3行まとめ
- M&A仲介手数料の不透明さの正体は、「最低手数料」と「レーマン方式の基準額」という2つの仕組みにあります。譲渡対価が数千万円規模でも、最低手数料2,000万円以上の請求が起きるケースは、業界で実際に存在します。
- レーマン方式の料率テーブル(5億以下5%/5〜10億4%/10〜50億3%/50〜100億2%/100億超1%)は中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」にも典型例として明記されています。問題は料率ではなく、その料率を掛ける「基準額」が3類型存在する点にあります。
- 2024年8月公表の「中小M&Aガイドライン(第3版)」では契約締結前の書面交付・手数料説明義務が強化され、2025年8月の「中小M&A市場改革プラン(中間とりまとめ)」では、登録機関の手数料基準を公的データベースで検索可能にする改修が予定されています。本記事は、これら一次ソースを基に、60代経営者が引退後の生活資金を守るための5つの確認ポイントを整理します。
📊 関連検証記事:実効手数料率と最低手数料の関係を有報・IRから検証(本記事の数字的裏付けとして)
はじめに——「最低手数料」と「基準額」を知らずに契約してはならない理由
M&A(企業の合併・買収)を検討する経営者の多くが、最初に戸惑うのが手数料体系の不透明さです。「着手金無料」「成功報酬はレーマン方式」というキャッチーな表記の一方で、「最低手数料2,000万円」「中間金として成功報酬の10%先行徴収」「レーマン方式の基準額は移動総資産」といった最終的な手残りに直結する条件が、複数のリンクをたどった先のページに小さく記載されているケースは少なくありません。
この情報の非対称性を是正するため、中小企業庁は2024年8月30日、「中小M&Aガイドライン(第3版)」を公表し、仲介者・ファイナンシャル・アドバイザーに対して、契約締結前の書面交付と17項目の重要事項説明義務を課しました。さらに2025年8月5日、「中小M&A市場改革プラン(中間とりまとめ)」では、M&A支援機関登録制度のデータベースに、登録機関の手数料算定基準(最低手数料水準・報酬基準額の種類等)を掲載・検索可能にする改修方針が示されました。
本記事では、これら公的な制度動向と、上場仲介3社(日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク)の公式公開情報をもとに、「最低手数料」と「レーマン方式の基準額」という2つの論点を中心に解説します。最後に、契約前に必ず確認すべき5つのチェックポイントを整理します。
1. 「最低手数料」という仕組み——なぜ譲渡対価より高くなり得るのか
1-1. 最低手数料とは——「業務工数の最低保証」という性質
最低手数料(最低報酬額)とは、譲渡対価がいくら小さくても、M&A仲介会社が成功報酬として必ず請求する金額の下限です。M&Aの業務工程——相手方探索(ソーシング)、企業価値評価、交渉支援、契約書ドラフティング、デューデリジェンス対応——には、案件規模の大小を問わず一定以上の工数と専門人材の関与が必要となります。譲渡対価に料率を掛けた成功報酬では費用が回収できないケースに備え、最低手数料が設定されているという建付けです。
1-2. 業界レンジと公的データ——500万〜1,000万円が多数
中小企業庁が2025年8月5日に公表した「中小M&A市場改革プラン(中間とりまとめ)」では、M&A支援機関登録制度に登録された機関の最低手数料について、500万円〜1,000万円を設定する機関が多く、ばらつきが見られると指摘されています(出典:中小企業庁「中小M&A市場改革プラン」PDF本文)。
一方、上場仲介会社の中で最低手数料を公式サイトに明記しているのは日本M&Aセンターです。同社は手数料ページに「成功報酬(仲介手数料)の最低額は2,000万円」と公表しており、算定基準は移動総資産(時価ベース)と説明しています(出典:日本M&Aセンター 公式手数料ページ)。M&Aキャピタルパートナーズ、ストライクは最低手数料の具体額を公式サイトに明示していません。非公開のため、いずれも個別の見積もり段階で必ず書面確認することが必要です。
