引継ぎ支援センター経由の小規模M&Aが多い業種です。介護事業のM&A論点LPを参照。

旅館・ホテル

旅館業許可は許可施設に紐づくため、株式譲渡なら継続、事業譲渡なら新規取得(または地位承継)の判断が必要。建物の用途地域・建築基準法・消防法・水質汚濁防止法等の継続適合性、温泉権・観光関連権利の確認、観光関連補助金(観光庁・地方自治体)と事業承継・M&A補助金の重複利用ルールがクロス論点。後継者不在率が極めて高く、廃業による地域経済への影響も大きい業種。旅館・ホテルM&A特化LPを参照。

飲食業

飲食店営業許可(食品衛生法)は施設・営業者に紐づき、株式譲渡では原則維持、事業譲渡では新規取得。食品衛生責任者の配置、HACCP対応の有無、深夜酒類提供飲食店営業届出(風営法)の継承確認が論点。労務DDでは、シフト制・賃金台帳・最低賃金(地域別)の遵守状況、外国人雇用(特定技能1号・技能実習)の在留資格確認が頻出。飲食業M&A特化LPを参照。

医療クリニック

医療法のM&Aは、社員・理事の交代を通じた持分譲渡(出資持分あり医療法人)または基金拠出(基金拠出型医療法人)で行われ、税理士・弁護士・公認会計士の連携が必須(業法の三士業連携)。診療報酬の不正請求歴・施設基準・医師偏在指標の確認、地域医療計画との整合性がDDの中核。事業承継税制は医療法人持分には適用不可(持分なし医療法人化との比較検討が必要)。医療クリニックM&A特化LPを参照。

製造業

下請構造・親会社依存度・特定取引先売上比率(一社依存30%超は要注意)、独占禁止法・下請法の遵守状況、知的財産(特許・実用新案・ノウハウ)の帰属、設備投資の減価償却スケジュールが財務DD・法務DDの主要論点。中小企業事業再編投資損失準備金(経営資源集約化税制、令和9年3月末まで)は製造業の連続M&Aで活用余地が大きい税制レイヤー施策です。製造業M&A特化LPを参照。

食品製造

食品衛生法(HACCP義務化)、食品表示法、JAS法、特定原材料表示の遵守状況がDDで最重要。製造業全般の論点に加え、原材料供給契約・販路(量販店・PB・OEM)の継承可能性、賞味期限・在庫評価の妥当性が独自論点。事業承継税制適用の前提となる雇用維持要件(5年平均8割)も労働集約的な食品製造では現実的な制約。食品製造M&A特化LPを参照。

物流・運送

一般貨物自動車運送事業の事業譲渡・合併・分割は国土交通大臣の認可が必要(貨物自動車運送事業法)。運行管理者・整備管理者の人員、車両保有台数、Gマーク(安全性優良事業所)認定の継承、2024年問題(時間外労働上限規制)対応状況がDDの重点。労務DDでは未払残業代リスクが業界平均を上回るため、特に慎重な確認が必要。物流・運送M&A特化LPを参照。

自動車整備

地方運輸局の認証工場・指定工場の地位承継、整備主任者・自動車検査員の人員確保、OBD車検(電子制御装置整備)対応の設備投資負担、特定整備認証への移行状況がDDの論点。電動車(EV・HV)整備技術の習得状況は今後の事業継続性評価に直結。自動車整備M&A特化LPを参照。

薬局

薬局開設許可(医薬品医療機器等法)は許可薬局に紐づき、株式譲渡で原則継続、事業譲渡で新規取得(または地位承継申請)。管理薬剤師の配置、調剤報酬の不正請求歴、地域支援体制加算・後発医薬品調剤体制加算の取得状況、医薬品卸契約の継承可否がDDで重要。同業者間M&A(チェーン化)が活発で、薬局M&A特化LPに整理。

美容業

美容所開設届(美容師法)の地位承継、管理美容師の配置、店舗賃貸借契約・看板等知財の継承、客単価・指名顧客リテンション率の継続性がDDの主要論点。設備投資・内装の減価償却残高評価が論点。事業承継・M&A補助金の専門家活用枠を活用した小規模美容サロンのM&Aが増加傾向。美容業M&A特化LPを参照。

小売業

店舗賃貸借契約の継承、定期借家契約の更新条件、フランチャイズ契約の譲渡承認条件、酒類販売業免許・たばこ小売販売業許可の地位承継がDDの中核。在庫評価(陳腐化・季節商品・売価還元法の妥当性)の財務DD論点も大きい。EC比率・物流外注の状況確認も必要。小売業M&A特化LPを参照。

