2026.04.28 M&Aスキーム(法務) M&A実務

【兄弟経営の地雷】株主間契約(SHA)がないと中小M&Aで親族から訴えられる|紛争予防の主要7条項

株主間契約(SHA)と少数株主保護の実務
株主間契約(SHA:Shareholders Agreement)とは、複数の株主が会社運営方針・株式譲渡制限・利益分配・出口戦略を、定款や会社法の枠を超えて私的に取り決める契約です。中小企業では兄弟経営・親族株主・創業パートナーの対立が顕在化する前に締結することで、相続やM&A譲渡時の株主間紛争を予防し、当事者全員の利害を調整する基幹文書です。

Table of Contents

株主間契約(SHA)とは?M&Aにおける位置付けと中小企業実務での意義

株主間契約(Shareholders Agreement、以下SHA)とは、ある会社の株主(複数名)が相互に締結する私的契約で、定款や会社法では律しきれない細部の運営ルール・株式譲渡制限・配当方針・将来の出口戦略を取り決める文書です。大手のジョイントベンチャーやベンチャーキャピタル投資では当然の前提となっていますが、私が代表を務める株式会社日本財務戦略センター(JFSC)に寄せられる中小M&A案件では、SHA未締結のまま兄弟・親族・創業パートナーで株式が分散し、譲渡局面で初めて対立が顕在化するケースが後を絶ちません。

会社法は株式会社の基本ルールを定めていますが、株主間の細かな合意(先買権の優先順位、議決権の共同行使、買戻し条件、退任時の株式扱い等)までは規定していません。これを補完するのがSHAであり、契約自由の原則のもと、強行法規(会社法127条の譲渡承認制度や116条の買取請求権等)に反しない範囲で柔軟に設計できます。

SHAと定款・株主総会決議との違い

定款は会社の基本規則で、変更には株主総会特別決議(会社法466条、議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。一方、SHAは契約当事者である株主間でのみ拘束力を持つため、機動的に締結・変更できます。ただし、SHAに書いた内容が定款や会社法と矛盾する場合、対外的(第三者・会社自身)には効力が及ばないことがある点に注意が必要です。たとえば「株式譲渡には他株主全員の同意を要する」とSHAに書いても、定款上の譲渡承認機関が取締役会であれば、第三者への譲渡は会社法上は取締役会承認のみで成立し、SHA違反は当事者間の損害賠償問題に留まる構造です。

大手M&Aと中小M&Aで頻出する論点の違い

大手のジョイントベンチャーや上場企業案件では、SHAは投資契約・出資契約と一体で締結され、ドラッグアロング権・タグアロング権・優先株条項・反希薄化条項等が緻密に組まれます。中小M&Aでは、相続による株式分散、創業時の口約束、兄弟間の感情的対立等の「ドメスティックないざこざ」が論点の中心で、大手のテンプレートをそのまま流用しても機能しません。中小実務では、契約書の精緻さよりも「全株主が同じ温度感で出口戦略を共有できているか」が成否を分けます。

株主間契約(SHA)の主要条項をどう設計しますか?

SHAに盛り込まれる代表的な条項を、中小M&A実務の視点から解説します。各条項は単独では機能せず、組み合わせで全体の予防力が決まります。条項設計は弁護士の関与が必須であり、本記事は実務上の論点整理であって、個別案件の法律判断に代わるものではありません。

先買権(First Refusal Right)と先取権(First Offer Right)

先買権とは、株主の一人が外部の第三者に株式を譲渡しようとする際、他の株主が同条件で優先的に買い取る権利です。中小企業では、相続・離婚・債務超過等で株式が想定外の第三者(親族の配偶者・債権者・競合他社)に流出するリスクを防ぐ基本条項として機能します。先取権は、譲渡希望株主がまず他株主に売却条件を提示し、他株主が買わない場合のみ第三者へ売却できる仕組みで、先買権より譲渡側の自由度が高い設計です。中小実務では、買取資金の捻出が現実的でないケースが多く、行使期間(30〜60日)や分割払いの可否を具体的に書き込むことが必要になります。

タグアロング権(共同売却権)とドラッグアロング権(強制売却権)

タグアロング権とは、多数株主が第三者に株式を譲渡する際、少数株主も同じ条件で同時に売却できる権利です。少数株主保護の代表的条項で、多数株主だけが好条件で売り抜ける事態を防ぎます。ドラッグアロング権は逆に、多数株主が第三者へ譲渡する際、少数株主にも同条件での売却を強制できる権利で、買い手が100%取得を望む中小M&Aでは事実上不可欠です。両者は対になっており、中小M&Aで売却益を全株主で公平に分配しつつ、買い手の100%取得ニーズに応える二層構造を作ります。