1-3. 「最低手数料の壁」が起きる典型ケース
最低手数料の重みが増すのは、譲渡対価が小規模なケースです。例えば、譲渡対価5,000万円・料率5%という条件であれば、レーマン方式の単純計算では成功報酬は250万円となります。しかし最低手数料が2,000万円に設定されていれば、計算上の手数料が下回るため、実際に請求されるのは最低手数料の2,000万円となります。
この場合、譲渡対価に対する手数料の比率は40%に達します。引退後の生活資金や次世代への承継原資として手元に残せる金額が想定の6割になるという計算は、契約前に必ず把握しておかなければ、資金計画そのものが成り立ちません。「自社の譲渡対価想定レンジ」と「仲介会社の最低手数料」のバランスこそが、仲介会社選定の最初の論点になります。
1-4. 60代経営者にとっての含意——「想定レンジ × 最低手数料」を必ず照合する
譲渡対価想定レンジが3億円を超える規模であれば、最低手数料2,000万円は料率5%の計算結果(5億以下部分は5%=最大2,500万円)に近づくため、相対的な負担は軽減されます。一方、譲渡対価想定レンジが1億円未満〜2億円規模の事業者にとっては、最低手数料2,000万円超の機関に依頼することは、手数料率としては10〜20%という高水準になることを意味します。
事業承継・引継ぎ支援センター(中小企業庁、全国47都道府県設置・相談無料)など、譲渡対価規模に応じて最適な相談先を使い分ける視点が、60代経営者にとっては合理的な選択になります。
2. レーマン方式の料率テーブル——「中小M&Aガイドライン」掲載の典型例
2-1. レーマン方式の業界標準テーブル
レーマン方式(Lehman Formula)とは、取引金額(基準額)の階層ごとに段階的に料率が下がる方式です。中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」には、典型例として以下の料率テーブルが掲載されています。
| 基準額の階層 | 料率 | 階層内 最大手数料 |
|---|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5% | 2,500万円 |
| 5億円超〜10億円以下の部分 | 4% | 2,000万円 |
| 10億円超〜50億円以下の部分 | 3% | 1億2,000万円 |
| 50億円超〜100億円以下の部分 | 2% | 1億円 |
| 100億円超の部分 | 1% | 基準額に応じる |
2-2. 計算例——基準額20億円の場合
仮に基準額が20億円の場合、レーマン方式の階層計算は以下のようになります。
- 5億円以下の部分:5億円 × 5% = 2,500万円
- 5億円超〜10億円以下の部分:5億円 × 4% = 2,000万円
- 10億円超〜20億円以下の部分:10億円 × 3% = 3,000万円
- 合計成功報酬:7,500万円(基準額に対する実効率は約3.75%)
料率自体は明確で、業界標準のテーブルである限り計算結果に大きな差は出ません。論点は、この計算の起点となる「基準額」です。次章で解説します。
2-3. 「成功報酬の階層計算」を理解する重要性
レーマン方式は、基準額全体に最低料率(1%)を一律に掛けるのではなく、階層ごとの差分に対して料率を掛けて合算する方式です。これを誤解すると、「基準額20億円なら全体に3%(10〜50億帯の料率)を掛けて6,000万円」と試算してしまうケースがありますが、正しくは前述の階層計算で7,500万円となります。
提案書を受け取ったら、「料率テーブル」と「基準額の定義」と「合計手数料の試算根拠」の3点を、必ず仲介会社に書面で開示してもらうことが、後悔しないための第一歩です。
3. レーマン方式の「基準額」3類型——同じ取引でも手数料が数倍変わる
3-1. 基準額3類型の比較
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」は、基準額の定義について明確化を求めており、業界では主に以下の3類型が用いられています。
