2024.06.21 法令・税務

小林史明議員の公開発言から読み解く中小MA促進策の現在地——ガイドライン第3版・市場改革プラン・資格試験創設

3行まとめ


Table of Contents

はじめに——議員発言と最新政策動向を架橋する意義

この章のポイント
本記事は、Business Insider Japan掲載の小林史明議員インタビュー(2024年以前公開)を起点とし、その後2024-2025年に進展した中小M&Aガイドライン第3版・市場改革プラン・資格試験創設までの政策アップデートを、60代の中小オーナー経営者の判断材料として整理します。議員の発言は公開資料ベースに限定し、本記事内で創作・推測の引用は一切行いません。
図1:中小M&A政策タイムライン(2024年8月〜2026年3月)
令和6年8月30日
中小M&Aガイドライン第3版公表(中小企業庁)。手数料透明化・利益相反禁止・経営者保証説明義務を明文化。
令和6年12月31日
既存登録M&A支援機関の遵守宣言期限。令和7年1月以降の新規登録申請者は申請時点から第3版が即時適用。
2025年4月
中小M&Aアドバイザースキルマップ公表(中小企業庁)。専門人材の使命・倫理・行動規範・知識スキルを体系化。
2025年5月30日
令和6年度 事業承継・引継ぎ支援センター実績公表。第三者承継成約2,132件(過去最高、前年比105%)、累計12,306件。
2025年8月5日
中小M&A市場改革プラン中間とりまとめ公表。アドバイザー個人資格試験の創設、倫理規程違反時の氏名公表・登録取消方針を明示。
2025年11月
後継者不在率50.1%(株式会社帝国データバンク調査)。7年連続低下・過去最低も、小規模企業は57.3%と依然高水準。内部昇格36.1%が同族承継32.3%を初めて上回る。
2026年3月27日
令和7年度補正「中小M&A資格試験実施事業」の企画競争募集開始。資格試験運用フェーズへ移行。
出典:中小企業庁・経済産業省 各種プレスリリース/独立行政法人中小企業基盤整備機構プレスリリース/株式会社帝国データバンク調査リリース。詳細URLは記事末尾「主な一次ソース・参考資料」参照。

Business Insider Japanに掲載された小林史明衆議院議員のインタビュー(執筆時点で確認できる版)は、国内M&A促進の必要性を立法府の視点から整理した、当時としては率直な発言記録でした。スタートアップの出口戦略、Small to Small M&A(中小同士の譲渡・承継)の停滞要因、経営者保証の壁、不透明な仲介手数料——これらは現在も引き続き、中小M&A政策の中心テーマです。

ただし、議員の役職・所属委員会は時間の経過とともに変化しています。本記事執筆時点(2026年4月)では、自由民主党公式プロフィールによれば、小林議員は自由民主党中小企業・小規模事業者政策調査会 幹事長、衆議院経済産業委員会 理事、消費者問題に関する特別委員会 筆頭理事等を務めています。旧記事に記載されていた「新しい資本主義実行本部事務局長」という肩書は過去のものであり、現在の役職に更新する必要があります。

さらに重要なのは、当時の議員発言から1年半〜2年が経過した今、政策が大きく前進している点です。本記事では、議員発言の論点を出発点にしつつ、その後2024-2025年に整備された中小M&Aガイドライン第3版中小M&A市場改革プランアドバイザー資格試験といった具体的施策が、中小オーナー経営者の判断にどう影響するかを整理します。


1. 小林史明議員の現在の立場とM&A政策への関与

この章のポイント
小林史明衆議院議員(広島7区)は、2025-2026年時点で自由民主党中小企業・小規模事業者政策調査会の幹事長を務め、衆議院経済産業委員会の理事として中小企業・M&A政策の立法プロセスに直接関与する立場にあります。本章では、自民党公式プロフィールに基づく現在の役職と、Business Insider Japan掲載の公開インタビュー発言を出典明記のうえ整理します。

1-1. 2025-2026年時点の主な役職(自民党公式プロフィール)

