代表者挨拶

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1999年4月 国立大学法人京都大学経済学部入学
2004年3月 同学部経営学科卒業(マーケティング専攻)
国内損害保険、上場M&A仲介会社などを経て、株式会社日本財務戦略センターを設立し、代表に就任。

私は経営者の皆様が大事にされてきた企業文化が喪われることを、断固拒否します。

 

今まで経営者の皆様が育ててきた素晴らしいサービスや従業員、企業文化を未来へ、別の企業へ引き継ぐ手段一つとしてM&Aという選択肢があります。
弊社はそのお手伝いをするためにM&A仲介のサービスを提供しております。

ただ弊社はM&Aの仲介を行うにあたり、できないことがいくつかあります。
例えば売り手様内部の問題を知っているのに、それを隠して売ることはできません。
市場で想定される金額を大幅に超えるような、高い金額で譲渡できるということをお約束もできません。
また逆に買い手のために、不当に低い価格で売り手を説得するような、買い叩きのお手伝いもできません。

ですが他社が嫌がるような複雑なスキームや、買い手や売り手の事情に応じたスキームで譲渡のお手伝いを行うことはできます。

このような考えに基づいてM&Aの仲介を行った、創業時のエピソードについてお話したいと思います。

 

創業からしばらくした冬の寒い時期のことでした。
ある近畿エリアの食品製造業の代表から今後についてどうすべきか相談のお電話を頂きました。

頂いた電話で、その場でアポイントを取りました。
面談の当日、最寄駅から訪問先である本社兼製造工場を訪ねる道すがら、陽が落ちて当たりが真っ暗になり、強い冬の風が体温を下げていたことを記憶しています。
従業員も定時退社し、暖房も節約のために切られていた従業員休憩室で、代表と私の二人で1~2時間でしょうか、手がかじかむ事も気にならないほど、現状と今後についていろいろと話し込みました。
現状の課題、よかった頃のエピソード、コロナをはじめとする将来に対する経営の不安、親族を含めた後継者などについていろいろとお話しいただいたことが印象深かったです。

相談を終えた後、お互いの体は寒さで冷え切っていましたが、相談者である代表者の顔色は面談前と比べ明るくなっていました。
相談を行う中で自分の中で考えがまとまり、将来についての希望が見えてきてからだと思います。
自社の現状や、M&Aを行う必要性、そのメリットやデメリットなど説明を行う中で、最終的に他の誰かに譲渡を行う決心がついたのかなと感じました。

他方、私は相談を終えた後、別の意味で深刻に悩んでいました。
というのはその会社の財務状況は非常に厳しいものだったからです。

(赤字が継続していて今のままでは上向く見込みもない。そしてこのままでは来年には債務超過に陥ってしまう。譲渡をするにしても今年が正念場ではないか)

M&Aを行うと言うのは簡単ですが、果たして代表の悩みを解決することができる相手を探すことができるのだろうか…。

弊社は安請け合いをして過度な期待をもたらすことはしないように努めています。
ですが当社を信用してお任せいただいた以上、期待に応えようと思うのは当然です。

そのため、最初に2点ほどお伝えし、その返答を受けたうえで進めるか判断することにしました。

「頂いた財務諸表の他に悪いことがあれば先に言ってください。後で出すと買い手から不信感を抱かれてしまいます。悪いことは私の方で解決方法とともに先方に伝え、調整を図ります」

「債務超過に転落する前が勝負だと思います。譲渡にあたり条件などお考えがあると思います。そのうち譲れないものはありますか?」

何のためにM&Aを行うのか?
その点を最初にきちんとしておくことで、ぶれずに対応を行いたかったからです。

代表からは従業員の雇用は維持したい。
自分たちのことは最悪何とでもなるので従業員を何とかしてほしい、とのお申し出を頂きました。
ご要望を確認した上で、帰りの新幹線の中では弊社にお問い合わせをいただいている企業をリストアップし、ベストマッチと思われる企業の候補の洗い出しを行いました。

そのほか潜在ニーズがあると思われる企業を複数リストアップし、翌日からさっそく提案をおこないました。
候補先として考えた企業は食品製造に参入したいIT企業、上流工程を持ちたい外食企業、水平分業を行っていきたい同業他社などです。
ただこの件は恒常的な赤字がネックで、買い手側もさすがに躊躇しました。
しかも売り手側は時間との勝負の中、特殊な食品を扱っているため食品製造業のため、マッチングはなかなか厳しいものがありました。
時にはアプローチを広げるため一日十数社に対し、「ノンネームシート」と言われる企業が特定されない範囲が記載された情報が書かれているシートで打診することもありました。

営業の経験がある方ならおわかりかもしれませんが、良かれと思った提案が断られると心が痛みます。
ただ私は自分の提案が断られることがつらかったのではなく、譲渡対象の企業が提案先から否定されたように思い、それがつらかった。
そして譲渡が決まらなければ、弊社にご相談いただき私をご信用いただいた代表が大事にしてきた企業文化が喪われることになるということが、なおつらかった。

どうしたら期待に応えられるのか。
プレッシャーを感じながら、別の角度から提案内容を見直しました。
具体的には、この企業が有している長い歴史の中で、社歴の浅い企業では取引ができないような卸に口座を持っていることに着目しました。
その結果、商品の卸先の確保を考えている新興の同業他社に対し、大口の卸先が獲得できる可能性をアピールし譲受の検討を行っていただきました。

お相手が見つかってからも色々あり、他にも破談する要因もありましたが、最終的に代表者が残ることを条件に従業員の譲受や個人保証債務を引き継ぎを行い、代表個人に対しても数千万円の譲渡対価をお支払いいただく内容で合意しました。

譲渡の後、代表から「良い取引ができました。ありがとうございます」とのお礼を電話でいただきました。
やってきたことが報われた、と感じた瞬間でした。

この創業時の志を忘れず、弊社は経営者の皆様が大事にされてきた企業文化が喪われないよう今後も奔走します。

代表取締役 五十嵐 悠一

過去ブログ抜粋

  1. 【事業再生】特定調停スキームとは

  2. コロナと資金調達と資本性劣後ローンの活用と

  3. M&Aとは何か?M&Aの流れと成功させるためのポイント

  4. M&A後、売り手を拘束する競業禁止義務とは

  5. M&A・業務提携ニーズ一覧【20201117】

  6. M&A仲介会社には絶対に転職するな!