| 基準額の類型 | 定義 | 採用が公表されている例 |
|---|---|---|
| ① 株式譲渡対価基準 | 売り手オーナーが受領する株式売却金額のみを基準とする。3類型の中で売り手の手数料負担は最も軽い。 | M&Aキャピタルパートナーズ(株価レーマン方式・公式公開) |
| ② 企業価値基準 | 株式譲渡対価に、有利子負債等のオーナー便益を加算した金額を基準とする。「事業全体の価値」を反映する考え方。 | 業界各社(個別契約による) |
| ③ 移動総資産基準 | 対象会社の総資産額(時価ベース)を基準とする。負債を含む資産全体が分母となるため、3類型の中で売り手負担は最も大きくなりやすい。 | 日本M&Aセンター(公式公開) |
3-2. 基準額シミュレーション——同じ取引でも手数料は4倍違う
基準額の選び方で手数料がどれだけ変わるか、具体例で見てみます。
前提条件:株式譲渡対価1億円/対象会社の有利子負債2億円/対象会社の総資産(時価)4億円/料率5%(5億以下帯)
| 基準額の類型 | 基準額 | 成功報酬(料率5%) | 対 株式譲渡対価比 |
|---|---|---|---|
| ① 株式譲渡対価基準 | 1億円 | 500万円 | 5% |
| ② 企業価値基準 | 3億円 (株式1億+負債2億) | 1,500万円 | 15% |
| ③ 移動総資産基準 | 4億円 (時価ベース) | 2,000万円 | 20% |
同じ「株式譲渡対価1億円」のM&A取引であっても、基準額の選び方ひとつで手数料は500万円から2,000万円まで4倍の差が出ます。これは料率テーブルが同一でも変わらない構造的な差です。
3-3. 「企業価値」と「移動総資産」の違いに注意
業界用語として混同されやすいのが「企業価値」と「移動総資産」です。企業価値は事業価値(企業価値(EV)、Enterprise Value)に近い概念で、株式時価総額に有利子負債を加えた金額を指します。移動総資産は対象会社のバランスシート上の総資産(時価評価ベース)を指し、有利子負債だけでなく仕入債務・未払金・引当金等の流動負債も含む全資産が分母となります。
そのため、同じ会社でも移動総資産は企業価値より大きくなる傾向があり、移動総資産基準を採用する仲介会社の手数料は構造的に高くなりやすい性質を持ちます。日本M&Aセンターが「成功報酬の最低額は2,000万円」を堅持できる背景には、この基準額設計があると言えます。
4. 中小M&Aガイドライン第3版が義務化した「契約前の書面交付・説明義務」
4-1. 契約締結前の書面交付義務
中小企業庁が2024年8月30日に公表した中小M&Aガイドライン(第3版)の最大の改訂ポイントは、仲介者・ファイナンシャル・アドバイザーが、仲介契約・FA契約締結前に重要事項を記載した書面(電磁的方法も可)を交付し、明確な説明をすることを義務付けた点にあります。これは口頭説明だけで契約に至り、後から手数料の細則をめぐってトラブルになる事態を抑止するための制度的措置です。
4-2. 17項目の重要事項説明——手数料関連で押さえる5項目
説明事項は17項目に及びますが、手数料に直結する重要項目は以下の5つです。
- 手数料の詳細な算定基準——レーマン方式の料率テーブル、基準額の定義(株式譲渡対価/企業価値/移動総資産のいずれか)、最低手数料の金額
- 提供する具体的な業務内容——プロセスごと(ソーシング、企業価値評価、交渉支援、契約書作成支援、デューデリジェンス対応など)の業務範囲
- 担当者の保有資格・経験年数・成約実績——担当アドバイザーの専門性に関する情報開示
- 着手金・月額報酬・中間金の発生タイミングと、これらが成功報酬に充当されるか、別建てかの説明
- 仲介者の場合、双方代理の利益相反リスクと、その回避・透明化の方法に関する説明
これら5項目は、契約前に必ず仲介会社から書面で受領し、不明点を残したまま契約しないことが、ガイドラインが想定する依頼者の自衛行動です。
4-3. 着手金・中間金の規制動向——「禁止」ではなく「説明義務」
