2024.01.15 法令・税務

中小M&Aガイドライン第2版・第3版改訂の要点|レーマン方式と最低手数料の併記、重要事項説明書、テール条項の運用解説

中小M&Aガイドラインは中小企業が中小企業のM&A適正化のために策定する手引きで、第2版(2023年9月)以降、レーマン方式と最低手数料の併記、重要事項説明書の交付、契約期間や直接交渉制限(テール条項)の明示、M&A支援機関登録制度の運用などが明記されています。事前説明のないM&A業者はガイドライン抵触リスクが高く、契約前に重要事項の書面説明を受けることが必須となります。

【この記事の結論】中小M&Aガイドラインは第2版(2023年9月)と第3版(2024年4月)で、レーマン方式と最低手数料の併記、重要事項説明書の交付、テール条項の明示、M&A支援機関登録制度の運用が明確化されました。事前説明のない業者はガイドライン抵触リスクが高く、契約前確認は必須です。株式会社日本財務戦略センター 代表取締役 五十嵐悠一が要点を整理します。

中小M&Aガイドラインとは何か?

中小M&Aガイドライン(経済産業省・中小企業庁)は、中小企業の事業承継・事業拡大のためのM&Aに関する手引きとして策定された行政ガイドラインです。M&A専門業者(仲介者・FA)と中小企業オーナーの双方に対して、適正なM&A支援のあり方を示すものとして運用されています。

2023年9月22日公表の第2版、続く2024年4月公表の第3版で、報酬体系の透明性確保や重要事項説明の運用が大きく前進しました。本記事では、第2版・第3版で追加・強化された主要論点を整理します。

レーマン方式と最低手数料の併記が義務化された背景

中小M&Aの手数料は算定方法が複雑で、最低手数料の存在によりオーナーが実支払額を把握しづらいという課題が長年指摘されてきました。第2版以降のガイドラインでは、実務上多用されるレーマン方式について、基準となる価額の考え方や報酬額の目安を明記し、M&A専門業者にウェブ上での開示を求めています。

さらに、最低手数料を設定する業者が多いことから、レーマン方式と最低手数料を併記し、最低手数料の分布や適用事例を紹介することが推奨されています。たとえば譲渡対価1億円の案件で、レーマン方式上の報酬は500万円(5%)でも、最低手数料が1,000万円なら実支払額は1,000万円となります。

株式会社日本財務戦略センターの実務経験では、契約段階でこの最低手数料の存在を知らず、後で想定外の費用に驚かれるオーナー様が少なくありません。たとえば製造業の案件で、市場環境の変化により譲渡対価が下振れし、レーマン方式上の報酬が最低手数料を下回ったにもかかわらず、最低手数料の差額を支払うことになり資金計画に影響が出た事例もあります。

契約前に必ず確認すべき2項目

これらが書面で明示されない業者は、ガイドラインの趣旨に反している可能性が高く、契約には注意が必要です。

重要事項説明書の交付:M&A契約前の必須プロセス

第2版では、仲介契約・FA契約において契約に係る重要な事項を記載した書面(重要事項説明書)を交付し、明確な説明をすることが必要であると明記されました。これはM&Aにおけるトラブルを未然に防ぐための極めて重要な措置です。

説明すべき重要な事項として、契約内容・期間、手数料の算定方法・金額、直接交渉制限条項(テール条項)、契約解除の条件・費用などが挙げられます。中小企業庁の見解では、書式自体は決まっていないものの、上記項目を網羅的に説明すれば足りるとされています。

特に注意すべきテール条項

テール条項は、契約期間終了後も一定期間、紹介された候補先とのM&Aが成立した場合に手数料が発生する旨を定めた条項です。制限される候補先の範囲、交渉目的、期間が不明確だと、将来のM&A機会を不当に制限されるリスクがあります。契約終了後にオーナー様が独自に見つけた買い手候補との交渉が、テール条項の適用範囲に含まれるとして手数料を請求されたトラブル事例も耳にします。

