M&A仲介会社の迷惑営業について

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公開日:2024年1月19日 /最終更新日:2024年4月10日

<2024年4月8日追記>

本文中でマンパワー主体のコールが案件発掘の要素の一つと書きましたが、先ほどM&A支援機関登録事務局から迷惑営業の注意喚起が各社に入りました。
迷惑コールや代表問い合わせ先への迷惑メールをなど、迷惑をものともしない会社は当局から排除される可能性がある(信用の低下や買い手・売り手は補助金の対象ではなくなるなど)ことから、人を抱えて固定費が高い会社はつらいことになりそうです。
逆に税理士などとリレーションを持っているコールだけに頼らなくていい日本M&Aセンターなどにとってはプラスでしょう。
参考までにご確認ください(太字、赤字筆者)。
営業電話を迷惑に感じている方は本文を読まずとも、以下の画像先をクリックすると情報提供フォームに飛びますので、そちらでご相談されてもいいかもしれません。

お世話になっております。M&A支援機関登録事務局です。
平素より中小M&Aに係る支援に御尽力いただき、誠にありがとうございます。

事務局においては、登録M&A支援機関に係る支援の実態についての情報提供窓口を設置しておりますが、情報提供の内容としては、営業先が契約締結を断ったのにも関わらず、営業行為を継続する行為等の営業行為に係るものが多く寄せられております。

「中小M&Aガイドライン」においては、M&Aに必ずしも詳しくない中小企業の意思決定を適切にサポートし、依頼者の利益のために善意管理注意義務や職業倫理に基づいた支援を実施することをM&A支援機関に対して求めているところです。

こうした趣旨を踏まえると、契約締結に向けた営業行為についても依頼者となりうる中小企業の意向に沿って行う必要があると考えており、このため、今年度以降、営業に係る情報提供が寄せられた場合には、当該情報提供に係る登録M&A支援機関に対して通知し、注意喚起することといたします。

とりわけ、複数回の情報提供が寄せられる等、潜在的な依頼者である中小企業の意向に沿わない営業行為が組織的に許容されていると疑われる場合については、ガイドラインにおいて求めている「職業倫理」の醸成等が不十分との疑念が生じることとなりかねず、こうした場合には、M&A支援機関登録事務局としても追加的な対応を検討していくこととなります。

以上、引き続きよろしくお願いいたします。

 

M&A仲介会社の迷惑営業

おかげさまで?、「会社名(日本〇〇センターとか〇〇総合研究所)+しつこいor迷惑or迷惑電話等」のネガティブワードで検索した弊社へのアクセスが相変わらず多いので、業界の端くれにいるものとして責任を感じ、今回はM&A仲介会社の営業スタイルとそれらについての当職の考えについて改めてお伝えしたいと思います。

他社を誹謗中傷する意図は全くないので、具体的な事例があってもこのサイト内での文字情報は公開情報を除き仮名にとどめます(特定の会社名で検索されようと思わないため)。
また参考にしたSNSや各種文献のリンク先も記載しているので、迷惑電話の対応でイラっとされたらそちらも見て和んでいただければなと思います。
(営業活動でご苦労されてる同業他社の中の人の口コミも記載しますが、中の人も色々大変なんだなって思ってください。
いや、「成約させるためなら何をやっても許される文化で価値観がゆがむ」という口コミの時点でもう無理か…)

なお本文の会話文中では関西のしゃべり方が多くなっていますが、当職が実際に売り手様とやり取りをしている会話がベースとなっています。
売り手様は関西の会社が多く、臨場感を出すため実際のやり取りを再現を試みています。
皆様と同様、迷惑営業にさらされている売り手様の「リアル」を体感していただければと思います。

閑話休題というか前提条件

一般的にM&A仲介会社の営業マンは、売り上げに対してのインセンティブが求められます。
そして各社で売り上げになる手数料が異なるので、各社の経営方針によって手数料額や計算方式も変わってくるでしょう。
弊社と連携して頂いているクレジオ・パートナーズ社が仲介会社の手数料をまとめているので見てみましょう(許可をいただいて転載しています)。
この報酬額が高い仲介会社のほうがスポットで得られるであろう手数料のために営業マンが気合いが入る(それがいいかどうかは受け手側の判断)だと思います。

