2024.04.08 事業承継

【書評】橋口貢一著『経営危機に陥った社長さんを守る最後の救済策』——第二会社方式・少額管財・経営者保証を当事者経験者が解く事業再生の教科書

3行まとめ


Table of Contents

はじめに——「最後の救済策」を最初に読む意味

この章のポイント
本書は、追い込まれた経営者が手に取る「最後の救済策」というタイトルですが、本来は経営に行き詰まりかける前の、まだ余力のある段階で読むべき本です。本書の最大の特徴は、著者自身が当事者経験者であるという「一次情報の重み」にあります。
図1:書籍の基本情報
書名

経営危機に陥った社長さんを守る最後の救済策

著者

橋口貢一(公認会計士・税理士/株式会社東京事業再生ER 代表取締役)

出版社・刊行

清文社/2023年9月5日

ISBN・体裁

978-4-433-41513-6/四六判 268頁/2,640円(税込)

出典:清文社 公式書籍ページ(store.skattsei.co.jp)。

『経営危機に陥った社長さんを守る最後の救済策』は、2023年9月に清文社から刊行された事業再生実務書です。著者は、株式会社東京事業再生ER 代表取締役・橋口貢一氏(公認会計士・税理士)。同氏は、平成18年(2006年)にグループ負債総額50億円の倒産を経験した当事者経験者であり、その後、個人保証債務5億円を1,000万円まで減額し、自宅と公認会計士資格を守り抜いた稀有な経歴を持つ実務家です。

事業再生の実務書は数多く刊行されていますが、本書の差別化点は明確です。「追い込まれた経営者の心理」を、机上ではなく自らの経験から知っている著者が、第二会社方式・少額管財手続・住宅資金特別条項・給与所得者等再生・経営者保証ガイドライン活用という5つの救済スキームを、具体的なプロセスと条件で解きほぐしているところに、本書の価値があります。

本記事は、書評として本書の内容を整理しつつ、刊行以降の最新動向(2026年3月のガイドライン改定、2024年度の経営者保証に依存しない新規融資が過半数突破、2025年の倒産1万件超)を架橋し、中小オーナー経営者が「読むだけで終わらせない」ための実践的な視座を提供することを目的としています。


1. 著者・橋口貢一氏——50億円倒産・5億円保証から1,000万円減額・自宅死守までの当事者経験

この章のポイント
著者・橋口貢一氏は、平成18年にグループ負債総額50億円の倒産と個人保証5億円という奈落の底を経験し、そこから1,000万円減額・自宅保全・資格保全を実現した当事者経験者です。この実体験こそが本書の他書にはない「希望と実務」の重みを生み出しています。

1-1. 野村證券・新日本監査法人を経てベンチャーCFOへ

橋口氏は、野村證券・新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)でキャリアを積んだのち、ベンチャー企業のCFO(最高財務責任者)として株式公開準備に携わったと、清文社書籍ページの著者紹介に記載されています。一見、輝かしいキャリアです。

しかし、そのベンチャーグループは平成18年(2006年)に経営破綻し、グループ負債総額は50億円に達しました。この時、橋口氏自身が個人保証していた金額は5億円でした。多くの中小オーナー経営者にとっても、個人保証は「いずれ自分の身に降りかかるかもしれない」現実の問題ですが、5億円という規模は通常想像しうる範囲を超えています。

1-2. 個人保証5億円→1,000万円への減額交渉

橋口氏は、自らの個人保証債務5億円について、最終的に1,000万円まで減額することに成功しました。これは、単純計算で98%の減額です。同時に、自宅と公認会計士資格を保全することにも成功しています。

この経験を通じて橋口氏は、「経営者が破綻局面で取るべき選択肢」と「金融機関・弁護士・裁判所との具体的な向き合い方」を、机上の理論ではなく実体験として獲得しました。本書の記述に「リアリティ」と「希望」が同居しているのは、この当事者性に由来します。

