2021.12.03 M&A実務 プロセス手順

コロナ禍後の事業再生M&A戦略:ゼロゼロ融資返済本格化と資金繰り悪化に直面する中小企業の選択肢

事業再生M&Aとは、資金繰り悪化や事業継続困難に直面する中小企業が、第三者譲渡や事業譲渡会社分割等のスキームを通じて事業の存続と雇用維持を図る経営戦略です。コロナ禍後はゼロゼロ融資返済本格化を背景に活用例が増加しており、特に4-5ヶ月の資金繰り目途が立つ段階での早期相談が、事業譲渡・会社分割・第三者割当増資など複数の選択肢を確保する鍵となります。経営者保証ガイドラインの活用も重要論点です。

【この記事の結論】コロナ禍後、ゼロゼロ融資返済本格化や原材料・エネルギー価格高騰で資金繰り悪化に直面する中小企業が増加しています。事業再生M&Aは事業譲渡・会社分割・第三者割当増資など複数スキームを組み合わせる戦略で、特に4-5ヶ月の資金繰り目途が立つ段階での早期相談が、複数選択肢を確保し雇用維持・経営者保証解除を実現する鍵となります。個別判断税理士弁護士等の専門家にご相談のうえご検討ください。

コロナ禍後の中小企業を取り巻く資金繰り環境はどう変化しましたか?

緊急事態宣言が明け、街にも賑わいが戻り、地方都市の人流も回復しています。しかし東京商工リサーチの調査によると、コロナ関連倒産は依然として高水準で推移しており、予断を許さない状況が続いています。

特に注目すべきは、実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が本格化していることです。日本政策金融公庫による劣後性自己資本ローンも、劣後ローンが返済順位の低い融資のため金融機関側が慎重に審査を行い、ある程度の収益性が見込まれる企業でないと融資が受けにくい傾向にあります。

複合的に襲う資金繰り圧迫要因

人流回復の一方で、新型コロナウイルス変異株の再拡大リスク、世界的なサプライチェーン混乱、エネルギー価格・原材料価格の高騰、製品納入遅延といった複合要因が、中小企業の資金繰りに深刻な影響を与え続けています。売上回復が伸び悩んでいる企業は、特に資金需要が高まる年末12月に向けて、なおさら資金繰りがタイトになる局面です。

廃業については、帝国データバンク東京商工リサーチの月次統計を継続的にモニタリングする必要があります。

事業再生M&Aで取れる主な選択肢は何ですか?

資金繰りが厳しい状況下では取れる手段が限られるため、早期の相談が極めて重要です。特に4-5ヶ月程度の資金繰り目途が立つ段階であれば、以下の複数スキームを複合的に検討し、最適な解決策を提案することが可能です。

日本財務戦略センター(JFSC)の実務知見では、製造業A社(従業員30名)の事例で、コロナ禍の受注減と原材料高騰により資金繰りが急激に悪化したケースがありました。当初は私的整理を検討されていましたが、事業の核となる技術力と顧客基盤に着目し、早期のM&Aによる事業譲渡を提案。不採算部門を切り離し優良事業部門を存続させる戦略により、譲渡先企業とのシナジー効果も生まれ、従業員の雇用維持と経営者保証解除を実現できました。

経営者保証解除に向けた戦略

事業再生M&Aの重要論点の一つが経営者保証の解除です。経営者保証ガイドラインの活用により、適切なM&Aスキームと併せて経営者個人の連帯保証を解除する道筋が開ける場合があります。経営者保証ガイドラインは法的拘束力こそ持ちませんが、金融機関の自主的ルールとして機能しており、M&A仲介・弁護士・税理士等の専門家と連携した申請が現実的です。

事業再生M&Aを成功させる早期相談のポイントは何ですか?

資金繰りが完全に行き詰まってからの相談では、取れる手段は私的整理や法的整理に限定されてしまいます。一方、4-5ヶ月の資金繰り目途が立つ段階であれば、事業譲渡・会社分割・第三者割当増資など、複数選択肢の中から最適なスキームを選べる余地があります。

事業再生・私的整理の詳細スキームについては、企業再生スキームとM&A債務超過企業と企業再生(準則型私的整理編)もあわせてご参照ください。

金融支援機関の活用

事業再生では公的支援機関の活用も有効です。地域経済活性化支援機構(REVIC)、事業再生ADR、特定調停スキーム等、状況に応じた選択肢があります。経営者保証の見直しは経営者保証ガイドラインを軸に、金融機関との交渉を専門家がサポートします。

JFSCではこれまで数多くの企業の事業再生を支援してまいりました。資金繰り悪化の兆候が見えた段階で、手遅れになる前にぜひお気軽にご相談ください。事業の核となる技術力・顧客基盤・人材といった「残すべき価値」を見極め、複数スキームから最適解を組み立てます。

※M&A実務の判断には専門家との相談が不可欠です。JFSC ではM&Aセカンドオピニオン無料相談を承っております

よくあるご質問

事業再生M&Aを検討すべきタイミングはいつですか?

理想的には4-5ヶ月程度の資金繰り目途が立つ段階での早期相談です。この段階であれば、事業譲渡・会社分割・第三者割当増資など複数のスキームから最適な選択肢を組み合わせる余地があります。資金繰りが完全に行き詰まってからでは私的整理・法的整理に選択肢が限定されてしまうため、早期判断が極めて重要です。

事業再生M&Aで主に使われるスキームには何がありますか?

主に3つです。(1)事業譲渡:不採算部門を切り離し優良事業部門を存続させる手法。(2)会社分割:事業を法人格として分離し優良部門を譲渡・存続させる手法。(3)第三者割当増資:外部資本導入で財務体質を改善する手法。状況に応じて複数を組み合わせ、雇用維持と経営者保証解除を同時に図ります。

事業再生M&Aで経営者保証は解除できますか?

経営者保証ガイドラインの活用により、適切なM&Aスキームと併せて経営者個人の連帯保証を解除する道筋が開ける場合があります。ガイドラインは法的拘束力を持たない金融機関の自主的ルールですが、M&A仲介・弁護士・税理士等の専門家と連携した申請が現実的で、JFSC支援事例でも雇用維持と経営者保証解除を同時に実現したケースがあります。

公開日: 2021年12月3日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

▼ ご検討前のご参考に
M&A セルフ診断ツール 5種 (完全無料・登録不要)
10分診断・自社把握度・企業価値試算・手数料比較・売却ロープレ
無料で診断する →

よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2021年12月3日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

関連の最新情報:中小企業庁国税庁金融庁e-Gov 法令検索

RELATED関連する記事