自由民主党公式サイトの議員プロフィールによれば、小林史明議員(広島7区選出、当選5回)の本記事執筆時点における主な党内役職は以下の通りです。

また衆議院での委員会役職は、経済産業委員会 理事、消費者問題に関する特別委員会 筆頭理事等を務めています。経済産業委員会は、中小企業庁所管の中小M&Aガイドラインや市場改革プランといった政策を直接所管する委員会であり、小林議員はその審議プロセスに深く関与する立場にあるといえます。

1-2. 「新しい資本主義実行本部事務局長」は過去の肩書

旧版の本記事では、小林議員を「自由民主党 新しい資本主義実行本部 事務局長」として紹介していました。これは2024年以前の肩書であり、本記事執筆時点では既に交代しています。役職表記の鮮度は、政策論考の信頼性を左右する基本要素であり、引用時には公表時点・現時点の二段階で確認することが望まれます。

1-3. Business Insider Japanインタビューでの公開発言(出典明記)

小林議員のM&A促進論として広く参照されてきたのが、Business Insider Japan掲載のインタビュー記事です。当該インタビュー(公開発言によれば)では、おおむね以下の論点が示されていました。

これらの論点は、本記事執筆時点でも実務現場で頻繁に議論されるテーマです。本記事では以下、これらの論点が2024-2025年の政策アップデートでどこまで前進したかを、一次ソースに基づいて整理していきます。なお、議員発言の正確な内容・全文ニュアンスについては、必ずBusiness Insider Japanの当該記事原文をご参照ください。本記事の引用は、出典明記のうえ部分的な要旨整理を目的としています。


2. なぜ今、中小M&Aが国家課題なのか——2025年データで読み解く

この章のポイント
後継者不在率50.1%(株式会社帝国データバンク2025年調査)、事業承継・引継ぎ支援センター令和6年度成約2,132件(過去最高)、内部昇格36.1%が同族承継32.3%を初めて上回るなど、中小M&A・第三者承継は「特殊な選択肢」から「標準的な経営者出口」へと位置づけが変化しています。一方、地方部・小規模企業のM&Aへの心理的ハードルは依然高く、政策的支援の必要性が継続しています。

2-1. 後継者不在率50.1%——7年連続低下も、小規模企業は57.3%

株式会社帝国データバンク「全国企業後継者不在率動向調査(2025年)」(2025年11月公表)によれば、全国の後継者不在率は50.1%と、7年連続で低下し過去最低となりました。中小企業は51.2%、小規模企業は57.3%と、規模が小さくなるほど依然として高水準です。

同調査で注目されるのは、承継パターンの内訳変化です。内部昇格36.1%が同族承継32.3%を初めて上回ったと報告されており、「親から子へ」という伝統的な承継観が大きく変化しつつあります。第三者承継(M&A・社外承継)も着実に伸びており、承継選択肢の多様化が裏付けられています。

なお、当該数値は民間調査機関である株式会社帝国データバンクによる調査結果であり、政府公式統計とは異なる位置づけです。引用時には「株式会社帝国データバンク調査によれば」と出典を明記し、中小企業庁の白書統計等と併用することが望ましいといえます。

2-2. 事業承継・引継ぎ支援センター令和6年度成約2,132件(過去最高)

独立行政法人中小企業基盤整備機構の発表(2025年5月30日プレスリリース)によれば、令和6年度の事業承継・引継ぎ支援センター(全国48か所)の第三者承継成約は2,132件と、前年比105%で過去最高を更新しました。事業開始以来の累計成約件数は12,306件に達しています。

同センターは、後継者不在の中小企業と譲受希望者をマッチングする中小企業庁の委託事業であり、民間M&A仲介業者よりも公的中立性が高く、手数料も大幅に抑えられている(基本的に無料、登録民間M&A仲介事業者経由の場合のみ仲介手数料発生)点が特徴です。後継者人材バンク経由の成約も106件と過去最高を記録しています。

2-3. スタートアップ出口構造の日米差(旧データの取扱い)

旧記事で言及されていた「日本のスタートアップエグジット件数131件 対 米国918件、IPO件数89件 対 82件」という数値は、2019年時点のデータであり、Business Insider Japan掲載インタビュー内で紹介されていた背景情報です。本記事執筆時点ではすでに5年以上前のデータとなっており、最新年度の数値については、各国ベンチャーキャピタル協会の年次報告書や日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)の統計を別途ご参照ください。