上記の計算方法、絶対額を踏まえて各社のスタイルをイメージしながら以下のコラムを読んでいただくとイメージがわきやすいかもしれません。

M&A仲介会社の営業スタイル

営業方法については会社のスタイルや担当者によって変わってくると思いますが、大きく

・インバウンド
・アウトバウンド

の2つに分けられます。

インバウンド
は広告などを見て、企業経営者様から直接または税理士等士業経由で仲介会社に問い合わせをすることです。
余談ですが、税理士やその他士業経由で仲介会社に売却を問い合わせた場合、仲介会社から士業に数百万円単位でまとまった紹介料キックバックされていることが多いので、100%、売り手様の味方になるとは限らない可能性があります。
またM&Aが成立すると顧問契約が切られ、顧問報酬がなくなる可能性があるため、顧問先が税理士その他士業は必ずしもM&Aという立場では売り手に中立でないという意見もあります。
例えば当職が手掛けた案件では、M&Aを進めていく過程で、税理士報酬が周辺相場より「異常に高い(相場が下落していく中、数十年間顧問報酬が据え置きだったようです)」ことが発覚し、売り手様が顧問先に「お前、ぼったくってたんか!」と喧嘩別れになった案件もありました。
また顧問契約を維持したいため売り手様に対して客観的な意見が言えないこともあるでしょう
このあたりのバランスについては、
顧問弁護士や税理士と今までの関係ややり取りを踏まえて見極めたほうががいいと思います。

話題がそれましたが、アウトバウンドは仲介会社から企業経営者・株主様へ問い合わせるというスタイルです。
今回このコラムを検索をされて見に来ている方は、迷惑営業に悩まされてお問い合わせいただいていると思いますので、アウトバウンドの営業活動にさらされていると思います。
特に仲介会社の電話対応で時間を割かれたり、ぶしつけな物言いや表現で感情を害されているのかなと思います。

従いまして、今回はインバウンドではなくアウトバウンドについて主として解説したいと思います。

もちろんインバウンドでイラっとすることも、あってはならないのですが問い合わせ先の仲介会社によってはあります。
後述しますが、例えば「うちでは御社のような小さい会社は扱えないんですよ。笑」とか「赤字の会社は無理ですよ。笑」みたいな形で断られるという話を仄聞します(このポストはまた後程取り上げます)。
もちろん弊社ではそういった理由でお断りしたことはございませんが、今回はアウトバウンドを中心にするのでそういうケースは扱いません。

アウトバウンド営業3類型

現在、アウトバウンドの営業手法として電話、メール、DM(郵送)もしくはその合わせ技が活用されているようです。
周囲の話も踏まえ、具体的な事例を参考に個別に内容を見ながら個別に解説していきたいと思います。

電話

郵便物であれば基本的に「親展」で送られることから、基本的に経営者どまりの問題だと思いますが、電話でのアウトバウンドは受付や電話を取った社員の時間も奪ってしまいますよね。
受電した側とすると自分より上位である代表者への取次もストレスだと思いますし、代表者が「なんでこんな電話をつないだんだ!」といわれたら電話を取った人が損した気分になってしまうこともあると思います

結果として社員のモチベーションも下がってしまいますし、弊社サイトへも多数アクセスがあるのですが、そういう流れで来ている人が多いのかなと思います。
しかも電話をつないでM&Aが行われたら、周りの社員から「お前が電話をつないだせいでM&Aがされたんだ!」とか言われそうですし…。

電話営業は仲介会社担当者からすると

①経営者の意向が直接確認でき
②タイミングによってはニーズをその場で確認し
③場合によってはすぐ面談へ移行できること(電話でアポを取ることをKPIにしている会社も多いようです)

などの理由から多用されている手法です。

特に今は上場M&A仲介会社を中心に、在籍営業マンの数で会社の成長予測として株主に伝えるため、目立った指標である人員の確保を増やしている状況です。
単純化すると「来期売り上げ=予想営業マン人数×予想成約件数×予想成約単価…」のような計算式(希望的観測)を出して、「来期はこれくらいの売り上げになるので株買ってください」ということですね。

