最終更新日:2026-04-21
監修:日本財務戦略センター(JFSC) シニアコンサルタントチーム
2025年、日本の中小企業は歴史的な転換点を迎えています。休業・廃業・解散件数が過去最多の7万件を超える可能性が濃厚となり、多くの経営者が事業の幕引きという難しい決断を迫られています。本記事では、最新の統計データを基にこの深刻な実態を解き明かし、中小企業庁の見解を交えながら、経営者が取り得る「円満廃業」や「M&Aによる事業承継」という前向きな選択肢を、専門家の視点から具体的に解説します。
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第1章:統計データで見る「静かな退出」の現実
過去最多を更新し続ける休廃業・解散件数
帝国データバンクの調査によれば、2025年1~8月における全国の休廃業・解散件数は4万7,078件に達し、このペースが続けば年間で初めて7万件を突破する見込みです。[出典: 株式会社帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2025年1-8月)」]
これは、単なる数字の増加ではありません。コロナ禍で各種給付金やゼロゼロ融資(※実質無利子・無担保の融資制度)によって一時的に抑制されていた企業の退出が、支援策の終了や経済環境の変化を受けて一気に表面化していることを示しています。
特筆すべきは、その内訳です。
- 資産超過型の休廃業が64.1%:負債よりも資産が多い状態で事業を終える企業が過去最高を記録しています。これは、経営破綻(倒産)する前に、余力があるうちに廃業を決断する経営者が増えていることを意味します。
- 黒字企業の割合は49.6%に低下:一方で、直近決算が黒字だった企業の割合は、調査開始以来初めて5割を下回りました。
この二つのデータは、「黒字だが、将来の見通しは暗い。だから資産が残っているうちに事業を畳もう」という、いわゆる「あきらめ廃業」が広がっている現実を浮き彫りにしています。
経営者の高齢化と「現役世代」の退出
休廃業した企業の代表者の平均年齢は71.65歳と、5年連続で70代となっています。[出典: 同上] 長年会社を支えてきた経営者が、体力や気力の限界を感じてリタイアするケースが多いことが伺えます。
しかし、より深刻なのは「50代」(11.3%)や「60代」(19.9%)といった、本来であれば事業の中核を担うべき現役世代の退出が増加している点です。これは、後継者不足や事業の将来性への不安から、早期に事業継続を断念する経営者が増えていることを示唆しています。
> 【JFSCの現場から:Experience】 > 実務の現場でも、この傾向は顕著です。70代の経営者様から「体力的に限界だが、従業員の生活を思うと決断できない」というご相談を長年多く受けてきました。しかし最近では、60代前半の経営者様が「金利が上がる前に、有利な条件で会社を売却して、第二の人生を始めたい」と、M&Aを視野に入れたご相談に来られるケースが急増しています。時代の変化と共に、経営者の価値観も大きく変わってきていると感じます。
第2章:なぜ休廃業は急増しているのか?中小企業庁が分析する5つの要因
中小企業庁もこの事態を重く見ており、その背景には複合的な要因が絡み合っていると分析しています。[出典: 中小企業庁「2025年版 中小企業白書」]
1. 深刻化する後継者不在問題 日本の中小企業の約6割で後継者が決まっていません。特に親族内での承継が減少し、適切な後継者を見つけられないまま経営者の高齢化が進み、廃業を選択せざるを得ない状況が生まれています。
2. 経済環境の激変
- コロナ融資の返済本格化:ゼロゼロ融資の返済が始まり、資金繰りが厳しくなる企業が増加しています。
- 物価・エネルギー価格の高騰:原材料費や光熱費の上昇が利益を圧迫し、事業継続の体力を奪っています。
- 「金利のある世界」への回帰:日本銀行の金融政策転換により、借入金の金利負担が増加し、財務状況をさらに悪化させる懸念が広がっています。
3. 経営者の高齢化と健康問題 経営者の平均年齢が上昇し続ける中で、健康上の理由から事業継続が困難になるケースも少なくありません。事業承継の準備ができていないと、突然の引退がそのまま廃業に直結してしまいます。
4. 産業構造の変化とDXへの対応遅れ デジタル化やグローバル化の波に乗り切れず、旧来のビジネスモデルが通用しなくなるケースが増えています。新たな投資を行う余力もなく、将来を悲観して廃業を選ぶ経営者もいます。
5. サプライチェーンの断絶リスク 取引先が突然廃業することで、自社の事業継続が困難になる「連鎖廃業」のリスクも高まっています。特に、特定の仕入先や販売先に依存している企業は注意が必要です。
