M&A の業界記事は「ロックアップは買い手側の引継ぎ要請、当然の義務」と説明します。しかし弊社が現場で売り手のオーナー様と対話してきた経験では、「ロックアップ期間中、権限なき役職に置かれて精神的に追い詰められた」「役員報酬とインセンティブの設計を最初に決めておけばよかった」 というご相談が多発します。中小 M&A では 役員残留がデフォルト となるケースが多く、形態(雇用 / 顧問契約 / 役員)の選択、報酬・インセンティブの設計、解職条件の事前合意が、売り手の引退後の人生設計を左右します。本記事では、労働契約法・労基法・会社法と 中小 M&A ガイドライン第 3 版 をベースに、ロックアップ・キーマン条項の設計原則を整理します。
1. 「ロックアップは当然の引継ぎ義務」は半分嘘
ロックアップ条項とは、M&A 成約後も売り手のオーナー(または対象会社のキーパーソン)が一定期間、対象会社に在職することを義務づける契約上の規定です。買い手にとっては引継ぎ・経営継続のための保険、売り手にとっては引退後の人生設計に直結する論点です。
業界の解説記事の多くは「ロックアップは買い手側の引継ぎ要請、当然の義務」と説明しますが、これは半分嘘です。中小 M&A では 形態の選択(雇用 / 顧問契約 / 役員継続)と 報酬・インセンティブ設計、解職条件の事前合意 が、売り手の生活と精神状態を大きく左右します。
弊社が現場で売り手のオーナー様と対話してきた経験では、役員残留がデフォルト となるケースが多く、初期のヒアリング段階で「役員として残ってくれと言われる可能性が高い」旨をお伝えするようにしています。中小 M&A GL 第 3 版も「売り手の引退意向の実現 を妨げない形でのロックアップ設計」を仲介者の義務として明示しました。
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2. 通説論難 — ロックアップ 4 つの誤解
誤解 1:「ロックアップは雇用継続が当然」
形態は 3 通り あり、それぞれ法的扱いが大きく異なります。
| 形態 | 退職の自由 | 違約金条項 |
|---|---|---|
| 雇用形態(取締役・従業員) | 労基法 627 条で 2 週間前予告退職可(売り手有利) | 労基法 16 条で 無効(賠償予定禁止) |
| 顧問契約形態 | 契約条項次第 | 民法 415 条で 有効(金額次第) |
| 役員継続(取締役のまま) | 委任契約として原則自由 | 善管注意義務違反等の責任追及枠組み |
中小 M&A の実務では 役員継続(取締役・代表取締役のまま、または相談役として残る)が最も多いパターンです。買い手の引継ぎニーズと売り手の段階的引退意向が一致しやすいためです。
誤解 2:「期間 2 〜 3 年は当然」
業界実務水準は 2 〜 3 年が中小 M&A 標準、最長で 5 年です。規模が大きいほど長期化する傾向があります。
重要なのは、売り手の引退時期と整合させることです。中小 M&A GL 第 3 版は「売り手の人生設計を尊重した条件設計」を仲介者の義務として位置付けました。「買い手の都合で 5 年」が当然ではなく、売り手の引退意向との交渉 が前提です。
誤解 3:「早期退職したら違約金請求される」
違約金請求の可否は形態で決まります。
- 雇用形態:労基法 16 条(賠償予定の禁止)で 違約金設定無効。売り手は実質的に退職自由
- 顧問契約形態:民法 415 条で違約金設定 有効。期間中の退職は契約違反のリスク
- 役員継続:委任契約として原則退職自由だが、善管注意義務違反などの責任追及枠組みあり
形態の違いで救済範囲が大幅に変わるため、契約書サイン前に弁護士チェックが必須です。
誤解 4:「責任なき在職は普通」
ロックアップ中に 権限なき立場で在職 するケース(買い手が経営権を握り、売り手は名目的な役職に追いやられる)があります。偶発債務発覚時の責任追及と在職継続義務が重なると、精神的負担+法的リスクの二重苦になります。
弊社の経験では、こうしたトラブルが起きそうな案件は そもそも相性が合わない ケースが多く、最初から進めない判断をすることもあります。「相性で事前にフィルタリングする」ことが、売り手を守る第一歩です。
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3. 弊社のスタンス — ロックアップ 4 つの設計原則
(1) 形態はケースバイケース、ただし役員残留がデフォルト想定
弊社は形態(雇用 / 顧問契約 / 役員継続)を ケースバイケースで決定 します。結局は買い手と売り手の双方の意向次第ですが、中小 M&A の実務では 役員で残ってくれと言われることが多い のが現実です。初期のヒアリング段階で、その可能性を売り手に事前にお伝えするようにしています。
