2024.01.15 事業承継

中小企業事業再編投資損失準備金制度 完全ガイド——通常枠70%・拡充枠最大100%損金算入と恒久化動向まで徹底解説

3行まとめ


Table of Contents

はじめに——令和6年改正で「2本立て」になった準備金制度の現在地

この章のポイント
本制度は令和3年8月に施行された後、令和6年9月の改正で「拡充枠」が新設され、現在は通常枠と拡充枠の2本立てで運用されています。本章では、両枠の位置づけと最新の恒久化動向を俯瞰します。
図1:中小企業事業再編投資損失準備金制度の沿革(令和3年〜令和8年)
令和3年8月
制度創設・施行。経営力向上計画の認定を受けた青色申告中小企業者が、株式取得型M&Aで取得価額の70%を損金算入できる仕組みとして導入。
令和6年4月
令和6年度税制改正により、通常枠の適用期限を令和9年3月31日まで3年延長
令和6年9月2日
拡充枠(中堅・中小グループ化税制)が適用開始。産業競争力強化法に基づく「特別事業再編計画」の認定を前提に、取得価額1億〜100億円・積立率最大100%・据置10年という抜本拡充。
令和7年12月
経済産業省が令和8年度税制改正で本制度の恒久化を要望(与党税制改正大綱等)。
2026年3月6日
産業競争力強化法等の一部を改正する法律案を閣議決定、第221回国会に提出。本制度の見直し・拡充に関する規定を含む。
2026年4月現在
国会審議中。最終的な制度内容は国会成立後の政令等で確定する見込み。
出典:中小企業庁「中小企業事業再編投資損失準備金(中堅・中小グループ化税制)」公式ページ/経済産業省「令和8年度経済産業関係税制改正について」(令和7年12月)/経済産業省プレスリリース「産業競争力強化法等改正法案 閣議決定」(2026年3月6日)。

中小企業事業再編投資損失準備金制度は、中小企業が他の中小企業の株式を取得するM&Aを実行した際、取得価額の一定割合を準備金として損金算入できる、税制優遇措置です。

令和3年度税制改正で創設された当初は、積立率70%・据置5年・取得価額10億円以下という単一制度でした。しかし、中堅企業へと成長する過程で連続M&Aを行う企業が増加していること、そして事業再編を国全体として加速する政策意図から、令和6年度税制改正で「拡充枠(中堅・中小グループ化税制)」が新設され、現在は通常枠と拡充枠の2本立てで運用されています。

さらに、令和8年度税制改正に向けて経済産業省は本制度の恒久化を要望しており、産業競争力強化法等の一部を改正する法律案が2026年3月6日に閣議決定・国会提出済みです。本記事執筆時点(2026年4月)では国会審議中ですが、成立すれば「適用期限を意識せず中長期のM&A計画を立てられる」環境が整うことになります。

本記事では、まず通常枠の基本要件を整理し、続いて令和6年9月開始の拡充枠の詳細を解説、両枠の比較表と活用シーン別の選び方、実務上の注意点、最新動向までを通観します。本制度の活用可否・最適なプラン選択は、必ず顧問税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください


1. 【通常枠】積立率70%・据置5年の基本要件

この章のポイント
通常枠は、青色申告中小企業者が経営力向上計画(事業承継等事前調査事項を記載したもの)の認定を受け、取得価額10億円以下の株式取得型M&Aを行った場合に、取得価額の70%を準備金として損金算入できる仕組みです。

1-1. 対象者と適用要件

通常枠の適用を受けられるのは、租税特別措置法上の中小企業者に該当し、青色申告書を提出する法人です。具体的には、資本金1億円以下の法人(資本金1億円超の大法人の子会社等を除く)、または資本金がない法人で従業員1,000人以下の法人が対象となります。

その上で、以下の3要件を満たす必要があります。

1-2. 積立率と据置期間

通常枠では、株式取得価額の70%を準備金として損金算入できます。例えば取得価額が5億円であれば、3.5億円を準備金として積み立て、当該事業年度の課税所得から控除する処理になります。