1-3. 平成24年・株式会社東京事業再生ER設立

橋口氏は、平成24年(2012年)に株式会社東京事業再生ERを設立し、事業再生支援業務を本格的に開始しました。同社は京都内で中小企業の事業再生・民事再生・破産対応を中心とする実務を提供しており、橋口氏は事業再生救済士研究協会の会長も務めています。

本書のほか、橋口氏は『税理士・認定支援機関のための中小企業の再生支援ガイド』(中央経済社)、『早期の事業再生支援と転廃業支援』(株式会社東京事業再生ER刊)といった書籍を執筆しており、専門家向けの解説実務でも一定の位置を占める実務家です。

1-4. 前著との関係——「自主再生困難な社長さん〜」から「経営危機に陥った社長さん〜」へ

橋口氏には、本書(2023年刊)の前著として、清文社から『自主再生困難な社長さんの事業・生活・財産を守る最後の救済策』(ISBN 978-4-433-41516-7)も刊行されています。書名の変化に注目してください。「自主再生困難」から「経営危機に陥った」へ——対象とする経営者の局面が、より広く設定されたことが分かります。

本書は単純な改訂版ではなく、刊行から一定期間が経過する中で蓄積された実務知見を踏まえて、対象局面と解説内容を再編成した、実質的な後継書という位置づけと考えられます。


2. 本書が解説する5つの救済スキーム——制度概要と適用局面

この章のポイント
本書は、第二会社方式・少額管財手続・住宅資金特別条項・給与所得者等再生・経営者保証ガイドラインの5スキームを「どんな局面で有効か」という視点で解説しています。本章では各スキームの制度概要を整理しますが、要件判断と具体的手続は弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。
図2:5つの救済スキーム比較表(制度概要)
スキーム主な目的想定局面関与する専門家
第二会社方式優良事業を新会社に承継し、旧会社債務を整理事業価値が残っているが債務超過の局面弁護士・税理士・公認会計士・M&A支援機関
少額管財手続予納金を抑えて破産手続を進める換価すべき重要財産がない場合の破産弁護士(代理人選任が前提)
住宅資金特別条項自宅を残しつつ個人再生住宅ローン継続中で自宅を手放したくない局面弁護士・司法書士
給与所得者等再生安定収入のある個人の債務圧縮役員報酬・給与所得が安定している局面弁護士・司法書士
経営者保証GL活用保証債務の整理・減額交渉廃業・事業譲渡時の保証残債整理弁護士・税理士・認定支援機関
出典:本書記述、裁判所「個人再生」公式ページ、中小企業庁「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」、全国銀行協会「経営者保証に関するガイドライン」を参考に整理。

2-1. 第二会社方式——優良事業を守りつつ旧会社債務を整理する

第二会社方式は、債務超過に陥った会社の優良事業部分を、新会社(第二会社)に会社分割または事業譲渡によって移転し、旧会社は特別清算・破産等で整理するスキームです。事業そのものは継続させつつ、過剰債務を切り離すことができるため、中小企業の事業再生における主要手法の一つとして位置づけられています。

2026年3月16日に第3回改定された「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(2026年4月1日適用)では、事業承継・M&Aを有事の出口手段として明示的に位置づけており、第二会社方式とM&Aを連携させる事業再生スキームへの注目度が高まっています。本書は、この第二会社方式の進め方を、債権者対応・債権放棄獲得・新会社設立のプロセスに分解して解説しており、評者(弊社・株式会社 日本財務戦略センター)の事業再生支援実務の経験からみても、現場感のある記述です。

関連して、弊社が解説した 救済型M&A の論点も併せてご参照ください。

2-2. 少額管財手続——東京地裁で予納金約20万円定額の破産手続

少額管財手続は、東京地方裁判所をはじめとする一部裁判所で運用されている、簡易・迅速な破産手続です。換価すべき重要な財産が見当たらないと裁判所が判断した場合に適用され、本書によれば、東京地裁の通常の破産管財手続では予納金が100万円超かかるのに対し、少額管財手続では20万円程度の定額で済むとされています。