ただし、日米のM&A出口比率の構造的差異という論点自体は、本記事執筆時点でも引き続き有効です。日本のスタートアップ・エコシステムにおいてM&A出口を活性化することが、ベンチャー投資の循環、人材・技術の再配置、既存産業へのイノベーション伝播のいずれにも寄与する、という認識は、政策当局・業界関係者の間で広く共有されています。

2-4. Small to Small M&Aの伸び悩みと、政策的後押しの必要性

大企業によるスタートアップ・中小企業の買収は一定程度進んでいる一方、中小企業同士の統合・承継(Small to Small M&A)は、依然として相対的に伸び悩んでいるのが実態です。後継者不在率の高い小規模企業(57.3%)にとって、第三者承継は重要な選択肢ですが、譲受側も小規模事業者である場合、買収資金調達・経営者保証・統合プロセス(PMI)(統合後経営)に関するノウハウの不足が課題となります。

中小企業庁の「中小M&A市場改革プラン中間とりまとめ」(2025年8月5日)でも、地方部・比較的小規模の中小企業においてM&Aへの不安感が依然残存していることが課題として明記されています。次章以降で扱う各種政策は、まさにこの「不安感の解消」を主目的として整備されてきたものといえます。


3. 政策の現在地——中小M&Aガイドライン第3版(令和6年8月)の要点

この章のポイント
中小M&Aガイドライン第3版(中小企業庁、令和6年8月30日公表)は、(1)手数料の透明性強化、(2)仲介者による利益相反行為の明示禁止、(3)経営者保証のM&A前相談を仲介者の説明義務に追加、(4)不適切な譲受側情報の業界共有スキーム——という4本柱を掲げています。既存登録M&A支援機関は令和6年12月31日までに遵守宣言完了が必須となり、市場の健全化が制度的に進みました。

3-1. ガイドライン第3版の4つの主要改訂点

経済産業省(中小企業庁)は令和6年8月30日、「中小M&Aガイドライン」を第2版から第3版へ改訂したことを公表しました。改訂の主要4点は以下の通りです。

3-2. 適用期限と運用上の留意点

ガイドライン第3版の適用期限は明確に設定されています。既存登録M&A支援機関は令和6年12月31日までに遵守宣言の完了が必須であり、令和7年1月以降の新規登録申請者は、申請時点から第3版が即時適用されます。

登録M&A支援機関制度は、中小企業庁が運営する公式登録制度であり、登録事業者の一覧・遵守状況は公開データベースで確認可能です。譲渡を検討するオーナー経営者は、まず候補仲介業者が登録M&A支援機関であるか、第3版の遵守宣言を完了しているかを確認することが、最初の自衛策となります。

3-3. 株式会社 日本財務戦略センターの登録状況

株式会社 日本財務戦略センター(略称JFSC、本記事の発行主体)は、中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者として登録され、一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員として活動しています。中小M&Aガイドライン第3版についても遵守宣言を完了しており、手数料透明化・利益相反禁止・経営者保証説明義務といった改訂事項に準拠した実務運用を行っています。

ただし、個別の契約条件・手数料体系・利益相反該当性等については、実際の業務委託契約締結時に必ず書面で確認・ご相談ください。本記事の記載は一般的な制度解説であり、個別契約の具体内容を保証するものではありません。

3-4. 中小M&A時の経営者保証——参考資料13の活用

中小企業庁は、ガイドライン第3版とあわせて参考資料13「中小M&A時の経営者保証の取扱いについて」を公表しています。M&A実務における経営者保証の解除・引継ぎ・新たな保証設定の判断基準が、金融機関・譲渡側・譲受側それぞれの視点で整理されており、実務担当者・専門家が参照すべき重要文書です。

経営者保証の取扱いは、譲渡側の経営者個人の人生設計に直結する論点であり、必ず顧問弁護士税理士公認会計士等の専門家と連携のうえ、複数の選択肢を比較検討することが望まれます。本記事は一般的な制度紹介を目的としており、個別判断の代替となるものではありません。

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4. 次の一手——中小M&A市場改革プランとアドバイザー資格試験(2025年8月〜2026年3月)