積み立てた準備金は、5年間の据置期間を経過した後、5年間にわたって均等額を益金算入していく取崩し処理を行います。10年スパンで税負担を平準化する設計です。

1-3. 適用期限——令和9年3月31日まで

通常枠の現在の適用期限は、令和9年(2027年)3月31日までに経営力向上計画(事業承継等事前調査事項記載)の認定を受けた場合です。当初は令和6年3月31日が期限でしたが、令和6年度税制改正で3年延長されています。

1-4. 経営力向上計画の申請手続き

経営力向上計画の認定を受けるためには、対象会社のデューデリジェンス(事業承継等事前調査)を実施し、その内容を「事業承継等事前調査チェックシート」にまとめ、計画書本体に添付する必要があります。チェックシートは、財務・税務・法務・労務・環境・知財などの観点から、対象会社の状況とリスクを整理したものです。

このチェックシートの作成と計画策定は、M&Aアドバイザー、税理士、公認会計士、弁護士等の専門家チームと連携して進めることが一般的です。中小M&Aガイドライン(第3版)に沿った適切なデューデリジェンスが、制度適用の前提条件となります。


2. 【拡充枠】令和6年9月開始・最大100%損金算入の「中堅・中小グループ化税制」

この章のポイント
拡充枠は、過去5年以内に1億円以上のM&A実績を持つ特定中堅企業者・中小企業者が、産業競争力強化法に基づく「特別事業再編計画」の認定を受けて連続的にM&Aを行う場合に、最大100%の損金算入を認める仕組みです。

2-1. 拡充枠新設の背景

令和6年度税制改正で拡充枠が新設された背景には、中小企業からスタートして中堅企業へと成長する過程で、連続的なM&Aによってグループ化を進める企業が増加してきたことがあります。1回限りのM&Aではなく、年に複数件のM&Aを継続的に行うことで、業界再編・地域内再編を加速させる構想です。

制度の正式名称は「特別事業再編計画に基づく中小企業事業再編投資損失準備金(中堅・中小グループ化税制)」となります。経済産業省・中小企業庁の政策文書では「中堅・中小グループ化税制」と呼ばれることが多くなっています。

2-2. 対象企業の要件

拡充枠の対象企業は、以下のいずれかに該当する必要があります。

さらに、過去5年以内に取得価額1億円以上のM&A(グループ内再編を除く)を少なくとも1回実施していることが前提条件となります。これは「初めてのM&A」では拡充枠を使えず、「2回目以降の連続M&A」が拡充枠の対象になることを意味します。

2-3. 必要な認定——産業競争力強化法の「特別事業再編計画」

拡充枠の活用には、産業競争力強化法に基づく「特別事業再編計画」を策定し、経済産業大臣の認定を受ける必要があります。これは通常枠の「経営力向上計画」とは異なる、別途の計画類型です。

特別事業再編計画は、複数回のM&Aを通じてグループ化・事業再編を進める中期的なロードマップを示すものです。一度の認定で複数回のM&Aをカバーできる設計となっています。

2-4. 取得価額・積立率・据置期間

拡充枠の主要パラメータは以下の通りです。

特に注目すべきは、「特別事業再編計画認定後の2回目以降のM&A」では取得価額の100%を損金算入できる点です。たとえば取得価額50億円のM&A(拡充枠の2回目以降)であれば、50億円全額が当該事業年度の損金となります。連続M&A戦略を税制面から強力に後押しする仕組みです。

2-5. 適用期間

拡充枠の適用期間は、令和6年9月2日(産業競争力強化法改正施行日)から令和9年3月31日までに特別事業再編計画の認定を受けた場合です。通常枠と同じく令和9年3月31日が期限となっています。後述する恒久化議論はこの期限の取扱いに関わるものです。