ビルメンテナンス・清掃業

建築物環境衛生総合管理業(建築物清掃・空気調和設備管理業等)の登録、防火管理者・建築物環境衛生管理技術者の人員、官公庁・大手不動産との継続契約、最低賃金引上げの収益性影響がDDの主要論点。労務DDで外国人雇用比率の確認が頻出。ビルメン・清掃業M&A特化LPを参照。

教育

学習塾・予備校・専門学校・通信教育等のM&Aでは、専修学校・各種学校の場合の所轄庁認可、教員資格、生徒数推移・離脱率、テキスト等知的財産の帰属、個人情報保護法(生徒・保護者データ)の遵守状況がDDの重点。少子化トレンドの中、地域内ロールアップ型M&Aが増加。教育業M&A特化LPを参照。

農業

農地法(農地所有適格法人要件・農業委員会許可)、農協出資権・組合員資格の継承、農業経営基盤強化準備金との関係、補助金(農林水産・地方自治体)の交付決定実績の整合性がDDの独自論点。後継者不在率が極めて高く、農業法人M&Aは事業承継・引継ぎ支援センター経由が中心。農業M&A特化LPを参照。

不動産仲介

宅建業ベースの論点(前述)に加え、レインズ登録物件の継続性、専属専任媒介・専任媒介契約の譲渡承認条件、自社管理物件のオーナーリレーション、業務上発生した損害賠償保険の継承確認がDDで重要。賃貸管理は別途特定賃貸借契約適正化法(サブリース新法)の遵守確認が必須。建設業界・宅建業界横断のM&Aは宅建業向けM&A特化LPとあわせて参照。

リフォーム

建設業許可(500万円超工事の場合)または建築リフォーム工事の建設業の登録、瑕疵担保保険・住宅瑕疵担保責任保険の付保状況、訪問販売関連の特定商取引法遵守、契約書面交付・クーリングオフ対応の整備状況がDDの主要論点。建設業全般の論点に準じる業界。建設業向けM&A特化LPを参照。


APPENDIX A:地域ブロック別 政策活用と事業承継の特徴

この章のポイント
事業承継・引継ぎ支援センターは全国47都道府県に設置されていますが、地域ごとに後継者不在率・産業構造・案件規模分布は大きく異なります。8つの地域ブロックそれぞれの特徴と、政策活用の留意点を整理します。

北海道

農業(畑作・酪農)・観光(旅館・ホテル)・建設業・水産業を主要産業とする広域経済圏。冬季の事業特性で運転資本管理が独特。後継者不在率は全国平均より高水準で、特に旅館・建設業のM&Aニーズが顕著。事業再編投資損失準備金は地域連携M&Aでの活用余地が大きい税制レイヤー施策です。建設業(北海道エリア)旅館業(北海道)農業(北海道)

東北(青森岩手宮城秋田山形福島

製造業(自動車関連・電機・食品)と農業(米・果物)が中心。秋田・山形は人口減少が全国最深刻レベルで、秋田県の後継者不在率は2025年調査で73.7%(全国最高)。事業承継・引継ぎ支援センターを起点とした第三者承継型M&Aが活発。福島は復興特別税制の適用関係も論点。建設業(東北)製造業(東北)食品製造(東北)

関東(茨城栃木群馬埼玉千葉東京神奈川

首都圏の商業・サービス・金融・IT・製造業の集積地。M&A件数は全国の40%超を占め、買い手も売り手も多く、価格競争力のあるバリュエーションが重要。中小M&Aガイドライン第3版の運用も先行的に厳格化される傾向。事業承継・M&A補助金の専門家活用枠の利用件数が最多。建設業(関東)医療(関東)物流(関東)

中部(新潟富山石川福井山梨長野岐阜静岡愛知

愛知を中心とした自動車関連製造業の集積、富山石川の医薬品・機械、長野の精密機器、観光業(金沢・高山・伊豆)が特徴。下請構造の親会社依存度評価が財務DDの中核論点で、事業再編投資損失準備金の連続M&A活用が進む地域。製造業(中部)自動車整備(中部)旅館業(中部)

関西(三重滋賀京都大阪兵庫奈良和歌山

大阪を中心とした商業・サービス、京都の観光・伝統産業・IT、兵庫の重工業、和歌山の農業・観光と多様。老舗企業の長年の取引慣行(書面化されていない契約)の文書化が法務DDで頻出する地域特性。事業承継税制の特例承継計画提出延長(令和9年9月末まで)の活用候補が多い地域。建設業(関西)飲食業(関西)小売業(関西)