第3版では、着手金・月額報酬・中間金等の報酬発生タイミングについて、相手方を含めた手数料の総額がM&Aの成立やその条件(譲渡額等)に影響を与える可能性がある旨も含めて、依頼者に対して説明することが求められています。
着手金・中間金を成功報酬から差し引く運用が望ましいとはされているものの、強制禁止規定ではなく、各支援機関の個別判断に委ねられています。完全成功報酬制を採用する機関と、着手金型を維持する機関の双方が並存する構造は、ガイドライン第3版以降も変わりません。重要なのは、方式そのものの優劣ではなく、自社の譲渡シナリオと資金繰りに照らして、どの方式が合理的かを判断する視点です。
4-4. 利益相反禁止規定の強化——双方代理の透明化
第3版では、仲介者向けに、追加手数料を支払う者やリピーターへの優遇(当事者ニーズに反したマッチング優先・譲渡額の誘導等)が明示的に禁止されました。仲介は売り手・買い手双方から手数料を受領する双方代理の構造を持つため、利益相反リスクが構造的に内在します。
ガイドライン第3版は双方代理そのものを禁止しているわけではなく、説明義務の強化と禁止行為類型の明示によって透明化を進める方針です。仲介を選択する場合は、契約前に「貴社が買い手側からも手数料を受領する場合、その金額の概算と、利益相反回避のためにどのような社内プロセスを設けているか」を必ず確認することが推奨されます。
4-5. 2025年8月「中小M&A市場改革プラン」——データベース化の方向性
中小企業庁は2025年8月5日、「中小M&A市場改革プラン(中間とりまとめ)」を公表し、ガイドライン第3版の手数料説明義務を一歩進める方針を示しました。具体的には、M&A支援機関登録制度のデータベースに、登録機関の手数料算定基準(最低手数料水準、報酬基準額の種類、料率テーブル等)を掲載・検索できるよう改修する計画が含まれています。
これが実装されれば、依頼者は登録機関の手数料体系を一覧で比較検討できるようになり、現在の「複数社に問い合わせて見積もりを取らないと比較できない」状態から、市場の透明性が大きく改善する見通しです。実装時期や詳細は今後の進捗を注視する必要がありますが、業界の方向性として手数料の制度的開示が進んでいる点は、契約検討時の前提知識として押さえておく価値があります。
5. 公的支援機関と相談窓口——「業界外」の選択肢を持つ重要性
5-1. 事業承継・引継ぎ支援センター——全国47都道府県・相談無料
中小企業庁が全国47都道府県に設置している「事業承継・引継ぎ支援センター」は、相談無料・秘密厳守を原則とし、親族内承継からM&Aまでをワンストップで支援する公的機関です。同センターは令和5年度に事業引継ぎ成約件数2,132件という実績を持ち(出典:M&A支援機関協会等、公的データ参照)、令和6年度の事業評価報告書も2025年に公表されています。
同センターの主たる役割は相談・初期マッチング支援・公的支援策の案内であり、マッチング後の実務(企業価値評価、契約書作成、クロージング支援等)については連携する民間仲介会社が担当する形式が一般的です。その場合、手数料は連携先の民間機関が徴収するため、「相談自体は無料だが、最終的な仲介手数料は別途発生する場合がある」点を理解した上で活用することが大切です。
譲渡対価が小規模で民間仲介会社の最低手数料負担が重いケース、地元密着で承継先を探したいケース、まずは事業承継の選択肢全体を整理したいケースなどに、最初の相談先として有効です。
5-2. M&A支援機関登録制度 情報提供窓口
中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」は、登録機関の不適切行為(手数料トラブル、説明義務違反、利益相反行為等)に関する情報提供を秘密厳守で受け付ける窓口を設置しています(出典:中小企業庁 M&A支援機関登録制度 不適切行為情報提供窓口)。
個別紛争の直接解決窓口ではありませんが、提供された情報は業界の健全化や悪質な業者の指導に活用される仕組みです。仲介契約締結後にトラブルが発生した場合、まず弁護士に相談しつつ、並行して当該窓口への情報提供を行うことが有効な選択肢となります。
