2023年のゾンビ企業の状況と政府対応方針について

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公開日:2024年1月19日 /最終更新日:2024年1月19日

2023年のゾンビ企業の状況と政府対応方針について

帝国データバンクより2023年の「ゾンビ企業」の現状分析が出ましたので、それについての解説をしていきたいと思います。

2023年のゾンビ企業の状況

ゾンビ企業とは国際決済銀行(BIS)が「3年連続でインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満、かつ設立10年以上」と定義した企業のことです。ICRとは、利益が借入金の利息をどれだけ上回っているかを示す指標で、1未満ということは、利益が利息を下回っているということです。
当職なりに平たく言い換えると「利息すら払えずつぶれる可能性が高い企業」と言えるでしょう。

コロナ禍以降、ゾンビ企業が増加しており2023年11月末時点で、全国のゾンビ企業数は約25万1000社に達し、2011年度(27万4000社)に次ぐ2番目の多さとなりました。
ゾンビ企業率(全企業のうちゾンビ企業の割合)も17.1%に急上昇し、前年度比3.6ポイント増と過去最大の上昇率を記録しました。

ゾンビ企業が一段と増加した要因のひとつに、実質無利子・無担保のゼロゼロ融資が挙げられます。
ゼロゼロ融資とは、政府がコロナ禍で資金繰りに困っている中小企業に対して提供した支援策で、無利子・無担保で最大6000万円まで借り入れができる制度です。
2022年9月末時点で、約245万件、実行額約43兆円にのぼる資金が中小企業の資金繰りを支えました。

しかしゼロゼロ融資には問題もありました。
一つは返済期限が2024年3月末となっていることです。
コロナ禍が収束せず、業績が回復しない中で、多額の借金を一括で返済するのは困難です。
政府は返済期限の延長や分割払いの対応を検討していますが、それでも返済不能に陥る企業が出る可能性があります。
もう一つはゼロゼロ融資がゾンビ企業の増加を助長したことです。
ゼロゼロ融資は、借り入れ条件が緩いため、本来なら倒産するべき企業も生き延びることができます。
しかしそれは経済の効率性を低下させ、新しい企業の参入やイノベーションを阻害する恐れがあります。

政府がゾンビ企業に今後どう対応するか

ゾンビ企業の問題に対して、政府がどのように対応するか、ですが、骨太の方針2023を踏まえると、以下のような対応を行うことが想定されます。

ゾンビ企業の退出を促す

政府は企業経営者に退出希望がある場合の早期相談体制の構築など、退出の円滑化を図ることにより、新たな産業構造への転換を促していくとしています。
ゾンビ企業の退出は、経済の資源を有効に再配分することにつながるからです。

ゾンビ企業の再生や整理の支援

政府は金融機関に対しては、企業の再生や整理を促進するための適切なリスク管理や貸出基準の見直しを求めるとともに、将来性のある企業に対する積極的な融資を支援するとしています(「中堅企業」などの設定もまさにこの文脈と考えられます)。
またゾンビ企業の再生や整理に伴って発生する失業対策や雇用の流動化を支援するため、雇用保険制度の活用や職業訓練の充実などを行うとしています。

将来性のある企業に絞っての支援

政府が無差別に資金を供給するのではなく、コロナ禍で一時的に業績が悪化したが、本来の競争力が高い企業や、新たな需要や市場を創出することができる企業に資金を供給していく可能性が考えられます。
将来性のある企業に絞って支援することは、経済の成長やイノベーションを促進することにつながりますし、アカデミズムからのもそのような提言が出てくることが想定されます

まとめ

ゾンビ企業の問題は日本経済にとって深刻な課題です。
また「3年連続でインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満、かつ設立10年以上」と定義されていることから、コロナ禍が続いた3年間に相当する今後3年間は本年をピークとして高止まりする可能性が想定されます。
政府は骨太の方針2023にも反映されたように、産業構造の転換を図るために企業(ゾンビ企業も含む)の退出を促すとともに、再生や整理を支援する政策を実施することを明記しています。
また将来性のある企業に絞って支援することも検討されるでしょう。

過剰債務や資本の不足に悩まれる経営者につきましては、融資による生き残りではなく、事業再生もしくはM&Aにより生き残りを図ることも検討されてはいかがでしょうか。
弊社ではその双方とも対応しておりますので、お悩みの経営者は是非お気軽にご相談ください。

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