2022.01.20 法令・税務

救済型M&Aとは何か——金融機関視点で読み解くゼロゼロ融資後の過剰債務と2024-2026年の出口戦略

3行まとめ


Table of Contents

はじめに——なぜ今、救済型M&Aを論じるのか

この章のポイント
ゼロゼロ融資の返済本格化、倒産・休廃業の高止まり、金融機関の監督指針改正——2024-2026年は中小企業の出口戦略を取り巻く環境が一斉に動いた局面です。この前提を共有したうえで、救済型M&Aの位置づけを論じます。

新型コロナウイルス感染症対策として2020年5月に始まった、いわゆる「ゼロゼロ融資」(実質無利子・無担保の制度融資、政府系金融機関と民間金融機関の両ルート)は、ピーク時で累計約42兆円という巨額の融資残高を生み出しました。多くの中小企業が一時的に資金繰り危機を回避できた一方で、その元本返済は2023年から段階的に本格化し、最終的な返済ピークは2026年4月から9月に到来すると見込まれています。

その影響は数字にも明確に表れています。2024年の全国企業倒産件数は10,006件(株式会社帝国データバンク集計)と、2013年以来11年ぶりに年1万件台へ復帰しました。さらに、株式会社東京商工リサーチの集計によれば、2024年の休廃業・解散件数は62,695件で過去最多を記録し、前年比約25.9%増という高い伸びを示しています。倒産には至らないものの、自主的な廃業を選択する経営者が急増しているという構造は、中小企業政策上の大きな論点となっています。

こうした環境を受け、金融機関側の制度整備も加速しました。金融庁は2024年8月30日、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」を改正し(同年10月1日施行)、地域金融機関がコンサルティング機能の一環としてM&A支援(PMI(Post Merger Integration、統合後経営)を含む)に取り組むことを明文化しました。同日付で「金融機関におけるM&A支援の促進等について」も公表されています。

本記事は、こうした2024-2026年の環境変化を踏まえ、過剰債務を抱える中小企業の出口戦略のひとつとしての「救済型M&A」の現在地を整理する目的で執筆しました。金融機関の論理、売り手オーナー経営者の判断軸、スポンサー候補の関心事、そして第三者専門家の役割という四つの視点を行き来しながら論じていきます。

個別の法務・税務・財務的判断、特に債務整理や経営者保証の解除条件などについては、必ず弁護士税理士公認会計士司法書士行政書士等の各専門家にご相談ください。本記事はあくまで一次ソースに基づく一般的な解説を目的としています。


1. 救済型M&Aとは——定義と隣接概念の整理

この章のポイント
救済型M&Aを「過剰債務などにより自力再生が困難な企業の事業価値をスポンサーに承継させ、債権者・経営者・従業員・取引先の損失を最小化するM&A」と定義し、自力再生・私的整理・法的整理・廃業という隣接概念との関係を整理します。

1-1. 救済型M&Aの定義

救済型M&Aには法律上の明確な定義はありませんが、実務上は次のように整理できます。

過剰債務などにより自力再生が困難な状態にある中小企業について、事業価値が残存しているうちにスポンサー企業へ事業を承継させ、債権者の回収最大化、経営者・従業員・取引先の損失最小化を同時に図るタイプのM&A

多くの場合、金融機関による債務整理(一部債権放棄、リスケジュール、デット・デット・スワップ(Debt Debt Swap、DDS)など)と、スポンサーへの事業譲渡または株式譲渡を組み合わせる形で実行されます。中小M&Aガイドライン(第3版、中小企業庁、2024年8月改訂)でも、事業再生局面における選択肢のひとつとして、救済型M&A的な事業譲渡・スポンサー型再生の活用が紹介されています。

1-2. 自力再生との比較

多くの中小企業のオーナー経営者は、自社の事業と自分自身を一体のものと考える傾向があります。「自分が経営者である限り再建できる」「事業を他人に渡したくない」という心情は自然なものですが、経営者の交代を前提としない自力再生は、債務超過の規模・経営者の信用・新規金融支援の見通しが揃わない限り現実的に困難です。