3. 通常枠と拡充枠の比較——ケース別の選び方

この章のポイント
通常枠と拡充枠は、対象企業・取得価額・積立率・据置期間が大きく異なります。「初めてのM&Aは通常枠」「連続M&Aで業界再編・グループ化を狙う場合は拡充枠」というのが基本的な使い分けです。

3-1. 主要パラメータ比較表

項目通常枠拡充枠(中堅・中小グループ化税制)
対象企業青色申告を行う中小企業者(租税特別措置法基準)特定中堅企業者または従業員2,000名以下の中小企業者
前提条件なし(初回M&Aから利用可)過去5年以内に1億円以上のM&A実績(グループ内再編除く)が1回以上
必要な認定経営力向上計画特別事業再編計画(産業競争力強化法)
取得価額10億円以下1億円以上100億円以下
積立率取得価額の70%認定後1回目90%/2回目以降100%
据置期間5年10年
取崩し据置後5年で均等益金算入据置後5年で均等益金算入
適用期限令和9年3月31日まで(恒久化議論中)令和9年3月31日まで(恒久化議論中)

3-2. ケース別の選び方

ケースA:初めてのM&Aで小〜中規模案件。取得価額が10億円以下、過去にM&A実績がない場合は、通常枠が選択肢となります。経営力向上計画の認定取得が必要です。

ケースB:連続M&Aで業界再編を狙う中堅企業。過去5年以内に1億円以上のM&A実績があり、今後も複数件のM&Aを継続予定の場合は、拡充枠が選択肢になります。特別事業再編計画の認定で、複数回のM&Aを連続的にカバーできる利点があります。

ケースC:取得価額が10億円超の単発M&A。10億円を超えると通常枠は対象外となります。拡充枠の要件(過去のM&A実績・特別事業再編計画認定)を満たせるか検討する必要があります。

3-3. 税効果試算イメージ(あくまで概算)

通常枠の例として、株式取得価額5億円のケースを試算します。

ただし、5年据置後に取崩し(均等益金算入)が始まり、その分の課税所得が増加するため、長期的にはキャッシュフローの平準化措置と理解するのが正確です。試算はあくまで概算であり、所得割・地方税等を含めた実効税率は企業規模・所在地により異なります。個別の税効果試算は必ず顧問税理士・公認会計士等の専門家にご確認ください

具体的な手取り試算や手数料・税金を含めた全体コスト感の整理には、企業価値セルフ試算M&A手数料・手残り比較もご活用ください。

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4. 実務上の注意点——取崩しトリガー・申告書添付・デューデリジェンスとの連動

この章のポイント
準備金制度は、損金経理・申告書別表添付・取崩し強制事由の管理など、適用後も継続的な実務対応が必要です。本章では、M&A実施者・顧問税理士が押さえておくべき主要論点を整理します。

4-1. 損金経理の必要性

準備金の損金算入には、会計上も準備金として計上する「損金経理」が必須となります。法人税申告書上で別表加減算するだけでは認められません。会計処理としては、貸借対照表の負債の部に「中小企業事業再編投資損失準備金」として計上する取扱いが一般的です。

この会計処理の判断は、企業会計原則・税効果会計との整合性も含めて検討が必要です。必ず顧問税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください

4-2. 申告書への明細書添付

法人税申告書には、「中小企業事業再編投資損失準備金の損金算入に関する明細書」(別表)を添付する必要があります。これに加えて、認定書・確認書の写しも添付要件となります。

明細書では、積立額・取崩額・残高・対象株式の取得価額・対象会社情報などを記載します。複数の指定法人(子会社)がある場合は、各法人別に準備金を個別管理することが必要です。

4-3. 取崩し強制事由——3つのトリガー

据置期間中であっても、以下の事由が生じた場合は、準備金全額(または該当部分)を当該事業年度の益金に算入することが強制されます。

これらのトリガーは、「投機的なM&A」ではなく「長期的な事業再編」を促す制度趣旨に基づくものです。M&A後すぐに対象会社を売却・整理する計画がある場合は、本制度の適用がかえって不利になる可能性もあるため、長期保有方針との整合性を事前に検討する必要があります。