そうはいっても人員を増やして人を遊ばせておくにもいかないので、空いた時間(特に新人に)仕事を覚えるまで電話をさせるということを行っているところもあるようです。
過去には新人を大量に取って採算が合わなくなったらリストラをしたケースもあったようです)

これらすべて仲介会社側の勝手な都合なので、仲介会社の「アウトバウンドコール(受けて側には「迷惑電話」)」を受けている社員の皆様には、迷惑電話を行っていない弊社が代わってお詫びをします(ここのサイトに来ていただいたお礼みたいなものです)

ただ中には社員のマインドを高めるためにあえてやっている仲介会社もあるようです。
公開情報なので実名を出すと、上場企業ではMACP社が毎週一回、代表者と社員で一丸となって午前中に電話をかけているということが週刊ダイヤモンドで報じられました

個人的には電話をかけるだけであれば、営業挨拶のようなものかもと思いますが(弊社では上述の理由で行ってません)、不快に思われる理由として、一般論ですが電話を掛けた担当者の態度に問題があるようです。
(本サイトでは実名を出しませんが、ご興味ある方は参考例をリンク先でご確認ください:

不快な理由についてはビジネスマナーの問題だと思うのですが、挙げられている苦情として、

・なれなれしい
・社長はいないと言ったら(繋げないと言ったら)ガチャ切りされた
・嘘をつかれた(社長の知り合いのようにかけてきた)
・いきなり社長を出してくれと言われた
・「御社を指名している会社がある(先ほどのおとり広告と同じかもしれません)」
・何を言っているのか聞き取れない

という理由のハレーションが起きているようです(言っていることが聞き取れないのは営業として最悪だと思います)。

このいわゆる「受付突破」はM&A仲介会社だけではなく、証券会社のスタイルであったと思いますが、ここ10年弱の間で証券会社(やメガバンクや地銀やハウスメーカーやキーエンス)からも大量に営業マンが転職しているので、そのスタイルが仲介会社にも移植されたと思われます。

証券会社の営業マンとしては資産のありそうな会社経営者を捕まえて、上場株式を買わせたり売らせたりするのと同じように、会社経営者を捕まえて、自社の株を売らせるのも似たところはあると思うので、営業スタイルの親和性はあると思います。
ただ電話を受ける側としてはそんなことはもちろん関係ないですし、上場株式を売買するのと自分の会社を売るのではまるで違うので、そういった点もデリカシーが無いと思われ嫌悪感を抱かれるのだと思います。

また最近は電話でのアウトバウンドをコールセンターに外注している会社もあります。
(余談ですが、最近は業界が拡大しているため、M&A業界に特化した人材紹介サービス探索などのサービスを提供している会社が増えています)。

外注先のコールセンターからすると依頼した仲介会社の企業ブランドが棄損しても関係ないので、より雑な対応になる可能性は高いですよね。

なぜなら外注コールセンターは歩合(一回アポを取ったらいくら)という形で受注しているケースが多く、数をこなすことに主眼が行ってしまうのはやむを得ません(悪いのはそういう会社を使っている仲介会社です)。
その意味では代表以下全社員で毎週半日電話をかけるというMACPは個人的には潔いと思います。

とはいっても電話を取った側としてはいらいらしますよね。
ご安心ください。
本コラムの最後でそういう場合はどうしたらいいのか書いておりますので、是非ご参考にしてください。

メール

少し前から流行りだした手法は、この「メールを送る」、です。
ただメールを送る、といっても経営者個人のメールアドレスに直接送るのならまだいいのですが、問題なのは問い合わせフォームのような公式なメールアドレスに送るところです。

なぜ問題かというと、これはもうFAXで「会社を売らないか」と送り付けているのと等しく、売却の意思があろうがなかろうが、従業員が会社が売られると見て誤解して噂になる可能性があるので極めて危険ですし、愚直にマネジメントをしている経営者にとっては失礼な話だと思うからです。

温厚な私ですら怒りを覚えるレベルです。

またメールが来るたびに、従業員が「しゃちょー! またM&Aのメールが来てますよー! どうしますー!?」とほかの社員の前で大声で言われて困ると仰っていた売り手様もいて、よく会社の経営者に非常にフラストレーションがたまることをするよなあと感じています。