金融機関の立場から見ると、過去の経営判断に問題があったケースでは、同じ経営者のもとで追加の金融支援を行うことには「再カット」(再度の経営悪化)リスクが付きまといます。経営者保証に関するガイドライン(全国銀行協会・日本商工会議所、2013年12月策定)の運用が進むなかでも、経営者交代を伴う事業再生の方が金融支援を得やすい場面は確実に存在します。

1-3. 私的整理・法的整理との比較

過剰債務企業の出口手段は、大別すると以下の四つに整理できます。

(1)廃業——事業を停止し、資産を換価して債務を返済する選択肢。残債は経営者保証で経営者個人が負担するのが従来の構図でした。経営者保証ガイドラインの活用で個人保証の整理を一体的に進める実務も広がっています。

(2)私的整理——裁判所の関与を伴わず、債権者と債務者の合意で債務整理を行う手段。中小企業の事業再生等に関するガイドライン(中小版GL、全国銀行協会・金融庁、2022年3月策定、2024年1月一部改定)、中小企業活性化協議会スキーム、特定調停スキーム、事業再生ADR制度などがあります。社名公表を避けやすく、商取引への影響が限定的という利点があります。

(3)法的整理——民事再生法会社更生法に基づく裁判所関与型の手続き。商事債権も対象に含まれるため取引先への影響が大きく、社名公表により信用毀損リスクが顕在化します。一方、債務削減幅は大きく取れるという利点があります。

(4)救済型M&A——事業価値が残存しているうちに、金融機関の合意による債務整理(DDS・一部債権放棄等)とスポンサーへの事業承継を組み合わせる手段。事業継続・雇用維持・取引先継続の可能性が最も高い反面、スポンサーが現れるか、債権者の合意形成ができるかという不確実性も伴います。

1-4. 「廃業 vs 私的整理 vs 救済型M&A」の判断軸

これら四つの選択肢を、判断軸ごとに整理すると以下のようになります(あくまで一般的な傾向であり、個別案件の判断は弁護士・公認会計士・税理士等の専門家にご相談ください)。

ここで重要なのは、これらの選択肢は時間とともに利用可能性が狭まっていくという点です。事業価値が大きく毀損する前、資金繰りが完全に詰まる前、商取引が混乱する前——早期に着手するほど選択肢が広く残ります。逆に、資金ショートが目前まで迫った段階では、法的整理しか選べないケースも珍しくありません。


2. 金融機関の論理——なぜDDSが選好され、債務免除・DESが避けられるのか

この章のポイント
金融機関が取り得る支援手段(期限猶予・DDS・債務免除・デット・エクイティ・スワップ(DES))のうち、稟議の通しやすさ・貸し手責任の発生しやすさ・株価評価の困難性などから、実務上は期限猶予とDDSが選好されやすい構造を整理します。

2-1. 金融機関が取り得る四つの支援手段

過剰債務を抱えた取引先企業に対して、金融機関が取り得る支援手段は、概ね以下の四つに整理されます。

(1)期限猶予(リスケジュール)——元本返済の猶予や返済条件の変更。債権そのものは消滅せず、契約条件の変更にとどまります。

(2)デット・デット・スワップ(Debt Debt Swap、DDS)——既存の借入債権の一部を、より返済順位の劣後した「資本性劣後ローン」に振り替える手法。会計上・金融検査上は資本に近い性格として扱われ、企業の財務体質を改善する効果があります。

(3)債務免除——文字通り、債権の一部または全部を放棄すること。債権そのものが消滅します。

(4)デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap、DES)——既存の借入債権を、債務者企業の株式に振り替える手法。金融機関は株主の地位を取得します。

