2020.08.27 M&A実務

「御社を買いたい人がいるから売ってくれと言われているが本当か」問題

M&A仲介から「御社を買いたい人がいるから売ってくれ」という問い合わせが来た

【この記事の結論】「買いたい人がいる」という打診の多くは数打ち営業です。秘密保持契約締結後の社名開示・接触経緯の具体性・口コミ件数を確認し、曖昧さがあれば早期にお引取りいただくのが安全です。

 

*2022年4月5日追記:「会社名 迷惑」などの検索でこちらのコラムへの流入がかなり多いので、新しいコラム(「また来たM&A仲介会社からのしつこい迷惑電話」)を追加しました。

電話対応がだるい方はこちらも併せてご覧ください。

2024年1月19日「M&A仲介会社の迷惑営業について」も追加しましたのでこちらも併せてごらんください。

いきなり「社長を出してほしい」みたいな電話が来たり、ホームページの問い合わせフォームから「会社を売ってほしがっている人がいる」という連絡が来たことがある経験がある方も多いかと思います。

思わせぶりな連絡であったりすることもおおく、自社の経営に自信がある社長であるほど他社から評価されていると思ってしまうかもしれません。

でもその電話は果たして本当なのでしょうか?

これは率直に言うと・・・、まず間違いなく適当、というより何千と連絡を行い、反応があった先に営業トークを行っているケースが多いです。

というのも仲介も案件がなければ始まらないため、どうしても数打ってあてる、という仲介会社が出てくるのはやむを得ないと思います。

(ひどいところになると、せっかく問い合わせをしたにもかかわらず、想定していた規模や利益額が出ていないと、そのまま無視をするという仲介会社もあるに仄聞しておりますし、たまに愚痴もこぼされますが)

M&A仲介会社の営業担当も出身会社が証券会社や生命保険会社の営業出身多いです。

このことからも彼らが前職でやっていたテレアポを取って面談して説明する、という営業手法とM&A仲介会社の営業手法の親和性が高いということの証左ですし、その営業手法でアポを取りに来ているのでしょう。

なお当社は他社と比べ、「数を打ってあてる」という戦略をとるほどの余裕もありませんし、嘘をついてまで案件化するというのも設立方針と異なるため、実際にお相手がいる企業様にしかアプローチいたしません。

とはいえ現実に、M&A仲介会社から問い合わせがあった場合どうしたらいいのか。

本当に相手がいるのかどうか、仲介会社から問い合わせが来たタイミングで判断するにはどうしたらいいのか、をお伝えします。

電話での問い合わせが来たら

最初のやり取りは電話でやることが多いと思いますが、その際に「相手の具体的な名前を出してほしい」って聞いてみましょう。具体的な先のない仲介会社は「秘密保持契約を結んでから」というようなあいまいな言い方でかわすと思います。

とはいえ秘密保持契約を結ばないで具体的な企業名を出す仲介会社も何ともです。

そういったところは情報漏洩を行う可能性があるので、早めにお断りするのも一つかもしれません。

一般的に秘密保持契約を締結すること自体は費用の発生もないでしょうし、情報収集を行うためのツールとして割り切っていいと思います(秘密保持契約書の雛形については経済産業省の案内もご参照ください)。

基本的に秘密を守りましょうという拘束しか発生しないはずですが、念の為、条文には注意しましょう。

また問い合わせ中、もしくは問い合わせ後に「〇〇(問い合わせしてきた会社名) 迷惑電話」で検索してみてもいいでしょう。

「株式会社○○M&A仲介 迷惑電話」と検索してみてヒットするようであれば、同様の営業手法を用いていると思われます。

もちろん営業電話自体は営業手法の一つなので否定はできないのですが、やはりやりすぎ、というか、程度が低く悪質なところですと口コミが書かれている件数が多い傾向があります。

あまりにも口コミが多い会社は気を付けたほうが良いのではないでしょうか。

なお口コミもサイトによっては依頼すると削除できるようです。

ただしそれまでの口コミ件数は記録されていますので今までの口コミ件数が多いにもかかわらず何もコメントが書かれていない口コミサイトは、企業から依頼を受けて削除されていると考えられます。

