M&A仲介との契約を結ぶ際に、報酬体系よりもトラブルになるテール条項
【この記事の結論】テール条項↗は契約期間後も手数料を取得する条項。中小企業庁↗ガイドラインは(1)期間2-3年以内、(2)直接接触し明示的に紹介した相手に限定すべきと指針。これを超える長期・広範な拘束は要警戒、不明点はセカンドオピニオン推奨。
弊コラムでも何度も何度も取り上げてきて正直未だにこんなトラブルあるの?と思いますが、現在も最もトラブルが多く、中小企業庁も問題視しているようなのでその点について独立して記載したいと思います。
テール条項とは
経済産業資料の定義としては「契約期間終了後も手数料を取得する契約」とされています。
平たく言うと、仲介会社は紹介した顧客を仲介会社を飛ばされて契約されてしまうとタダ働きになってしまうため、仲介会社が紹介した後の一定の期間については仲介会社が紹介したとみなし、仲介会社が入らない形でM&Aが行われたとしても、手数料を支払ってくださいという条項です。
もう少し具体的にいうと、例えば、弊社が売り手に買い手を紹介したとします。
ただ何らかの理由ではブレイクしてしまいました。ただお互いに未練があり、ブレイクした半年後に弊社を除いてM&Aを成立させました。
この場合、弊社がいたから紹介ができ、M&Aが成立したので、弊社が動いたとみなして当初の手数料をお支払いください、という内容です。
テール条項の問題点
これだけ聞けば別に当たり前の話で、なぜトラブルになるのか疑問に思われる方が殆どだと思います。
私が聞いたトラブルの事例としては、悪質な仲介会社が、売り手に対して一般的な期間を超えるような長期間テール条項で縛った上、膨大なロングリストに乗っている全ての先(紹介もされていないし、本当に買う気があるかもわからない先)にテール条項をかけることで、実質的に解約を不可能にするという手法を用いているそうです。
また同じ会社か否かは不明ですが、別の大手会社で似たようなことが行われているような話も聞いたことがあります。このような契約を結んでしまった場合、成立すればまだいいのでしょうが、解約もできず相手も見つからないという事であれば、会社の経営方針が束縛されてしまい、場合によっては経営方針を確定することができなくなってしまうので、業績に影響を与えてしまうでしょう。
そのため中小企業庁は、テール条項について必要性を認めたうえで、透明性を担保するため、仲介会社が直接接触し、明示的に紹介した相手に限り、テール条項の対象として、必要最低限にするよう働きかけています。
これは当たり前ですよね。
悪質仲介↗会社が「これが弊社が紹介する予定の買い手です」と言って日本全国にある264万社のリストを売り手に見せたら、売り手は日本国内の企業と数年交渉できなくなってしまいますが、常識的に考えたらそれはおかしい。
中小企業庁が具体的にテール条項についてかくあるべしとしているのは、
・テール期間は最長でも2年~3年以内を目安とする。
・テール条項の対象は、あくまで当該M&A専門業者が関与・接触し、譲り渡し側に対して紹介した譲り受け側のみに限定する。
と明示することでトラブルの発生を抑制しようとしています。
3年はさすがに長すぎだと思いますが、逆にいうと3年以上の期間で拘束している仲介会社も存在するという事でしょう。
弊社の場合
弊社は紹介した企業について2年間の期限とするテール条項としているので、中小企業庁のガイドラインの範囲内です。
M&A、特に会社の譲渡についてはほとんどの方が初めてのケースになると思いますので、悪意のある仲介会社にあたってしまうとトラブルになってしまうと思います。
中小企業庁のガイドラインではこのほか、他の支援機関、弁護士↗や税理士↗など法令による秘密保持義務がある者や事業引継ぎ支援センターなどの公的機関に限定してセカンド・オピニオンを求めることを許容するよう促していることから、弊社に限らず何か疑問に思った点や不審な点、お困りの点については専門家に相談されるとよろしいと思います。
