倒産件数、2年連続1万件超え。2025年以降を生き抜く、中小企業オーナーの決断とは
2025年の企業倒産件数が、2年連続で1万件の大台を超えました。これは単なる数字ではなく、多くの中小企業が直面する厳しい現実を映し出しています。深刻な「人手不足」、止まらない「物価高」、そして経営者の高齢化に伴う「後継者難」。これらの問題は、もはや避けて通れない構造的な課題です。多くの経営者が「うちはまだ大丈夫」と考えているうちに、選択肢は少しずつ失われていきます。この記事では、最新のデータを基に倒産の真実に迫り、長年会社を支えてこられたオーナー経営者の皆様が、会社と従業員、そしてご自身の未来を守るために「今」取るべき具体的な生存戦略、特に「事業承継」や「M&A」という選択肢について解説します。
「うちの会社は大丈夫か?」多くの経営者が抱える静かな不安
長年、身を粉にして会社を切り盛りしてこられた社長の皆様、本当にお疲れ様です。
景気の先行きが不透明なニュースが飛び交う中、「自分の会社は、この先どうなるのだろうか」と、ふと不安を感じることはありませんでしょうか。
最近、私たちがご相談を受ける複数のオーナー様から、こんな切実な声をお聞きします。 「あと数年は頑張れると思うが、その先が正直見えない」 「従業員たちの生活を考えると、簡単に会社を畳むわけにはいかない。でも、自分の体力がいつまで持つか…」
こうした不安は、決してあなた一人のものではありません。今、日本の多くの中小企業経営者が同じ悩みを抱えています。そして、その不安を裏付けるように、倒産件数は厳しい現実を示しているのです。
データが示す「倒産のリアル」:2年連続の1万件超え
まずは、客観的なデータを見てみましょう。感情論ではなく、事実を正確に把握することが、正しい経営判断の第一歩です。
2025年(1月~12月)の全国企業倒産件数は、大手信用調査会社の調査によると、
となり、2024年に続き、2年連続で1万件を超えるという極めて憂慮すべき事態となりました。これは、コロナ禍での手厚い資金繰り支援(ゼロゼロ融資など)が終了し、日本経済が「実力」を試される局面に入ったことを意味します。
過去の数字と比較すると、その深刻さがより鮮明になります。
- 2008年(リーマンショック時):1万5,646件
- 2019年(コロナ前):8,383件
- 2024年:1万6件
- 2025年:1万300件
コロナ前の8,000件台から、一気に1万件台へとステージが変わってしまったのです。
特に厳しい状況に置かれているのが、以下の業種です。
長引く人手不足やコスト高が、これらの業界を直撃している構図が浮かび上がります。
なぜ倒産は増え続けるのか?避けて通れない「3つの壁」
では、なぜこれほどまでに倒産が増えているのでしょうか。その背景には、中小企業が直面する根深い「3つの壁」が存在します。
1. 人手不足の壁:「仕事はあるのに人がいない」という悪夢
最も深刻なのが「人手不足」です。2025年の「人手不足」を理由とした倒産は、帝国データバンクの調査で過去最多を大幅に更新する427件に達しました。これは、受注があっても、それをこなす従業員がいないために事業継続を断念する、いわば「黒字倒産」予備軍が増えていることを示しています。特に、若手人材の確保が難しい建設業や運送業、介護サービスなどでこの傾向は顕著です。
2. 物価高の壁:価格転嫁できずに利益が消える
原材料費、エネルギー価格、物流費など、あらゆるコストが上昇を続けています。大企業は価格交渉力がありますが、多くの中小企業は取引先との力関係から、上昇したコストを販売価格へ十分に転嫁(てんか)できていません。結果として利益が圧迫され、じわじわと体力を奪われていきます。2025年の「物価高」倒産は949件にのぼり、2年連続で過去最多を記録しました。
3. 後継者難の壁:社長の引退が会社の終わりになる
そして、60代のオーナー経営者の皆様にとって最も身近な問題が「後継者難」です。東京商工リサーチの調査では、2025年の「後継者難」による倒産は454件と高水準で推移しています。
「息子は継ぐ気がないし、かといって従業員に任せるのも難しい」。これは、私たちが事業承継のご相談で本当によく耳にする言葉です。素晴らしい技術や地域に根差した事業があっても、引き継ぐ人がいなければ会社を清算せざるを得ない。これは、経営者個人だけでなく、日本経済全体にとっても大きな損失です。
今こそ「会社の終わり方」ではなく「会社の未来の創り方」を考える時
厳しい現実を前に、ただ手をこまねいているわけにはいきません。重要なのは、会社の体力が残っている「今」、先手を打って行動することです。選択肢は「事業を続ける」か「廃業する」かの二択だけではありません。
