3行まとめ
- 小規模企業共済は、独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営する国の制度で、2025年3月末時点で在籍169万人・資産運用残高約11兆9,195億円という規模に達しています。令和6年度の共済金支給額は約6,041億円・1件あたり平均1,144万円と、経営者の退職金制度として実体的に機能しています。
- 共済金等の支給を受ける権利は、小規模企業共済法 第15条により「譲渡し・担保提供・差押え」が原則として禁止されています。例外は、相続による承継、通算申出時の権利譲渡、そして国税滞納処分(地方税を含む)の3つに限定され、自己破産・個人再生でも保全されることが破産法第34条第3項第2号により明文で担保されています。
- 株式譲渡型 M&A や事業承継の場面では、共済金は貸借対照表に出てこない簿外資産でありながら、解約返戻金は掛金の80〜120%(240か月超で元本超え)という実質的な経済価値を持ちます。売り手は積極的に主張すべき資産であり、税務上は受取方法(一括・分割・任意解約)で扱いが大きく変わるため、必ず顧問税理士にご確認ください。
はじめに——「節税商品」を超えた、経営者のセーフティネットとして
小規模企業共済は、所得控除(掛金全額が小規模企業共済等掛金控除の対象)という節税効果が広く知られており、加入の動機としてもこの点が前面に出ることが多い制度です。一方で、本記事で焦点を当てたいのは、節税効果の裏側にある「法律で守られた経営者の退職金原資」という側面です。
具体的には、共済金等の支給を受ける権利は、小規模企業共済法 第15条により譲渡・担保提供・差押えが原則禁止されており、自己破産や個人再生の局面でも保全される——この法的強度こそが、長年事業を続けてきたオーナー経営者にとって、いざという局面で大きな意味を持ちます。さらに、株式譲渡型 M&A の局面では、貸借対照表に表れない簿外資産として企業価値評価で見落とされやすいという、実務的に重要な論点も併せ持ちます。
本記事では、制度概況、差押禁止の法的根拠と例外、自己破産・個人再生での扱い、M&A・事業承継における簿外資産としての扱い、税務上の取扱い、そして代表者変更時の手続きまでを、最新の一次ソース(中小企業基盤整備機構・中小企業庁・国税庁・e-Gov 法令データベース)に基づいて整理します。
1. 小規模企業共済とは何か——169万人が頼る「経営者の退職金制度」
1-1. 制度の目的と運営主体
小規模企業共済は、小規模企業共済法(昭和40年法律第102号)に基づき、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する国の共済制度です。小規模企業の個人事業主や会社役員等が、事業の廃止・退任・退職などに備えて毎月掛金を積み立て、その後の生活資金として共済金を受け取ることを目的としています。
ひと言でいえば、「会社員の退職金や厚生年金に相当するセーフティネットを、自前で持ちにくい小規模企業の経営者層に対して国が用意した制度」と整理できます。
1-2. 加入要件——業種別の従業員数上限
加入できるのは、次のいずれかに該当する個人事業主・会社等の役員等です(中小企業庁および中小機構の公表資料より)。
- 常時使用する従業員の数が20人以下の、建設業・製造業・運輸業・サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)・不動産業・農業等を営む個人事業主または会社の役員
- 常時使用する従業員の数が5人以下の、商業(卸売業・小売業)・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む個人事業主または会社の役員
- 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
- 常時使用する従業員の数が20人以下の、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
- 弁護士法人・税理士法人等の士業法人の社員で、常時使用する従業員の数が5人以下のもの
- 上記の個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)
事業規模の上限を超えてからの新規加入はできませんが、加入後に従業員数が増えても、加入を継続することは可能です。創業初期から早めに加入しておくメリットの一つがここにあります。
1-3. 掛金——月1,000円から70,000円まで500円単位
掛金は月額1,000円から70,000円まで、500円単位で自由に設定できます。年払いも可能で、月額70,000円を年払いに切り替えれば年84万円までの掛金を、その年の課税所得から控除できる計算になります(小規模企業共済等掛金控除)。掛金の増額・減額は、加入後にも所定の手続きで変更可能です。
1-4. 制度規模——在籍169万人・資産11兆円超