これは、追い込まれた経営者にとっては、破産手続そのものに進めるかどうかを左右する重要な経済的要件です。「破産すらお金がなくてできない」という状況を避けるための、現実的な選択肢といえます。ただし、少額管財手続の適用可否は弁護士の代理人選任を前提とし、裁判所の運用や事案により異なるため、具体的な手続選択は弁護士にご相談ください。

2-3. 住宅資金特別条項——自宅を手放さずに個人再生する

住宅資金特別条項は、個人再生手続において、住宅ローン債権者との関係を維持し、自宅を手放さずに他の債務を圧縮できる制度です。裁判所「個人再生」公式ページに令和6年3月更新の最新書式が公開されており、債務者本人または弁護士・司法書士が代理して申立てを行います。

経営者にとって、自宅は単なる居住地ではなく、家族の生活基盤・配偶者の心理的安定の拠点でもあります。本書が「自宅を残す」という観点を強く打ち出しているのは、追い込まれた経営者にとって自宅保全が再起のための心理的な足場となるという、当事者経験者ならではの視点です。具体的な要件判断・申立可否は、弁護士・司法書士にご相談ください。

2-4. 給与所得者等再生——安定収入のある経営者の債務圧縮

給与所得者等再生は、個人再生手続のうち、給与その他これに類する定期的な収入を得ており、収入額の変動の幅が小さいと見込まれる個人が利用できる類型です。会社代表者であっても、安定的な役員報酬を得ている場合には対象になり得ます(具体的な要件判断は弁護士・司法書士にご相談ください)。

給与所得者等再生は、債権者の決議が不要で、可処分所得2年分以上の弁済を行うことで再生計画認可決定を受けられる点が特徴です(要件は事案により異なります)。経営者個人の負担を整理しつつ、再起の足場を残すという観点から、本書では重要な選択肢として位置づけられています。

2-5. 経営者保証ガイドラインの活用——保証債務の整理・減額交渉

「経営者保証に関するガイドライン」は、2013年12月に全国銀行協会と日本商工会議所により策定された自主ルールで、中小企業の経営者個人保証について、新規融資時の保証解除・廃業時の保証債務整理を促す枠組みです。法的拘束力はないものの、金融機関の対応の事実上の標準として機能しています。

本書は、このガイドラインを活用した保証債務の減額交渉について、橋口氏自身の5億円→1,000万円減額の経験を踏まえて解説している点が、他の事業再生実務書と一線を画しています。理論ではなく実体験に基づく記述だからこそ、追い込まれた経営者にとっての説得力が違います。

関連して、弊社が解説した 中小企業の事業再生等に関するガイドライン についての記事もご参照ください。経営者保証ガイドラインを実際に活用する際の手続選択・債権者交渉については、弁護士・税理士・認定支援機関にご相談ください。

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3. 2026年版・事業再生の最新動向——本書刊行以降のガイドライン改定と倒産現実

この章のポイント
本書刊行(2023年9月)以降、事業再生を取り巻く制度と現実は大きく動きました。2026年3月のガイドライン第3回改定、2024年度の経営者保証に依存しない新規融資が初めて過半数突破、2025年の倒産件数が12年ぶりに1万件超——本章では、書評の延長として最新動向を整理します。

3-1. 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」第3回改定(2026年3月16日/2026年4月1日適用)

「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」は、2022年4月に運用が開始された自主的な準則型私的整理手続のルールで、2024年1月に第2回改定(同年4月1日適用)、2026年3月16日に第3回改定が公表され、2026年4月1日から適用されています。

第3回改定の主なポイントは、事業承継・M&Aを有事の出口手段として明示的に位置づけたこと、そして金融機関と中小企業者の平時からの対話促進を強化したことです。これは、本書が解説する第二会社方式と、近年急速に普及した中小企業M&A実務とを、制度として接続する重要な改定といえます。