2-2. 期限猶予とDDSが選好される理由

これら四つの選択肢のうち、金融機関の実務において相対的に選択しやすいのは、期限猶予とDDSです。両者に共通する特徴は、債権そのものを消滅させず、契約条件の変更や資本性への振替えにとどまるという点です。これにより、金融機関の貸し手責任が問われる場面が限定的となり、行内の稟議も相対的に通しやすい構造になります。

とりわけDDSは、「資本性借入金」として中小企業活性化協議会スキームでも標準的な支援メニューに位置づけられており、金融検査マニュアル(廃止後の現行運用でも考え方は継承)における自己資本相当扱いも可能なため、債務者企業の財務体質改善と金融機関の自己資本影響の最小化を両立できる手段として活用されています。

2-3. 債務免除とDESが避けられる理由

一方、債務免除とDESは、実務上はハードルが高い選択肢として認識されることが少なくありません。

債務免除が避けられがちな主な理由は、債権を消滅させてしまうことから、貸し手としての責任問題が生じやすい点にあります。経営者の交代や抜本的な事業再生策が伴わないまま債務免除を行えば、再度の経営悪化(再カット)リスクが残り、結果的に貸し手の損失をさらに拡大させる懸念があります。

DESについては、非公開企業の客観的な株価評価が困難であることが大きな障壁となります。流通市場のない株式と引き換えに債権を放棄することは、実質的な債務免除と同視されかねず、貸し手責任の問題と同じ構造に行き着きます。上場企業ではいくつかの事例がありますが、中小企業の事業再生局面でDESが選択されるケースは限定的です。

2-4. 経営者交代を伴う再生という解

このような構造のなかで金融機関が描く「現実解」は、過去の経営判断に問題があった経営者を交代させ、新たなスポンサー(または新経営陣)のもとで事業を再生させるというシナリオです。経営者交代を前提とすることで、貸し手責任の問題を回避しつつ、追加の金融支援(または既存債権の一部整理)を行いやすくなります。

救済型M&Aは、まさにこの「経営者交代を伴う事業再生」を、スポンサー企業の関与のもとで実現する枠組みです。金融機関の論理と整合的であるからこそ、過剰債務局面では金融機関側からこのスキームが提案されるケースが多くなります。


3. 2022-2024年の制度環境変化——金融機関の役割が変わった

この章のポイント
2022年の中小企業活性化協議会への改組、中小版GL策定、経営者保証改革プログラム策定、2024年の監督指針改正、保証料上乗せ選択制度——救済型M&Aを取り巻く制度環境は、この数年で大きく塗り替えられています。

3-1. 中小企業活性化協議会の役割拡大(2022年改組)

従来の「中小企業再生支援協議会」は、2022年4月に「中小企業活性化協議会」へ改組されました(中小企業庁、2022年3月公表)。窓口は引き続き各都道府県の商工会議所等に置かれ、収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援の三本柱で中小企業の経営改善・再生を支援しています。

2024年度(速報ベース)の窓口相談件数は前年同期比約2割増(第2四半期累計4,152件)、再生計画策定支援件数も前年比13%増(427件)と、利用件数は明確な増加トレンドにあります。再チャレンジ支援(経営者個人の保証債務整理)の助言件数も、2024年度には1,834件と前年比595件増を記録しました。

3-2. 中小企業の事業再生等に関するガイドライン(中小版GL)の整備

2022年3月、全国銀行協会と金融庁の連携により中小企業の事業再生等に関するガイドライン(中小版GL)が策定されました。さらに2024年1月には一部改定が行われ、私的整理スキームの標準化が進んでいます。

中小版GLは、債権者と債務者の合意に基づく私的整理の枠組みを示すものであり、スポンサー型再生(第二会社方式を含む)を明文で位置づけている点が大きな特徴です。第二会社方式とは、事業の一部または全部を新設会社(または既存のスポンサー会社)に譲渡し、旧会社を清算するスキームで、救済型M&Aの代表的な実行手段のひとつです。