この章のポイント
中小企業庁は2025年8月5日に「中小M&A市場改革プラン中間とりまとめ」を公表し、中小M&Aアドバイザーの個人資格試験を中小企業庁が運営主体として創設する方針を示しました。倫理規程違反時には氏名公表・登録取消が行われ、令和7年度補正予算で実施機関の公募が2026年3月27日に開始されています。仲介者の質のばらつき問題が、制度的に解消される見通しです。

4-1. 市場改革プランの基本方針——個人レベルの品質担保へ

これまでの中小M&A支援機関登録制度は、事業者単位での登録・遵守宣言を求める仕組みでした。これに対し、2025年8月5日公表の「中小M&A市場改革プラン中間とりまとめ」は、アドバイザー個人レベルでの品質担保へと制度設計を一段深化させる方針を示しています。

具体的には、中小企業庁が運営主体となって個人資格試験を創設し、合格者の登録制度を併設します。倫理規程違反時には氏名公表・登録取消といった制裁措置が予定されており、これまで「事業者単位の自主的遵守」に依存していた品質担保の仕組みが、「個人単位の公的資格×制裁措置」という強制力のある枠組みへと再設計される方向です。

4-2. 中小M&Aアドバイザースキルマップ(2025年4月公表)

資格試験創設に先立ち、2025年4月には中小企業庁が「中小M&Aアドバイザースキルマップ」を公表しています。FA(フィナンシャル・アドバイザー)・仲介者、金融機関、公認会計士、弁護士等の有識者が議論した結果として、中小M&A専門人材に求められる使命・倫理・行動規範・知識スキルが体系化されています。

このスキルマップは、今後創設される資格試験の出題範囲・水準の基礎となる文書であり、現役のM&Aアドバイザー・仲介者にとっても自己点検のフレームワークとして活用可能です。譲渡側のオーナー経営者にとっても、仲介者・FAを選定する際の品質評価軸として参考になります。

4-3. 令和7年度補正「中小M&A資格試験実施事業」の公募開始(2026年3月27日)

2026年3月27日、中小企業庁は「令和7年度補正 中小M&A資格試験実施事業」の企画競争募集を開始しました。これは、市場改革プランで打ち出された個人資格試験の実施に向けて、令和7年度補正予算で予算措置が手当てされ、実施機関の公募段階へと運用フェーズに移行したことを意味します。

資格試験の具体的な出題科目・難易度・受験要件・合格率等は、実施機関決定後に詳細が固まる見通しです。今後の動向は、中小企業庁公式サイトのプレスリリース・委託事業情報を継続的にチェックすることをお勧めします。

4-4. 議員発言と政策進展の対応関係——仲介品質ばらつき問題の解消へ

Business Insider Japan掲載の小林議員インタビュー(公開発言によれば)では、「マッチングのみの事業者から、デューデリジェンス支援・経営フォローまで手掛ける事業者まで、サービス内容のばらつきが大きい」「最低手数料として双方から2,000万円を徴求するケースなど、明らかに異常な事例がある」といった問題意識が示されていました。

2024-2025年に進展した政策アップデート(ガイドライン第3版・市場改革プラン・資格試験創設)は、まさにこの問題意識を制度的に解消する方向で設計されています。事業者単位の遵守宣言(ガイドライン第3版)→ 個人単位の公的資格と制裁措置(市場改革プラン・資格試験)という二段階の制度強化により、仲介市場の品質ばらつきは今後数年かけて段階的に解消されていくと見込まれます。

譲渡側のオーナー経営者は、こうした制度進展を踏まえ、複数の仲介事業者・FA事業者から相見積もり・サービス内容比較を取得することが、これまで以上に容易かつ正当化される環境となります。


5. 経営者保証という実務上の壁——現場視点で整理する

この章のポイント
経営者保証は、Small to Small M&Aの最大の阻害要因として議員発言でも指摘されてきました。中小M&Aガイドライン第3版では仲介者の説明義務として明文化され、参考資料13「中小M&A時の経営者保証の取扱いについて」が別途公表されています。本章では、譲渡側・譲受側それぞれの視点から実務論点を整理します。