5-3. 一般社団法人 M&A支援機関協会——業界自主規制団体
一般社団法人 M&A支援機関協会は、M&A業界の自主規制を担う団体で、会員となっている支援機関に関する手数料トラブル等の相談を受け付け、調査等を通じた問題解決をサポートしています。中小企業庁ガイドラインに準拠した自主規制の枠組みを業界内で運用する役割を担っています。
仲介契約を検討する仲介会社が、同協会の正会員であるかどうかを公式サイトで確認することは、最低限の信頼性チェックとして推奨されます。
5-4. 弁護士・税理士・公認会計士等への相談——「業界外」の専門家視点
仲介契約書の条項精査、手数料の算定基準の妥当性評価、M&A後の税務処理(譲渡益課税・退職金スキーム等)については、弁護士・税理士・公認会計士・司法書士・行政書士等の各専門家に必ずご相談ください。仲介会社からの説明だけで契約に至らず、契約締結前に「業界外」の独立した専門家視点を入れることが、最終的な手残りを守る最も有効な手段です。
6. 契約前に必ず確認すべき5つのチェックポイント
6-1. (1)手数料体系の全項目開示——4要素 × 書面確認
仲介会社の公式サイトおよび提案書で、以下の4要素がすべて書面で開示されているかを確認します。
- レーマン方式の料率テーブル(階層別の料率)
- 料率を掛ける基準額の定義(株式譲渡対価/企業価値/移動総資産のいずれか)
- 最低手数料の金額
- 着手金・月額報酬・中間金の有無、金額、発生タイミング、成功報酬への充当ルール
これらが公式サイトで開示されていない、提案書でも明記されていない場合、ガイドライン第3版の説明義務違反の可能性があります。書面開示を求めても応じない仲介会社との契約は、原則として避けるべきでしょう。
6-2. (2)自社の譲渡対価レンジと最低手数料の整合性
自社の譲渡対価想定レンジ(例:1億円〜3億円)に対して、仲介会社の最低手数料が譲渡対価想定レンジの下限の20%を超える水準であれば、その仲介会社は自社の規模に対して過剰なコスト構造である可能性が高いと判断できます。
譲渡対価1億円未満の小規模M&A(いわゆるスモールM&A)の場合は、最低手数料500万円〜1,000万円程度の登録機関、もしくは事業承継・引継ぎ支援センター経由の支援を最初に検討することが現実的です。
6-3. (3)レーマン方式の基準額——書面で「○○基準」と明記
口頭説明だけで「レーマン方式です」と言われても、基準額が3類型のどれかは判別できません。提案書または契約書(ドラフト)に、「成功報酬の算定基準は株式譲渡対価とします」「成功報酬の算定基準は移動総資産(時価ベース)とします」といった形で、基準額の定義を明確に記載してもらうことが必須です。
契約書ドラフトを受け取った段階で、弁護士に条項全体のリーガルチェックを依頼することを強く推奨します。手数料条項だけでなく、契約解除条項、専任条項、報告義務条項なども含めて精査が必要です。
6-4. (4)成功報酬以外の追加費用の有無と総額
「着手金無料」「完全成功報酬制」と謳う仲介会社でも、実費精算項目(弁護士費用、税理士費用、印紙税、登記費用、デューデリジェンス費用、評価レポート作成費用等)が別途発生するケースがあります。
これら実費精算項目が「依頼者負担」「仲介会社負担」「折半」のどれに整理されているかを、契約前に書面で確認します。M&A成立までの想定総コスト(成功報酬+実費精算)を、仲介会社に試算書として提出してもらうことが、想定外の追加請求を防ぐ最も確実な方法です。
6-5. (5)担当者の専門性と業界実績——資格・経験年数・成約実績の3点
ガイドライン第3版の17項目説明義務に含まれる「担当者の保有資格・経験年数・成約実績」は、手数料の妥当性を判断する重要な要素です。同じ手数料水準であっても、担当者の専門性によってM&A成立確率と最終的な譲渡対価が大きく変わるためです。
具体的には、担当者の保有資格(中小企業診断士、公認会計士、税理士、宅地建物取引士など)、業界経験年数、自社の業種における類似案件の成約実績の3点を、提案書または面談時に必ず確認します。手数料の安さだけで選ばず、「この担当者に任せて自社の事業価値を最大化できるか」という総合判断が、最終的な手残りに最も大きな影響を与えます。