4-4. 中小M&Aガイドラインに沿ったデューデリジェンスの実施

本制度の適用は、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」に沿った適切なデューデリジェンスの実施が前提条件となります。経営力向上計画には「事業承継等事前調査チェックシート」の添付が必要であり、財務・税務・法務・労務・知財・環境などの観点から対象会社を調査した結果を整理する必要があります。

デューデリジェンスは、対象会社の規模・業種・想定リスクに応じて、弁護士・税理士・公認会計士・社会保険労務士等の専門家チームで分担して実施するのが一般的です。M&A仲介・FAだけで完結するものではなく、各分野の専門家との連携が不可欠です。

4-5. 関連制度との併用——事業承継・引継ぎ補助金との「ダブル活用」

本制度(税制優遇)と事業承継・引継ぎ補助金(費用補助)は、要件を満たせば併用が可能です。

両者は補助対象が異なるため、補助金で初期費用を抑えつつ、本制度で取得価額の税負担を軽減するという「ダブル活用」が有効な戦略になります。具体的な併用の可否・申請順序・補助金返還リスク等は、顧問税理士・行政書士・中小企業診断士等の専門家にご相談ください

関連する他の支援策として、中小企業経営強化税制(設備投資減税)も同じく経営力向上計画を基盤とする制度ですが、対象は設備投資(機械・器具等)であり、本制度(株式取得)とは別制度です。要件を満たせば両制度の同時申請が可能です。


5. 2026年以降の最新動向——恒久化の方針と産業競争力強化法改正

この章のポイント
令和8年度税制改正で経済産業省は本制度の恒久化を要望し、産業競争力強化法等の一部を改正する法律案が2026年3月6日に閣議決定・国会提出済みです。最終的な制度内容は国会成立後の政令で確定する見込みです。

5-1. 経済産業省による恒久化要望(令和7年12月)

経済産業省は、令和7年(2025年)12月に公表した「令和8年度経済産業関係税制改正について」のなかで、本制度を「期限の定めのない措置(恒久化)」とする方向で要望を行いました。理由として、「事業再編は企業の状況に応じて恒常的に検討されるべきものであり、適用期限の存在が中長期計画立案の阻害要因となっている」との認識が示されています。

恒久化が実現すれば、適用期限(令和9年3月31日)を意識せず、5年〜10年スパンの中長期M&A戦略を立案できる環境が整うことになります。

5-2. 産業競争力強化法等改正法案の閣議決定(2026年3月6日)

2026年3月6日、政府は「産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、第221回国会に提出しました。本改正には、特別事業再編計画制度の見直し・拡充に関する規定が含まれており、拡充枠(中堅・中小グループ化税制)の運用にも影響する見込みです。

2026年4月現在、本法案は国会審議中であり、最終的な制度内容は国会成立後の政令等で確定する予定です。本制度の活用を検討中の企業は、施行時期と制度詳細について最新情報を継続的に確認することが必要です。

5-3. M&A実務への影響予測

本制度が恒久化された場合、以下のような実務上の変化が想定されます。

令和5年度(2023年度)の中小M&A支援機関を通じた成約件数は4,681件(中小企業庁公表)、また経営力向上計画の累計認定件数は令和8年2月28日時点で196,591件(全業種合計)に達しており、本制度の活用基盤は着実に拡大しています。

5-4. 中堅企業政策との連動

本制度の拡充枠(中堅・中小グループ化税制)は、政府の「中堅企業政策」の一環として位置づけられています。中小企業から中堅企業へと成長する過程で、連続M&Aによってグループ化を進める企業を、税制面から支援する構想です。

地方経済の活性化、後継者不在企業の受け皿確保、業界再編の加速など、複数の政策目標を同時に追求する制度として、今後の運用拡大が見込まれます。業種別の活用事例については、業種別M&A支援ページもご参照ください。