3-3. 経営者保証改革プログラムと保証料上乗せ選択制度

2022年12月、金融庁・中小企業庁・財務省が連携して経営者保証改革プログラムを策定しました。経営者保証に過度に依存しない融資慣行を確立することを目指し、2024年4月以降の運用強化、2024年3月15日からの保証料上乗せ選択制度(信用保証協会保証における経営者保証なしの選択肢)の開始など、矢継ぎ早に施策が打ち出されています。

金融庁が公表する金融機関の取組みデータによれば、2024年度には新規融資件数に占める「経営者保証に依存しない融資」の割合が過半に到達しました。この変化は、事業再生局面における経営者の最終的な負担構造にも大きな影響を及ぼしつつあります。

3-4. 監督指針改正(2024年10月施行)——M&A支援の明文化

2024年8月30日、金融庁は「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の改正を公表し、同年10月1日に施行しました。この改正の最大のポイントは、地域金融機関のコンサルティング機能のひとつとしてM&A支援(PMIを含む)を明文化したことです。同日付で「金融機関におけるM&A支援の促進等について」も公表されました。

これまでも一部の地域金融機関は独自にM&A仲介機能や事業承継支援を強化してきましたが、監督指針上の明文化により、今後は全国の地域金融機関で一定水準のM&A支援機能の整備が進むと予想されます。同時に、信用保証委託契約書において中小企業活性化協議会等を守秘義務解除先として明記することで、スポンサー探索の事前相談を円滑化する運用も進んでいます。

3-5. 地域経済活性化支援機構(REVIC)の支援拡大

地域経済活性化支援機構(REgional Economy Vitalization Corporation of Japan、REVIC)は、事業再生支援業務と再チャレンジ支援業務(企業債務と経営者保証債務の一体整理)を担う官民ファンドです。2024年度は、地方銀行等88機関から151人が事業再生研修に参加し、研修対象がメガバンク・信用金庫にも拡大されました。

REVICの支援対象は中堅・地域中核企業が中心ですが、事業再生実務のノウハウを地域金融機関へ移転する役割も担っており、結果として地域金融機関の事業再生・救済型M&A支援能力の底上げにつながっています。

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4. 売り手オーナー経営者の判断軸——「事業価値があるうちの早期着手」が成否を分ける

この章のポイント
救済型M&Aは「事業価値があるうちの早期着手」が成否を左右します。スポンサー探索の時間確保、経営者保証の解除条件の整備、第三者からの個人借入回避、専門家チームの早期組成——売り手オーナーが押さえるべき判断軸を整理します。

4-1. 早期着手による経営者個人のメリット

救済型M&Aを早期に検討・着手することで、売り手オーナー経営者が得られる現実的なメリットには、概ね以下のようなものが挙げられます。

4-2. 経営者保証の解除——3要件の確認

経営者保証ガイドラインに基づく経営者保証の解除を金融機関に申し出る場合、原則として以下の3要件を充足することが求められます。

(1)法人と経営者の資産・経理の明確な分離——役員報酬・配当の適正化、経営者個人への資金流出の遮断、法人と個人の資産の明確な区分。

(2)財務基盤の強化——法人のみの収益力・財産で借入金返済が可能な財務状況の確保。事業再生局面では、債務整理後の見通しベースでの判断となります。

(3)金融機関への適時・適切な財務情報開示——月次試算表・資金繰り表・経営計画等の継続的な開示と、定期的な経営状況の説明。

救済型M&Aの実行段階では、この3要件を充足する形でのスキーム設計が、経営者保証の整理(および再チャレンジ支援としての保証債務整理)と一体で検討されるのが一般的です。具体的な手続きや要件の充足判断については、弁護士・公認会計士・税理士等の専門家、または最寄りの中小企業活性化協議会窓口にご相談ください。

4-3. 第三者からの個人借入は私的整理を破綻させる

資金繰りが逼迫してくると、会社と経営者個人の間で資金のやり取りが頻繁に発生したり、金融機関以外の第三者(親族・知人・取引先・ノンバンク等)から経営者個人で借入を行うケースが見られます。