買戻条項・コール&プットオプション

買戻条項とは、特定の事由(退任、競業、死亡、債務不履行等)が発生した株主から、会社または他株主が株式を買い戻せる仕組みです。コールオプションは買い戻す側の権利、プットオプションは売却したい側の権利で、両者の組み合わせで「想定外の株主が居座り続ける事態」を予防します。中小実務では、買戻価格の算定式(直近決算の純資産額×持株比率、年買法×倍率、第三者評価機関価額等)を具体化しておかないと、いざ発動時に価額紛争が発生します。国税庁の財産評価基本通達による評価額と、SHAの算定式が大きく乖離すると、株主間贈与認定(時価との差額部分が贈与税課税対象)のリスクも生じるため、税理士の関与が必要です。

優先株条項・配当優先・残余財産分配優先

大手のベンチャー投資では普通株と種類株を組み合わせ、投資家側に配当優先・残余財産分配優先・議決権制限等を付与します。中小M&Aでも、後継者へ普通株を譲り、引退する先代に配当優先の種類株を残す等、世代間の利害調整に種類株+SHAは有効です。種類株の発行には定款変更(株主総会特別決議)と登記が必要で、SHAだけで完結しない点に留意してください。

競業避止・専念義務・知的財産の帰属

株主が同時に役員として在籍する中小企業では、退任後の競業避止・在任中の専念義務・職務発明の知的財産帰属もSHAで合意しておくことが多くあります。退職金規程や就業規則と整合させ、過度に長期・広範な競業避止は公序良俗違反で無効となるリスクもあるため、合理的な期間(1〜2年)と地理的範囲に絞ることが実務上の標準です。詳細は競業避止義務のピラー記事を参照してください。

中小実務で頻出する3シナリオ:兄弟経営・親族株主・創業パートナー

SHAの必要性は、大手のスマートな投資契約よりも、むしろ中小特有の「ぐちゃぐちゃした人間関係」のなかで切実に高まります。JFSCで実際に支援した類型を、匿名化して3シナリオで整理します。

シナリオ1:兄弟で株式を持ち合う製造業(持株50:50問題)

創業者が引退時に長男・次男に株式を50:50で承継したケースでは、株主総会で意思決定が割れた瞬間に会社が機能停止します。会社法309条1項の普通決議でも過半数が必要ですから、50:50では何も決まりません。兄弟仲が良いうちはSHA不要に見えても、配偶者・甥姪・後継世代が絡んだ瞬間に対立が顕在化します。SHAでは、デッドロック条項(一定期間決議不能が続いた場合の解消手続:第三者調停・コインフリップ・テキサスシュートアウト等)を仕込むことで、最後の安全弁を確保します。テキサスシュートアウトは、一方が提示した買取価格に対し、他方が「その値段で売る」か「その値段で買う」かを選ぶ仕組みで、価格設定の真剣味を担保する古典的な解消手段です。

シナリオ2:親族株主が散らばった老舗企業(株主分散と相続連鎖)

戦後創業の老舗企業では、創業者の死亡・配偶者の相続・子世代への承継を経て、株式が10〜30名の親族に分散していることが珍しくありません。事業に無関心な株主が議決権を持ち続け、M&A譲渡時に「先祖伝来の株を売るのか」と感情的な反対が出て交渉が頓挫する事例は多くあります。会社法174条の相続人等に対する売渡請求(定款で定めた場合、相続発生時に会社が相続人から株式を買い取れる制度)と、SHAの先買権・買戻条項を組み合わせることで、株主名簿の整理と機動的な集約が可能になります。後継者不在第三者承継を検討する局面については、親族外承継のピラー記事も併せてご覧ください。

シナリオ3:創業パートナーとの株式分配(口約束の罠)

友人同士・元同僚と創業し、口約束で「半々で行こう」「役員報酬は同じで」と決めた中小企業は数多くあります。事業が軌道に乗り、片方が離脱を希望した瞬間に、株式買取価格・在任中の貢献度・将来のM&A時の取り分で必ずもめます。創業時にSHAを締結し、退任時の買戻価格算定式・在任中の議決権共同行使・M&A時のドラッグアロング/タグアロングを書き込んでおけば、こうした紛争の8〜9割は回避可能です。私が見てきた限り、中小オーナーがSHAを「大手のもの」と誤認し、創業時に手を抜いたツケが10〜20年後に倍返しで来るパターンが最も多く、最も悲惨です。

M&A譲渡時のSHAが少数株主に与える影響は?