5-1. なぜ経営者保証はSmall to Small M&Aの壁になるのか

譲渡企業に既存融資があり、その融資に経営者保証(譲渡側オーナー個人の連帯保証)が付帯している場合、M&A交渉では以下のような構造的論点が発生します。

議員発言(公開発言によれば)でも指摘されていた通り、新規貸出における経営者保証なしの仕組みは浸透してきていますが、既存融資の経営者保証解除・承継は依然として実務上の主要論点です。

5-2. ガイドライン第3版での仲介者説明義務化

中小M&Aガイドライン第3版では、仲介者・FAは譲渡側に対して、M&A前の段階で経営者保証の取扱いについて金融機関と相談することの必要性を明示説明する義務を負うこととなりました。これにより、「契約書に判を押した後で保証問題に気づいた」という事態が制度的に防止されます。

譲渡側オーナーは、仲介契約の初期段階で、仲介者から経営者保証に関する説明を受けたか、書面で記録に残しているかを確認することが望まれます。説明がなされなかった場合、第3版違反として中小企業庁への情報提供対象となり得ます。

5-3. 参考資料13で示された実務指針

中小企業庁参考資料13「中小M&A時の経営者保証の取扱いについて」は、以下のような実務論点を整理しています。

これらの論点は、譲渡側・譲受側・金融機関の三者が事前協議を行うことで、概ね適切な解決策を見出せる構造になっています。ただし、譲渡対象企業が債務超過状態にある場合や、金融機関が複数行かつ保証額が大きい場合は、調整が長期化する傾向があります。

5-4. 実務現場での観察——複数金融機関交渉の重要性

株式会社 日本財務戦略センターが関与する中小M&A案件でも、経営者保証の取扱いは譲渡条件交渉の中盤〜後半における重要論点となります。譲渡企業が複数の金融機関から借入を行っている場合、各金融機関の保証解除に関する内規・判断基準・リスク許容度がそれぞれ異なるため、画一的な解決策は存在しません。

実務上は、(1)譲渡候補が固まった早期段階でメインバンクに事前相談、(2)他行への波及影響を整理、(3)信用保証協会の保証への切替可能性を検討、(4)必要に応じて借換え・組換えを併用、という複数アプローチを並行検討することが望まれます。これらの判断には、顧問税理士、顧問弁護士、必要に応じて公認会計士・司法書士等の各専門家との連携が不可欠です。

5-5. 譲渡側オーナーが事前準備として取れる打ち手

議員発言で「Small to Small M&Aを阻害している要因の一つは経営者保証」と指摘されている通り、譲渡側オーナーがM&A検討の初期段階から経営者保証の整理に着手することは、その後の交渉自由度を大きく広げます。

これらは、必ずしも「すぐにM&Aする」という意思決定を伴うものではなく、選択肢を確保するための平時の経営課題として取り組める論点です。具体的な進め方は、必ず顧問税理士・顧問弁護士等の各専門家にご相談ください。


6. 中小オーナー経営者の次の一手——3つの実務的論点

この章のポイント
議員発言で指摘されてきた論点と、2024-2025年の政策アップデートを踏まえ、60代の中小オーナー経営者が次の一手として検討すべき論点を3つに整理します。(1)仲介事業者の選定基準を制度進展に合わせて見直す、(2)経営者保証は平時から整理着手、(3)第三者承継は事業承継・引継ぎ支援センターも併用検討——いずれも、判断を急がず、複数の選択肢を確保しながら進めることが基本です。

6-1. 仲介事業者選定基準の再設計——ガイドライン第3版を活用する

中小M&Aガイドライン第3版の遵守は、令和7年1月以降、登録M&A支援機関にとって事実上の必須要件となりました。譲渡側オーナーが仲介事業者を選定する際の最低限のチェックリストは、以下のように整理できます。

これらの項目は、いずれも譲渡側オーナーが「率直に質問してよい論点」です。質問に対する回答が曖昧であったり、書面提示を渋る事業者は、ガイドライン第3版遵守という観点で疑問符が付きます。