結び——手数料の不透明さは、依頼者の知識で打破できる
M&A仲介手数料が「わかりにくい」のは、料率の問題ではなく、「最低手数料」と「レーマン方式の基準額」という2つの仕組みが、契約前に十分に説明されてこなかったことに起因します。中小企業庁が2024年8月の中小M&Aガイドライン(第3版)と2025年8月の市場改革プランで進めている透明化の方向性は、依頼者が知識武装することで、より大きな効果を発揮します。
本記事で整理した4要素(最低手数料/料率テーブル/基準額/追加費用)と5つのチェックポイントは、いずれも仲介会社に対して「書面での開示」を求めることが前提です。書面開示を渋る仲介会社、説明が口頭のみで終わる仲介会社、契約書ドラフトを契約直前まで見せない仲介会社は、ガイドライン第3版の説明義務との整合性に課題がある可能性が高く、慎重な判断が必要です。
株式会社 日本財務戦略センターでは、中小企業のオーナー経営者の皆様の事業承継・M&A・事業譲渡について、売り手の利益最大化とリスク回避を最優先するセカンドオピニオン的な立場でご相談を承っています。手数料体系のご質問はもちろん、複数の仲介会社からの提案書比較、契約書ドラフトのリーガルチェック手配(連携弁護士による)、譲渡対価規模に応じた最適な相談先の選び方まで、弁護士・税理士・公認会計士・司法書士・行政書士等の各専門家と連携しながら、最適な進め方をご一緒に検討します。
当社は完全成功報酬制を採用しており、ご相談は初回無料・秘密厳守です。判断の撤回は最後まで自由ですので、検討段階のお問い合わせも遠慮なくお寄せください。
よくあるご質問(FAQ)
関連ツールと参考資料
関連 日本財務戦略センター(JFSC) ツール
- M&A・事業承継 10分セルフ診断 — 4択×15問・約10分で「自社の現在地」と仲介会社選定の論点を整理
- M&A 手数料・手残り比較 — レーマン方式の3基準額(株式譲渡対価/企業価値/移動総資産)と業界相場を反映した手残り試算
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- M&Aの流れの一例 — 仲介契約締結からクロージングまでの標準的なプロセス
主な一次ソース・参考資料
- 中小M&Aガイドライン(第3版) 令和6年8月 中小企業庁(PDF全文)
- 中小M&Aガイドライン改訂プレスリリース(経済産業省・2024年8月30日)
- 中小M&Aガイドライン改訂(第3版)概要資料(経済産業省・PDF)
- 中小M&A市場改革プラン(中間とりまとめ) 2025年8月5日 中小企業庁
- 中小M&A市場改革プラン PDF本文(経済産業省)
- 中小企業庁 事業承継・引継ぎ支援センター(全国47都道府県・相談無料)
- 事業承継・引継ぎ支援センター 令和6年度事業評価報告書(PDF)
- 中小企業庁 M&A支援機関登録制度 不適切行為情報提供窓口
- 一般社団法人 M&A支援機関協会(業界自主規制団体)
- 日本M&Aセンター 手数料・料金について(公式)
- M&Aキャピタルパートナーズ 手数料ページ(公式)
- ストライク 報酬・料金体系(公式)
守秘義務と免責事項
本記事は、公表されている一次ソース(中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」、中小企業庁「中小M&A市場改革プラン(中間とりまとめ)」、事業承継・引継ぎ支援センター公開資料、上場仲介会社3社の公式手数料ページ、一般社団法人 M&A支援機関協会公開情報)に基づき、株式会社 日本財務戦略センター(中小企業庁 M&A 支援機関 登録、一般社団法人 M&A 支援機関協会 正会員)が独自の視点で構成・整理した解説記事です。記載内容は記事公開時点(2026年4月)のものであり、各社の手数料体系・公的制度の運用は変更される可能性があります。