M&Aクロージング時、SHAの条項は売却プロセス全体を左右します。少数株主の同意取得・反対株主の処遇・買取請求権の行使可能性を、会社法と契約条項の両面から検討する必要があります。

会社法116条の反対株主の株式買取請求権

会社法116条は、合併株式交換・事業譲渡等の組織再編行為に反対する株主が、会社に対し「公正な価格」での株式買取を請求できる権利を定めています。譲渡側オーナーがM&Aスキームを選ぶ際、この請求権の発生有無は重要な分岐点です。株式譲渡(単純な株式売買)では発動しませんが、株式交換・合併・事業譲渡(重要な事業の全部譲渡)では発動し得るため、少数株主が反対意思を示すと、会社が買取資金を捻出する必要が生じます。SHAにドラッグアロング権を入れておけば、契約上は強制売却が可能ですが、会社法上の買取請求権を契約で完全に封じることはできず、両者の整合は弁護士の精緻な設計に依存します。

「公正な価格」の算定をめぐる価額決定申立て

買取請求が成立すると、株主と会社の協議で価格が決まらない場合、裁判所への価格決定の申立て(会社法117条)に進みます。最高裁は「公正な価格」を、組織再編によるシナジーを反映した価格と判示しており、単純な簿価純資産額ではなく、M&A取引価格を相当程度反映する水準が支持される傾向があります(最決平成24年2月29日民集66巻3号1784頁ほか参照)。少数株主が裁判所申立てに進むと、クロージング後も価格紛争が長期化し、買い手が嫌気して破談するリスクがあるため、SHA設計時から「いかに反対株主を出さないか」のインセンティブ設計が肝要です。

株式譲渡契約(株式譲渡契約書(SPA))との接続

M&AクロージングではSPA(Share Purchase Agreement)が締結されますが、売り手側でSHAが存在する場合、SPAの前提条件(CP:Conditions Precedent)に「全株主のSHA上の同意取得」「先買権・タグアロング権の放棄書取得」が組み込まれます。SPA本体の論点については株式譲渡契約書(SPA)の主要論点を参照してください。SHA上の手続を怠ったままSPAを締結すると、クロージング後に少数株主から契約違反の損害賠償請求や、譲渡無効主張を受けるリスクが顕在化します。

スクイーズアウト(強制取得)とSHAの関係

少数株主が反対し続けても、会社法上は一定要件下で強制的に株式を取得する手段(スクイーズアウト)が用意されています。買い手が100%取得を望む中小M&Aでは、SHAのドラッグアロング権が機能しない局面の最後の手段として、スクイーズアウトの枠組み理解が必須です。

会社法179条の2 特別支配株主の株式等売渡請求

議決権の90%以上を保有する特別支配株主は、他の株主全員に対し株式の売渡しを請求できます(会社法179条の2)。M&Aスキームとして、まず90%超を取得し、残りをこの制度で集約する手順が一般的です。価格は当事者間で決まりますが、不服のある少数株主は会社法179条の8で裁判所への価格決定申立てができ、ここでも「公正な価格」が争点となります。

株式併合によるスクイーズアウト(会社法180条)

株式併合(例:100株を1株にまとめる)を株主総会特別決議で行うと、少数株主の保有株式が1株未満の端数となり、会社が端数を金銭で買い取る形で実質的に締め出されます。90%要件を満たさない場合の代替手段ですが、特別決議要件(議決権の3分の2以上)と、反対株主の買取請求権(会社法182条の4)が発動するため、価格紛争リスクは残ります。

株式交換による完全子会社化

買い手側の上場会社等が、対象会社を株式交換により完全子会社化する手法も選択肢です。株主総会特別決議と、反対株主の買取請求権(会社法785条)の枠組みは類似します。中小M&Aでは買い手が非上場のSPC等を使うケースもあり、株式交換比率の公正性が論点となります。