関連して、弊社が解説した 中小企業の事業再生等に関するガイドライン についての記事も、本ガイドラインの全体像理解にあわせてご参照ください。

3-2. 経営者保証に依存しない新規融資、2024年度上期に52.6%——初めて過半数突破

金融庁が2024年12月26日に公表した「経営者保証に関するガイドライン等の活用実績(2024年度上期)」によれば、民間金融機関531機関の新規融資のうち、経営者保証に依存しない融資の割合は52.6%となりました。これは初めて過半数を超えた水準です。

背景には、金融庁「経営者保証改革プログラム」(2022年12月公表)の推進と、2024年3月開始の「保証料率上乗せによる経営者保証なし融資制度」(中小企業庁)があります。経営者保証の慣行は、急速に変化しつつあります。

本書が刊行された2023年9月時点では、経営者保証の解除はまだ「努力目標」の色合いが濃かったと言えます。2026年4月時点では、新規融資の過半数が経営者保証なしとなる時代に到達しました。経営危機に陥る前の「平時」の段階で、自社の経営者保証を見直しておく重要性は、本書刊行時よりも大幅に高まっています。

3-3. 中小企業活性化協議会、2024年度支援完了4,155件

中小企業庁が2025年10月15日に公表した「2024年度 認定支援機関が実施した中小企業再生支援業務 事業評価報告書」によれば、中小企業活性化協議会の2024年度の支援完了件数は合計4,155件(プレ再生支援737件、再生支援381件含む)に達しました。2024年度上期の相談件数4,152件は前年同期比約20%増となっており、早期相談のニーズが急拡大していることがわかります。

中小企業活性化協議会は、全国47都道府県に設置された公的機関で、収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援を無料で実施しています。本書の「追い込まれる前の早期相談」というメッセージを、まさに具現化する公的相談窓口といえます。

3-4. 2025年の全国企業倒産1万261件——12年ぶりの1万件超

株式会社帝国データバンク「倒産集計 2025年報(1月〜12月)」によれば、2025年の全国企業倒産件数は1万261件で、前年比3.6%増、1万件超は2013年以来12年ぶりとなりました。さらに2025年度(2025年4月〜2026年3月)の倒産は1万425件で4年連続増加・2年連続1万件超となっています。

負債5,000万円未満の小規模事業者の倒産比率が上昇している点も特徴です。物価高・人件費上昇・人手不足が複合的に中小企業を直撃しており、本書が解説するスキームの実需は、刊行時点よりむしろ大きくなっています。

関連して、弊社が解説した ゼロゼロ融資返済と倒産増加 の記事も、現在の倒産増加の構造的背景を理解するうえでご参照ください。


4. 経営者保証を「経営危機の前」に外す——本書刊行後に整備された新制度

この章のポイント
本書は経営危機に陥った後の救済策を中心に解説していますが、刊行以降に整備された経営者保証関連の新制度は、「経営危機が深刻化する前の段階」での選択肢を大きく広げました。本章では、平時に取れる経営者保証対策を整理します。

4-1. 2024年3月開始・「保証料率上乗せ型・保証なし融資選択制度」

中小企業庁は、2024年3月15日に「保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度」を開始しました。これは、信用保証協会の保証付き融資について、保証料率を一定割合上乗せすることで、経営者個人保証を提供しない選択肢を中小企業に与える新制度です。

従来、信用保証協会の保証付き融資は経営者保証が原則でしたが、本制度により、保証料を追加で支払うことで、経営者個人の保証リスクを切り離す道が開かれました。中小企業にとっては、平時の段階での経営者保証リスクの軽減策として、有力な選択肢の一つです。

4-2. 経営者保証を解除する3要件

「経営者保証に関するガイドライン」では、経営者保証を解除・新規徴求しないための要件として、以下の3つを示しています。

この3要件は、経営危機に陥ってからではなく、「平時」のうちに整えておくべきものです。本書のスキームを使わなくて済むようにすることが、本来の理想形といえます。具体的な対策の進め方については、税理士・公認会計士・認定支援機関にご相談ください。

4-3. 金融庁「経営者保証改革プログラム」と取組事例集(2024年6月)