弊社からもM&Aに詳しい専門家の紹介は可能ですので、お困りの方はお気軽にご連絡ください。
おまけ
中小企業庁よりテール条項以外に、報酬についてもきちんと説明するようアナウンスが出されています。
弊社と連携しているクレジオ・パートナーズ社が上場企業の手数料比較表を作成されましたので、共有しますね(引用、許可を得ています)。
こういったところもきちんと説明があるかどうかも仲介会社を選ぶ際のポイントにされたらよろしいと思います。
<2024年4月8日追記>
本文中でM&A仲介会社とのトラブルの話について触れていますが、先ほどM&A支援機関登録事務局から迷惑営業の注意喚起↗が各社に入りました。
迷惑コールをものともしない会社は当局から排除される可能性がある(信用の低下や買い手・売り手は補助金の対象ではなくなるなど)ことから、人を抱えて固定費が高い会社はつらいことになりそうです。
逆に税理士などとリレーションを持っているコールだけに頼らなくていい日本M&Aセンターなどにとってはプラスでしょう。
参考までにご確認ください(太字赤字筆者)。
📊 公開データで確かめる
中小企業庁登録 M&A 支援機関 3,394 社の公開手数料を機械整理。あなたの譲渡価格でレーマン方式手数料を試算し、客観データで比較できます。
※ 公開情報の機械整理であり、特定社の推奨・勧誘・優劣を示すものではありません。
営業電話を迷惑に感じている方は本文を読まずとも、以下の画像先をクリックすると情報提供フォームに飛びますので、そちらでご相談されてもいいかもしれません。
お世話になっております。M&A支援機関登録事務局です。
平素より中小M&Aに係る支援に御尽力いただき、誠にありがとうございます。
事務局においては、登録M&A支援機関に係る支援の実態についての情報提供窓口を設置しておりますが、情報提供の内容としては、営業先が契約締結を断ったのにも関わらず、営業行為を継続する行為等の営業行為に係るものが多く寄せられております。
「中小M&Aガイドライン」においては、M&Aに必ずしも詳しくない中小企業の意思決定を適切にサポートし、依頼者の利益のために善意管理注意義務や職業倫理に基づいた支援を実施することをM&A支援機関に対して求めているところです。
こうした趣旨を踏まえると、契約締結に向けた営業行為についても依頼者となりうる中小企業の意向に沿って行う必要があると考えており、このため、今年度以降、営業に係る情報提供が寄せられた場合には、当該情報提供に係る登録M&A支援機関に対して通知し、注意喚起することといたします。
とりわけ、複数回の情報提供が寄せられる等、潜在的な依頼者である中小企業の意向に沿わない営業行為が組織的に許容されていると疑われる場合については、ガイドラインにおいて求めている「職業倫理」の醸成等が不十分との疑念が生じることとなりかねず、こうした場合には、M&A支援機関登録事務局としても追加的な対応を検討していくこととなります。
以上、引き続きよろしくお願いいたします。
M&A仲介については以下のブログも参考にしてください。
政府が中小企業M&A支援を行う背景
小規模M&A向け表明保証保険「M&A Batonz」についての解説
「M&A仲介への不信感4選」
仲介かFASか
「M&A仲介会社の手数料」上場・非上場会社との比較!
M&Aで会社を譲渡する際に失敗しないための21のポイント!
売り手がM&Aを始める前に確認すべき5つのこと
【年倍法】M&Aの「価格」と「価値」の違いとは
「御社を買いたい人がいるから売ってくれと言われているが本当か」問題
M&A仲介会社の「業界最安値」手数料問題とは
仲介会社が入る意味とは
「M&A仲介と契約を結ぶ前に。テール条項には気をつけろ!」
「中小企業庁から学ぶ! M&A仲介業者の見極め方」
「中小企業庁から学ぶ! M&A仲介業者の見極め方2」
日本政策金融公庫を使ったスモールM&Aのための資金調達!・・・と疑似PEファンドの組成?