(2) アーンアウトは基本使わず、役員報酬+インセンティブ設計
業界記事ではロックアップとアーンアウト(業績連動追加対価)の連動が紹介されることがありますが、弊社では アーンアウトは基本使いません。理由は、アーンアウトは KPI 設定・計算方法・在籍条件の解釈で紛争になりやすいためです。
弊社の標準パターンは以下の 2 通りです。
- 役員残留する場合:そのまま残り、役員報酬にインセンティブをつけるよう設計
- 引退色を強くしたい場合:低額の役員報酬 として象徴的に残る形
いずれも「トラブルが起きる要素はなるべく最初に合意して進める」ことが弊社の運用方針です。
(3) 期間:2 〜 3 年が標準、引退意向との整合を最優先
業界実務水準に従い、期間は 2 〜 3 年を標準とします。5 年超の設定は売り手の引退意向との不整合リスクが高くなります。
(4) 解職条件・責任範囲を事前合意
解職する場合の条件は、契約書で事前に決めておきます。役員としての善管注意義務違反などの問題が発生した場合は、契約または法的な枠組みの中で解決します。
ただし、そもそもそうしたトラブルになるような相性であれば、最初から案件を進めない 判断をすることもあります。これが弊社の「相性で事前にフィルタリング」する運用です。
運用方針
- SPA 同様 意向ヒアリング → ひな形提供 → 売り手確認 で非弁行為リスク(弁護士法 72 条)を回避
- 顧問弁護士チェック必須推奨
- 初期ヒアリング段階で売り手に「役員残留要請の可能性」と「形態選択肢」を事前説明
- M&A 支援機関協会・中小 M&A GL 第 3 版準拠
ロックアップ条項の設計でお悩みの売り手オーナー様へ
役員残留 vs 顧問契約 vs 雇用の選択、報酬・インセンティブ設計、解職条件の事前合意など、ロックアップには引退後の生活設計が直結します。SPA 締結前にご相談いただくのが最も効果的です。
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4. 数年後に振り返って気づくこと
「権限なき役職に縛られた」「役員報酬のインセンティブ設計を最初に決めておけばよかった」「解職条件を契約書化しておけばよかった」が、ロックアップで苦しんだ売り手の典型的な後悔です。
形態の選択(役員継続がデフォルト)。報酬・インセンティブ設計(アーンアウトでなく役員報酬で)。期間(2〜3年が標準)。解職条件の事前合意。これらが、引退後の人生設計を守る核心です。
そして何より、トラブルになりそうな相性なら最初から進めない という判断。ロックアップは「拘束」ではなく「整理期間」として設計し、売り手・買い手双方が納得できる形で進めることが、後悔のない事業承継の核心です。
【付録】M&A 支援機関協会 正会員一覧と苦情・通報窓口(2026年5月13日現在|クリックで展開)
本付録は、M&A 業界の自主規制機関である M&A 支援機関協会(旧 M&A 仲介協会)の正会員 231 社、および苦情・通報窓口の一覧です。
出典:M&A 支援機関協会公式サイト(2026年5月13日現在)。
特定事業者リスト閲覧資格保有 118 社
業界の自浄作用に積極参加し、不適切な譲り受け側事業者情報を協会内で共有する「特定事業者リスト」の閲覧資格を持つ M&A 支援機関協会 会員 118 社です(弊社・株式会社日本財務戦略センターも本リストに含まれます)。
| ABNアドバイザーズ株式会社 | AIdeaM&AAdvisory株式会社 | Byside株式会社 | CTF株式会社 |
| DANコンサルティング株式会社 | Enimprovement栄合同会社 | LINK株式会社 | M&ALead株式会社 |
| M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 | M&Aロイヤルアドバイザリー株式会社 | NBR合同会社 | NKGRコンサルティング株式会社 |
| NOBUNAGAサクセション株式会社 | S&G株式会社 | SBI辻・本郷M&A株式会社 | TSUNAGU株式会社 |
| あがたグローバルコンサルティング株式会社 | かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社 | かがやきM&A株式会社 | ひまわりパートナーズ株式会社 |
| みさわ財産コンサルティング株式会社 | みつきコンサルティング株式会社 | みらいアーク株式会社 | アイアールアイM&Aコンサルティング株式会社 |