6-2. 経営者保証は平時から整理着手——意思決定前にできること

経営者保証の取扱いは、M&A交渉が本格化してから着手すると、選択肢が限定されがちです。前章でも触れた通り、M&A意思決定前の平時の段階から、メインバンクとの事前相談・経営者保証ガイドライン3要件への自社充足度点検等を進めることで、将来の交渉自由度が大きく広がります。

これは、必ずしも「今すぐ売却する」という意思決定を伴うものではなく、10年後・15年後を見据えた経営者個人のリスクマネジメントとして位置づけられる論点です。後継者不在率57.3%という小規模企業の現実を考えると、選択肢を確保しておくこと自体が、平時の経営課題といえます。

6-3. 第三者承継——事業承継・引継ぎ支援センターも併用検討

第三者承継(M&A)の検討にあたっては、民間M&A仲介事業者だけでなく、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する事業承継・引継ぎ支援センター(全国48か所)の活用も並行検討する価値があります。同センターは、令和6年度に2,132件の第三者承継を成約させた公的中立機関であり、相談自体は基本的に無料、登録民間M&A仲介事業者経由のマッチング以外の費用負担は限定的です。

地域に根差した小規模事業の承継、後継者人材バンク経由の社外承継、業界・地域横断的なマッチングなど、民間仲介事業者とは異なる強みを持っています。「民間仲介事業者か、公的支援センターか」という二者択一ではなく、両者を併用しながら最適なマッチングを探るのが、現在の中小M&A実務における標準的なアプローチです。

6-4. 判断は急がず、複数の選択肢を確保する

後継者不在率50.1%、第三者承継成約2,132件(過去最高)といったマクロ数字は、確かに「中小M&Aは標準的な経営者出口になりつつある」という潮流を示しています。一方で、個別の譲渡判断は、譲渡側オーナーの人生設計・家族関係・税務・従業員の処遇・取引先への影響など、極めて個別性の高い論点を内包しています。

政策が前進し、選択肢が広がっているからこそ、判断を急がず、複数の選択肢を比較検討する時間的余裕を確保することが、中小オーナー経営者にとっての最大の自衛策となります。本記事の論点が自社に関係しそうだと感じられた方は、まずは情報収集と複数事業者との比較検討から始められることをお勧めします。


結び——議員発言の論点を、政策進展で読み直す

Business Insider Japan掲載の小林史明衆議院議員インタビューは、当時として国内M&A促進の必要性を立法府の視点から率直に整理した、貴重な発言記録でした。スタートアップ出口戦略、Small to Small M&A、経営者保証、不透明な仲介手数料——これらの論点は、本記事執筆時点でも引き続き有効な政策課題です。

そして、当時の議員発言から1年半〜2年が経過した今、政策は確実に前進しています。中小M&Aガイドライン第3版(令和6年8月)で手数料透明化・利益相反禁止・経営者保証説明義務が制度化され、中小M&A市場改革プラン(2025年8月)で個人資格試験の創設方針が示され、令和7年度補正「中小M&A資格試験実施事業」の公募(2026年3月)で運用フェーズへと移行しました。仲介市場の品質ばらつきは、今後数年かけて段階的に解消されていく見込みです。

株式会社 日本財務戦略センター(中小企業庁 M&A支援機関 登録、一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員、ガイドライン第3版 遵守宣言完了)では、中小企業のオーナー経営者の皆様の事業承継・M&A・事業譲渡について、売り手の利益最大化とリスク回避を最優先するセカンドオピニオン的な立場でご相談を承っています。経営者保証の整理、複数仲介事業者の比較検討、事業承継・引継ぎ支援センターとの併用検討など、顧問弁護士・税理士・公認会計士・司法書士・行政書士等の各専門家と連携しながら、最適な進め方をご一緒に検討します。