コロナと資金調達と資本性劣後ローンの活用と
M&Aで自分の会社を少しでも高く売るために!
※M&A実務の判断には専門家との相談が不可欠です。日本財務戦略センター(JFSC) ではM&Aセカンドオピニオン無料相談を承っております。
公開日: 2021年9月10日 / 最終更新日: 2026年5月22日
執筆者
五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)
株式会社日本財務戦略センター 代表取締役
京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。
資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)
公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員
メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]
専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]
代表挨拶|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。
▼ ご検討前のご参考に
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無料で診断する →よくあるご質問(FAQ)
この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する5問の計15問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。
会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは
無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は
弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁
中小 M&A ガイドライン(
第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の
業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は
仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁
M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は
弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて
専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については
情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは
所在地を問わない無料相談をご利用ください。
本記事Q11. 中小企業庁ガイドラインではテール期間は2~3年以内が目安とありますが、これより長い期間を提示された場合、どのように判断すればよいでしょうか?
A. 中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」では、テール期間は最長でも2~3年以内を目安とすることが推奨されています。これを超える期間の拘束は、経営方針の自由度を著しく制限し、将来的なM&Aの機会を逸するリスクがあるため、慎重な検討が必要です。契約締結前に、その期間設定の合理性や必要性について仲介会社に十分な説明を求め、納得できない場合は再交渉を検討することをお勧めします。
本記事Q12. 仲介会社から、紹介されていない多くの企業までテール条項の対象に含まれるような契約を提示されました。これは問題ないのでしょうか?
A. 中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」では、テール条項の対象は、M&A専門業者が直接関与・接触し、譲渡側に対して明示的に紹介した譲受側のみに限定すべきとされています。膨大なリスト上の企業全てを対象とするような広範なテール条項は、ガイドラインの趣旨に反する可能性があり、実質的に解約を困難にする恐れがあります。契約内容を精査し、対象範囲が適切であるかを確認することが重要です。
本記事Q13. 仲介会社との契約期間が終了し、テール期間中ですが、以前に仲介会社から紹介された相手と直接M&Aを進めることは可能でしょうか?その場合、手数料は発生しますか?
A. テール条項は、仲介会社が紹介した相手とのM&Aが、契約期間終了後も一定期間内に仲介会社を介さずに成立した場合に手数料が発生する旨を定めています。そのため、以前に仲介会社から明示的に紹介された相手とのM&Aをテール期間中に直接進める場合、契約内容によっては手数料が発生する可能性があります。契約書に記載されたテール条項の具体的な内容を再度確認し、不明な点があれば専門家にご相談ください。
本記事Q14. M&A仲介契約の内容、特にテール条項について疑問点がある場合、どのような機関や専門家に相談するのが適切でしょうか?
A. 中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」では、M&Aに関する疑問や不安がある場合、他の支援機関、弁護士や税理士など法令による秘密保持義務がある者、または事業引継ぎ支援センターなどの公的機関にセカンド・オピニオンを求めることが推奨されています。これらの専門家は、契約内容の適正性やリスクについて客観的な視点からアドバイスを提供できるため、安心してご相談いただけます。
本記事Q15. M&A支援機関登録事務局から迷惑営業に関する注意喚起があったとのことですが、信頼できるM&A仲介会社を見極めるためのポイントは何でしょうか?
A. 信頼できるM&A仲介会社を見極めるには、まず中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」に沿った透明性の高い契約内容であるかを確認することが重要です。特に、テール条項や報酬体系について明確かつ合理的な説明があるか、また迷惑営業行為を行っていないかなども判断材料となります。疑問点があれば、契約締結前に複数の仲介会社から話を聞き、比較検討することをお勧めします。
📅 本記事の情報基準日
本記事は 2021年9月10日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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