| アカツキパートナーズ株式会社 | アクタスコンサルティング株式会社 | インクグロウ株式会社 | インテグループ株式会社 |
| エムレイス株式会社 | オリックス株式会社 | クレジオ・パートナーズ株式会社 | グローウィン・パートナーズ株式会社 |
| グローバリューパートナーズ株式会社 | ジャパンM&Aソリューション株式会社 | セレンディップ・フィナンシャルサービス株式会社 | ビジネスサクセション株式会社 |
| ビズキューブ・コンサルティング株式会社 | ファイブ・アンド・ミライアソシエイツ株式会社 | ブティックス株式会社 | ブルーバード合同会社 |
| 三菱地所リアルエステートサービス株式会社 | 中之島キャピタル株式会社 | 九州M&Aアドバイザーズ株式会社 | 合同会社アジュール総合研究所 |
| 名南M&A株式会社 | 有限会社インレット | 有限会社長野県M&Aセンター | 株式会社ACN経営研究所 |
| 株式会社AGSコンサルティング | 株式会社CBヘルスケア | 株式会社CCイノベーション | 株式会社CINCCapital |
| 株式会社LifeHack | 株式会社M&AProperties | 株式会社M&Aエグゼクティブパートナーズ | 株式会社M&Aクラウド |
| 株式会社M&Aグローバルキャピタル | 株式会社M&Aコンサルティング | 株式会社M&Aフォース | 株式会社M&Aプライムグループ |
| 株式会社M&Aベストパートナーズ | 株式会社M&A会計ファイナンス | 株式会社M&A承継機構 | 株式会社M&A総合研究所 |
| 株式会社MJSM&Aパートナーズ | 株式会社NEWOLDCAPITAL | 株式会社OAGコンサルティング | 株式会社SECURITYBRIDGE |
| 株式会社Ssimaキャピタル | 株式会社TBC | 株式会社WealthLead | 株式会社fundbook |
| 株式会社さかい経営センター | 株式会社たすきコンサルティング | 株式会社みどり未来パートナーズ | 株式会社みらい共創アドバイザリー |
| 株式会社アシブネ | 株式会社ウィット | 株式会社ウィルゲート | 株式会社エグゼブリッジ |
| 株式会社オンデック | 株式会社サスガキャピタルパートナー | 株式会社シードアドバイザリー | 株式会社ストライク |
| 株式会社スリーエスコンサルティング | 株式会社ネクストM&Aパートナーズ | 株式会社ハレバレ | 株式会社バトンズ |
| 株式会社ヒルストン | 株式会社フォーバル | 株式会社プレックス | 株式会社マネジメント・スタッフ |
| 株式会社メディカル・アドバイザーズ | 株式会社ユニコン | 株式会社ユーザーサービス | 株式会社レコフ |
| 株式会社三井住友銀行 | 株式会社三菱UFJ銀行 | 株式会社事業承継パートナーズ | 株式会社事業承継通信社 |
| 株式会社佐賀銀行 | 株式会社倉富佐原M&A事務所 | 株式会社北海道総合経営研究所 | 株式会社大垣共立銀行 |
| 株式会社日光コンサルティング | 株式会社日本M&Aセンター | 株式会社日本提携支援 | 株式会社日本経営 |
| 株式会社日本財務戦略センター | 株式会社日税経営情報センター | 株式会社矢橋コンサルティング | 株式会社経営承継支援 |
| 株式会社船井総研あがたFAS | 株式会社諸井会計 | 株式会社青山財産ネットワークス | 株式会社HCフィナンシャル・アドバイザー |
| 瀬戸内FAS株式会社 | 総合メディカル株式会社 |
M&A 支援機関協会 正会員 113 社
正会員として M&A 支援機関協会に加盟する 113 社です。
| AggregatorJapan株式会社 | FrontierM&APartners株式会社 | Kingsmancapitalpartners株式会社 | RSM汐留パートナーズ株式会社 |
| あおもり創生パートナーズ株式会社 | いわぎんリサーチ&コンサルティング株式会社 | さくら経営支援株式会社 | しんせい事業承継株式会社 |
| まごころM&Aパートナーズ株式会社 | アアクスグループ株式会社 | アエリアコンサルティング株式会社 | アドバンスト・ビジネス・ダイレクションズ株式会社 |
| アナタの財務部長合同会社 | ウーファ合同会社 | エヌ・シー・アドバイザリー合同会社 | エベレディア株式会社 |
| クレアスト株式会社 | シンプルフォーム株式会社 | タツノコ資産形成株式会社 | ニューアイランド株式会社 |
| バリューフォース合同会社 | ビズリンク・アドバイザリー株式会社 | フジマキ・マネジメントサポート株式会社 | 丈安株式会社 |