株式会社日本財務戦略センターでは、テール条項の適用範囲・期間を明確化し、オーナー様の意思決定の自由を不当に制限しない設計を重視しています。

契約解除条件と不成立時の費用

M&Aは常に成功するとは限りません。万が一不成立に終わった場合や中途解除する場合に、どのような費用が発生するのかを事前に把握しておくことが重要です。着手金・中間金の返還可否、月額顧問料の精算、デューデリジェンス(DD)費用の負担関係などを書面で確認すべきです。

M&A専門業者の質確保:善管注意義務と職業倫理

第2版では、M&A専門業者が依頼者との契約上の義務(善管注意義務・忠実義務)を履行し、職業倫理の遵守が求められることが明記されました。これはオーナーの利益を最優先に考え、誠実に業務を遂行する責任を意味します。

具体的な取組例として、以下が挙げられています。

これらの取組状況は、M&A専門業者選定時の信頼性指標として有用です。

士業等専門家との連携

M&Aは、法務(弁護士法)、税務(税理士法)、労務(厚生労働省関連法規)、会計(金融庁管轄の公認会計士等)など多岐にわたる専門知識を要します。ガイドラインは、M&A専門業者が他の支援機関、特に士業等専門家と積極的に連携することを望ましいとしています。

株式会社日本財務戦略センターでは、提携する弁護士税理士・公認会計士と密に連携し、ワンストップで専門的なサポートを提供できる体制を整えています。専門外の領域に踏み込みすぎる業者は、業法上のリスクも含めて注意が必要です。

第3版(2024年4月)で加わった主な追加事項

2024年4月公表の第3版では、第2版で示された方向性をさらに具体化する形で、M&A支援機関登録制度の運用、不適切な営業行為(迷惑コール・代表アドレスへの送付等)への注意喚起表明保証保険の活用拡大、経営者保証ガイドラインとの連携などが拡充されています。経営者保証に関するガイドラインとの運用統合は、中小M&A特有の経営者個人保証問題への解決策として注目されています。

行政・民間の取組強化

ガイドラインでは、行政・民間の各種取組も整理されています。

株式会社日本財務戦略センターの考え方

株式会社日本財務戦略センターは、中小M&Aガイドラインの趣旨を深く理解し、オーナー様の利益を最優先に考えた透明性の高いM&A支援を実践しています。代表取締役の五十嵐悠一は、公認会計士・中小企業診断士として、第2版・第3版で求められた重要事項説明・テール条項明示・士業連携を、すべての案件で標準運用しています。事前説明のない業者と契約することは、将来のトラブルリスクを大きく高めるため、オーナー様には契約前の書面確認を強くおすすめします。

※M&A実務における契約条項の解釈、税務・法務上の最終判断は、弁護士・税理士など各分野の専門家にご確認ください。セカンドオピニオン無料相談もご活用ください。

よくあるご質問

中小M&Aガイドラインは法的拘束力を持つのですか?

ガイドライン自体は行政指針であり、直接的な法的拘束力ではありませんが、M&A支援機関登録制度の登録要件として遵守が求められ、違反すれば登録取消等の行政処分や、補助金対象外となるリスクがあります。実務上は強い規範性を持ちます。

重要事項説明書を渡されない業者と契約してしまった場合はどうすればよいですか?

契約前に重要事項説明書の交付を求め、テール条項・最低手数料・解除条件等を書面で確認することが原則です。説明を求めても応じない業者の場合、契約を見送るか、M&A支援機関登録事務局の情報提供窓口(ma-shienkikan.go.jp)への相談を検討してください。

テール条項はどの程度の期間が一般的ですか?

業界では契約終了後1〜2年程度のテール条項設定が多く見られますが、対象となる候補先範囲・交渉目的・期間が明確に書面化されているかが最大の論点です。期間の短縮や対象限定の交渉は契約段階で行うのが原則となります。

公開日: 2024年1月15日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2024年1月15日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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