これは、後の私的整理を著しく困難にする要因になります。私的整理は原則として全債権者の合意(全員一致原則)が前提となりますが、特定の第三者債権者にだけ全額弁済する「偏頗弁済」を行うと、他の債権者の合意が得られなくなる可能性が高まります。結果として私的整理が成立せず、法的整理に移行せざるを得ないケースもあります。

そうなれば、第三者債権者への弁済もできなくなる可能性があり、商取引先への信用毀損も拡大してしまいます。資金繰り危機の初期段階で、第三者個人からの借入よりも先に、専門家への相談・金融機関との対話を選択することが、結果的に関係者全員の損失を最小化することにつながります。

4-4. 専門家チームの早期組成

救済型M&Aの実務には、複数の専門家の関与が不可欠です。

これらの専門家を、危機が深刻化するの段階で組成しておくことが、選択肢の幅を広げます。資金ショート目前で初めて相談に来られても、選択肢はすでに法的整理しか残っていないケースが多いのが実務上の現実です。


5. スポンサー選定とセカンドオピニオン——金融機関主導局面の留意点

この章のポイント
救済型M&Aは金融機関主導になりやすく、売り手オーナーの利益や、雇用・取引先継続といった非経済的価値が後回しになるリスクがあります。売り手専任のM&Aアドバイザーやセカンドオピニオンの活用が、条件交渉の品質を左右します。

5-1. 金融機関主導局面の構造

救済型M&Aの実務では、金融機関(特にメインバンク)が主導的な役割を果たすことが少なくありません。これには合理的な理由があります。金融機関は債権者として最大の利害関係者であり、債務整理の合意形成に金融機関の判断が事実上不可欠だからです。

しかし、金融機関の利益と売り手オーナーの利益、従業員の利益、取引先の利益は必ずしも一致しません。金融機関にとっての最適解は「債権回収の最大化」ですが、売り手オーナーにとっては「経営者保証の整理」「生活原資の確保」「従業員の雇用継続」「長年付き合った取引先の継続」など、経済価値だけに還元できない論点が多く含まれます。

スポンサー候補が金融機関主導で選定される場合、選定基準が「金融機関にとっての回収可能性」に偏り、雇用継続・取引先継続・地域社会への配慮といった売り手オーナーの関心事項が十分に反映されないことがあり得ます。

5-2. 売り手専任M&Aアドバイザーの役割

こうした構造下で、売り手専任のM&Aアドバイザー(売り手と買い手の双方を担当する仲介ではなく、売り手のみの代理人として関与するアドバイザー)の役割は、極めて重要です。中小M&Aガイドライン(第3版)でも、売り手専任型と仲介型のそれぞれの特徴と利益相反リスクが整理されており、売り手専任型は売り手の利益最大化に専念できる構造的優位を持つことが明記されています。

売り手専任アドバイザーは、以下のような場面で売り手オーナーの利益を代弁します。

5-3. セカンドオピニオンの活用

すでに金融機関主導でスポンサー候補や条件案が提示されている段階でも、セカンドオピニオン(独立した第三者専門家による意見聴取)の活用には十分な意義があります。

具体的には、以下のような論点を独立した視点から検証することが期待されます。

株式会社 日本財務戦略センターでは、「M&Aセカンドオピニオン」として、すでに他社で進行中のM&A案件についても、売り手の利益最大化の観点から独立した意見を提供する業務を承っています。詳細は M&Aセカンドオピニオンに関する解説 をご参照ください。

5-4. 当社の立ち位置——売り手専任という選択

株式会社 日本財務戦略センターは、中小企業庁 M&A 支援機関 登録機関であり、一般社団法人 M&A 支援機関協会の正会員でもあります。当社は売り手専任を基本方針とし、買い手側の代理は原則として承りません。これは、救済型M&Aのように利害関係が複雑な局面で、売り手オーナーの利益を一貫して代弁するためです。