株主間紛争の典型事例と予防策

JFSCで実際に観測した、ドメスティック中小特有のいざこざ類型を3つ示します(個別案件の特定を避けるため、要素を再構成しています)。

事例A:相続で配偶者に株式が渡り、M&A交渉が膠着

創業者が遺言なく死去し、未亡人と長男が株式を共有相続した結果、未亡人の代理人弁護士が「相続税納税のため最大限の高値売却を要求」、長男は「事業継続を望み社員の雇用維持を優先」と利害が衝突。SHAも遺言もなく、結局2年間交渉が膠着した間に主要顧客が離反し、企業価値が約3割毀損しました。教訓は、相続発生前に①遺言書の作成、②会社法174条の定款条項(相続人等への売渡請求)、③SHAでの買戻価格算定式、の3点セットを準備することです。

事例B:兄弟経営でデッドロック、決算書承認が3年滞留

兄弟50:50の製造業で、経営方針を巡り対立。株主総会で決算承認決議が3期連続で否決され、銀行融資の条件改定や許認可更新に支障が出ました。デッドロック条項のないSHAしか締結しておらず、最終的に第三者の中小企業診断士・税理士・弁護士による調停で兄が株式を買い取る形で決着しましたが、買取価格の交渉に1年を要しました。教訓は、SHAにテキサスシュートアウト等のデッドロック解消条項を必ず入れることです。

事例C:創業パートナーが退任後も株式保有、配当紛争

創業時の口約束で40%株式を保有していた共同創業者が、20年経過後に経営方針対立で退任。退任後も株式を保有し続け、毎期の配当を要求しましたが、会社は内部留保を厚くする方針で配当ゼロを継続。少数株主として会社法433条の会計帳簿閲覧請求権を行使し、業務執行に対する違法行為差止請求(会社法360条)まで発展しました。教訓は、創業時にSHAで退任時の買戻条項・配当方針の合意を書面化することです。

SHA締結に弁護士関与が不可欠な理由

SHAは契約自由の原則のもと柔軟に設計できる一方、強行法規(会社法・独占禁止法・税法)との整合や、将来発生する組織再編・相続・M&A各局面での効力を見通す必要があり、契約書ドラフティングの中でも難易度の高い文書です。テンプレート流用は危険で、必ず弁護士に依頼してください。

弁護士・税理士・公認会計士の役割分担

SHAの条項設計・契約書ドラフティングは弁護士の独占業務領域(弁護士法72条)です。買戻価格算定式・税務影響(株主間贈与認定リスク・みなし配当課税等)は税理士・公認会計士の領域となり、財務評価が絡む場合は公認会計士の関与も推奨されます。中小M&Aの実務では、これら専門家がチームで関与し、JFSCのようなM&A支援機関がプロジェクトマネジメントを行う体制が標準です。

中小M&Aガイドライン第3版の位置付け

中小企業庁が公表する「中小M&Aガイドライン」第3版(2024年8月改訂)は、支援機関・専門家の関与のあり方、利益相反管理、説明義務、報酬体系の透明性等を整理しています。SHA設計や少数株主同意取得もガイドラインの想定する重要場面で、JFSCも中小M&A支援機関として登録し、ガイドライン準拠の運営を行っています。

株主間贈与認定の税務リスク

買戻価格や譲渡価格が時価(財産評価基本通達による評価額または第三者算定額)と乖離すると、差額部分が株主間の贈与とみなされ贈与税の課税対象となるリスク(相続税法基本通達9-2等)があります。SHAの価格算定式設計時には、必ず税理士の事前確認を受けてください。国税庁の財産評価基本通達と整合する設計が、後日の課税紛争を防ぐ鍵となります。

SHA設計で見落としがちな8つの実務論点

最後に、JFSCで観測してきた「中小オーナーが見落としがちな論点」を整理します。SHA締結前のチェックリストとしてご活用ください。

論点1:議決権共同行使の合意と委任状の整合

SHAで「議決権を共同行使する」と合意しても、株主総会の場で各株主が異なる議決権行使をした場合、対外的には会社法上有効です。違反は契約上の損害賠償問題にとどまるため、議決権信託や包括的委任状の整備で実効性を補強します。

論点2:株主資格喪失事由の明確化

「役員退任時」「死亡時」「破産時」「離婚時」等の株主資格喪失事由を網羅的に列挙し、各事由ごとの買戻価格算定式を具体化することが、後日の紛争予防に直結します。

論点3:知的財産・情報の取扱いと秘密保持契約(NDA)との接続

株主が役員・従業員を兼ねる場合、職務発明の帰属・営業秘密の管理・退任後の競業避止をSHA本体または別途のNDAで合意します。M&A交渉時の情報漏洩防止については秘密保持契約(NDA)の主要論点のピラー記事を参照してください。