中国(鳥取島根岡山広島山口

広島を中心とした自動車・造船・鉄鋼の重工業、岡山の繊維・機械、山陰側の観光・農業。鳥取島根は人口減少が深刻で、後継者不在による休廃業の防止が政策的重点。事業承継・引継ぎ支援センター経由の小規模M&A、補助金活用が進む。製造業(中国)旅館業(中国)介護(中国)

四国(徳島香川愛媛高知

愛媛の造船・化学、徳島のLED・医薬、香川の食品・建設、高知の農業・漁業。全県的に人口減少が進み、休廃業企業の受け皿確保が業界課題。少人数体制での実質的代替不能人材(キーパーソン)依存度が労務DDの独自論点。建設業(四国)製造業(四国)農業(四国)

九州・沖縄(福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄

福岡を九州ハブ都市とし、熊本の半導体(TSMC進出)、大分宮崎鹿児島の農業・観光、沖縄のリゾート観光・建設業(米軍基地特殊事情)が特徴。半導体関連の急成長企業の在庫・売掛金回転日数異常が新たな財務DD論点。事業再編投資損失準備金の拡充型(積立率100%・据置10年)の適用候補も増加。建設業(九州)製造業(九州)旅館業(九州)


APPENDIX B:47都道府県別 主要産業と業種別LP一覧

この章のポイント
各都道府県の主要産業と、業種×都道府県別のM&A実務LP(株式譲渡・事業承継・許認可承継・労務DD・財務DD等の業種特化情報)への内部リンク一覧です。事業承継・引継ぎ支援センターは全都道府県に設置されており、地域単位での相談から始める選択肢もあります。
都道府県主要産業業種別LP(直リンク)
北海道農業・観光・建設・水産農業 / 旅館 / 建設業
青森県農業(りんご)・漁業・観光農業 / 食品製造 / 旅館
岩手県建設・農業・製造建設業 / 農業 / 製造業
宮城県商業・製造・農業(米)製造業 / 小売 / 物流
秋田県農業・建設・人口減少深刻農業 / 建設業 / 介護
山形県農業(さくらんぼ)・製造農業 / 食品製造 / 製造業
福島県製造・農業・復興建設建設業 / 製造業 / 農業
茨城県製造(つくば)・農業(生産額全国2位)製造業 / 農業 / 食品製造
栃木県製造・観光(日光・鬼怒川)製造業 / 旅館 / 建設業
群馬県製造(自動車)・観光(草津・伊香保)製造業 / 旅館 / 自動車整備
埼玉県製造・商業・首都圏ベッドタウン建設業 / 物流 / 介護
千葉県製造(京葉工業)・観光・農業製造業 / 建設業 / 食品製造
東京都金融・IT・商業・不動産・サービス小売 / 物流 / 医療
神奈川県製造・首都圏商業・観光製造業 / 建設業 / 医療
新潟県製造・農業(米)・観光(温泉)製造業 / 農業 / 旅館
富山県製造(医薬・機械)製造業 / 薬局 / 建設業
石川県製造・観光(金沢・能登)製造業 / 旅館 / 飲食業
福井県製造(眼鏡・繊維)製造業 / 建設業 / 食品製造
山梨県製造・農業(果物)・観光(富士五湖)旅館 / 農業 / 製造業
長野県製造(精密機器)・観光・農業製造業 / 旅館 / 農業
岐阜県製造・観光(高山・白川郷)製造業 / 旅館 / 建設業
静岡県製造(自動車・楽器)・観光(伊豆)製造業 / 旅館 / 自動車整備
愛知県製造(自動車中心)・商業製造業 / 自動車整備 / 物流
三重県製造・観光(伊勢・鳥羽)製造業 / 旅館 / 農業
滋賀県製造・商業製造業 / 建設業 / 小売
京都府観光・伝統産業・IT旅館 / 飲食業 / 小売
大阪府商業・製造・サービス小売 / 飲食業 / 物流
兵庫県製造(重工業)・観光(神戸・姫路)製造業 / 旅館 / 建設業
奈良県観光(古都)・農業旅館 / 小売 / 農業
和歌山県農業(みかん)・観光・漁業農業 / 旅館 / 食品製造
鳥取県農業・観光・人口減少深刻農業 / 介護 / 建設業
島根県観光(出雲)・農業・人口減少深刻旅館 / 農業 / 介護
岡山県製造・商業・農業(果物)製造業 / 食品製造 / 小売
広島県製造(自動車・造船)・商業製造業 / 自動車整備 / 小売
山口県製造(重工業)・観光(萩・下関)製造業 / 旅館 / 建設業
徳島県農業・製造(医薬・LED)製造業 / 薬局 / 農業
香川県製造・観光・商業製造業 / 小売 / 物流
愛媛県製造(造船)・農業(みかん)・観光(道後温泉)製造業 / 旅館 / 農業
高知県農業・漁業・観光・人口減少深刻農業 / 食品製造 / 介護
福岡県商業・サービス・製造・九州ハブ小売 / 物流 / 医療
佐賀県農業・製造・観光(武雄・嬉野)農業 / 旅館 / 製造業
長崎県観光(ハウステンボス)・漁業・製造(造船)旅館 / 食品製造 / 製造業
熊本県農業・観光(阿蘇)・製造(半導体)農業 / 製造業 / 旅館
大分県観光(別府・湯布院)・農業旅館 / 農業 / 建設業
宮崎県農業(畜産)・観光・漁業農業 / 食品製造 / 旅館
鹿児島県農業(畜産)・観光(屋久島)・焼酎農業 / 食品製造 / 旅館
沖縄県観光(リゾート)・建設・米軍基地特殊事情旅館 / 建設業 / 飲食業