従って、個人的な感覚だと、このような会社の代表アドレスにぶしつけに売却意思を打診する仲介会社は、買い手の探索のタイミングでも情報が雑に扱われると覚悟しておいた方がいいかもしれません

買い手側からしてもそのような会社から打診があっても、リンク先のような印象を受けてしまうので、売り手様の思い入れが買い手に届くことは難しいのかなーと、同じ業界にいる身としては心配になることもあります。

DM(郵送)

一般的にはダイレクトメールといわれるものですね。
郵送やクロネコ便で、経営者あてに資料や親書を送られているようです。
大量に送れるので効率的な反面、一通単位で経費が掛かるため、仲介会社としてはなるべく単価を下げて効率化を上げたいと考える手法です。

そのため画一的な文面にしたり、発送日を「吉日」という書き方でごまかしたり(日付を指定すると手間がかかるからです)、宛名を入れるところを「社長限」みたいにそれっぽい感じでごまかすなどしてコストを下げようとしています。
そういうDMは投げ込みのチラシみたいなものですね。

ただ文書を送るだけであれば一般的な営業形態として許容してもいいと思いますが、SNS上ではその文面に激怒している経営者が散見されます。
例えば「おとり広告」です。

以下は、X(旧ツイッター)からの引用になりますが、

M&A仲介会社のマッチポンプ営業DMが毎週のように届いてウザいので暇つぶしにご紹介。
この手の「御社と資本提携したい大企業があります」みたいなのは大体嘘で、具体的な会社なんてこの時点ではまず存在してません。とりあえずそれっぽい話を片っ端からもちかけて、会社を売る気がありそうな社長が引っ掛かったら、株価算定して売り物になりそうだったら、今度は買いそうな会社に「あなたの会社に買って欲しいと言ってる会社がありますよ」と宣伝して、どこかに引っ掛かったらそこで初めて仲介に入る感じです。火のないところに煙を立てる式の典型的なマッチポンプですね。

ちなみに今日のDMには「ウチと取引のある売上500億の会社がウチとの資本提携もしくは買収を臨んでて自社グループに入れたいと言っている」と書いてありました。

「売上500億の取引先を買わないか?」って話かと思ったら「売らないか?」だったし(笑)
作り話とはいえ少しプライドが傷ついた。

この手のDMが来て迂闊に反応すると、やたらめったら資料だけ要求された挙句に、大した株価もつけられなかったり、買い手が結局みつからず無駄手間になる事も多々ありますのでご注意を。

その昔、資金繰りが苦しい時に、この手のDMが来て、世間知らずな僕は、ただでさえ業務に追われて時間が無いのに尻尾ふって何日も徹夜で一生懸命に資料を作った挙句に「オタクの財務内容では値段はつけられないですね」とクソ生意気な営業マンに言われて去っていかれ、その背中を呆然と見つめながら本気で殺意を覚えたあの日のことを忘れません。

全てを自分で見ないといけない中小企業の経営者にとって一番貴重なのは時間です。
その時間を雑に奪おうとする営業には注意しましょう。

ちなみに、本当に買収したかったり資本を入れたい時は、銀行か証券会社経由で初期的なアプローチが来ることが多いですよ。

と、過去の経緯もありかなりご立腹されていますね。
ちなみにこのアカウントは当職も昔、著書を面白く拝読したオンデーズの代表者です。
「破天荒フェニックス」は私が起業独立を志したきっかけになるほど面白いので、是非手に取ってみてください。

単純な資本業務提携の意思があるかどうかの打診レベルであればここまで怒らなくともと思うのですが、上にも記載されているように「おとり広告」のように思われたところが過去の経験と相まってさらに逆鱗に触れたのでしょう。

かつリンク先に画像もあるのですが、先ほど述べたように「社長限」「〇月吉日」のような送る側からすると、「ああ、こういうところを手を抜いてコストを下げてるんだな」と、発送する側からすると思ってしまいました。

