【この記事の結論】仲介形式は利益相反リスクを抱えるため海外では禁止される国もありますが、日本では感情調整の面で一定の機能を果たしてきました。担当者の言動に違和感があれば代表者へ直接相談できる、組織としてのチェックアンドバランスが重要です。株式会社日本財務戦略センター 代表取締役の五十嵐悠一が、仲介とFAの構造を整理します。
そもそもM&A仲介とは何か?FA形式との違い
M&A仲介とは、同一の支援者が売り手と買い手の双方と契約し、双方から手数料を得て成約まで支援する形式です。一方でFA(フィナンシャルアドバイザー)形式は、売り手・買い手それぞれが自陣営のFAを別々に雇用し、自社利益を最大化する立場で交渉します。
シンガポールや米国など一部の国では、利益相反リスクへの懸念からM&A仲介形式が法的に制限される、あるいはFA形式が主流となっています。金融庁の公開資料や国際的なM&A実務でも、上場企業の大型案件では双方独立FA体制が一般的です。
なぜ海外ではM&A仲介が制限されるのですか?
仲介形式が制限される最大の理由は、中小M&Aガイドライン第3版でも指摘されているとおり、双方代理に近い構造に起因する利益相反リスクです。仲介者は売り手・買い手の双方から成功報酬を受け取るため、成約を優先するあまり、いずれかの当事者に不利な条件での合意を促す動機が働きやすくなります。
具体的には、片側に有利な情報を意図的に伝えない、契約条件のリスクを十分説明せずに署名を急がせる、といった行為が利益相反の典型例とされます。これらは中小M&Aガイドラインが定める「行動原則」にも反するため、業界としての規律強化が進められています。
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日本でM&A仲介が普及している理由は何か?
日本のM&A、特に中小企業の事業承継型案件では、価格や財務条件だけでなく、経営者の想い・従業員の雇用・取引先や地域との関係といった非財務要素が重視される傾向があります。事業承継・引継ぎ支援センターの活用例にも、こうした「ウェットな交渉」の側面が反映されています。
こうした場面では、双方独立FA体制で経済合理性のみがぶつかり合うと、感情面の納得感が損なわれて交渉が硬直するケースも少なくありません。仲介者が双方の立場を踏まえて条件と感情の両面を調整することで、「お互い、一緒にやっていきましょう」という合意形成が促される面があります。これが、日本でM&A仲介が広く普及してきた背景の一つです。
M&A仲介の利益相反リスクはどう顕在化するのか?
とはいえ、仲介形式が常に最善とは限りません。一部のM&A仲介会社が「業界最高水準のインセンティブ」「高額年収」を採用ページで強調する背景には、成約単価の高い案件を多数まとめることで利益を上げているビジネスモデルがあります。
担当者の報酬が成約に強く連動するほど、顧客の真の利益よりも成約優先で動くインセンティブが高まり得ます。中小M&AガイドラインやM&A支援機関協会の倫理規定でも、こうしたインセンティブ設計のリスクが議論されています。
「社内で売り手担当と買い手担当を分けている」と説明する仲介会社もありますが、最終的に同一組織に属している以上、組織全体の利益が優先される構造は変わらないという見方もできます。FA形式は利益相反リスクを下げる一方で、双方の主張がぶつかって交渉が硬直するリスクもあるため、形式の選択には案件特性に応じた検討が必要です。
M&A仲介会社を選ぶときに確認すべき5つのポイント
- 情報開示の透明性:手数料体系・利益相反リスク・中小M&Aガイドライン遵守状況・経営者保証ガイドラインへの対応がきちんと説明されているか
- 実績と専門性:M&A支援実績や担当者の業界知識、社内に公認会計士・税理士・弁護士などの専門家ネットワークが整っているか
- 担当者の信頼性:説明に一貫性があり、不利な情報も誠実に伝えてくれるか
- 契約内容:独占契約期間、成功報酬の計算方法(料率・計算ベース・最低報酬)、着手金や中間金の有無を、書面で確認
- セカンドオピニオン:契約条項や税務など重要論点は、顧問弁護士・税理士などの独立した専門家に確認する
※契約・税務・労務に関する最終判断は、必ず弁護士・税理士・社労士など各分野の専門家にご相談ください。
株式会社日本財務戦略センターのチェックアンドバランス
株式会社日本財務戦略センターでは、担当者一人に判断を集中させず、代表取締役の五十嵐悠一を含む複数体制で案件を確認する運用をとっています。担当者の言動や提案内容に違和感があれば、お客様から代表者へ直接ご連絡いただける窓口を確保し、定期的な案件レビューを通じて利益相反リスクの早期発見を図っています。
他社で進行中のM&A案件にご不安がある場合も、セカンドオピニオンとしてご相談いただけます。
※M&A実務の判断には専門家との相談が不可欠です。セカンドオピニオン無料相談もご利用ください。
よくあるご質問
M&A仲介とFAでは、どちらを選ぶのが望ましいですか?
案件の規模・性質によって異なります。中小企業の事業承継型では仲介の感情調整機能が機能する場面も多く、上場企業の大型案件や利益相反リスクを徹底的に避けたい場面ではFA形式が選ばれる傾向にあります。形式そのものより、組織のチェックアンドバランスと担当者の誠実さで判断するのが現実的です。
M&A仲介の利益相反リスクは、どんな兆候でわかりますか?
重要な不利情報の説明が薄い、契約書の押印を急がせる、特定の買い手やファンドだけを強く推す、片側だけ強気の条件提示を続ける、といった兆候が見られたら利益相反リスクの可能性があります。違和感があれば、組織のトップや独立した専門家への相談を検討してください。
他社で進行中のM&Aについてセカンドオピニオンを取れますか?
はい、株式会社日本財務戦略センターでは進行中の他社案件についてもセカンドオピニオンとして相談を受け付けています。契約・税務など最終判断は弁護士・税理士などの専門家と組み合わせて確認することをおすすめします。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。
よくあるご質問(FAQ)
📅 本記事の情報基準日
本記事は 2020年8月27日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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