Q1. 記事で解説された「三層構造」のうち、M&Aを検討し始めた経営者が、まず最初に理解すべきはどのレイヤーですか?

まず最初に「第2層:規制レイヤー」の全体像を掴むことをお勧めします。中小M&AガイドラインやM&A支援機関登録制度、公的な事業承継・引継ぎ支援センターの存在を知ることで、M&A市場の基本的なルールや、誰に相談すれば安全に進められるかの「地図」が手に入ります。その上で、ご自身の金銭的インパクトに直結する「第1層:税制レイヤー」の具体的な検討(顧問税理士への相談など)に進み、最後に支援機関の質を見極める「第3層:自主規制レイヤー」の視点でパートナーを選ぶ、という順序が実践的です。

Q2. M&Aアドバイザーの個人資格試験が始まるとのことですが、資格がないアドバイザーは信頼できないということでしょうか?

必ずしもそうではありません。M&A業界には、資格制度が始まる以前から、豊富な経験と高い倫理観を持って活躍されている優れたアドバイザーが多数存在します。資格はあくまで能力を客観的に示す一つの指標です。現時点(2026年5月)では、資格の有無よりも、そのアドバイザー個人の実績、専門性、そしてオーナーであるあなたとの相性や、中小M&Aガイドラインを遵守する姿勢などを総合的に見て判断することが重要です。将来的には、資格が信頼性を測る重要な要素の一つになっていくと考えられます。

Q3. 中小M&Aガイドライン第3版で「経営者保証の事前相談」が支援機関の責務とされましたが、これを怠った場合、経営者に罰則はあるのでしょうか?

経営者自身に直接的な罰則はありません。この責務は、あくまでM&A支援機関に対して課されたものです。支援機関がこの責務を怠った場合、中小企業庁への報告対象となり、悪質な場合には登録取消などの行政処分に繋がる可能性があります。オーナー経営者にとっては、ご自身の保証解除を円滑に進めるための重要な権利ですので、依頼する支援機関がこのプロセスを適切に主導してくれるか、契約前に確認することが重要です。

Q4. 事業承継税制の特例承継計画の提出期限が延長されましたが、M&Aによる第三者承継を考えている場合でも、この計画を提出しておくメリットはありますか?

はい、メリットがある場合があります。特例承継計画は、提出時点では後継者が具体的に決まっていなくても、代表者(現経営者)の名前で提出することが可能です。まず計画を提出しておくことで、将来的に親族や従業員への承継に方針転換した場合に、事業承継税制の特例を活用できる「権利」を確保しておくことができます。M&Aの交渉が不調に終わる可能性もゼロではないため、選択肢を広く確保しておくという意味で、期限内に計画を提出しておくことは有効な戦略の一つと言えます。詳しくは顧問税理士にご相談ください。

Q5. 「内部昇格が同族承継を上回った」というデータは、M&Aの買い手が見つかりにくくなったことを意味しますか?

いいえ、直接的にはそうではありません。このデータは、承継の選択肢が多様化した結果と捉えるべきです。むしろ、親族に後継者がいない企業の多くが、以前は廃業を選ばざるを得なかったところ、内部昇格やM&Aという選択肢を積極的に検討するようになった結果と解釈できます。M&A市場自体は活況を呈しており、買い手候補の数も増加傾向にあります。重要なのは、自社にとって内部昇格とM&Aのどちらがより良い未来を描けるかを、フラットな視点で見極めることです。

