2026年上半期(1〜6月)の企業倒産は5,335件にのぼり、前年同期比6.6%増で4年連続の増加となりました(東京商工リサーチ調べ)。2年連続で5,000件を超え、コロナ後の「平時の水準」がすっかり切り上がった格好です。
ただ、総数の増加以上に私たちが注視しているのは、その内訳の質です。今回の集計では、物価高倒産(556件)・人手不足倒産(227件)がいずれも半期ベースで過去最多を更新し、そして——後継者難倒産が264件と、2013年の集計開始以降で過去最多を記録しました。
この記事では、倒産統計の全体像を確認したうえで、「後継者難」という項目が私たちM&A・事業承継の現場に突きつけている本質を、3つの層に分けて整理します。数字を煽るためではなく、まだ動ける経営者ほど、この数字を「他人事」として読んでいるという現実をお伝えするためです。
この記事の要点(3行)
- 2026年上半期の企業倒産は5,335件で4年連続増。うち後継者難倒産は264件と過去最多を更新しました。
- 後継者難倒産の約85.6%(226件)は「代表者の死亡・体調不良」。社長が倒れた瞬間に事業が止まる“スピード倒産”に近いのが実態です。
- M&A・第三者承継は、社長が健康なうちほど良い条件で選べます。追い込まれる前の情報収集と磨き上げが、会社の残り方を分けます。

第1層:数字が示す「倒産の質」の変化
2026年上半期の主な倒産要因を並べると、次のようになります(東京商工リサーチ)。
| 要因 | 件数(2026年上半期) | 特徴 |
|---|---|---|
| 企業倒産 全体 | 5,335件(前年比+6.6%) | 4年連続増、2年連続5,000件超 |
| 物価高倒産 | 556件 | 半期ベース過去最多を大幅更新 |
| 人手不足倒産 | 227件 | 過去最多を更新 |
| 後継者難倒産 | 264件(前年比+14.7%) | 集計開始(2013年)以降で過去最多 |
物価高・人手不足・後継者難。この3つは一見バラバラに見えますが、いずれも「経営の体力」がじわじわ削られた末に、最後のひと押しで倒れるという共通の構造を持っています。借入金利の上昇(日銀は2026年6月に政策金利を1.00%へ引き上げ、31年ぶりの水準となりました)も、この体力戦にボディブローのように効いてきます。
なかでも後継者難倒産は、本来なら「倒産」という結末を避けられたはずの類型です。事業そのものは回っている、取引先もいる、それでも承継の受け皿がないために事業を畳む——ここに、M&Aや第三者承継が果たせる役割の余地が最も大きく残されています。
第2層:なぜ「社長の健康」が、そのまま会社の寿命になるのか
後継者難倒産264件の中身を見ると、要因の内訳に厳しい現実が表れています。代表者の死亡・体調不良を要因とするものが226件(約85.6%)を占め、その内訳は死亡119件、体調不良107件。いずれも前年から約15%増えています。
つまり後継者難倒産の大半は、「後継者を探していたが見つからなかった」という緩やかな話ではなく、社長が突然倒れ、その瞬間に事業が止まったというスピード倒産に近いのです。
なぜ、社長一人の健康が会社の寿命に直結してしまうのでしょうか。現場で繰り返し見えてくるのは、次のような「属人経営の集中」です。
- 信用の集中:金融機関との関係、主要取引先との商談が、すべて社長個人の信頼で成り立っている。社長が動けなくなった瞬間に、与信も受注も止まる。
- 権限の集中:実印・銀行印・重要契約の意思決定が社長に一極集中し、代わりに判を押せる人がいない。
- 情報の集中:仕入れ先の掛け率、図面、レシピ、顧客の事情——利益の源泉が社長の頭の中にしかなく、標準化・文書化されていない。
- 親族が継がない前提の未整理:子は別の道を歩んでおり、「いつか話す」まま先送りされている。
これらは、業績が良い会社ほど「回っているのだから今のままでいい」と後回しにされがちです。しかし後回しにできる前提は、社長の健康が続くことという、コントロールしきれない一点に賭けているに過ぎません。264件という過去最多の数字は、その賭けが外れた会社の集計だと私たちは受け止めています。
第3層:打ち手——「困ってから」では、選択肢が消える
ここで強調したいのは、M&Aや第三者承継は「元気なうちにしか、良い条件で選べない」ということです。社長が倒れてからの持ち込み案件は、買い手から見れば「事業継続リスクの高い会社」であり、価格も条件も大きく不利になります。逆に、社長が現役で引き継ぎに立ち会えるうちに動けば、のれん(社長の信用や取引関係)を価値として買い手に引き継げます。
「まだ早い」と感じる経営者にこそ、準備として始められることがあります。
- 磨き上げ(見える化):属人化した信用・情報・権限を、少しずつ資料と仕組みに移す。決算内容、主要取引先との契約、許認可の状況を整理しておくだけで、いざというときの選択肢が広がります。
- 健康なうちの初動相談:M&Aや承継は、契約より前の「情報収集」と「相場観の把握」に時間がかかります。売る・売らないを決める前段として、早めに情報だけ持っておく経営者が、結果的に良い判断をされています。
- 公的支援の活用:国も事業承継・M&Aを後押ししています。中小企業庁の「事業承継・M&A補助金」は2026年も公募されており(第15次公募の申請受付は2026年7月24日まで)、事業承継促進枠・PMI推進枠・廃業再チャレンジ枠など、局面に応じた支援が用意されています。制度は毎年見直されるため、最新の公募要領を確認することをおすすめします。
- 相手選びは慎重に:一方で、M&A仲介業界には残念ながら中立性を欠く事業者も存在します。相手選びの見極めについては、別記事「M&A仲介の迷惑電話・悪質業者の見極め方」もあわせてご覧ください。焦って持ち込まれた案件ほど、こうしたリスクにさらされやすくなります。
また、いざ承継・M&Aを本格的に検討する段階では、令和8年度税制改正(ミニマムタックス強化)と「売り時」や、M&A仲介の仕組みもあわせてご確認いただくと、判断の材料が揃います。
まとめ:264という数字を「まだ動ける自分」の話として読む
2026年上半期の倒産5,335件、後継者難264件、そのうち約9割が代表者の健康——これらの数字は、遠い誰かの不運ではありません。「準備を先送りにできる」と考えている、いま元気な経営者の未来図でもあります。
事業承継やM&Aは、追い込まれてから始めるものではなく、選択肢が豊富なうちに情報を持っておくものです。私たち日本財務戦略センターは、売る・売らないの結論を急がせることなく、経営者が落ち着いて判断できる材料を揃えるお手伝いをしています。「うちはまだ大丈夫」と感じている今こそ、一度立ち止まって、会社が自分一人に依存していないかを点検していただければと思います。
出典
- 東京商工リサーチ「2026年上半期『後継者難』倒産」(全国企業倒産集計 上半期動向)
- 日本銀行 金融政策決定会合(2026年6月・政策金利1.00%)
- 中小企業庁「事業承継・M&A補助金」公式サイト(第15次公募)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務・投資判断を保証するものではありません。実際のご判断にあたっては専門家にご相談ください。
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よくあるご質問(FAQ)
📅 本記事の情報基準日
本記事は 2026年7月17日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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