6. 制度活用に向けた実務ステップと専門家活用のポイント

この章のポイント
本制度の活用は、M&A相手方の選定→計画申請→認定→M&A実施→税務申告という一連のプロセスに沿って進みます。各段階で適切な専門家チームと連携することが、制度活用の成否を分けます。

6-1. ステップ1:M&A相手方の選定とデューデリジェンス

本制度の活用は、M&A相手方の選定段階から始まります。中小M&Aガイドライン(第3版)に沿った適切なデューデリジェンスを実施し、その内容を「事業承継等事前調査チェックシート」に整理する必要があります。

デューデリジェンスは、対象会社の財務・税務・法務・労務・知財・環境・事業などの観点から実施します。中小M&Aの場合は、規模に応じて重点項目を絞ったうえで、コストと深度のバランスを取ることが現実的です。具体的な進め方やチェック項目については、M&Aプロセス全体の流れもご参考ください。

6-2. ステップ2:経営力向上計画/特別事業再編計画の申請

通常枠を活用する場合は経営力向上計画、拡充枠を活用する場合は特別事業再編計画を策定し、経済産業大臣(業種を所管する主務大臣)に申請します。計画書には、M&Aの目的・期待されるシナジー・デューデリジェンスの内容・統合プロセス(PMI)(統合後経営)の方針などを記載します。

計画策定は、M&Aアドバイザー、税理士、公認会計士、行政書士等の専門家チームと連携して進めることが一般的です。計画の実現可能性が認定審査の重要ポイントとなるため、書類作成の段階から専門家の支援を受けることが望まれます。

6-3. ステップ3:認定後のM&A実施と確認書交付

計画認定を受けた後、計画に基づいてM&Aを実施します。株式譲渡契約締結、決済、株主名簿書換、登記手続きなど、会社法・商業登記法に則った手続きが必要です。

M&A実施後、主務大臣に対してM&Aの実施報告と確認書の交付を受けます。これにより、計画通りのM&Aが実行されたことが公的に確認され、税務申告時の添付書類が揃うことになります。

6-4. ステップ4:税務申告と準備金の積立

M&Aを実行した事業年度の法人税申告において、以下の処理を行います。

申告手続きの詳細・別表記載要領については、顧問税理士・公認会計士等の専門家にご確認ください。最新の申告様式や記載例は、国税庁ウェブサイトでも確認できます。

6-5. ステップ5:据置期間中・取崩し期間の継続管理

準備金の積立後は、据置期間(通常枠5年・拡充枠10年)の経過後、5年間の均等取崩しを行います。この期間中、対象株式の譲渡・対象会社の解散・帳簿価額の減額などが生じた場合は、取崩し強制事由として全額益金算入が必要となります。

長期にわたる管理が必要なため、社内の経理担当者・顧問税理士・M&Aアドバイザーが情報を共有し、取崩しイベントを見落とさない体制を整備することが重要です。


結び——制度の正確な理解と専門家連携が活用の鍵

中小企業事業再編投資損失準備金制度は、令和3年度の創設以来、令和6年度改正で2本立て構造へと抜本拡充され、令和8年度改正に向けて恒久化議論が進む、政府の中小企業・中堅企業政策の中核に位置づけられた税制優遇措置です。

通常枠と拡充枠では、対象企業・要件・積立率・据置期間が大きく異なるため、自社の状況と中長期M&A戦略に応じた適切な選択が必要です。また、本制度の活用には、中小M&Aガイドラインに沿ったデューデリジェンス、経営力向上計画または特別事業再編計画の認定、損金経理、申告書別表添付など、継続的な実務対応が伴います。

株式会社 日本財務戦略センター(中小企業庁 M&A支援機関 登録、一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員)では、中小・中堅企業のオーナー経営者の皆様の事業承継・M&A・事業譲渡について、売り手・買い手いずれの立場でも、利益最大化とリスク回避を両立するセカンドオピニオン的な立場でご相談を承っています。本制度の活用可否や最適なプラン選択は、顧問税理士・公認会計士・弁護士・行政書士等の各専門家と連携しながら、最適な進め方をご一緒に検討いたします。