金融庁は2024年6月27日に「経営者保証に依存しない融資を促進するための取組事例集」を公表し、各金融機関の取組事例を集約しました。経営者保証なし融資の標準化は、金融庁の政策として加速しており、中小企業庁とも連携した動きとなっています。

本書刊行(2023年9月)以降の2年で、経営者保証を取り巻く環境は急速に変化しました。「経営危機に陥る前の段階」で、経営者保証を見直しておくことの重要性は、本書のメッセージを補強する形で高まっています。


5. 弊社の経験則からみた本書の価値——「あるよなあ」と思わせる箇所と実務評価

この章のポイント
弊社(株式会社 日本財務戦略センター)の事業再生・M&A支援の実務経験から、本書の記述と実態との整合性、そして本書が示唆する経営者へのメッセージの実務的重みを整理します。「あるよなあ」と思わせる箇所が随所にあるのが、本書の本物感です。

5-1. 第二会社方式の実務上の難所——線引きと債権者調整

第二会社方式の実務では、「何を新会社に移し、何を旧会社に残すか」の線引きが最大の難所です。優良事業・収益事業のみを新会社に移し、不採算事業・過剰債務を旧会社に残すという原則は単純ですが、実際には事業の連続性・取引先の引継ぎ・許認可の移転・従業員の雇用承継など、無数の論点が絡みます。

本書は、このプロセスを実務的な視点で分解しており、概念だけで終わらない記述となっている点が、他の事業再生本とは一線を画しています。弊社の事業再生・M&A支援の経験からも、本書の記述には「あるよなあ」と思わせる箇所が多々あり、勉強になる一冊です。

5-2. 少額管財手続の選択は弁護士判断が大きい

少額管財手続が適用できるかどうかは、最終的に裁判所の判断によりますが、その前段階で事案を組み立てる弁護士の経験と判断が大きく結果を左右します。換価すべき重要な財産がない状態を、いかに事前に整理し、裁判所に提示するか。この準備の質が、予納金100万円超か20万円かの分かれ道になります。

本書の記述だけで自分の事案に当てはめて判断するのではなく、必ず破産・倒産分野の経験豊富な弁護士に相談することが、結果の質を決めます。弁護士法72条との関係でも、具体的な手続選択は法律事務所の専門業務領域です。

5-3. 「追い込まれる前の早期相談」というメッセージの実務的重み

本書が一貫して打ち出すメッセージは、「追い込まれる前に相談する」ことです。これは、弊社の事業再生・M&A支援の実務経験からみても、最も重要なポイントです。

追い込まれてからの相談は、選択肢が極端に狭まります。資金繰りが完全に破綻してからでは、第二会社方式どころか、救済型M&Aの買い手探しすら時間が足りません。経営者保証ガイドラインを活用した保証債務減額交渉も、計画的に進めるには時間が必要です。「もう手遅れ」と「まだ間に合う」の境目は、想像以上に早く訪れます。

5-4. 救済型M&Aという選択肢——本書の延長線上にある事業承継

本書が解説する第二会社方式は、買い手が現れない場合は新会社の運営を経営者自身が継続することを前提としています。一方、買い手が見つかれば、優良事業を第三者に承継させる救済型M&Aという選択肢が広がります。

2026年3月改定の「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」が事業承継・M&Aを有事の出口手段として明示したことは、本書のスキームと現代のM&A実務との接続をさらに強化する変化です。事業の承継先を見つけることで、経営者個人は廃業時の負担を大幅に軽減でき、従業員・取引先・地域社会との関係も維持できます。詳しくは弊社が解説した 救済型M&A についての記事もご参照ください。


6. 経営危機を感じたら、まず確認すべきこと——相談先と早期行動の選択肢

この章のポイント
本書のメッセージを実践に落とし込む第一歩は、「相談先を知ること」です。中小企業活性化協議会・認定支援機関・M&A支援機関・弁護士・税理士など、利用できる相談窓口の選択肢を整理します。

