2026.07.17 トラブル・売り手防御 事業承継

倒産5,335件・後継者難264件が過去最多——「社長が倒れたら会社が消える」前に

倒産5,335件・後継者難264件が過去最多、要因の約85.6%が代表者の健康

2026年上半期(1〜6月)の企業倒産は5,335件にのぼり、前年同期比6.6%増で4年連続の増加となりました(東京商工リサーチ調べ)。2年連続で5,000件を超え、コロナ後の「平時の水準」がすっかり切り上がった格好です。

ただ、総数の増加以上に私たちが注視しているのは、その内訳の質です。今回の集計では、物価高倒産(556件)・人手不足倒産(227件)がいずれも半期ベースで過去最多を更新し、そして——後継者難倒産が264件と、2013年の集計開始以降で過去最多を記録しました。

この記事では、倒産統計の全体像を確認したうえで、「後継者難」という項目が私たちM&A・事業承継の現場に突きつけている本質を、3つの層に分けて整理します。数字を煽るためではなく、まだ動ける経営者ほど、この数字を「他人事」として読んでいるという現実をお伝えするためです。

この記事の要点(3行)

  • 2026年上半期の企業倒産は5,335件で4年連続増。うち後継者難倒産は264件と過去最多を更新しました。
  • 後継者難倒産の約85.6%(226件)は「代表者の死亡・体調不良」。社長が倒れた瞬間に事業が止まる“スピード倒産”に近いのが実態です。
  • M&A・第三者承継は、社長が健康なうちほど良い条件で選べます。追い込まれる前の情報収集と磨き上げが、会社の残り方を分けます。
2026年上半期の企業倒産は5,335件、後継者難倒産は264件で過去最多、その約85.6%が代表者の死亡・体調不良
出典:東京商工リサーチ「2026年上半期 全国企業倒産集計」および「後継者難倒産」動向をもとに日本財務戦略センター作成

第1層:数字が示す「倒産の質」の変化

2026年上半期の主な倒産要因を並べると、次のようになります(東京商工リサーチ)。

要因件数(2026年上半期)特徴
企業倒産 全体5,335件(前年比+6.6%)4年連続増、2年連続5,000件超
物価高倒産556件半期ベース過去最多を大幅更新
人手不足倒産227件過去最多を更新
後継者難倒産264件(前年比+14.7%)集計開始(2013年)以降で過去最多

物価高・人手不足・後継者難。この3つは一見バラバラに見えますが、いずれも「経営の体力」がじわじわ削られた末に、最後のひと押しで倒れるという共通の構造を持っています。借入金利の上昇(日銀は2026年6月に政策金利を1.00%へ引き上げ、31年ぶりの水準となりました)も、この体力戦にボディブローのように効いてきます。

なかでも後継者難倒産は、本来なら「倒産」という結末を避けられたはずの類型です。事業そのものは回っている、取引先もいる、それでも承継の受け皿がないために事業を畳む——ここに、M&Aや第三者承継が果たせる役割の余地が最も大きく残されています。

第2層:なぜ「社長の健康」が、そのまま会社の寿命になるのか

後継者難倒産264件の中身を見ると、要因の内訳に厳しい現実が表れています。代表者の死亡・体調不良を要因とするものが226件(約85.6%)を占め、その内訳は死亡119件、体調不良107件。いずれも前年から約15%増えています。

つまり後継者難倒産の大半は、「後継者を探していたが見つからなかった」という緩やかな話ではなく、社長が突然倒れ、その瞬間に事業が止まったというスピード倒産に近いのです。

なぜ、社長一人の健康が会社の寿命に直結してしまうのでしょうか。現場で繰り返し見えてくるのは、次のような「属人経営の集中」です。

これらは、業績が良い会社ほど「回っているのだから今のままでいい」と後回しにされがちです。しかし後回しにできる前提は、社長の健康が続くことという、コントロールしきれない一点に賭けているに過ぎません。264件という過去最多の数字は、その賭けが外れた会社の集計だと私たちは受け止めています。