判断が固まっていない段階でも、いつでもお気軽にご相談ください(初回相談無料・秘密厳守)。


よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する5問の計15問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。
本記事Q11. 中小企業事業再編投資損失準備金制度の通常枠と拡充枠は、何が違いますか?
A. 通常枠は、青色申告中小企業者が経営力向上計画の認定を受けて取得価額10億円以下のM&A(株式取得型)を行った場合、取得価額の70%を準備金として損金算入できる仕組みです。据置期間は5年です。一方の拡充枠(中堅・中小グループ化税制)は、過去5年以内に1億円以上のM&A実績がある特定中堅企業者・中小企業者が、産業競争力強化法に基づく特別事業再編計画の認定を受けて取得価額1億〜100億円のM&Aを行う場合、認定後1回目90%・2回目以降100%の損金算入が可能です。据置期間は10年と長くなっています。自社がどちらに該当するか、また活用可否の判断は、必ず顧問税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。
本記事Q12. 本制度はいつまで利用できますか?恒久化されると聞きましたが、現在の状況はどうなっていますか?
A. 現在の適用期限は、通常枠・拡充枠ともに令和9年(2027年)3月31日までに経営力向上計画または特別事業再編計画の認定を受けた場合となっています。令和8年度税制改正に向けて経済産業省が本制度の恒久化を要望しており、関連する産業競争力強化法等の一部を改正する法律案が2026年3月6日に閣議決定・国会提出済みです。2026年4月現在は国会審議中であり、最終的な制度内容と施行時期は国会成立後の政令等で確定する見込みです。最新動向は中小企業庁・経済産業省の公式ページで継続的にご確認いただくとともに、本制度の活用検討にあたっては税理士・行政書士等の専門家とご相談ください。
本記事Q13. 準備金を積み立てた後、取崩しが強制される事由はありますか?
A. 据置期間中であっても、以下の事由が生じた場合は準備金全額(または該当部分)を当該事業年度の益金に算入することが強制されます。①取得株式の譲渡(売却)②対象会社の解散③株式の帳簿価額の減額(減資・評価減等)の3つが主な強制事由です。これらは「投機的なM&A」ではなく「長期的な事業再編」を促す制度趣旨に基づくものです。M&A後すぐに対象会社を売却・整理する計画がある場合は、本制度の適用がかえって不利になる可能性もあるため、長期保有方針との整合性を事前に検討することが重要です。具体的な該当性判断は、顧問税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。
本記事Q14. 本制度と事業承継・引継ぎ補助金は併用できますか?
A. 要件を満たせば併用が可能です。両者は補助対象が異なるため、組み合わせて活用することで効果が大きくなります。事業承継・引継ぎ補助金は、M&A仲介手数料・デューデリジェンス費用・専門家活用費用などの初期費用の一部を補助金として直接支援するものです。一方、本制度(中小企業事業再編投資損失準備金)は、株式取得価額そのものに対する税負担軽減措置です。両者を組み合わせることで、初期費用を抑えつつ取得価額の税負担も軽減する「ダブル活用」が可能になります。ただし補助金には返還リスク・申請順序・経費区分などの細かいルールがあるため、必ず顧問税理士・行政書士・中小企業診断士等の専門家とご相談のうえ、申請を進めてください。
本記事Q15. 経営力向上計画の認定申請は、どのような流れで進めますか?
A. 経営力向上計画の認定取得は、概ね以下の流れで進みます。①M&A相手方の選定とデューデリジェンス実施(中小M&Aガイドライン第3版に沿った調査)、②計画書の策定(M&Aの目的・期待されるシナジー・デューデリジェンス内容・PMI方針等を記載)、③「事業承継等事前調査チェックシート」の作成・添付④経済産業大臣(業種を所管する主務大臣)への申請⑤認定取得⑥認定計画に基づくM&A実施⑦M&A実施報告と確認書の交付⑧法人税申告で準備金を損金算入。計画策定にあたっては、M&Aアドバイザー、税理士、公認会計士、行政書士等の専門家チームと連携することが一般的です。計画の実現可能性が認定審査の重要ポイントとなるため、書類作成の段階から専門家の支援を受けることをお勧めします。