6-1. 中小企業活性化協議会(全国47都道府県)——無料の公的相談窓口

最初に押さえておくべきは、全国47都道府県に設置された中小企業活性化協議会です。商工会議所等に窓口が置かれており、収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援を無料で実施しています。

「いきなり弁護士や税理士に相談するのはハードルが高い」「まず公的窓口で全体像を整理したい」という経営者にとっては、最初の一歩として最適な選択肢です。2024年度の支援完了件数4,155件という実績は、それだけ多くの中小企業が活用していることを示しています。

6-2. 認定経営革新等支援機関——税理士・公認会計士・金融機関等

認定経営革新等支援機関(通称・認定支援機関)は、中小企業庁が認定する公的支援機関で、税理士・公認会計士・弁護士・金融機関・コンサルタント等が登録されています。事業再生計画策定支援、経営改善計画策定支援などで、補助金・税制優遇の対象となる支援を提供できます。

顧問税理士が認定支援機関であるケースも多いため、まず顧問税理士に相談する流れも有効です。

6-3. M&A支援機関——救済型M&Aの選択肢を広げる

事業再生の出口として救済型M&Aを検討する場合は、M&A支援機関への相談が選択肢となります。中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録された支援機関は、一定の品質要件を満たしており、補助金(事業承継・引継ぎ補助金)の対象にもなります。

弊社・株式会社 日本財務戦略センターも中小企業庁M&A支援機関に登録されており、一般社団法人 M&A支援機関協会の正会員でもあります。事業承継・救済型M&A・第二会社方式といった事業再生関連のM&Aについて、ご相談を承っています。

6-4. 弁護士・司法書士——個別法的手続の専門家

少額管財手続・住宅資金特別条項・給与所得者等再生といった個別の法的手続については、弁護士または司法書士の代理が前提となります。事業再生・倒産分野の経験豊富な専門家を選ぶことが、結果の質を大きく左右します。

弁護士法72条・司法書士法73条により、これらの法的手続の代理は弁護士・司法書士の独占業務領域です。本書の記述だけで自己判断せず、必ず資格を持つ専門家にご相談ください。

6-5. 弊社の無料セカンドオピニオン

株式会社 日本財務戦略センターでは、事業再生・救済型M&A・事業承継について、初回相談無料・秘密厳守でご相談を承っています。中小企業活性化協議会や弁護士事務所での相談と並行して、第三者的なセカンドオピニオンとしてご活用いただくケースも増えています。

「自社にどのスキームが向いているか」「いつ相談すべきか」「どこに相談すべきか」——判断に迷う段階こそ、お気軽にご相談ください。


結び——「最後の救済策」を最初に読み、最後まで使わずに済むように

橋口貢一氏の『経営危機に陥った社長さんを守る最後の救済策』は、追い込まれた経営者にとっての「最後の救済策」を解説した書ですが、本来は、経営に行き詰まりかける前の、まだ余力のある段階で読むべき本だと、弊社は考えます。

本書のスキームは、知っているだけで使う必要のない経営に到達できるなら、それが一番です。経営者保証を「平時」に外し、財務基盤を強化し、事業承継・M&Aの選択肢を平時から準備しておく——これらは、本書のスキームを「使わずに済む」ための平時の備えです。

同時に、もし経営危機が現実のものとなった場合に、本書の知識があるかないかは、経営者個人の人生・家族の生活・従業員の雇用・取引先との関係を左右する大きな差を生みます。「最後の救済策」を最初に読み、最後まで使わずに済むように——それが本書の本来の活用法ではないかと感じます。

株式会社 日本財務戦略センターは、中小企業のオーナー経営者の皆様の事業承継・M&A・事業再生について、売り手・経営者個人の利益最大化とリスク回避を最優先する立場でご相談を承っています。弁護士・税理士・公認会計士・司法書士・行政書士等の各専門家と連携しながら、最適な進め方をご一緒に検討します。お気軽にご相談ください(初回相談無料・秘密厳守)。


よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する5問の計15問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。
本記事Q11. 橋口氏が個人保証5億円を1,000万円に減額し、自宅や公認会計士資格を守り抜いた事例は、多額の個人保証債務を抱える中小企業オーナーにとって現実的な目標となり得るのでしょうか?
A. 橋口氏の事例は、経営者保証ガイドラインや住宅資金特別条項などのスキームを複合的に活用することで、個人保証債務の減額や自宅・資格の保全が可能であることを示唆しています。ただし、個別の状況、債権者との交渉、そして裁判所の手続きによって結果は大きく異なるため、専門家との綿密な戦略立案が不可欠です。
本記事Q12. 記事で紹介されている第二会社方式や少額管財手続、住宅資金特別条項など、5つの救済スキームの中から、自社に最適なものを選ぶ際の判断基準は何でしょうか?特に少額管財手続の予納金20万円という金額は魅力的です。
A. 各スキームの選択は、企業の財務状況、債務の種類、経営者の再起への意向、そして保全したい資産(自宅や事業など)によって大きく異なります。少額管財手続は予納金が抑えられるメリットがありますが、適用には厳格な要件があり、全てのケースで利用できるわけではないため、弁護士等の専門家にご相談ください。
本記事Q13. 2026年4月1日適用の「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」改定で、事業承継・M&Aが有事の出口手段として明示されたとのことですが、これは中小企業オーナーにとってどのような意味を持つのでしょうか?
A. このガイドライン改定は、事業再生の過程において、救済型M&A(Mergers and Acquisitions)が債務整理と事業継続を両立させる有効な選択肢として、より公式に認められたことを意味します。これにより、経営危機に瀕した企業でも、事業価値を評価してくれる買い手を見つけることで、従業員の雇用維持や事業の存続を図りやすくなる可能性があります。
本記事Q14. 記事で「追い込まれる前」に取るべき5つの行動として「早期相談」が挙げられていますが、具体的にどのような兆候が見られたら、どの専門家に相談を始めるべきでしょうか?
A. 資金繰りに継続的な不安を感じ始めた、金融機関からの借入条件が厳しくなった、または経営者保証の見直しを検討する時期などが早期相談の適切なタイミングです。公認会計士、税理士、弁護士、そしてM&A仲介会社など、多角的な視点を持つ専門家ネットワークを構築し、早めに意見を聞くことが重要です。
本記事Q15. 2024年度上期に経営者保証に依存しない新規融資割合が52.6%と過半数を超えたとのことですが、今後、中小企業の融資において経営者保証は完全に不要になるのでしょうか?
A. 経営者保証に依存しない融資の割合が増加しているのは事実であり、国の政策として保証解除に向けた動きは加速しています。しかし、企業の信用力、事業計画の実現可能性、そして金融機関のリスク評価によっては、引き続き経営者保証が求められるケースも存在すると考えられます。

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本記事は、公表されている一次ソース(清文社書籍情報、金融庁・中小企業庁・全国銀行協会・裁判所の公式情報、帝国データバンク統計、書籍)に基づき、株式会社 日本財務戦略センター(中小企業庁 M&A 支援機関 登録、一般社団法人 M&A 支援機関協会 正会員)が独自の視点で構成・整理した解説記事です。記載内容は記事公開時点(2026年4月)のものであり、ガイドラインや法令の改定・運用変更により取扱いが変わる可能性があります。

個別の法務・税務・財務的判断、特に少額管財手続・住宅資金特別条項・給与所得者等再生・個人再生・破産といった法的手続の選択と進め方については、必ず弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください(弁護士法72条・司法書士法73条により、これらの代理業務は資格を有する専門家の独占業務領域です)。また、税務・会計の論点については税理士・公認会計士に、認定支援機関を通じた補助金・経営改善計画策定支援については顧問税理士または認定支援機関にご相談ください。本稿はあくまで、書評および公開情報に基づく一般的な解説を目的としています。

公開日: 2024年4月8日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

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📅 本記事の情報基準日

本記事は 2024年4月8日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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