中小機構の公表によれば、2025年3月31日時点で在籍人数は約169万人、資産運用残高は約11兆9,195億円という規模に達しています。令和6年度の共済金支給額は約6,041億円・1件あたり平均1,144万円・受給者の平均在籍年数は約18年です。中小企業庁の資料では、新規加入者の年齢構成は「41〜50歳」が最多で約3分の1を占め、平均年齢は48.8歳。在籍人数は平成25年以降増加傾向にあり、掛金収入が共済金等支給額を上回る状態が平成26年度以降継続しています。
1-5. 運用利回りと予定利率
制度の予定利率は1.0%に設定されています。令和6年度上半期(令和6年4月〜9月)の運用利回りは0.40%、加重平均利回りは0.92%という公表数値があります。さらに、運用結果に応じて支給される付加共済金の支給率は令和7年度で0.01047(令和7年3月31日 経済産業省告示第35号)。掛金の所得控除効果と合わせて考えると、純粋な利回り商品との単純比較ではなく、「節税+退職金原資+差押禁止」の三層構造として総合的に評価する性格の制度です。
2. 差押禁止財産としての法的強度——小規模企業共済法 第15条と「禁止の例外」
2-1. 民事執行法・破産法における「差押禁止財産」の位置付け
差押禁止財産とは、債権者が債務者の財産を差し押さえることが法令により禁止されている財産を指す概念です。一般法としての民事執行法・国税徴収法・破産法等が基本的な枠組みを定め、加えて個別の特別法が「この受給権は差し押さえできない」と明文で規定するパターンが多くあります。
身近な例では、生活に必要な家財道具、給与の一定割合、年金受給権、生命保険の解約返戻金請求権の一部、各種公的給付の受給権などが、それぞれの根拠法令により差押禁止または差押制限の対象とされています。小規模企業共済の共済金受給権も、この体系の中に位置付けられた「特別法による差押禁止財産」の一つです。
2-2. 小規模企業共済法 第15条の規定
小規模企業共済法 第15条第1項は、e-Gov 法令データベースで確認できる原文の趣旨をかみ砕くと、次のように整理できます。
ただし、(i) その権利が相続により承継されたものである場合、(ii) 第13条第2項の規定により通算の申出をしようとする者に対し、その申出をすることを条件として、当該通算の対象となる旧共済契約に係る共済金等の支給を受ける権利を譲り渡す場合、(iii) 国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りでない。
2-3. 「禁止の例外」3類型——ここを誤解すると致命的
条文の構造で重要なのは、「原則禁止」と「3つの例外」が明確に書き分けられている点です。実務上、特に注意すべき例外は(iii) 国税滞納処分(地方税の滞納処分も含む)です。これは、国税徴収法その他の滞納処分の例による処分が広く射程に入るため、税務上の滞納が発生している局面では、共済金受給権も差押えの対象となり得ます。
| 類型 | 内容 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 原則 | 共済金等の受給権は、譲渡・担保提供・差押えが禁止される。 | 通常の債権者からの差押えは不可。 |
| 例外(i) 相続承継 | 共済契約者が死亡し、相続により受給権が承継された場合。 | 承継後の譲渡等が一定の範囲で認められる。 |
| 例外(ii) 通算申出 | 第13条第2項に基づく通算申出を条件に、旧共済契約に係る受給権を譲渡する場合。 | 月数通算の手続上、必要な範囲での権利移転を認める趣旨。 |
| 例外(iii) 国税等滞納処分 | 国税滞納処分(その例による処分を含む)。地方税の滞納処分も含まれる。 | 滞納がある局面では差押え可能。「絶対に守られる」ではない点に注意。 |
2-4. 一般の退職金との比較——「特別法 vs 一般法」の差
会社員が受け取る退職金請求権は、民事執行法第152条により、原則として4分の3に相当する部分の差押えが禁止されています(裏返せば、4分の1までは差押え可能)。これに対して小規模企業共済の受給権は、小規模企業共済法という特別法により、原則として全額が差押禁止とされており、例外も限定的です。法的な保全強度は、一般的な退職金請求権よりも厚いと整理できます。
もちろん、個別事案における具体的な差押可否や手続上の論点は、債権の性質・差押命令の種類・滞納の有無など、複数の要素により判断が変わります。実務上の判断は必ず弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。
3. 自己破産・個人再生でも守られる——破産財団除外と清算価値ゼロ評価
3-1. 自己破産:差押禁止財産は破産財団から除外される
破産法第34条第1項は、破産者が破産手続開始時に有する一切の財産を破産財団とすると定めていますが、第3項で例外を列挙しています。第3項第2号は、「差し押さえることができない財産(民事執行法第131条第1号又は第2号に掲げる動産を除く)」を破産財団から除外することを明記しています。