本当に相手からの名指しがあるならこういう書き方にはならないはずなので、そりゃSNSで公開処刑にあうよなあと思って見ています。

他にも探すとこういうポストもあります。

ある企業様から具体的な相談として御社とのM&A、または提携を みたいな営業メールとかdm毎日のようにくるけどこれっておとり広告で摘発してもらえないの? M&A仲介で上場してるような会社からも毎日くるんだが

これも実際にいない買い手がいるように見せかけて案内をしているので、誤認を招いたり、過剰な期待をさせてしまっています。
結論から言うとこれは後述する一般社団法人M&A仲介協会に出てくる倫理規定第7条の(営業及び広告)「会員は節度と品位をもって営業活動を行わなければならず、いやしくも虚偽または誤解を与える可能性の広告を使用して、依頼者を自社に不当に誘引する行為をしてはならない。」違反です。

最初に出ていたポストの郵送もとは「会員」に属していると思われるので100億%倫理規定に違反してますね。
こういうDMが色々な会社、場合によっては同じ会社から別々の担当者名で複数届いたら、怒りたくなる気持ちもわかります。

余談ですが、弊社の売り手様で「御社を買いたいという会社があります!」と2年ぶりに他社仲介から連絡があって「2年前にもお前んとこから連絡あったで」と返答したところ、「すいませんでした! 間違えました!」といってそれっきりになったという笑えない笑い話もあります。
いや、営業なら仮に嘘だとしても話してくれてるねんから「当時と状況が変わったので、くらい言いますよね」と売り手様と突っ込みましたが…。

ただ名指しではないですが、本当に希望エリアや業種などで声をかけられているケースもあることから(弊社がご連絡する場合はこのケースです)、この見極めは大変難しいと思います。
そのうえで、紹介先候補の一つとしての打診ではなく、「御社を名指しで指名している」と仲介の担当者が言ってきたのであれば、嫌な世の中ですが、まずは疑ってかかってもいいかもしれません。

当職も「うちを名指しで買いたいと連絡がきたんや!」と売り手様から言われたことがありましたが、「じゃあ目の前でその会社に電話してもらったらどうですか?」とやんわり返答したことがありました。
実際に売り手が「買い手」とDMや面談で名前が出された会社に直接連絡したら「そのような事実はない」と言われたこともあったケースも仄聞しました(そのあと仲介会社に苦情が行ったようです)。
それらの事例を考えると「御社を指名して買いたい会社がいる」といわれても「ほんまか?」と思ってしまうわけです。

もし私が買い手で、本気でピンポイントで買収を考えていたら、学研の社長ではないですが、信用調査で調べてメインバンクなどに相談するか直接アプローチすると思うからです。
(このも名著だと思うので、買い手の責任者にはぜひご一読してほしいともいます)

なので「名指しで連絡している」という案内をよこしてきている仲介会社には要注意かなと考える次第です。

おとり広告の話題だけで結構長くなってしまったのですが、この他にも「1月中に返事をしてほしい」と書かれているDMが2月に送られてきていたというような、そもそもビジネスマナーとしてどうかと思われる郵便物が送られてきたなどという話もありました。

この他、登記簿謄本を上げて代表者の自宅に郵送するという手法も増えているようです。
私なんかはそういう話を売り手様から聞くと「自宅に郵送とか気持ち悪くないですか?」と言ってしまいますが、「担当者から、M&Aは秘匿性が高いので自宅に送ったんです、と言われました」と言って納得されている人もいたので、色々だなあと思いました。

後はM&A仲介会社から来たと思われたくないために個人名で送るとか、差出人が書いてないとかでしょうか。
いや、そういう書面の方が受け手からすると気持ち悪いのではと思ってしまいますが…。
後は最近はやりの「手書き風」ダイレクトメールですか。
受け取る側からすると「送られてくる郵便物の会社は全部違うけど、送られたDMはみんな筆跡が一緒」みたいなハレーションもあるようです。

私も「手書き風DM」の会社から営業を受けましたが、今現在はフォントが限られており、特定のフォントに数社の仲介会社が群がっている…いや、利用申し込みをしているので、そりゃ売り手様に送られる筆跡もかぶるよなあと思いました。
というか、使う前にこのあたりのことはなんでみんな社内で調整しないの。。