第3層:打ち手——「困ってから」では、選択肢が消える

ここで強調したいのは、M&Aや第三者承継は「元気なうちにしか、良い条件で選べない」ということです。社長が倒れてからの持ち込み案件は、買い手から見れば「事業継続リスクの高い会社」であり、価格も条件も大きく不利になります。逆に、社長が現役で引き継ぎに立ち会えるうちに動けば、のれん(社長の信用や取引関係)を価値として買い手に引き継げます。

「まだ早い」と感じる経営者にこそ、準備として始められることがあります。

  1. 磨き上げ(見える化):属人化した信用・情報・権限を、少しずつ資料と仕組みに移す。決算内容、主要取引先との契約、許認可の状況を整理しておくだけで、いざというときの選択肢が広がります。
  2. 健康なうちの初動相談:M&Aや承継は、契約より前の「情報収集」と「相場観の把握」に時間がかかります。売る・売らないを決める前段として、早めに情報だけ持っておく経営者が、結果的に良い判断をされています。
  3. 公的支援の活用:国も事業承継・M&Aを後押ししています。中小企業の「事業承継・M&A補助金」は2026年も公募されており(第15次公募の申請受付は2026年7月24日まで)、事業承継促進枠・PMI推進枠・廃業再チャレンジ枠など、局面に応じた支援が用意されています。制度は毎年見直されるため、最新の公募要領を確認することをおすすめします。
  4. 相手選びは慎重に:一方で、M&A仲介業界には残念ながら中立性を欠く事業者も存在します。相手選びの見極めについては、別記事「M&A仲介の迷惑電話・悪質業者の見極め方」もあわせてご覧ください。焦って持ち込まれた案件ほど、こうしたリスクにさらされやすくなります。

また、いざ承継・M&Aを本格的に検討する段階では、令和8年度税制改正(ミニマムタックス強化)と「売り時」や、M&A仲介の仕組みもあわせてご確認いただくと、判断の材料が揃います。

まとめ:264という数字を「まだ動ける自分」の話として読む

2026年上半期の倒産5,335件、後継者難264件、そのうち約9割が代表者の健康——これらの数字は、遠い誰かの不運ではありません。「準備を先送りにできる」と考えている、いま元気な経営者の未来図でもあります。

事業承継やM&Aは、追い込まれてから始めるものではなく、選択肢が豊富なうちに情報を持っておくものです。私たち日本財務戦略センターは、売る・売らないの結論を急がせることなく、経営者が落ち着いて判断できる材料を揃えるお手伝いをしています。「うちはまだ大丈夫」と感じている今こそ、一度立ち止まって、会社が自分一人に依存していないかを点検していただければと思います。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務・投資判断を保証するものではありません。実際のご判断にあたっては専門家にご相談ください。

公開日: 2026年7月17日 / 最終更新日: 2026年7月17日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する5問の計15問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。
本記事Q11. 2026年上半期の企業倒産件数はどれくらいですか?
A. 東京商工リサーチによると5,335件で、前年同期比+6.6%、4年連続の増加です。2年連続で5,000件を超えています。
本記事Q12. 後継者難による倒産はどのくらい増えていますか?
A. 2026年上半期は264件で、前年同期比+14.7%。2013年の集計開始以降で過去最多となりました。
本記事Q13. 後継者難倒産の主な原因は何ですか?
A. 約85.6%(226件)が「代表者の死亡・体調不良」です。内訳は死亡119件、体調不良107件で、いずれも前年から約15%増えています。
本記事Q14. 後継者がいない会社は、倒産するしかないのですか?
A. いいえ。事業そのものが回っているのであれば、M&Aや第三者への承継で会社を残せる余地は大きく残っています。ただし、社長が健康で引き継ぎに立ち会えるうちほど、条件よく引き継げます。
本記事Q15. 事業承継やM&Aに公的な支援はありますか?
A. 中小企業庁の「事業承継・M&A補助金」などがあります。第15次公募の申請受付は2026年7月24日までです。制度は毎年見直されるため、最新の公募要領を確認してください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2026年7月17日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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