小規模企業共済の共済金受給権は、上記のとおり小規模企業共済法 第15条により差押え禁止財産とされていますので、原則として破産財団に属しない財産に該当します。すなわち、自己破産の局面で廃業・共済脱退となっても、共済金そのものは管財人による換価処分の対象とならず、破産者の手元に残ることが、法律上の原則的取扱いとなります。
3-2. 個人再生:清算価値の計算上「0円」評価
個人再生手続では、再生計画における弁済額の下限として「清算価値」(仮にいま破産した場合に債権者へ配当できる金額)が設定されます。この清算価値の算定にあたって、差押禁止財産は計上対象とならないのが原則的な取扱いです。
つまり、小規模企業共済に多額の積立があっても、個人再生の弁済額の下限を計算する局面では、共済金受給権は0円として扱われることが想定されます。長年積み立ててきた退職金原資が、個人再生における弁済額の押し上げ要因にならないという意味で、経営者にとって極めて重要な保全機能です。
3-3. 例外と限界——専門家への相談が不可欠
もっとも、上記はあくまで原則的・一般的な整理です。実際には、税務上の滞納処分による差押えがすでに入っている場合、共済契約の状態(脱退済みかどうか・共済事由の発生時期など)、再生計画の組立て方、債権者構成など、個別事情により取扱いが変わり得ます。自己破産・個人再生の判断や手続きは、必ず弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。本稿は、制度の構造的な理解を目的とする一般的な解説にとどまります。
4. M&A・事業承継における小規模企業共済——「簿外資産」としての扱い
4-1. なぜ「簿外資産」になるのか——会計と税務の構造
小規模企業共済の掛金は、個人事業主の場合は所得税の小規模企業共済等掛金控除として、法人役員の場合は個人で所得控除を受ける形が基本です。会社の費用として損金処理されるわけではなく、また会社の資産として貸借対照表に計上されるものでもありません(共済契約者は個人であるため)。
この構造から、共済金の積立残高は、決算書(貸借対照表・損益計算書)上には現れません。法人税申告書の別表上で個人の所得控除との関係が示されることはあっても、企業の財務諸表だけを見ていては、共済の存在自体に気づきにくい性質があります。これがいわゆる「簿外資産」と呼ばれる所以です。
4-2. 解約返戻金の額——掛金の80〜120%
中小機構が公表している「解約手当金の額の算定方法」によれば、任意解約に係る解約手当金は、掛金納付月数に応じて掛金合計額の80%〜120%の範囲で算定されます。240か月(20年)以上の納付で100%超の水準に到達し、掛金納付月数が長くなるほど120%に近づく構造です。
逆に言えば、240か月未満の任意解約は元本割れリスクがあるということでもあります。解約のタイミング設計は、税務上の所得区分(後述)と合わせて慎重に検討すべきテーマです。
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 会計上の位置付け | 貸借対照表に計上されない簿外資産。決算書だけ見ても気づきにくい。 |
| 経済的価値 | 解約返戻金は掛金の80〜120%。240か月超で100%超。 |
| 買い手の視点 | 代表者個人の財産であり、株式譲渡対価には含まれないのが原則。 |
| 売り手の視点 | 役員退任に伴う共済金請求として、譲渡対価とは別の手取りを確保可能。 |
| 確認方法 | 共済金試算表(中小機構発行)を取得し、ファイナンシャル・アドバイザーや顧問税理士に共有。 |
4-3. 株式譲渡型 M&A 後の処理——役員退任→共済事由発生→共済金請求
株式譲渡型 M&A で、対象会社の代表者であった売り手オーナーが、譲渡後に役員を退任するケースを考えます。役員退任は小規模企業共済における共済事由(事業の廃止・退任等)の一つに該当し、共済金(または準共済金)の請求が可能となります。すなわち、株式譲渡対価とは別に、共済金として個人で受け取る原資を確保できる構造です。
これは買い手側にとっても整理しやすい構造です。共済契約は売り手個人と中小機構の契約であり、株式譲渡や事業譲渡の対象会社のバランスシートには現れません。買い手としては、譲渡対価の交渉対象外として整理される一方、売り手はこの簿外資産から得られる手取りを、譲渡対価とは別軸で計算しておくべきテーマとなります。
4-4. 掛金納付月数の通算——事由発生から1年以内の新資格取得が条件
中小機構の公表する「契約内容変更(掛金納付月数の通算)」によれば、共済事由の発生から1年以内に再び加入資格を満たす場合は、新たな契約として加入し直す際に、過去の掛金納付月数を通算することができます(同一人通算)。