| 三井住友海上火災保険株式会社 | 不動産M&Aパートナーズ株式会社 | 合同会社ACE | 合同会社FPCAccounting |
| 合同会社SGコンサルティング | 合同会社はやせ | 合同会社アシストプラス | 大光キャピタル&コンサルティング株式会社 |
| 山田事業承継・M&A株式会社 | 有限会社マリーンビジネスサポート | 有限会社後藤会計事務所 | 東京海上日動火災保険株式会社 |
| 東急リバブル株式会社 | 株式会社BOOTHSwin | 株式会社DEPS | 株式会社EMA |
| 株式会社ESPERANZA | 株式会社GAINC | 株式会社GH | 株式会社INTRANCE |
| 株式会社ISTコンサルティング | 株式会社LeapalTechnologies | 株式会社M&ACrosstie | 株式会社M&Aクオリティ |
| 株式会社M&Aディレクションズ | 株式会社M&Aパートナーズ | 株式会社MAS | 株式会社NSSマネジメントサービス |
| 株式会社PMGMAPartners | 株式会社TKC | 株式会社TSKプランニング | 株式会社VentureForward |
| 株式会社YMFGグロースパートナーズ | 株式会社おかやま創研コンサルティング | 株式会社おきぎんサクセスパートナーズ | 株式会社おきなわアセットブリッジ |
| 株式会社さくら優和コンサルタント | 株式会社さくら総合M&Aセンター | 株式会社せいのFP事務所 | 株式会社みどり財産コンサルタンツ |
| 株式会社ウナ | 株式会社エムステージマネジメントソリューションズ | 株式会社エンマンサポート | 株式会社ジーケーパートナーズ |
| 株式会社ステラ | 株式会社タス | 株式会社タスクフォース | 株式会社トマック |
| 株式会社トレスボ | 株式会社ノジマ | 株式会社ビズハブ | 株式会社フォーナレッジ |
| 株式会社プレアス | 株式会社マイナビM&A | 株式会社ミッドランド経営 | 株式会社ライトライト |
| 株式会社リガーレ | 株式会社レコフデータ | 株式会社三十三銀行 | 株式会社三友システムアプレイザル |
| 株式会社三菱UFJ銀行 | 株式会社企業経営支援機構 | 株式会社企業評価総合研究所 | 株式会社北日本銀行 |
| 株式会社南日本銀行 | 株式会社大澤都市開発 | 株式会社山田エスクロー信託 | 株式会社岡山M&Aセンター |
| 株式会社常陽銀行 | 株式会社新潟事業承継パートナー | 株式会社日本PMIコンサルティング | 株式会社日本投資ファンド |
| 株式会社日本資産総研 | 株式会社朝日信託 | 株式会社未来を創る | 株式会社東京アライアンスアドバイザリー |
| 株式会社沖縄銀行 | 株式会社社長の専門学校 | 株式会社総研コンサル | 株式会社肥後銀行 |
| 株式会社青山財産ネットワークス金沢 | 株式会社鹿児島銀行 | 株式会社Amvision | 株式会社SECURITYBRIDGE |
| 横浜経営企画サービス株式会社 | 見える化株式会社 | 阿波銀コンサルティング株式会社 | DatasiteJapan合同会社 |
| NKGRコンサルティング株式会社 |
営業電話・契約等で困った場合の相談窓口
- M&A 支援機関協会 苦情受付窓口
→ https://www.maa-a.or.jp/inquiry/ - M&A 支援機関協会 不適切な譲受け事業者 情報受付窓口
→ https://www.maa-a.or.jp/inappropriate/ - 中小企業庁 事業環境部 財務課
電話:03-3501-1511(内線 5281〜4) - M&A 支援機関登録制度 情報提供受付窓口
→ https://ma-shienkikan.go.jp/inappropriate-cases
※本リストは 2026年5月13日現在の情報です。最新は M&A 支援機関協会 会員一覧 および 特定事業者リスト をご参照ください。
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免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。
よくあるご質問(FAQ)
📅 本記事の情報基準日
本記事は 2026年4月25日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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