論点4:紛争解決手続(仲裁・調停・裁判管轄)の指定

株主間紛争が訴訟になると、会社情報の開示・経営者の心理的負担が大きいため、まず仲裁または調停で解決する手続を契約に書き込むことが多くあります。仲裁機関(日本商事仲裁協会等)と裁判管轄を明確化してください。

論点5:契約終了事由と存続条項

SHAの有効期間・解除事由・終了後も存続する条項(秘密保持・競業避止・紛争解決条項等)を明確化します。期間無制限のSHAは公序良俗違反で無効となるリスクもあり、合理的な期間設計が必要です。

論点6:定款変更時のSHA改定義務

定款変更とSHAの矛盾を防ぐため、SHA改定と定款変更を連動させる条項(変更時の協議義務・自動連動条項等)を入れます。

論点7:第三者効と会社拘束力

SHAは原則として契約当事者間でのみ拘束力を持ちます。会社自身を当事者に加えるか、定款にSHA同等の規定を組み込むことで、対外的・対会社の効力を補強します。

論点8:M&A時のSHA条項放棄手続

M&Aクロージング時には、SHA上の先買権・タグアロング権・優先交渉権等を全株主が書面で放棄する手続が必要です。SPAのCPに組み込み、放棄書のひな形をSHA締結時に添付しておくと、後日の交渉摩擦を回避できます。

まとめ:SHAは中小M&Aでも「保険」ではなく「インフラ」

株主間契約は、大手のジョイントベンチャーや投資契約だけのものではなく、中小企業オーナーの相続・承継・M&A出口戦略の根幹を支えるインフラです。兄弟経営・親族株主・創業パートナーが絡む中小M&Aでは、SHA未締結のまま譲渡局面に入ると、会社法上の買取請求権・スクイーズアウト・税務リスクが複合的に発動し、企業価値が大幅に毀損する事例を私自身も多く見てきました。

JFSCでは、中小M&Aガイドライン第3版に準拠した支援体制のもと、弁護士・税理士・公認会計士と連携してSHA設計から譲渡クロージングまでを伴走しています。SHAの締結や見直し、少数株主への対応に課題をお感じの経営者様は、まずは10分診断またはスキーム比較シミュレーターで論点を整理し、必要に応じて弁護士・税理士等の専門家とご相談のうえ、JFSCにもお声がけください。

本記事は、株式会社日本財務戦略センター(中小企業庁M&A支援機関登録事業者)代表取締役 五十嵐悠一 の監修のもと、中小M&A実務における売り手視点で執筆しています。個別の判断は必ず弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。

よくあるご質問

株主間契約(SHA)はいつ締結するのが適切ですか?

理想は「会社設立時」または「創業パートナーで株式を分配する初期段階」です。事業が軌道に乗ってからの後付け締結は、利害が顕在化しているため合意形成の難易度が跳ね上がります。創業時の口約束は10〜20年後に必ずもめるため、創業初日にSHAを締結しておくことが、最も安価で最も効果的な紛争予防策となります。既に対立が発生している局面でも、第三者の弁護士・調停人を介して締結することは可能です。

SHAに違反した株主に対して、どのような救済が可能ですか?

SHA違反は契約違反として、損害賠償請求・差止請求・違約金請求の対象となります。ただし、違反した株主が第三者へ株式を譲渡してしまった場合、譲渡自体は会社法上有効に成立してしまうことが多く、譲渡無効を主張できないケースもあります。そのため、違反予防として高額な違約金条項・株式信託・包括委任状等の補強策を契約段階で組み込むことが重要です。具体的な救済方法は、契約条項と事実関係に依存するため、弁護士への相談が必要です。

中小M&Aの売却交渉で少数株主が反対した場合、どう対処すればよいですか?

まず、SHAにドラッグアロング権が入っていれば契約上の強制売却が可能です。入っていない場合は、①少数株主との個別交渉で売却条件を改善する、②会社法179条の2の特別支配株主による株式売渡請求(90%以上保有が前提)を活用する、③株式併合によるスクイーズアウトを検討する、の3経路が中心となります。いずれも反対株主の株式買取請求権・価格決定申立てが論点となり、価格紛争が長期化する可能性があります。早期の弁護士・税理士・M&Aアドバイザーへの相談が不可欠です。

公開日: 2026年4月28日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2026年4月28日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

関連の最新情報:中小企業庁国税庁金融庁e-Gov 法令検索

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