2023.05.18 M&A実務

介護M&Aの最前線:超高齢社会を支える事業承継と成長戦略

介護業界のM&Aとは、超高齢社会の進展に伴う介護ニーズの拡大と、業界特有の人手不足や後継者問題、地域ごとの総量規制といった構造的課題を背景に、事業の拡大、新規参入、そして喫緊の事業承継問題を解決するための戦略的な合併・買収を指します。介護報酬改定や政策動向が直接影響するため、専門的な知見が不可欠です。

はじめに

日本は世界でも類を見ない超高齢社会に突入しており、厚生労働省の資料国立社会保障・人口問題研究所の将来推計が示す通り、介護サービスの需要は今後も拡大の一途を辿ります。しかし、この成長産業には、慢性的な人手不足、後継者難、地域ごとの総量規制といった構造的な課題が山積しています。このような背景から、介護事業者の間ではM&A(合併・買収)が活発化し、事業拡大、新規参入、そして事業承継の有効な解決策として注目されています。本記事では、M&A業界の専門家である五十嵐悠一監修のもと、介護業界のM&Aの現状と動向、そして実務上の留意点を深掘りして解説します。

なぜ介護業界でM&Aが活発化しているのでしょうか?

介護業界でM&Aが活発化する主な理由は、高齢化社会の進展による介護ニーズの増大と、業界が抱える構造的な課題にあります。高齢者人口の増加は介護サービスの需要を押し上げる一方で、介護人材の確保は依然として困難であり、多くの事業者が後継者不足に直面しています。M&Aは、これらの課題に対し、事業規模の拡大による経営基盤の強化、新たな地域やサービス領域への進出、そして事業承継の円滑化といった多角的な解決策を提供します。特に、地域包括ケアシステムの推進といった政策的な動きも、M&Aを通じたサービス連携や効率化を後押ししています。

介護業界の市場規模と課題はどのように推移していますか?

厚生労働省発表の「介護給付費等実態統計の概況」(2019年度)によると、介護給付費は約10兆8,000億円に達し、市場規模は拡大傾向にあります。これは介護ニーズの着実な増加を反映しています。しかし、この成長の裏側には深刻な課題が存在します。厚生労働省の「介護労働実態調査」(2018年時点)では、介護職員等の有効求人倍率が3.88倍と慢性的な人手不足が続き、賃金水準も全産業平均を下回る状況です。政府は「地域包括ケアシステム」の推進や介護報酬の引き上げなど、多角的な取り組みを進めていますが、人材確保の難しさはM&Aにおける事業価値評価や統合後の運営において重要な考慮事項となります。

介護報酬改定はM&Aにどのような影響を与えますか?

介護報酬改定は、介護事業者の収益構造に直接的な影響を与えるため、M&Aのバリュエーションや戦略策定において極めて重要な要素です。改定のタイミングや内容は、事業所の将来的な収益予測を大きく左右します。例えば、2021年度の介護報酬改定では、新型コロナウイルス感染症や大規模災害への対応力強化、地域包括ケアシステムの推進、自立支援・重度化防止の取り組み、介護人材の確保・介護現場の革新などが柱となりました。これらの改定は、M&Aにおいて以下のような実務的な影響を及ぼしました。

これらの改定内容は、厚生労働省の公式情報WAM NETで常に最新情報を確認し、M&A戦略に反映させることが求められます。

介護業界のM&Aはどのようなトレンドにありますか?

レコフM&Aデータベースによると、2022年における医療・介護サービス業界のM&A件数は155件と、直近4年間で増加傾向にあり、このトレンドは現在も継続しています。特に以下の分野でのM&Aが顕著です。

介護M&Aのメリットとデメリットは何ですか?

介護業界でのM&Aは、戦略的な選択であり、その両面を深く理解することが成功への第一歩です。

メリット

デメリット・注意点

以上から分かるように、介護業界でM&Aを行うことにはメリットとデメリットがあります。自社の経営状況や目的に応じて、M&Aの専門家、弁護士税理士といった各分野の専門家と相談しながら慎重に検討を進めることが成功への鍵となります。

まとめ

本記事では、超高齢社会の進展に伴い、介護業界のM&Aがどのように活発化しているか、その背景にある市場動向、介護報酬改定の影響、そしてM&Aのメリット・デメリットについて解説しました。介護事業は成長産業でありながらも、人手不足や後継者不足、複雑な規制といった多くの課題を抱えています。M&Aは、これらの課題を解決し、事業の持続的な成長を実現するための有効な戦略であり、今後ますますその重要性が高まるでしょう。M&Aを成功させるためには、業界特有の事情を深く理解し、戦略的な計画と丁寧な実行が不可欠です。M&Aをご検討の際は、ぜひ専門家にご相談ください。

よくあるご質問

介護業界のM&Aが増えているのはなぜですか?

高齢化による介護ニーズの増大と、業界特有の人手不足や後継者問題が背景にあります。M&Aは、事業規模拡大、新規参入、事業承継の解決策として活用され、政策的な後押しも増加の要因です。

介護報酬改定はM&Aの判断にどう影響しますか?

介護報酬改定は事業所の収益構造に直接影響するため、M&Aのバリュエーションや戦略策定において極めて重要です。改定内容を詳細に分析し、将来の収益予測やPMI計画に織り込む必要があります。

介護事業のM&Aで特に注意すべき点は何ですか?

最も重要なのは、異なる組織・文化・人材の円滑な融合です。また、介護保険法や総量規制などの複雑な規制への適合、市場変動リスクへの対応も不可欠であり、専門家との連携が成功の鍵となります。

公開日: 2023年5月18日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2023年5月18日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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