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守秘義務と免責事項

本記事は、公表されている一次ソースに基づき、株式会社 日本財務戦略センター(中小企業庁 M&A支援機関 登録、一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員)が、オーナー経営者の皆様への情報提供を目的として独自の視点で構成・解説したものです。記載内容は記事執筆時点(2026年5月)のものであり、税制、補助金制度、ガイドラインの運用等は将来変更される可能性があります。最新かつ正確な情報は、必ず各省庁・団体のウェブサイト等で直接ご確認ください。

本記事の内容は、一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の案件に対する税務、法務、財務に関する助言または推奨を行うものではありません。具体的な意思決定に際しては、必ず弁護士、税理士、公認会計士等の資格を有する専門家にご相談の上、ご自身の責任においてご判断くださいますようお願い申し上げます。本記事の情報に依拠して行われた行為の結果について、当社は一切の責任を負いかねます。

主な一次ソース・参考資料

公開日: 2021年12月6日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する5問の計15問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。
本記事Q11. 2024年8月改定で経営者保証への対応がどのように強化されたのか?
A. 主要な改定は3点です。第一に経営者保証への対応強化として、M&A成立前の段階から譲り渡し側・譲り受け側双方が金融機関等に相談を行うことを、専門業者(M&A支援機関)の責任として明確化しました。第二に不適切な譲り受け側への対応として、業界内での情報共有の仕組み構築が明記されました。第三に運用面では、既登録のM&A支援機関は2024年12月31日までに第3版遵守宣言の提出が必要とされ、2025年1月以降の新規登録は申請時点から第3版が即適用されています。詳細な実務対応は、登録M&A支援機関や顧問の弁護士・税理士にご相談ください。
本記事Q12. なぜ中小M&A市場改革プランでM&A支援機関のアドバイザー資格試験が創設されたのか?
A. 経済産業省・中小企業庁が2025年8月5日に公表した中間とりまとめで、(1)経営資源の散逸の回避、(2)M&Aアドバイザー個人向け資格試験の創設、(3)合格者の登録制度、(4)手数料体系の整備、(5)不適切譲り受け側への対応強化の5本柱から成ります。中核施策の資格試験は、2026年3月27日に「中小M&A資格試験実施事業」の企画競争公募が中小企業庁から開始されており、政策が制度実装フェーズに入っています。譲り渡し側のオーナーにとっては、依頼するアドバイザー個人の資格・倫理・継続学習を確認しやすくなる方向の改革です。
本記事Q13. 後継者不在率50.1%でも業界全体は70%超の地域がある理由は何か?
A. 帝国データバンク「全国後継者不在率動向調査(2025年)」(2025年11月21日公表)によれば、全国の後継者不在率は50.1%で、前年比2.0ポイント低下、7年連続の改善です。一方で、依然として国内企業の約半数が後継者不在の状態にあり、秋田県は73.7%と全国唯一の70%超など地域偏在も残っています。さらに、2024年の休廃業・解散は約7万件、うち黒字廃業が51.1%と過半を占めており、改善傾向と「もったいない廃業」が並行して存在する複層構造です。出所:帝国データバンク、2025年版中小企業白書(中小企業庁)。
本記事Q14. 2024年度の事業承継・M&A補助金は補助率と上限額がいくらに変わったのか?
A. 2024年度から「事業承継・引継ぎ補助金」から「事業承継・M&A補助金」に名称変更され、2025年10月17日には十三次公募が中小企業庁から公表されています。主要枠は、専門家活用枠(補助率2/3または1/2、上限800万円以内)、PMI推進枠、廃業・再チャレンジ枠の3つです。申請は電子申請システム「Jグランツ」のみで、事前にGビズIDプライムアカウントの取得(2〜3週間程度)が必要です。専門家活用枠は中小企業庁M&A支援機関 登録機関への発注が補助対象の前提となります。最新の公募回・上限・対象経費は中小企業庁ウェブサイトでご確認のうえ、申請可否の具体判断は税理士・補助金実務に精通した専門家にご相談ください。
本記事Q15. 親族外承継が親族内を初めて上回った背景と、中小企業の後継者動向の変化
A. 本当です。帝国データバンクの2025年調査では、内部昇格36.1%が同族承継32.3%を初めて上回りました。さらに、後継者候補ベースでは「非同族」が41.0%と4年連続トップで、初めて40%超に達しています。長らく日本の中小企業承継の中心軸であった「親族内承継」は、もはや多数派ではなくなりつつあり、内部昇格と第三者承継(M&A)を含む「親族外承継」が新潮流として定着しつつあります。譲り渡し側のオーナーが向き合う論点は、内部昇格では株式取得資金・経営者保証の引継ぎ、第三者承継では譲り受け側の選定・PMI体制が中心となります。具体的な税務・法務の組み立ては、必ず弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2021年12月6日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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