2020.08.27 M&A実務

M&A仲介の「業界最安値」は本当か?レーマン方式・計算ベース・最低報酬で見る手数料総額の実態

M&A仲介の「業界最安値」とは、レーマン方式の料率の低さだけを指して標榜されることが多いものの、実際の支払総額は「料率」「計算ベース(株価のみか株価+負債か)」「最低報酬額」の3要素の組み合わせで決まります。料率が低くても最低報酬が高ければ小規模案件では割高となり、計算ベースが負債込みなら手数料総額は膨らみます。表面的な料率比較では真の総額は見えず、見積もりベースで比較する必要があります。

【この記事の結論】「業界最安値」を判断するにはレーマン方式の料率だけでなく、計算ベース(株価のみか負債込みか)と最低報酬額の両方を確認することが不可欠です。表面的な料率比較では真の総額は見えません。株式会社日本財務戦略センター 代表取締役の五十嵐悠一が、実務で見えてきた論点を整理します。

「業界最安値」を謳う仲介会社の手数料は本当に最安なのか?

近年、中小企業庁が推進する事業承継・M&Aの重要性が高まる中で、M&A仲介会社の広告に「当社はレーマン方式・業界最低水準」という文言が並ぶようになりました。中小M&Aガイドライン(経済産業省)でも手数料体系の透明性が強調されているため、表向きの料率提示は進んできています。

ただし、複数社が同時に「業界最低水準」を名乗っている時点で、どこかが正しく、どこかが厳密には正しくないという矛盾が生じています。表面的な料率だけで「最安」と断じる広告は、景品表示法5条1号の優良誤認のリスクも孕みます。

レーマン方式とは何か?計算の前提を整理する

レーマン方式とは、譲渡対価を金額帯ごとにブレークダウンし、それぞれに料率を乗じて合計する成功報酬の計算手法です。たとえば譲渡対価6億円のケースで、5億円までは5%、5億円超は4%とすれば、2,500万円+400万円=2,900万円が成功報酬となります。

注意したいのは、レーマン方式は「計算ロジック」に過ぎず、何%をどの金額帯に当てるかという料率設計や、何を計算ベースにするかは各社の自由という点です。同じ「レーマン方式採用」でも、A社とB社で総額がまったく違うのは、この設計差から生じます。

計算ベースは「株価のみ」か「株価+負債」か?

レーマン方式の盲点が、料率を掛ける母数(計算ベース)の違いです。株式会社日本財務戦略センターは、譲渡対価(株価)にリファイナンス対象の負債を加えた金額をベースとしています。一方で、株価のみをベースとする会社もあります。

同じ料率5%でも、ベースに数億円の借入金が乗るか乗らないかで、報酬総額は数百万円単位で変わります。広告で「料率は最低水準」と書かれていても、ベースが負債込みなのか株価のみなのかを確認しなければ、実額比較になりません。

最低報酬額が「業界最安値」を覆す理由

もう一つの重要論点が「最低報酬額」です。中小M&Aガイドラインでも、報酬体系の明確化項目として最低報酬の開示が求められています。

たとえば最低報酬500万円のA社と、最低報酬1,500万円のB社を比較した場合、譲渡対価2億円・料率5%なら成功報酬は計算上1,000万円となります。A社では1,000万円の請求ですが、B社では最低報酬1,500万円が適用されます。料率を一見「業界最低水準」に見せていても、最低報酬が高い会社では、中小規模の案件ほど割高になるのが実情です。

さらに、最低報酬を高く設定すると、成果と無関係な実質固定報酬に近づきます。これは仲介担当者のインセンティブを「成約のみ」に寄せ、売り手の利益最大化よりも買い手との折り合いを優先する動機を生みやすいという、利益相反上の課題も孕みます。

「手数料0円」「売り手から手数料を頂きません」は本当にお得か?

「手数料0円」を打ち出す会社もありますが、仲介会社が一件あたりに想定する利益が消えるわけではありません。売り手から取らない分、買い手からの請求が膨らむか、あるいは譲渡価格そのものを下げてでも成約させるインセンティブが働きやすくなります。

結果として、売り手にとっては「手数料はゼロだが、譲渡対価が想定より低い金額で成約してしまう」というシナリオが起こり得ます。中小M&Aガイドラインが指摘する「利益相反の適切な管理」と「報酬体系の明確化」の観点からも、0円表示の裏側にある経済構造を必ず確認すべきです。

仲介手数料を比較する際にチェックすべき5項目

これらを揃えてはじめて、各社の手数料総額が同じ土俵で比較できます。なお、契約条項そのものや税務上の扱いは、弁護士税理士など各分野の専門家にご確認ください。

株式会社日本財務戦略センターの考え方

株式会社日本財務戦略センターでは、初回面談時に譲渡対価のレンジと、それに対応する手数料の概算を提示するように努めています。代表取締役の五十嵐悠一自身が公認会計士中小企業診断士としてM&A実務に長く携わってきた経験から、「広告上の最安値」ではなく「総額と利益相反構造を踏まえた合理性」を判断材料にしていただくことを重視しています。

※M&A実務の最終判断には、弁護士・税理士・公認会計士など専門家への相談が不可欠です。セカンドオピニオン無料相談もご活用ください。

よくあるご質問

M&A仲介会社の「業界最安値」という表現は信じてよいですか?

料率だけを切り取った広告表現に過ぎないことが多く、計算ベースや最低報酬額まで揃えて比較しなければ実額の最安は判断できません。複数社の見積もりを取り、総額ベースで比較することをおすすめします。

レーマン方式の計算ベースが「株価+負債」と「株価のみ」では、どれくらい差が出ますか?

借入金額や案件規模によりますが、計算ベースに数億円の負債が乗るか否かで、成功報酬は数百万円単位で変動します。同じ料率でもベースの定義により総額が大きく変わるため、必ず確認しましょう。

「手数料0円」の仲介会社を利用するときの注意点は何ですか?

売り手から手数料を取らない場合、買い手側報酬への上乗せや、譲渡対価を下げてでも成約させるインセンティブが働きやすくなります。最終的な譲渡対価と利益相反構造の双方を、契約前に確認することが重要です。

公開日: 2020年8月27日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2020年8月27日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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