郵便物に限らないのですが、M&Aは物の売買と違って、数カ月という期間で、かつ相対取引なので、その交渉過程で感情的なハレーションが起きることが売り手様も買い手様も問わず、一定程度想定されます。
それをいかにハレーションを抑えて調整するかが仲介の役割であると思うのですが、問い合わせの時点で売り手(候補)様にハレーションを起こしてしまうようだと、その会社ないしは担当者でのM&Aは上手くいかないのではと思ってしまいます。

合わせ技

DM⇨電話というパターンもあります。
これは事前にDMを送ると、電話をかけた際に「先日お送りした資料の件で」と連絡できるので、代表者につながりやすいというのがその理由です。
個人的にはこのスタイルはコストもかけ丁寧に段階を経ているので、ビジネスマナーとしては問題ないと思うのですが、先ほど出した具体例のように、郵送文書にマナーがなく、かつ電話対応もひどかったら受け手側の怒りが倍増するだけになる可能性もあると思います。

見極め方と弊社のスタンス

以上みてきたように、大きく分けて3つの方法(DM、電話、メール)のアウトバウンドでアプローチしてくる仲介会社が増えています。
そのような会社や担当者が実際どうなのか判断することは普段、M&A仲介界隈(といういい方もおかしいですが)にいないと、なかなか見極めるのも難しいでしょうし、まじめに本業の経営に専念しているのであれば、そんなことに時間を使うことがばかばかしく思われるのも当然のことです。

では仲介会社からアプローチが来た時にどうしたらいいでしょうか。
一般社員と経営者で代わってくると思うので順にみていきましょう。
一般社員の場合であれば、「M&Aの取次は全件禁止!」といわれてる場合は電話をガチャンと切ればいいと思いますが、そうではない場合は、相手のマナーがちゃんとしているかどうかで判断して、繋ぐかどうかを上席に打診するということでいいのではないでしょうか。
つまりは通常のビジネスルールの中でやればいいと思います。
ただしあまりにもひどい相手であれば、電話のガチャ切り、中小企業庁への通報、放置しての通信費加重、先ほど出した掲示板に口コミを書くなど、いろいろなやり方が考えられると思います。

次に経営者の場合を考えてみましょう。
まずご自身がM&Aを考えているかどうか、また先方からの問合せ内容がどうかで代わってくると思います。
もし経営者が5年以内くらいに漠然とM&Aを考えている(考えざるを得ない)ということであれば、頭の整理や情報収集という点で問い合わせ内容に興味を持っていいと思います。
そのうえで、どういう仲介会社がどういう風にアプローチしてきたのかで判断したらいいと思います。

今では仲介会社もSNSの発達で色々と社風が分かりそうなので、そもそもその会社の口コミが怪しそうであればその段階でNGでいいと思います。
口コミもオープンワークなどの社員口コミを見ると内情が可視化されるのでいいかもしれません。

また問い合わせ内容が「御社を指名している」という内容でしたら先ほど申し上げたように、おとり広告の可能性があるので、眉に唾をつけて判断してもいいでしょう。
なぜなら今後、数カ月以上の期間にわたってその仲介会社ないしは担当者とやり取りが生じますが、信頼関係を築いて数カ月以上継続できるのかという最初の判断になるからです。
また傾向としてですが、上場しているM&A仲介会社は、先ほど申し上げたように、株主に対してIRを行う必要があることから、どうしても単年度を重視した営業至上主義になってしまうと思います。
なので嘘があるかどうか、自分に合うかどうか(急かされる可能性を織り込むか)などを、長年経営して磨かれた経営者の視点で判断することが重要だと考えます。

弊社においては弊社のモットーである「顧客に対して誠実であれ」の観点から、弊社に問い合わせをいただいている買い手のニーズの候補となり得そうな企業にDMでご案内しております
従ってDM内容に嘘はないですが、もしそうお感じになるようであれば代表である五十嵐宛にお気軽にお問い合わせいただければと思います。

本当に迷惑営業が嫌になったら

そうはいってもDMやメール、電話をしてきているのは日本財務戦略センターじゃなくて他の会社だし、そういうところからのうざい連絡はどうしたらいいの!というお気持ちはありますよね。