たとえば、株式譲渡型 M&A で前会社の役員を退任した売り手が、その後1年以内に別会社(自身の関連会社や別事業)で要件を満たす役員等の地位に就く場合、過去の納付月数を引き継いで継続加入することが可能です。納付月数は、解約返戻金の率や予定利率の適用上重要な要素であり、再起動を考えている経営者にとって有利な仕組みです。具体的な手続きは、必ず登録取扱機関(金融機関等)または中小機構窓口にご確認ください。
4-5. 売り手は積極的にアピールすべき——簿外資産の見える化
M&A の交渉現場では、買い手側のアドバイザーが小規模企業共済の存在を見落とすケース、あるいは「決算書に出ない以上、価値評価の対象にしない」という整理で済ませるケースが現実に存在します。売り手側としては、自分の手取りを最大化するためにも、共済金試算表(中小機構が発行)を取り寄せ、譲渡対価交渉とは別軸の手取り原資として明示的に位置付けておくことが有効です。
もし、関与しているM&Aアドバイザーが小規模企業共済の経済価値や事務処理に十分な理解を持っていない場合、株式会社 日本財務戦略センターのような第三者によるセカンドオピニオンを併用することも、選択肢の一つとして検討に値します。
5. 共済金の税務——受取方法で手取りが大きく変わる
5-1. 一括受取——退職所得扱い
共済事由(廃業・退任・死亡等)に基づく共済金を一括で受け取る場合、原則として退職所得として課税されます。退職所得は、退職所得控除(勤続年数に応じて計算される控除枠)を差し引いたうえで、さらに2分の1を乗じた金額に対して所得税・住民税が課される、優遇度の高い課税方式です。
長年積み立ててきた共済金を一括で受け取る場合、退職所得控除の効果により、税負担が大幅に軽減される設計となっています。M&A や廃業に伴う退任のタイミングで一括受取を選ぶケースが多いのは、この税務上のメリットが大きいことが理由の一つです。
5-2. 分割受取——公的年金等の雑所得扱い
分割受取を選択した場合は、公的年金等の雑所得として課税されます。受取年に応じて公的年金等控除が適用され、他の年金収入との合算で総合課税の対象となります。生活設計上、退職後の毎月のキャッシュフローを安定させたい場合に向く選択肢ですが、税負担の総額は一括受取と異なる計算になるため、設計時には顧問税理士に試算を依頼することが重要です。
5-3. 一括・分割併用——按分課税
共済金の一定部分を一括で、残りを分割で受け取る併用受取も選択可能です。この場合は、一括部分について退職所得課税、分割部分について公的年金等の雑所得課税という、それぞれの按分計算が行われます。生涯の手取りキャッシュフロー設計と税負担の最適化を組み合わせる、柔軟な選択肢となります。
5-4. 任意解約——65歳の境目で課税扱いが変わる
共済事由ではなく、加入者の任意解約により解約手当金を受け取る場合は、年齢により所得区分が変わります。65歳以上は退職所得、65歳未満は一時所得として課税されるのが基本的な取扱いです。これは国税庁の照会文書(「法人成りにより支給を受ける小規模企業共済契約の一時金の所得区分」)でも整理されている内容です。
一時所得の場合は、特別控除50万円を差し引いた金額の2分の1が総合課税の対象となるため、退職所得とは計算の仕組みが異なります。任意解約のタイミング設計(特に65歳前後)は、税負担差が大きく出るため、慎重な検討が必要です。
5-5. 法人成りや事業承継のタイミングでの解約・継続判断
個人事業主から法人成りを行う、あるいは株式譲渡型 M&A により役員を退任する、といったタイミングは、いずれも共済契約の継続・解約・通算の選択肢が生じる重要な分岐点です。受取方法の選択ひとつで手取り額が数百万円規模で変動することもあり得ます。個別具体的な税務の取扱いは、必ず顧問税理士にご確認ください。
6. 代表者変更・M&A時の手続きチェックリスト
6-1. 契約内容変更が必要な事由
中小機構の公表資料によれば、共済契約者は次のような変更が生じた場合に、所定の届出(契約内容変更の手続き)を行う必要があります。
- 事業所所在地・登記住所が変わったとき
- 事業所の名称(商号)が変わったとき
- 代表者の変更があったとき(法人の場合)
- 共済契約者本人の氏名・住所等が変わったとき
- 掛金の月額を変更(増額・減額)したいとき
- 掛金の払込方法を変更したい(口座振替先の変更等)とき
株式譲渡型 M&A や事業承継により、商号・所在地・代表者が変わる場合は、複数の事由が同時に発生することがあります。手続きは加入時の登録取扱機関(金融機関など)を通じて行うのが原則ですので、手続き先と必要書類は事前に登録取扱機関または中小機構窓口にご確認ください。
6-2. 共済事由発生時の請求と通算申出
共済事由(廃業・退任・死亡等)が発生した場合は、所定の請求手続きを行います。一方で、新たに加入要件を満たす役員等の地位に就く場合は、共済事由発生から1年以内であれば、新契約に旧契約の納付月数を通算する「同一人通算」の申出が可能です。
株式譲渡型 M&A で前会社の役員を退任した経営者が、その後別会社で再び役員等の地位に就くケースでは、納付月数を引き継ぐことで、解約返戻金率や付加共済金の支給率にメリットが生じる場合があります。事業承継・M&A の前後でこのオプションを使うかどうかは、事前にスケジュールに織り込んで設計することが肝要です。