本記事内のシミュレーション数値は、レーマン方式の典型的料率テーブルに基づく単純試算であり、実際の取引における手数料は仲介契約書の条項に従って算定されます。個別の手数料水準の妥当性評価、仲介契約書のリーガルチェック、M&A後の譲渡益課税・退職金スキーム等の税務処理、クロスボーダー要素を含む案件の規制対応については、必ず弁護士・税理士・公認会計士・司法書士・行政書士等の各専門家にご相談ください。本稿はあくまで、業界構造・公的制度動向・公開情報に基づく一般的な解説を目的としています。
➡ 関連検証記事:有報・IRデータで検証:M&A仲介コンサルタントの「年収2,000万超」と「高い手数料」は本当か
【付録】M&A 支援機関協会 正会員一覧と苦情・通報窓口(2026年5月13日現在|クリックで展開)
本付録は、M&A 業界の自主規制機関である M&A 支援機関協会(旧 M&A 仲介協会)の正会員 231 社、および苦情・通報窓口の一覧です。
出典:M&A 支援機関協会公式サイト(2026年5月13日現在)。
特定事業者リスト閲覧資格保有 118 社
業界の自浄作用に積極参加し、不適切な譲り受け側事業者情報を協会内で共有する「特定事業者リスト」の閲覧資格を持つ M&A 支援機関協会 会員 118 社です(弊社・株式会社日本財務戦略センターも本リストに含まれます)。
| ABNアドバイザーズ株式会社 | AIdeaM&AAdvisory株式会社 | Byside株式会社 | CTF株式会社 |
| DANコンサルティング株式会社 | Enimprovement栄合同会社 | LINK株式会社 | M&ALead株式会社 |
| M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 | M&Aロイヤルアドバイザリー株式会社 | NBR合同会社 | NKGRコンサルティング株式会社 |
| NOBUNAGAサクセション株式会社 | S&G株式会社 | SBI辻・本郷M&A株式会社 | TSUNAGU株式会社 |
| あがたグローバルコンサルティング株式会社 | かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社 | かがやきM&A株式会社 | ひまわりパートナーズ株式会社 |
| みさわ財産コンサルティング株式会社 | みつきコンサルティング株式会社 | みらいアーク株式会社 | アイアールアイM&Aコンサルティング株式会社 |
| アカツキパートナーズ株式会社 | アクタスコンサルティング株式会社 | インクグロウ株式会社 | インテグループ株式会社 |
| エムレイス株式会社 | オリックス株式会社 | クレジオ・パートナーズ株式会社 | グローウィン・パートナーズ株式会社 |
| グローバリューパートナーズ株式会社 | ジャパンM&Aソリューション株式会社 | セレンディップ・フィナンシャルサービス株式会社 | ビジネスサクセション株式会社 |
| ビズキューブ・コンサルティング株式会社 | ファイブ・アンド・ミライアソシエイツ株式会社 | ブティックス株式会社 | ブルーバード合同会社 |
| 三菱地所リアルエステートサービス株式会社 | 中之島キャピタル株式会社 | 九州M&Aアドバイザーズ株式会社 | 合同会社アジュール総合研究所 |
| 名南M&A株式会社 | 有限会社インレット | 有限会社長野県M&Aセンター | 株式会社ACN経営研究所 |
| 株式会社AGSコンサルティング | 株式会社CBヘルスケア | 株式会社CCイノベーション | 株式会社CINCCapital |
| 株式会社LifeHack | 株式会社M&AProperties | 株式会社M&Aエグゼクティブパートナーズ | 株式会社M&Aクラウド |
| 株式会社M&Aグローバルキャピタル | 株式会社M&Aコンサルティング | 株式会社M&Aフォース | 株式会社M&Aプライムグループ |
| 株式会社M&Aベストパートナーズ | 株式会社M&A会計ファイナンス | 株式会社M&A承継機構 | 株式会社M&A総合研究所 |
| 株式会社MJSM&Aパートナーズ | 株式会社NEWOLDCAPITAL | 株式会社OAGコンサルティング | 株式会社SECURITYBRIDGE |