第3章:廃業は「終わり」ではない。「円満廃業」という戦略的選択
「廃業」と聞くと、ネガティブなイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、追い込まれてからの「倒産」と、計画的に事業を終了する「円満廃業」は全く異なります。中小企業庁も、経営者や地域経済へのダメージを最小限に抑える手法として、計画的な事業終了を支援する方針を打ち出しています。
「円満廃業」の具体的なメリット
- 経営者自身のために:余力があるうちに廃業することで、負債を抱えることなく、会社の資産を退職金として確保できます。これにより、安定した引退生活を送ったり、新たな事業に挑戦したりするための元手を確保することが可能です。
- 従業員のために:突然の解雇ではなく、計画的に再就職支援を行ったり、退職金を準備したりする時間を確保できます。従業員の生活への配慮を尽くすことで、長年の貢献に報いることができます。
- 取引先のために:事前に廃業を告知し、代替の取引先を紹介するなど、サプライチェーンへの影響を最小限に抑えることができます。これにより、業界内での信用を損なうことなく、事業をきれいに終えることが可能です。
円満廃業の基本的な手続き(Expertise)
円満廃業は、専門家と相談しながら計画的に進めることが重要です。一般的な流れは以下の通りです。
1. 専門家への相談:まず、顧問税理士や弁護士、事業承継の専門家などに相談し、廃業の意思を伝えます。資産状況や負債、税務上の課題などを整理し、最適なスケジュールを立てます。 2. 株主総会での解散決議:株式会社の場合、株主総会で会社の解散を決議します。同時に、清算手続きを行う「清算人」を選任します。 3. 解散・清算人就任の登記:法務局に解散の登記と清算人の登記を申請します。 4. 債権者保護手続き:官報に解散公告を掲載し、把握している債権者には個別に通知(催告)します。これは、会社に債権を持つ人々に申し出てもらうための重要な手続きです。 5. 資産の換価と債務の弁済:会社の資産(不動産、在庫、売掛金など)を売却・回収して現金化し、その資金で借入金や買掛金などの債務を返済します。 6. 残余財産の確定と分配:全ての債務を返済した後に残った財産(残余財産)を確定させ、株主に分配します。 7. 清算結了の登記と税務申告:株主総会で清算事務の承認を得た後、法務局に清算結了の登記を申請します。これで法的に会社は消滅します。併せて、税務署に最終的な確定申告を行います。
> 【JFSCの案件事例:Experience】 > ある機械部品製造業の70代の社長は、後継者がおらず廃業を考えて弊社にご相談に来られました。当初は清算手続きのご相談でしたが、弊社で財務内容を詳しく分析したところ、特定の加工技術に高い価値があることが判明。廃業ではなくM&Aによる事業譲渡をご提案しました。結果、その技術力を評価した同業他社への譲渡が成立。社長は想定以上の売却益を手にし、従業員全員の雇用も維持されました。これは、廃業と決めつける前に専門家に相談したからこそ実現できた好例です。
第4章:未来を繋ぐ「M&A」というもう一つの選択肢
廃業を考える前に、ぜひ検討していただきたいのがM&A(企業の合併・買収)による事業承継です。これは、自社を第三者に売却することで、事業・従業員・ブランドを未来に繋ぐための極めて有効な手段です。国も「事業承継・引継ぎ支援センター」を全国に設置し、中小企業のM&Aを強力に後押ししています。
M&Aの主な手法(60代の経営者様向け解説)
- 株式譲渡:最も一般的な方法です。会社の株式をすべて買い手に売却することで、経営権を丸ごとバトンタッチします。手続きが比較的シンプルで、会社はそのまま存続します。
- 事業譲渡:会社の特定の事業部門だけを選んで売却する方法です。「この事業は将来性があるから残したいが、こちらの不採算事業は手放したい」といった場合に有効です。
M&Aがもたらす大きなメリット
- 創業者利益の獲得:会社を売却することで、経営者は多額の現金(創業者利益)を手にすることができます。これは、廃業時の残余財産を大きく上回ることがほとんどです。
- 従業員の雇用維持:買い手企業のもとで、従業員は雇用を継続できます。経営者にとって、最も心強いメリットの一つです。
- 取引先との関係継続:事業が継続されるため、長年築いてきた取引先との関係も維持され、サプライチェーンの混乱を防ぎます。
- 地域経済への貢献:地域に根差した企業が存続することで、地域の雇用や経済を守ることに繋がります。
企業価値はどのように決まるのか?(Expertise)
「うちのような小さな会社に値段がつくのだろうか?」と心配される経営者様は多いですが、ご安心ください。企業価値は、単純な資産の価値だけで決まるわけではありません。一般的には、以下の3つの要素を組み合わせて総合的に評価されます。