衝撃の事実:廃業した会社の半数以上は「黒字」だった
ここで、一つ衝撃的なデータをご紹介します。2024年に休業・廃業・解散した企業のうち、実に51.1%が「黒字」だったことが、東京商工リサーチの調査で分かっています。これは、後継者が見つからないなどの理由で、利益が出ていて事業を続けられるにもかかわらず、やむなく会社を畳んだ経営者が半数以上もいるという事実です。
裏を返せば、この51.1%の企業は、M&A(第三者への会社売却)などの手法を使えば、事業も、従業員の雇用も、取引先との関係も守れた可能性があったのです。
生存戦略としての「事業承継」と「M&A」
会社の未来を創るための選択肢として、今、真剣に検討すべきなのが「事業承継」と「M&A」です。
- 事業承継:ご子息などの親族や、信頼できる役員・従業員に会社を引き継いでもらう方法です。経営者の想いを直接伝えられるという大きなメリットがあります。
- M&A(第三者承継):親族や社内に適任者がいない場合に、外部の企業や個人に会社を買い取ってもらう方法です。近年、中小企業のM&Aは非常に活発になっています。
M&Aは「会社を身売りする」といったネガティブなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、実態は全く異なります。むしろ、
- 従業員の雇用が守られる
- 長年築いた技術やブランドが存続する
- 取引先に迷惑をかけずに済む
- オーナー経営者は、会社の株式を売却することで引退後の生活資金(創業者利益)を確保できる
など、関係者全員にとってメリットの大きい、極めてポジティブな経営戦略なのです。
国も後押しする事業承継。今すぐ始めるべき3つのステップ
「M&Aなんて、うちのような小さな会社には関係ない」と思われるかもしれません。しかし、国も中小企業の事業承継を重要な政策課題と位置づけ、様々な支援策を用意しています。
- 中小企業庁「事業承継ガイドライン」:事業承継の進め方を分かりやすく解説しています。
- 事業承継・引継ぎ支援センター:全国47都道府県に設置され、無料で専門家に相談できます。
- 事業承継・M&A補助金:M&Aにかかる専門家への依頼費用などを一部補助してくれます。
こうした制度も活用しながら、まずは以下の3つのステップから始めてみてはいかがでしょうか。
ステップ1:自社の「健康診断」を行う まずは、会社の現状を客観的に把握しましょう。決算書だけでなく、自社の強み(技術、顧客基盤など)や弱み、将来性を紙に書き出してみることをお勧めします。
ステップ2:専門家への「相談」という第一歩を踏み出す 事業承継やM&Aは、秘密保持が極めて重要です。まずは信頼できる税理士や金融機関、あるいは事業承継を専門とする仲介会社に「あくまで情報収集として」相談してみましょう。相談したからといって、すぐに何かを決めなければならないわけではありません。
ステップ3:複数の選択肢を「検討」する 専門家と話す中で、自社がどのくらいの価値で評価されるのか、どのような買い手候補がいるのか、といった具体的な情報が見えてきます。親族への承継、従業員への承継、そしてM&A。それぞれのメリット・デメリットを比較検討し、ご自身と会社にとって最良の道を探ります。
【重要】 事業承継やM&Aのプロセスには、法務や税務に関する高度な専門知識が不可欠です。手続きを誤ると、後で大きなトラブルになりかねません。必ず、経験豊富な弁護士や税理士、信頼できる専門の仲介会社といった専門家のサポートを受けながら進めてください。
結論:経営判断は、体力と気力がある「今」しかできない
倒産件数が2年連続で1万件を超えたという事実は、もはや他人事ではありません。これは、多くの中小企業にとって事業環境が根本的に変化したことを示す警報です。
会社の未来を左右するような重要な経営判断は、心身ともに健康で、冷静に物事を考えられる時にしかできません。業績が悪化し、資金繰りに追われるようになってからでは、取れる選択肢は限られてしまいます。
長年守り育ててきた大切な会社、苦楽を共にしてきた従業員、そしてご自身の引退後の人生のために。会社の未来を考える「はじめの一歩」を、ぜひ今日から踏み出してください。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。
よくあるご質問(FAQ)
📅 本記事の情報基準日
本記事は 2026年1月22日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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