| 株式会社Ssimaキャピタル | 株式会社TBC | 株式会社WealthLead | 株式会社fundbook |
| 株式会社さかい経営センター | 株式会社たすきコンサルティング | 株式会社みどり未来パートナーズ | 株式会社みらい共創アドバイザリー |
| 株式会社アシブネ | 株式会社ウィット | 株式会社ウィルゲート | 株式会社エグゼブリッジ |
| 株式会社オンデック | 株式会社サスガキャピタルパートナー | 株式会社シードアドバイザリー | 株式会社ストライク |
| 株式会社スリーエスコンサルティング | 株式会社ネクストM&Aパートナーズ | 株式会社ハレバレ | 株式会社バトンズ |
| 株式会社ヒルストン | 株式会社フォーバル | 株式会社プレックス | 株式会社マネジメント・スタッフ |
| 株式会社メディカル・アドバイザーズ | 株式会社ユニコン | 株式会社ユーザーサービス | 株式会社レコフ |
| 株式会社三井住友銀行 | 株式会社三菱UFJ銀行 | 株式会社事業承継パートナーズ | 株式会社事業承継通信社 |
| 株式会社佐賀銀行 | 株式会社倉富佐原M&A事務所 | 株式会社北海道総合経営研究所 | 株式会社大垣共立銀行 |
| 株式会社日光コンサルティング | 株式会社日本M&Aセンター | 株式会社日本提携支援 | 株式会社日本経営 |
| 株式会社日本財務戦略センター | 株式会社日税経営情報センター | 株式会社矢橋コンサルティング | 株式会社経営承継支援 |
| 株式会社船井総研あがたFAS | 株式会社諸井会計 | 株式会社青山財産ネットワークス | 株式会社HCフィナンシャル・アドバイザー |
| 瀬戸内FAS株式会社 | 総合メディカル株式会社 |
M&A 支援機関協会 正会員 113 社
正会員として M&A 支援機関協会に加盟する 113 社です。
| AggregatorJapan株式会社 | FrontierM&APartners株式会社 | Kingsmancapitalpartners株式会社 | RSM汐留パートナーズ株式会社 |
| あおもり創生パートナーズ株式会社 | いわぎんリサーチ&コンサルティング株式会社 | さくら経営支援株式会社 | しんせい事業承継株式会社 |
| まごころM&Aパートナーズ株式会社 | アアクスグループ株式会社 | アエリアコンサルティング株式会社 | アドバンスト・ビジネス・ダイレクションズ株式会社 |
| アナタの財務部長合同会社 | ウーファ合同会社 | エヌ・シー・アドバイザリー合同会社 | エベレディア株式会社 |
| クレアスト株式会社 | シンプルフォーム株式会社 | タツノコ資産形成株式会社 | ニューアイランド株式会社 |
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- M&A 支援機関協会 苦情受付窓口
→ https://www.maa-a.or.jp/inquiry/ - M&A 支援機関協会 不適切な譲受け事業者 情報受付窓口
→ https://www.maa-a.or.jp/inappropriate/ - 中小企業庁 事業環境部 財務課
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→ https://ma-shienkikan.go.jp/inappropriate-cases
※本リストは 2026年5月13日現在の情報です。最新は M&A 支援機関協会 会員一覧 および 特定事業者リスト をご参照ください。
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📅 本記事の情報基準日
本記事は 2025年8月11日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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