いつでもお気軽にご相談ください(初回相談無料・秘密厳守)。


よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する5問の計15問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。
本記事Q11. 中小M&Aガイドライン第3版で手数料透明化や利益相反禁止が明文化されたとのことですが、M&Aを検討する中小企業オーナーとして、具体的にどのような点に注意して仲介機関を選べばよいでしょうか?
A. 中小M&Aガイドライン第3版では、M&A支援機関が遵守すべき事項が詳細に定められています。特に手数料体系の明確化や、利益相反の適切な開示・回避は、支援機関の信頼性を判断する上で重要な要素となります。契約締結前に、これらの点について十分な説明を受け、ご自身の理解と納得が得られるかを確認することが肝要です。
本記事Q12. 2026年からM&Aアドバイザーの個人資格試験が創設されるとのことですが、これによりM&A支援の質はどのように変わると期待できますか?
A. M&Aアドバイザーの個人資格試験は、専門人材の知識・倫理・行動規範を体系化する中小M&Aアドバイザースキルマップに基づき、アドバイザーの専門性を客観的に評価するものです。これにより、M&A支援機関に所属する個々のアドバイザーの専門性や倫理観が向上し、結果として中小企業オーナー様へのサービス品質の安定化に寄与することが期待されます。
本記事Q13. 経営者保証がM&Aの実務上の壁と記事にありましたが、中小M&Aガイドライン第3版で「経営者保証説明義務」が明文化されたことで、M&A後の経営者保証はどのように変化するのでしょうか?
A. 中小M&Aガイドライン第3版における経営者保証説明義務は、M&A取引において経営者保証の要否やその解除に向けた取り組みについて、支援機関が丁寧に説明することを求めるものです。これにより、譲渡後の経営者保証の取り扱いに関する透明性が高まり、オーナー様がより安心してM&Aを検討できる環境整備が進むと考えられます。ただし、個別の保証解除の可否は、金融機関との交渉や買収企業の状況に依存します。
本記事Q14. 記事中で「Small to Small M&A(中小同士の譲渡・承継)の停滞」や「後継者不在率」について触れられていますが、小規模企業が第三者承継を検討する際、どのような点に留意すべきでしょうか?
A. 小規模企業における第三者承継は、事業承継・引継ぎ支援センターの成約件数が増加していることからも、有効な選択肢となっています。後継者不在率が依然として高い小規模企業では、早期に事業の強みや課題を整理し、潜在的な譲受企業にとっての魅力を明確にすることが重要です。また、内部昇格が同族承継を上回る傾向も踏まえ、多様な承継方法を視野に入れることが望ましいでしょう。
本記事Q15. 中小M&A市場改革プランで倫理規程違反時の氏名公表や登録取消方針が示されたとのことですが、M&A支援機関との間でトラブルが発生した場合、中小企業オーナーはどこに相談すればよいのでしょうか?
A. 中小M&A市場改革プランは、M&A支援機関の信頼性向上を目指すものであり、倫理規程違反への対応強化はその一環です。万が一、M&A支援機関との間で契約内容やサービスに関して疑義が生じた場合は、まず契約書を確認し、支援機関に直接説明を求めることが第一歩です。解決に至らない場合は、中小企業庁のM&A支援機関登録制度に関する窓口や、事業承継・引継ぎ支援センターにご相談いただくか、必要に応じて弁護士等の専門家にご確認ください。

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本記事は、公表されている一次ソース(自由民主党公式議員プロフィール、中小企業庁・経済産業省プレスリリース、独立行政法人中小企業基盤整備機構プレスリリース、株式会社帝国データバンク調査、Business Insider Japan掲載インタビュー)に基づき、株式会社 日本財務戦略センター(中小企業庁 M&A支援機関 登録、一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員)が独自の視点で構成・整理した解説記事です。記載内容は記事公開時点(2026年4月)のものです。

議員発言の引用は、Business Insider Japan掲載インタビュー(公開発言)に基づく要旨整理であり、議員本人の発言全文・現時点での見解を保証するものではありません。発言の正確な内容・全文ニュアンス、および現時点での議員の見解については、必ず当該記事原文および議員本人の最新公開資料・公式SNS等をご参照ください。本記事は議員発言の創作・推測引用は一切行っておりません。

個別の法務・税務・財務的判断、特に経営者保証の取扱い、M&A仲介契約の締結、事業承継スキームの選定、税制優遇措置の適用判断等については、必ず弁護士・税理士・公認会計士・司法書士・行政書士等の各専門家にご相談ください。本稿はあくまで、政策動向・制度概要・公開情報に基づく一般的な解説を目的としています。

公開日: 2024年6月21日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

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本記事は 2024年6月21日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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