救済型M&Aの相談は、できるだけ早期——「資金繰りが厳しくなりそうだ」と感じ始めた段階——でお受けしたいと考えています。事業価値が残っているうちに動き出すことが、選択肢の幅と、最終的な成果の双方を大きく変えるからです。


6. スポンサー側の論理——買い手はどこを見ているのか

この章のポイント
スポンサー候補が救済型M&A案件を見るとき、何を評価し、何を懸念するのか——売り手オーナー側がスポンサー視点を理解することで、自社の説明資料の組み立てや交渉の進め方に活かせます。

6-1. スポンサーが評価する事業価値の構成要素

スポンサー候補が救済型M&A案件を評価するとき、典型的に以下の要素を見ています。

スポンサーは、現状の財務諸表(過剰債務状態の数字)ではなく、「債務整理後の正常化された事業価値」を評価しているという点が重要です。売り手側もこの視点を踏まえ、債務整理後の事業計画を「数字で語れる」状態に整えておくことが、スポンサー候補との対話を円滑化します。

6-2. スポンサーが懸念する論点

一方、スポンサー候補が救済型M&A案件で懸念する論点も明確です。

これらの懸念点を、売り手側が事前に開示・説明できる状態にしておくことで、スポンサー候補との信頼関係構築と、譲渡対価・条件交渉の有利化につながります。「悪い情報を隠す」のではなく、「悪い情報を含めて全体像を提示する」姿勢が、結果的に売り手の利益最大化につながるというのが実務上のセオリーです。

6-3. スポンサー型再生における第二会社方式

救済型M&Aの実務では、過剰債務を抱えた旧会社(譲渡企業)から、事業価値のある事業部分のみを新設会社または既存のスポンサー会社に切り出す「第二会社方式」が活用されることが少なくありません。

第二会社方式の主な利点は以下のとおりです。

第二会社方式は、税務上は債務免除益課税の問題、法務上は詐害行為性の検証、労務上は労働契約承継の手続きなど、複数の実務論点を伴います。中小企業活性化協議会スキーム等の準則型私的整理の枠組みで実行することで、これらの論点を整理しながら進める実務が一般的です。具体的な設計は、必ず弁護士・公認会計士・税理士等の専門家にご相談ください。


結び——巨大な制度変化のなかで、何を選ぶか

2022年から2024年にかけて、救済型M&Aを取り巻く制度環境は大きく変わりました。中小企業活性化協議会への改組、中小企業の事業再生等に関するガイドライン(中小版GL)の策定と改定、経営者保証改革プログラムの進展、金融庁監督指針改正によるM&A支援の明文化、信用保証協会のスポンサー探索支援——これらはすべて、過剰債務を抱える中小企業が「廃業しか選択肢がない」状態に追い込まれることを防ぐための制度的な厚みを増す方向で動いています。

同時に、ゼロゼロ融資の元本返済本格化(2024-2026年)、倒産10,006件・休廃業62,695件という2024年の数字、そしてゼロゼロ融資利用後倒産の2026年4-9月の最終ピーク予測——現実の数字も、過剰債務問題が「これから本格化する」局面にあることを示しています。

こうしたなかで、売り手オーナー経営者にとって最も重要なのは、「事業価値があるうちに動き始める」という意思決定です。資金繰りが完全に詰まる前、商取引が混乱する前、従業員が動揺する前——早期に専門家チームを組成し、選択肢を広く確保した状態で次の一手を検討することが、結果的に経営者個人にとっても、従業員にとっても、取引先にとっても、最善の結果につながりやすい構造になっています。

株式会社 日本財務戦略センターでは、売り手専任のM&AアドバイザリーM&Aセカンドオピニオンを中心に、救済型M&A・事業再生局面のM&A・通常の事業承継M&Aを幅広くお手伝いしています。利害が複雑になりがちな救済局面でも、売り手オーナーの利益を一貫して代弁する立場で、弁護士・公認会計士・税理士・中小企業活性化協議会等の各専門家・関係機関と連携しながら、最適な進め方をご一緒に検討します。

