【この記事の結論】「業界最安値」を判断するにはレーマン方式の料率だけでなく、計算ベース(株価のみか負債込みか)と最低報酬額の両方を確認することが不可欠です。表面的な料率比較では真の総額は見えません。株式会社日本財務戦略センター 代表取締役の五十嵐悠一が、実務で見えてきた論点を整理します。
「業界最安値」を謳う仲介会社の手数料は本当に最安なのか?
近年、中小企業庁が推進する事業承継・M&Aの重要性が高まる中で、M&A仲介会社の広告に「当社はレーマン方式・業界最低水準」という文言が並ぶようになりました。中小M&Aガイドライン(経済産業省)でも手数料体系の透明性が強調されているため、表向きの料率提示は進んできています。
ただし、複数社が同時に「業界最低水準」を名乗っている時点で、どこかが正しく、どこかが厳密には正しくないという矛盾が生じています。表面的な料率だけで「最安」と断じる広告は、景品表示法5条1号の優良誤認のリスクも孕みます。
レーマン方式とは何か?計算の前提を整理する
レーマン方式とは、譲渡対価を金額帯ごとにブレークダウンし、それぞれに料率を乗じて合計する成功報酬の計算手法です。たとえば譲渡対価6億円のケースで、5億円までは5%、5億円超は4%とすれば、2,500万円+400万円=2,900万円が成功報酬となります。
注意したいのは、レーマン方式は「計算ロジック」に過ぎず、何%をどの金額帯に当てるかという料率設計や、何を計算ベースにするかは各社の自由という点です。同じ「レーマン方式採用」でも、A社とB社で総額がまったく違うのは、この設計差から生じます。
計算ベースは「株価のみ」か「株価+負債」か?
レーマン方式の盲点が、料率を掛ける母数(計算ベース)の違いです。株式会社日本財務戦略センターは、譲渡対価(株価)にリファイナンス対象の負債を加えた金額をベースとしています。一方で、株価のみをベースとする会社もあります。
同じ料率5%でも、ベースに数億円の借入金が乗るか乗らないかで、報酬総額は数百万円単位で変わります。広告で「料率は最低水準」と書かれていても、ベースが負債込みなのか株価のみなのかを確認しなければ、実額比較になりません。
最低報酬額が「業界最安値」を覆す理由
もう一つの重要論点が「最低報酬額」です。中小M&Aガイドラインでも、報酬体系の明確化項目として最低報酬の開示が求められています。
たとえば最低報酬500万円のA社と、最低報酬1,500万円のB社を比較した場合、譲渡対価2億円・料率5%なら成功報酬は計算上1,000万円となります。A社では1,000万円の請求ですが、B社では最低報酬1,500万円が適用されます。料率を一見「業界最低水準」に見せていても、最低報酬が高い会社では、中小規模の案件ほど割高になるのが実情です。
さらに、最低報酬を高く設定すると、成果と無関係な実質固定報酬に近づきます。これは仲介担当者のインセンティブを「成約のみ」に寄せ、売り手の利益最大化よりも買い手との折り合いを優先する動機を生みやすいという、利益相反上の課題も孕みます。
「手数料0円」「売り手から手数料を頂きません」は本当にお得か?
「手数料0円」を打ち出す会社もありますが、仲介会社が一件あたりに想定する利益が消えるわけではありません。売り手から取らない分、買い手からの請求が膨らむか、あるいは譲渡価格そのものを下げてでも成約させるインセンティブが働きやすくなります。
結果として、売り手にとっては「手数料はゼロだが、譲渡対価が想定より低い金額で成約してしまう」というシナリオが起こり得ます。中小M&Aガイドラインが指摘する「利益相反の適切な管理」と「報酬体系の明確化」の観点からも、0円表示の裏側にある経済構造を必ず確認すべきです。
仲介手数料を比較する際にチェックすべき5項目
- レーマン方式の料率テーブル(料率刻み・段階数)
- 計算ベース(株価のみ/株価+負債/企業価値(EV)相当額)
- 最低報酬額の有無と水準
- 着手金・中間金・月額顧問料などの固定費
- 譲渡契約後の表明保証違反対応や追加業務の費用
これらを揃えてはじめて、各社の手数料総額が同じ土俵で比較できます。なお、契約条項そのものや税務上の扱いは、弁護士・税理士など各分野の専門家にご確認ください。
株式会社日本財務戦略センターの考え方
株式会社日本財務戦略センターでは、初回面談時に譲渡対価のレンジと、それに対応する手数料の概算を提示するように努めています。代表取締役の五十嵐悠一自身が公認会計士・中小企業診断士としてM&A実務に長く携わってきた経験から、「広告上の最安値」ではなく「総額と利益相反構造を踏まえた合理性」を判断材料にしていただくことを重視しています。
※M&A実務の最終判断には、弁護士・税理士・公認会計士など専門家への相談が不可欠です。セカンドオピニオン無料相談もご活用ください。
よくあるご質問
M&A仲介会社の「業界最安値」という表現は信じてよいですか?
料率だけを切り取った広告表現に過ぎないことが多く、計算ベースや最低報酬額まで揃えて比較しなければ実額の最安は判断できません。複数社の見積もりを取り、総額ベースで比較することをおすすめします。
レーマン方式の計算ベースが「株価+負債」と「株価のみ」では、どれくらい差が出ますか?
借入金額や案件規模によりますが、計算ベースに数億円の負債が乗るか否かで、成功報酬は数百万円単位で変動します。同じ料率でもベースの定義により総額が大きく変わるため、必ず確認しましょう。
「手数料0円」の仲介会社を利用するときの注意点は何ですか?
売り手から手数料を取らない場合、買い手側報酬への上乗せや、譲渡対価を下げてでも成約させるインセンティブが働きやすくなります。最終的な譲渡対価と利益相反構造の双方を、契約前に確認することが重要です。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。
よくあるご質問(FAQ)
📅 本記事の情報基準日
本記事は 2020年8月27日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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