企業再生スキームとM&A

Pocket

公開日:2020年10月15日 /最終更新日:2021年7月8日

弊社には債務超過に苦しむ経営者からのご相談もよくございますため、企業再生スキームを提案させていただくことがございます。
一般的なM&A仲介は資産超過で売り上げも大きい案件を取り扱いたがる傾向があると思いますが(売りやすいため)、弊社は様々な案件を取り扱うことを理念としているため、他社と違い門前払いにするようなことはしないことから、ご相談も多くいただいております。

さて、では実際に債務超過の案件のご相談を頂いた際に弊社はどのように対応するでしょうか。
一般的なスキームを含めて考えてみたいと思います。

企業再生はスキームありきでの話ではありません。
労務管理を見直し、コストを下げながら売り上げを上げて行けば収益は改善しますし、結果として財務基盤も健全になると考えられます。
販路を拡大し生産効率を上げることで解消する可能性もございます。まずはそこからご提案することも多々あります。

そのうえでキャッシュフローや心理的な問題などでM&Aを含めた再生スキームへ移行することも当然あります。
では再生スキームとはどのようなものがあるのでしょうか。

1.リスケジュール
返済を一時ストップしたり、返済額を見直すことで当面の資金繰りを改善する方法です。ただしこの方法では改善した資金繰りで収益性を高めないと元金が減らないことから、抜本的な解決につながらない可能性が高いです。

2.DDS(デット・デット・スワップ)
既存の借入金を他の債務よりも債務弁済の順位が劣る劣後ローンと呼ばれる借入金に振り替えます。劣後ローンの中でも一定の要件を満たす資本的劣後ローンは、金融機関内で資本とみなされることから、従前より良い条件での融資を受けられる可能性があります。DDSを金融機関から受ける際に、特定の財務指標を一定数値以上に維持しなければならないなどのコベナンツ条項が課され、それに反した場合優遇措置が取り消されたり、一括返済を求められる可能性があります。また中小企業の場合、あまり一般的でないように思います。

3.DES(デットエクイティスワップ)
借入金を株式に振り替えることです。例えば役員借入金が多くなり、債務超過に陥ったとします。その役員借入金を株式に振り替えることにより、自己資本を厚くし資産超過とします。ただし役員借入金自体は金融機関によってはオーナー会社の場合、自己資本と見なしてくれること、またDESを行うことで債務免除益が発生し、キャッシュアウトが発生する可能性もありますので、あまり現実的ではないかもしれません。このほか類似のスキームとしては疑似DESなどのスキームもあります。債務が金融機関からの場合、債務の評価をどうするのか、また金融機関が非上場企業の株式を持ちたがるのか、という問題もあることからこれも一般的ではないように思います。

4.債権放棄
金融機関などに対し、債権の放棄を要請することです。
最近では半沢直樹でも出てきたので一般的かもしれません。このスキームでは再生会社の財務状況は大きく改善するものの、ハードルは高いです。
まず債権者の合意が必要になります。また抵当権の行使を行われる可能性がありますし、経営責任を問われる可能性も高いでしょう。また債務免除益が発生するため、現金がない場合においては借入れをする必要がありますが、貸し手を見つけるのは困難かもしれません。左記は私的整理を念頭に置いておりますが、民事再生法に基づく再生手続、会社更生法に基づく更生手続、破産法に基づく破産手続き、会社法に基づく特別清算手続きなどの法的整理もあります。
この中で民事再生手続きが比較的使いやすいかもしれませんが、民事再生手続き自体も債権者が複数いる場合は多数決的な(債権額や人数による)合意を取る必要がありますし、抵当権の行使は妨げることはできないため、計画的かつ迅速に行う必要があります。早ければ6カ月以内に民事再生がスタートするようですが、手続きを行うに際して一定の現金が必要になること、債務免除益が発生すること、当面の運転資金が必要になること、再生計画案を立てられることなどのハードルもあります。

5.第二会社方式
第二会社方式とは、財務状況の悪化した会社から、収益性のある事業のみを別の会社に受け継がせ、過剰債務及び不採算事業はもとの会社に残し、破産手続きなどによって整理をするというスキームです。このスキームでは新しく作った会社に優良事業が行くため、財務はだいぶ改善されます。元の会社からの事業の受け継がせ方は、新しい会社を設立してそこに事業及びそれに付随する債権債務を受け継がせるやり方と、事業譲渡で他の会社に移す方法があります。元の会社は破産や生産を行って整理することになりますが、新しい会社を設立して別の会社に売却した場合はその譲渡対価、事業を譲渡した場合は売り上げが元の会社に入りますので、単に清算を行うよりも債権者にとっては回収できる金額だけメリットがあります。
ただしこの場合もあまりにも譲渡対価が低い場合は阻害行為としてとらえられる可能性があることから、事前に債権者とはよく協議する必要があります。また抵当権自体の行使はできることと、代表者が個人保証に入っていることが多いこと、保証協会融資の場合、債権放棄の取り扱いが自治体により難しいことなど様々なハードルがあります。この点につきまして、弊社でも会社やオーナーの連帯保証の状況に応じてご相談に乗りながら、対応しております。
なお経済産業省では、第二会社方式のスキームについて、事業再生計画の中で債権者の同意を得たうえで行われる場合、「中小企業事業承継再生計画」として認定し、許認可の引き継ぎや税金の支払いなどの優遇措置を受けられるようにしています。この点につきましても弊社にご相談いただいた際にご説明させていただきますのでご安心ください。

6.M&Aスキーム
第二会社方式と似ている点がありますが、株式を増資によって取得し、現金を対象会社に入れて財務の健全化を図る方法。または事業を買収し、その買収資金を対象会社に入れるスキームです。
ただし前者については債務超過の場合、株価の評価が1円と見なされてしまうことも多く、かなり希薄化してしまいます。であれば1円で連帯保証を切り替えて株式を譲渡し、オーナーは連帯保証から外れるというケースが多い印象です。後者についても5で述べた通り、詐害行為とみなされてしまう可能性があるため、慎重に評価を行う必要があります。もちろん収益性が悪化している部分を切り出して、PLを改善する、という事はあります。この場合につきましてもケースバイケースで相談に乗らさせて頂いておりますので、お気軽にご相談ください。

<免責事項:上記については法的な正確性を担保するものではございませんが、実際にスキームを実施する場合は各専門家のご紹介も行いますのでご安心ください>

<2021年3月1日追記>
債務超過で今後の経営にお悩みの企業向けに、企業再生(事業再生)サービスの提供を始めました。
会社の存続のため、日本財務戦略センターと大手総合法律事務所のエキスパートがタッグを組んで、御社を徹底的にサポートいたします。

なお私的整理などに関する事業再生(企業再生)については以下のコラムも参考にしてください。

企業再生スキームとM&A
債務超過企業と企業再生(準則型私的整理編)
【事業再生】特定調停スキームとは
【事業再生】事業再生ADR制度について
地域経済活性化支援機構(REVICとは)
事業承継時の「経営者保証に関するガイドライン」の特則
「経営者保証に関するガイドライン」とは

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

過去ブログ抜粋

  1. 中小企業向け「ゼロゼロ融資」終了と今後の中小企業に対する政府方針

  2. M&A・業務提携ニーズ一覧【20201104】

  3. 「ゼロゼロ融資」借り換え政府創設原案について

  4. 「御社を買いたい人がいるから売ってくれと言われているが本当か」問題

  5. 新設、「中小企業事業再編投資損失準備金制度」!

  6. デューデリジェンス(DD/買収監査)について