初回のご相談は無料、秘密厳守で承っています。「まだ早いかもしれない」と感じる段階での相談ほど、選択肢が広く残せる——これは実務上の真理です。お気軽にご相談ください。


よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する5問の計15問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。
本記事Q11. ゼロゼロ融資の返済が本格化する2024年から2026年にかけて、救済型M&Aを検討する最適なタイミングはいつでしょうか?
A. 救済型M&Aは、事業価値が残存しているうちに検討を開始することが重要です。過剰債務が深刻化し、事業価値が大きく毀損される前に、早期に専門家へ相談し、選択肢を評価することが望ましいとされます。2024年の倒産件数や休廃業・解散件数の増加傾向を踏まえると、現状分析と将来計画の策定を急ぐ必要があるでしょう。
本記事Q12. 金融機関は、改正された「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」に基づき、救済型M&Aにどのように関与するのでしょうか?
A. 金融庁が2024年8月に公表し、10月1日に施行された監督指針の改正により、地域金融機関はコンサルティング機能の一環としてM&A支援(Post Merger Integration(PMI)を含む)に取り組むことが明文化されました。これにより、金融機関は企業の事業再生や出口戦略として、より積極的に救済型M&Aの検討を促し、支援を行う可能性があります。
本記事Q13. 救済型M&Aにおいて、金融機関による債務整理は具体的にどのような手法が用いられることが多いですか?
A. 救済型M&Aでは、金融機関による債務整理が不可欠となるケースが多く、一部債権放棄、リスケジュール(返済条件の変更)、デット・デット・スワップ(Debt Debt Swap、DDS)などが活用されます。これらの手法は、企業の財務負担を軽減し、スポンサー企業による事業承継を円滑に進めることを目的としています。
本記事Q14. 経営者保証改革プログラムが進む中で、救済型M&Aによって経営者保証を解除できる可能性はありますか?
A. 経営者保証改革プログラム(2022年12月策定)の進展により、新規融資における経営者保証への依存度は低下していますが、既存の経営者保証の解除は個別の状況によります。救済型M&Aのプロセスにおいて、事業譲渡や株式譲渡と合わせて債務整理が行われる際に、経営者保証の解除が交渉の対象となる可能性はありますが、その条件や実現性については、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。
本記事Q15. 自力再生が困難な状況で、金融機関はなぜ同じ経営者による再建よりも救済型M&Aを推奨するのでしょうか?
A. 金融機関は、過剰債務を抱え自力再生が困難な企業に対し、過去の経営判断に起因する「再カット」(再度の経営悪化)リスクを懸念することがあります。経営者の交代を前提とする救済型M&Aは、新たなスポンサーの経営資源とノウハウを導入することで、事業の持続可能性を高め、債権回収の最大化を図る現実的な選択肢として評価される傾向にあります。

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個別の法務・税務・財務的判断、特に債務整理スキームの選択、経営者保証の解除条件、第二会社方式における税務処理、私的整理・法的整理の手続選択、スポンサー契約の条項設計などについては、必ず弁護士・税理士・公認会計士・司法書士・行政書士等の各専門家、または最寄りの中小企業活性化協議会窓口にご相談ください。本稿はあくまで、公表されている一次ソースに基づく一般的な解説を目的としています。

本記事の記述内容は、特定の金融機関・スポンサー候補・専門家・地域・業種の判断や行動を推奨・批判するものではありません。中小企業活性化協議会・地域経済活性化支援機構(REVIC)・各金融機関の対応は個別案件ごとに異なり、ここで述べた一般的傾向が個別案件にそのまま当てはまるとは限りません。実際の対応は、最新の制度・実務運用と、個別の事業・財務状況に基づいて判断されます。

公開日: 2022年1月20日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

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📅 本記事の情報基準日

本記事は 2022年1月20日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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