関連ツールと参考資料

関連 日本財務戦略センター(JFSC) ツール

主な一次ソース・参考資料


守秘義務と免責事項

本記事は、公表されている一次ソース(中小企業庁・経済産業省・国税庁の各公式資料、関連法令、政府プレスリリース)に基づき、株式会社 日本財務戦略センター(中小企業庁 M&A支援機関 登録、一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員)が独自の視点で構成・整理した解説記事です。記載内容は記事公開時点(2026年4月)のものであり、令和8年度税制改正および産業競争力強化法等改正法案については2026年4月現在国会審議中であるため、最終的な制度内容は国会成立後の政令等で確定する見込みです。最新情報は中小企業庁・経済産業省・国税庁の公式ページで継続的にご確認ください。

本記事に記載した税効果試算(法人税率23.2%等を用いた概算)は、あくまで標準税率を用いた概算であり、所得割・地方税等を含めた実効税率は企業規模・所在地・各事業年度の課税所得状況により大きく異なります。個別の法務・税務・財務的判断、特に経営力向上計画・特別事業再編計画の認定要件該当性、デューデリジェンスの範囲・深度、申告書別表記載要領、取崩し強制事由の該当性判断、他制度との併用可否などについては、必ず顧問税理士・公認会計士・弁護士・司法書士・行政書士等の各専門家にご相談ください。本稿はあくまで、公開情報に基づく一般的な解説を目的としています。

Q1. 制度の恒久化が検討されているとのことですが、適用期限の令和9年3月31日を過ぎても本制度を利用できるようになるのでしょうか。

経済産業省は令和8年度税制改正に向けて本制度の恒久化を要望しており、関連法案が国会に提出され審議中です。これが成立すれば、適用期限を意識せず中長期的なM&A計画を立てられる環境が整う可能性があります。ただし、最終的な制度内容は国会成立後の政令等で確定します。

Q2. 令和6年度税制改正で「通常枠」と「拡充枠」の2本立てになったとのことですが、自社がどちらの枠を適用できるか、どのように判断すればよいでしょうか。

通常枠は取得価額10億円以下の株式取得型M&Aで積立率70%が基本となり、拡充枠(中堅・中小グループ化税制)は取得価額1億〜100億円で積立率最大100%が適用されます。対象となるM&Aの規模や、特別事業再編計画の認定可否などが選択のポイントとなります。

Q3. 通常枠の適用要件にある「経営力向上計画の認定」とは具体的にどのようなもので、M&A実行前に準備が必要なのでしょうか。

通常枠の適用には、経済産業大臣(または主務大臣)から「事業承継等事前調査に関する事項」を記載した経営力向上計画の認定を受ける必要があります。これはM&A実行前に申請・認定を受ける必要があるため、計画的な準備が求められます。

Q4. 通常枠で株式取得価額の70%を損金算入できるとのことですが、積み立てた準備金はいつ、どのように取り崩すことになるのでしょうか。

積み立てた準備金は、5年間の据置期間を経過した後、その後の5年間にわたって均等額を益金算入する形で取り崩し処理を行います。これにより、税負担を10年スパンで平準化する設計となっています。

Q5. 本制度は「株式取得型M&A」が対象とありますが、事業譲渡や合併といった他のM&A手法では利用できないのでしょうか。また、個別の税務判断について相談したい場合はどうすればよいですか。

本制度は、認定された経営力向上計画に基づき、他の中小企業の株式を「購入により」取得する株式取得型M&Aのみが対象となります。事業譲渡や合併といった他のM&A手法は対象外です。個別のM&Aスキームにおける本制度の適用可否や税務判断については、必ず顧問税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。

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公開日: 2024年1月15日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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📅 本記事の情報基準日

本記事は 2024年1月15日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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