そのような会社は自社の評判の悪さを自覚しているけれどもやり方を変えていないという点で故意性が高いと思われるので特段気を付けたほうがいいかもしれません。

また開示のタイミングで着手金として費用発生する仲介会社もあると聞いております。

「他から依頼を受けて」という打診の流れで、相手に費用負担をさせる意味が分かりませんので、そういうところは最初の段階でお引取りでいいと思います。

弊社と連携して頂いているクレジオ・パートナーズ社仲介会社の手数料をまとめられていますが(許可をいただいて転載しています)、売り手から着手金を取る会社も複数社あるようですね。

秘密保持契約を締結したら

秘密保持契約を締結したタイミングで「社名開示をして下さい」と聞いてみましょう(初回時の面談でもいいと思います)。

そこで口ごもったらまず間違いなくアウトですよね。

お引き取り願ったらいいと思います。

社名開示をしても、それが本当かどうかっていう話があると思います。

本当かどうかを確認するために、「なぜうちか」「M&Aを行うとどうなると考えているのか」「窓口はだれか」「どうやって接触したのか」を細かく聞いてみましょう。

経緯について具体的に説明できれば確かさはあると思いますし、あいまいさやごまかしがあれば、そこに嘘があると思っていいと思います。

嘘をつく担当者は、M&Aの案件が進む中で、どこかで嘘をつく可能性があり、嘘によってトラブルを招く可能性があるため、その時点でお断りしたほうがいいと思います。

当社は先ほど述べた理由でお相手がいない企業へアプローチすることはありませんし、嘘をついてまで会社を売ってほしいということはございません(もしそのような担当者がいれば代表の当方までお申し出ください)。

それらがクリアされたら、具体的な話が待っていると思っていいと思います。そう思われたら、次のステップとして、「いくらで譲渡するのか」「その際の条件はどうしたらいいのか」ということを担当と詰めて行ったらよろしいと思います。

なお弊社のM&A仲介サービスでは、着手金・中間手数料など無料の完全成功報酬制で対応しておりますので、M&Aにご興味ありましたらお気軽にご相談ください。

<2024年4月8日追記>

本文中でマンパワー主体のコールが案件発掘の要素の一つと書いていますが、先ほどM&A支援機関登録事務局から迷惑営業の注意喚起が各社に入りました。

迷惑コールをものともしない会社は当局から排除される可能性がある(信用の低下や買い手・売り手は補助金の対象ではなくなるなど)ことから、人を抱えて固定費が高い会社はつらいことになりそうです。

逆に税理士などとリレーションを持っているコールだけに頼らなくていい日本M&Aセンターなどにとってはプラスでしょう。

参考までにご確認ください(赤字太字筆者)。

営業電話を迷惑に感じている方は本文を読まずとも、以下の画像先をクリックすると情報提供フォームに飛びますので、そちらでご相談されてもいいかもしれません。

お世話になっております。M&A支援機関登録事務局です。

平素より中小M&Aに係る支援に御尽力いただき、誠にありがとうございます。

事務局においては、登録M&A支援機関に係る支援の実態についての情報提供窓口を設置しておりますが、情報提供の内容としては、営業先が契約締結を断ったのにも関わらず、営業行為を継続する行為等の営業行為に係るものが多く寄せられております。

「中小M&Aガイドライン」においては、M&Aに必ずしも詳しくない中小企業の意思決定を適切にサポートし、依頼者の利益のために善意管理注意義務や職業倫理に基づいた支援を実施することをM&A支援機関に対して求めているところです。

こうした趣旨を踏まえると、契約締結に向けた営業行為についても依頼者となりうる中小企業の意向に沿って行う必要があると考えており、このため、今年度以降、営業に係る情報提供が寄せられた場合には、当該情報提供に係る登録M&A支援機関に対して通知し、注意喚起することといたします。

とりわけ、複数回の情報提供が寄せられる等、潜在的な依頼者である中小企業の意向に沿わない営業行為が組織的に許容されていると疑われる場合については、ガイドラインにおいて求めている「職業倫理」の醸成等が不十分との疑念が生じることとなりかねず、こうした場合には、M&A支援機関登録事務局としても追加的な対応を検討していくこととなります。

以上、引き続きよろしくお願いいたします。

 

M&A仲介については以下のブログも参考にしてください。

政府が中小企業M&A支援を行う背景

小規模M&A向け表明保証保険「M&A Batonz」についての解説

「M&A仲介への不信感4選」

仲介かFASか

「M&A仲介会社の手数料」上場・非上場会社との比較!