1. 純資産:会社が保有する資産から負債を差し引いた、いわば「会社の財産」です。これが評価の土台となります。 2. 収益力:会社が将来どれだけ利益を生み出すかという「稼ぐ力」です。一般的には、年間の営業利益の3~5年分を価値として上乗せすることが多くあります。 3. 無形資産:特許や独自の技術、優良な顧客基盤、ブランドイメージなど、決算書には表れない「目に見えない価値」も評価の対象となります。
第5章:経営者が今、直面する「決断の時」
休廃業・解散の波が押し寄せる中、経営者の皆様は「事業を続けるか、終えるか」という厳しい判断を迫られています。しかし、重要なのは悲観することではなく、正しい情報を基に、最適なタイミングで行動を起こすことです。
今すぐやるべき3つのこと
1. 自社の現状を客観的に把握する まずは決算書や試算表を改めて確認し、自社の財務状況を正確に把握しましょう。そして、自社の強み(技術力、顧客基盤など)と弱み(後継者、財務体質など)を書き出してみてください。これが全ての出発点です。
2. 早期に専門家に相談する 「まだ大丈夫」「もう少し頑張れる」と思っているうちが、実は最も有利な条件で廃業やM&Aを進められるタイミングです。業績が悪化し、資金繰りが厳しくなってからでは、選択肢は著しく狭まってしまいます。公的な「事業承継・引継ぎ支援センター」や、我々のような民間のM&A専門会社など、信頼できる相談先を見つけることが重要です。
3. 「経営者保証」について知る 多くの中小企業経営者は、会社の借入金に対して個人で連帯保証をしています。国が推進する「経営者保証に関するガイドライン」を活用すれば、M&Aや廃業の際に、この個人保証を解除できる可能性があります。これが、経営者の再挑戦や安心して引退するための大きな支えとなります。
> 【JFSCの実務視点:Experience】 > 実務の現場では、決算書が赤字の会社であっても、M&Aが成立するケースは決して珍しくありません。なぜなら、買い手は特定の技術や許認可、地理的な拠点、優秀な人材など、自社にない価値を見出すからです。ご自身の思い込みで「うちの会社に価値はない」と諦めてしまう前に、一度、客観的な視点を持つ第三者に相談することが、思いもよらない可能性を拓く第一歩となります。
まとめ:未来に向けた最善の選択のために
2025年、中小企業を取り巻く環境はますます厳しさを増し、休廃業・解散件数の増加は避けられないでしょう。しかし、これは日本経済の新陳代謝の過程であり、個々の経営者にとっては、事業の終わりを前向きな「次への一歩」と捉えるチャンスでもあります。
重要なのは、孤独に悩まず、手遅れになる前に、信頼できる専門家と共に自社にとって最善の道筋を計画的に準備することです。「円満廃業」で有終の美を飾るのか、それとも「M&A」で事業と従業員の未来を繋ぐのか。その決断が、経営者ご自身の豊かなセカンドライフ、そして従業員や地域社会の未来を左右します。
日本財務戦略センター(JFSC)では、数多くの事業承継・M&Aをお手伝いしてきた経験豊富なコンサルタントが、経営者様一人ひとりの状況に寄り添った最適なご提案をいたします。初回のご相談は無料ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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【免責事項】 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件の判断は弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご確認ください。
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免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。個別案件のご相談は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご確認ください。記載内容は公開時点の情報に基づきます。
最終更新日: 2026-04-21
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。
よくあるご質問(FAQ)
📅 本記事の情報基準日
本記事は 2025年9月22日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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