実はM&A仲介業会には一般社団法人M&A仲介協会という団体があります。
そこで苦情などの取りまとめはしているようなのですが、正直なところまずは自分たちの苦情の管理してから言ってくれと思うようなメンバー構成なので、率直に言ってどこまで頼りになるのか何とも言えません。
繰り返しになりますが、今でも倫理規定に反したような思えるDMを送ってくるも会員会社なので、自律しているのかが判然としません。

M&A仲介業界に対する問題提起は昔からあったのでしょうが、M&A仲介会社の問題について声を上げた政府・政治家は私が思いつく限りで河野太郎大臣(当時)が初めてで、河野大臣から中小企業庁に指令が飛び、先ほどのような業界団体の協会が設立されたという経緯があります。
従ってM&A仲介業界の問題に関しては、河野太郎大臣が政府の中では一番よくご存じだと思いますが、さすがに内閣閣僚に直接打診するのも通常難しいと思います。

そうすると監督官庁という立場に一番近い中小企業庁に問い合わせするのが一番効果があるのかなと考えます(以下抜粋です)。

M&A支援機関登録事務局内 情報提供受付窓口問合せ先Eメール:jouhouteikyou@ma-shienkikan.go.jp
TEL:03-6867-1478
URL :https://ma-shienkikan.go.jp/inappropriate-cases外部サイト
受付時間:平日 10:00~17:00

中小企業庁事業環境部財務課長 日原
担当者:高橋、矢橋、田中

電話:03-3501-1511(内線 5281~4)
03-3501-5803(直通)

FAX:03-3501-6868

ただそこまでいかない担当者のマナーの悪さだけのレベルであれば、先ほど記載した

・電話のガチャ切り
・中小企業庁への通報
・放置しての通信費加重
・口コミへの書き込み

などで高ぶった気持ちをなだめていただければと思います(電話についてはこちらのコラムも参考にしてください。「また来たM&A仲介会社からのしつこい迷惑電話」)。
仲介会社からの不快な電話でこのサイトにたどり着いた方、ここまでお読みいただきありがとうございました!

雑感

色々上げてきましたが、これらの要因として大きくは

①高額のM&A手数料収入
②インセンティブ方式

の2点があると思います。

売り手からの最低手数料を2000万円、2500万円としている会社が上場企業を中心にあったり、買い手からは応札で手数料を取ったりする会社があるので、そりゃ売り手個人の経済的メリットはなくなるなと思います。
他にも、少し前なのですが、「運転資金のために、事業所を売ったんや!」という売り手様がいましたが、最低手数料が2,500万超の会社だったので、「弊社でやったらもっと運転資金が出たと思いますよ…」といったこともありました。
上場会社、しかもM&A仲介協会なる団体の幹事や正会員に所属していてこれなので、売り手様からしたら何を信じたらいいのだろうと思う気持ちは募るのではないでしょうか。

さらに言えば以下にあるように担当者もインセンティブ制であることから、どうしても会社だけではなく担当者も成約&成約額に依存するのはやむを得ないと思います。

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「成功報酬制」は確かに担当者がきちんとやれば、多数の買い手から評価をもらって市場原理で評価されると思います。
ただ仲介会社のキャッシュフロー欲しさに「決め打ち」されてしまうと、売り手様が思った価格で売れなくなってしまう。
つまりM&A仲介会社が買い手とグルになって、売り手を丸め込み、相場より安い価格で懇意の買い手に売って、しばらくしたら懇意のファンドから転売するようなスキームですね。
仲介内でもこの買い手はやばいと口コミで広がっているところがありますので、そういうところはセカンドオピニオンで避けることが必要ではないでしょうか。
なぜなら「安く売られる」分にはオーナー経営者の問題だけですが、その後転売されてしまうので、従業員や取引先の問題にも発展してしまうからです。

「完全成功報酬制」も「インセンティブ方式」もモラルに則って行えば問題ないのですが、個人や会社の欲が出てしまうと、関わった人が損をしてしまいます。
そういったところを見極めて、経済的メリットを得ながら会社を後世に残していただければと思います。
色々と情報が錯綜して何が正しいと思えるのか判断するのも大変だと思いますが、ご不明な点がありましたらお気軽にご相談ください!

 

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