M&Aで会社を譲渡する際に失敗しないための21のポイント!

売り手がM&Aを始める前に確認すべき5つのこと

【年倍法】M&Aの「価格」と「価値」の違いとは

「御社を買いたい人がいるから売ってくれと言われているが本当か」問題

M&A仲介会社の「業界最安値」手数料問題とは

仲介会社が入る意味とは

「M&A仲介と契約を結ぶ前に。テール条項には気をつけろ!」

「中小企業庁から学ぶ! M&A仲介業者の見極め方」

「中小企業庁から学ぶ! M&A仲介業者の見極め方2」

日本政策金融公庫を使ったスモールM&Aのための資金調達!・・・と疑似PEファンドの組成?

コロナと資金調達と資本性劣後ローンの活用と

M&Aで自分の会社を少しでも高く売るために!

※M&A実務の判断には専門家との相談が不可欠です。日本財務戦略センター(JFSC) ではM&Aセカンドオピニオン無料相談を承っております

 

公開日: 2020年8月27日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する5問の計15問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。
本記事Q11. M&A仲介会社から「買いたい人がいる」という打診を受けましたが、その後のやり取りで着手金(リテイナーフィー)を求められました。これは一般的なのでしょうか?
A. 売り手側に対して、具体的な買い手からの打診を理由に着手金を求める仲介会社も存在すると承知しております。しかし、買い手からの依頼を起点とする打診において、売り手側が初期費用を負担する意味合いは薄いと弊社では考えており、そのような場合は慎重な判断が推奨されます。
本記事Q12. 秘密保持契約(NDA)締結後に仲介会社から買い手の社名が開示されましたが、その買い手が本当に当社に関心があるのか、どのように確認すればよいでしょうか?
A. 開示された買い手企業について、「なぜ当社に興味を持ったのか」「M&Aを通じてどのようなシナジーや効果を期待しているのか」「当社への接触経緯は具体的にどのようなものか」といった点を詳細に質問することをお勧めします。具体的な説明が得られず、曖昧な回答に終始する場合は、その信憑性を疑う必要があるかもしれません。
本記事Q13. 記事で「会社名 迷惑電話」で検索することを推奨されていますが、検索結果や口コミサイトでどのような点に注意して確認すればよいでしょうか?
A. 検索結果では、類似の営業手法に関する苦情や口コミの件数に注目してください。口コミ内容が削除されていても、過去の口コミ件数が異常に多い場合、企業が自社の評判を認識しつつも営業手法を変えていない可能性が考えられます。
本記事Q14. M&A仲介会社から秘密保持契約(NDA)の締結を求められましたが、契約書の内容について特に注意すべき点はありますか?
A. 秘密保持契約は情報収集のためのツールとして有効ですが、念のため契約条文全体を慎重に確認することが重要です。特に、秘密情報の範囲、契約期間、損害賠償に関する条項、そして費用発生の有無については、専門家にご確認いただくことを強くお勧めいたします。
本記事Q15. 最初の電話での打診の段階で、相手の具体的な買い手企業名を聞いても「秘密保持契約締結後でないと開示できない」と言われました。これは一般的な対応なのでしょうか?
A. 秘密保持契約締結前の段階で具体的な買い手企業名の開示を拒否する仲介会社は少なくありません。しかし、その回答があまりにも曖昧であったり、具体的な接触経緯の説明を避けるようであれば、単なる数打ち営業である可能性も考慮し、早期にお取引を辞退することも一つの選択肢です。
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📅 本記事の情報基準日

本記事は 2020年8月27日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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