6-3. 2025年9月の約款一部改正——掛金・共済金額の変更はなし
中小機構は、2025年(令和7年)9月22日付で「小規模企業共済契約約款」の一部改正を公表しています。改正内容は事務的な整備が中心で、掛金や共済金等の額の変更、加入要件・掛金上限の変更はありません。月額1,000〜70,000円・常時使用従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)等の制度骨格は維持されています。「制度が変わった」と誤解される報道に接した場合は、必ず中小機構の公式リリースで内容をご確認ください。
6-4. 中小機構窓口・共済サポートnaviの活用
個別の手続きや疑問点については、中小機構の小規模企業共済サポート窓口、登録取扱機関(取扱金融機関等)、または中小機構が公開している「共済サポートnavi」(オンライン手続きサービス)等を活用するのが効率的です。M&A・事業承継のスケジュールに合わせて、共済の手続きも逆算で組み込んでおくことをお勧めします。
結び——「節税」だけでない、3層構造で評価する
小規模企業共済は、「節税商品」として語られることが多い制度ですが、その本質は「節税」「退職金原資」「差押禁止」という3層構造の組み合わせにあります。とくに、小規模企業共済法 第15条による差押禁止と、破産法第34条第3項第2号による破産財団除外は、長年事業を続けてきた経営者にとって、想定外の局面で身を守る制度的セーフティネットとして機能します。
同時に、株式譲渡型 M&A や事業承継の場面では、貸借対照表に出てこない簿外資産として、譲渡対価とは別軸の手取り原資を構成します。受取方法(一括・分割・併用・任意解約)の選択次第で、税務上の手取り額は大きく変動します。受取設計と通算判断、手続きスケジュールを正しく組み立てるためには、共済の構造を理解したうえで、顧問税理士・弁護士・司法書士等の各専門家と連携することが欠かせません。
株式会社 日本財務戦略センター(中小企業庁 M&A 支援機関 登録、一般社団法人 M&A 支援機関協会 正会員)では、譲渡対価の交渉だけでなく、共済金・退職金・役員借入金返済等を含めた総手取りベースのM&A設計について、売り手の利益最大化を最優先とするセカンドオピニオン的な立場でご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください(初回相談無料・秘密厳守)。
よくあるご質問(FAQ)
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主な一次ソース・参考資料
- 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「小規模企業共済 現況」(2025年3月31日時点)
- 中小企業庁「小規模企業共済制度の現状について」(令和6年1月)
- 中小企業庁「小規模企業共済制度について」(FAQ)
- 中小機構「令和7年度付加共済金の支給率について」
- 中小機構「小規模企業共済契約約款の一部改正のお知らせ」(2025年9月22日付)
- e-Gov 法令検索「小規模企業共済法」
- e-Gov 法令検索「民事執行法」
- 国税庁「法人成りにより支給を受ける小規模企業共済契約の一時金の所得区分」
- 中小機構「解約手当金の額の算定方法」
- 中小機構「契約内容変更(掛金納付月数の通算)」
- 裁判所「個人再生手続」
守秘義務と免責事項
本記事は、公表されている一次ソース(独立行政法人 中小企業基盤整備機構の公表資料、中小企業庁の公表資料、e-Gov 法令データベース、国税庁の照会文書、裁判所公表資料)に基づき、株式会社 日本財務戦略センター(中小企業庁 M&A 支援機関 登録、一般社団法人 M&A 支援機関協会 正会員)が独自の視点で構成・整理した解説記事です。記載内容は記事公開時点(2026年4月)のものであり、その後の法令改正・約款改定・税制改正等により取扱いが変更される可能性があります。
個別の法務・税務・財務的判断、特に差押え・自己破産・個人再生・税務上の所得区分・共済契約の具体的な手続きについては、必ず弁護士・税理士・公認会計士・司法書士・行政書士等の各専門家、および独立行政法人 中小企業基盤整備機構の公式窓口にご相談・ご確認ください。本稿はあくまで、制度概要・公開情報に基づく一般的な解説を目的としています。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。
📅 本記事の情報基準日
本記事は 2024年2月20日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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