M&A仲介会社の迷惑営業の終焉? 中小企業庁もさすがに激怒!

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公開日:2024年4月8日 /最終更新日:2024年4月9日

M&A支援機関登録事務局からの怒りのメール

中小企業庁下の中小企業M&Aの仲介会社を登録・指導する、M&A支援機関登録事務局から、2024年4月8日、登録している各M&A仲介会社に以下のようなメールが一斉送信されました(太字・赤字は筆者)。

お世話になっております。M&A支援機関登録事務局です。
平素より中小M&Aに係る支援に御尽力いただき、誠にありがとうございます。

事務局においては、登録M&A支援機関に係る支援の実態についての情報提供窓口を設置しておりますが、情報提供の内容としては、営業先が契約締結を断ったのにも関わらず、営業行為を継続する行為等の営業行為に係るものが多く寄せられております。

「中小M&Aガイドライン」においては、M&Aに必ずしも詳しくない中小企業の意思決定を適切にサポートし、依頼者の利益のために善意管理注意義務や職業倫理に基づいた支援を実施することをM&A支援機関に対して求めているところです。

こうした趣旨を踏まえると、契約締結に向けた営業行為についても依頼者となりうる中小企業の意向に沿って行う必要があると考えており、このため、今年度以降、営業に係る情報提供が寄せられた場合には、当該情報提供に係る登録M&A支援機関に対して通知し、注意喚起することといたします

とりわけ、複数回の情報提供が寄せられる等、潜在的な依頼者である中小企業の意向に沿わない営業行為が組織的に許容されていると疑われる場合については、ガイドラインにおいて求めている「職業倫理」の醸成等が不十分との疑念が生じることとなりかねず、こうした場合には、M&A支援機関登録事務局としても追加的な対応を検討していくこととなります。

以上、引き続きよろしくお願いいたします。

弊社コラムでもM&A仲介会社の迷惑営業に苛立つ皆様にコラムを提供してきましたが、正直、迷惑営業をやっている側で仕切られている組織なので改善は見込めないかなと落胆しておりました。
ところがなんとここへきて「職業倫理」が欠如している営業行為を組織的に行っているM&A仲介会社に対して、当局が「追加的な対応を検討していく」とのアナウンスが出ました。
おそらく登録の取り消しや停止、迷惑営業仲介会社の実名公表などでしょう。
激怒振りが感じられる文面ですね。
登録が取消や停止されたら、信用の問題ももちろんありますが、売り手や買い手はM&Aを行う際の手数料の申請ができなくなってしまうので、取引先にも影響が出てしまいます。

支援機関登録事務局とは

なお支援機関登録事務局はもともと中小企業庁が野放図にされているM&A仲介を管理するに至る一連の経緯があり、河野太郎大臣のM&A仲介に対する利益相反の問題意識から発足しました
もともと中小企業M&A仲介に不信感があったため、業界の動きを補足して是正していこうという姿勢は最初からあったと思いますが、残念ながらそういう経緯を理解しなかった仲介会社が多かったのでしょう。

以下、参考までに弊社と連携しているクレジオパートナーズ社がまとめているように(許可を得て掲載しています)、そもそもの手数料水準が高い会社が多く、業界の営業マンに対する平均インセンティブの平均も20%(高い会社は50%)になるなど目先の報酬やインセンティブにとらわれてしまい、アグレッシブな営業マンにとってはいい環境だったと思いますが、そういった営業マンから電話やメール(しかも会社の代表メールアドレス)に営業を受ける中小企業経営者はかなり迷惑に感じていたと思います(なお弊社はポリシーとして売り手様の発掘のための電話や営業メールは行っておりません)。

M&A仲介会社の今後の生き残りは

今までのコラムで連載していましたとおり、各社の動向としては採用を増やし、コールなどでアウトバウンドで案件を取り、それによって営業マン一人頭の平均案件獲得率×営業マン人数×平均成約単価×平均成約率…のような形で営業目標や規模の拡大を考えていたと思います。
しかしここへきて迷惑…いや、営業コールや営業メールなどが封じられてしまうと、日本M&Aセンターのような税理士紹介などの紹介による流入か、広告やSEOを使ったインバウンドによる流入か、銀行系列などの本業(親会社)が接点ある企業からの発掘(銀行の場合、「優越的地位の濫用」と言われそうですが)など、力業以外で案件を獲得できる会社が主体になってくる印象を受けています。
なぜかBatonzから掲載を拒否されたコラム「M&A仲介業界の展望と新規参入を考えている方へ」でも記載しましたが、大手数社と弊社のようなニッチも対応できるブティック群が生き残り、中途半端な規模の会社は固定費用負担が大きくなりすぎて、案件発掘が差別化できる会社(銀行やリースなどで関係を持っているなど)に吸収されて子会社化する可能性がさらに高まったのでは、と考えられます。
これは現時点での予測というにはあまりにも弱い推測レベルの話ですが、今後を展望した場合、マンパワーベースのアウトバウンドに頼るだけの会社では厳しいのではないでしょうか。
特に固定費が大きい会社でアウトバウンドに依存している場合、固定費が支払えなくなって経営が厳しくなる可能性が高いでしょう。
コールセンターに頼っていた会社であれば解約すればいいので、厳しさについては相対的に小さいですが、とはいえ案件が獲得できなくなれば先細りなのは同じです。
これらのことを総合的に考えると、大手では3社程度、それ以外には特色がある会社か、ニッチ対応ができる会社でないとなかなか難しいでしょう。
ただ(特に)売り手側への迷惑営業でストレスを与える業界が健全なわけがないので、方向としては正しいと思います。
これからも弊社がお付き合いしているようなモラルのある会社が増えることを願ってやみません。

迷惑営業を受けたなら

中小企業庁のM&A支援機関登録事務局の窓口がありますので、そちらに連絡しましょう。
ワンショットで連絡が来ることは営業の範囲かもしれませんが、同じ会社から時間を空けないで何度も連絡が来たらそれは迷惑以外の何物でもないでしょうから。

余談ですが

SNS上で指摘を受けたのですが、本メールは支援機関登録事務局に登録しているメールアドレス、ほとんどは代表者あてに到着していると思われます。
逆に言うと代表者が情報を下ろして注意喚起をしない限り、営業マンの営業スタイルは当たり前ですが変わらないままコールやメールを送るなどしているでしょう。
その場合、苦情が支援機関登録事務局に入った際に、本来であれば組織対応を行わない会社の問題になりますが、「あえて」営業マンに注意喚起をしない会社は、アウトバウンドで案件を取ることを要求しつつ、何かあったら従業員のしっぽを切って有耶無耶にする可能性があるのかなと思いますし、コンプライアンス意識(支援機関登録事務局の表現で言うと「倫理」)が非常に乏しい会社である可能性があります。
迷惑営業を受ける売り手様も営業マンの営業スタイルに対する意識がどうなのか探ってみて、その会社の法令順守意識のレベル感を評価してもいいかもしれません。
コンプライアンス意識のない仲介会社は本当に危険な可能性があると思うからです。
不安に思われた売り手様も営業マンもお気軽に弊社までご相談ください。
問い合わせフォームからご相談いただけましたら弊社よりご相談内容について回答させていただきます。

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