ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、その対価を早期に現金化する資金調達手段です。M&Aにおいては、買収後の運転資金確保や
事業承継時のキャッシュフロー安定化など、一時的な資金ニーズに対応する有効な
選択肢として注目されています。
M&Aを検討する経営者にとって、資金調達は常に重要な課題です。特にM&A実行後の運転資金や統合コストの確保は、事業の安定と成長を左右します。こうした資金ニーズに対し、近年注目されているのがファクタリングです。
ファクタリングとはどのような資金調達手段ですか?
ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、その対価を早期に現金化するサービスです。中小企業庁↗や経済産業省↗の調査でも、中小企業の資金調達多様化の一環としてその活用が言及されており、M&Aにおける資金繰り対策としても有効な選択肢となり得ます。
基本的な仕組みは、企業が売掛債権をファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いた金額を受け取ります。その後、ファクタリング会社が買掛先から債権を回収するという流れです。
M&Aにおいてファクタリングを利用するメリットは何ですか?
- 短期での資金調達: 審査承認後、数日~1週間程度で現金化が可能で、M&A後の急な資金ニーズに対応できます。
- 担保不要: 土地や建物などの担保が不要なため、担保資産が少ない中小企業でも利用しやすいです。
- 比較的緩やかな審査基準: 金融機関融資に比べ、売掛先の信用力が重視されるため、自社の信用情報に不安がある場合でも選択肢となります。
- 売掛債権管理の負担軽減: 債権管理をファクタリング会社に委託することで、M&A後の統合プロセス(PMI)(統合後プロセス)など、本業に集中できます。
M&Aでファクタリングを利用する際のデメリットやリスクはありますか?
- 手数料が高い: 売掛債権額面の3~10%程度が一般的とされ(中小企業庁関連資料、2023年)、他の資金調達手段と比較して高コストになりがちです。これはM&A後の収益性を圧迫する可能性があります。
- 債権回収リスクの種類:
- ノンリコースファクタリング: 債権が回収不能でも損失はファクタリング会社が負担するため、M&Aのデューデリジェンス(DD)において将来リスクが明確化され、企業価値評価にポジティブな影響を与える可能性があります。
- ウィズリコースファクタリング: 債権が回収不能の場合、企業が買い戻す義務を負うなど、最終的な損失は企業が負担します。DDでは偶発債務としてリスク要因とみなされる可能性があります。
- 企業価値評価への影響: ファクタリングの利用が外部に知られると、資金繰りに窮している印象を与え、M&A交渉において企業価値評価や交渉姿勢に悪影響を及ぼすリスクがあります。割引キャッシュフロー(DCF)法では手数料が将来キャッシュフローを減少させ、マルチプル法では財務リスクが高いと見なされ、評価ディスカウントの対象となることも考えられます。
M&Aにおけるファクタリングの具体的な活用事例はありますか?
日本財務戦略センター(JFSC)がM&Aアドバイザリーとして関わった事例では、買収後のPMI期間における資金繰り安定化のためにファクタリングが活用されました。ある中小企業(A社)が同業の小規模企業(B社)を買収した際、B社の売掛金入金サイトが長く、買収後のシステム統合や人員配置に伴う運転資金増加が懸念されました。
JFSCは、買収後の資金繰り計画において、B社の主要売掛債権にノンリコースファクタリングの活用を提案。これにより、売掛金を早期に現金化し、PMI期間中の運転資金を確保。A社は統合コストを賄いつつ、新たな事業展開に集中できました。成功要因は、M&AのDD段階での早期資金繰り計画への組み込み、リスクを移転するノンリコースの選択、そしてM&A交渉への配慮(買収契約締結後のPMI期間に限定し、適切な情報開示)でした。
M&Aでファクタリングを検討する際の注意点は何ですか?
ファクタリングのコスト(手数料率、契約期間)を事前に詳細に把握し、M&A後の事業計画における採算性を慎重に検討することが不可欠です。複数のファクタリング会社から見積もりを取り、サービス内容やノンリコース/ウィズリコースの種類を明確に確認しましょう。金融庁↗が注意喚起↗するように、信頼できる事業者を選ぶことも重要です。
また、ファクタリングの利用がM&A交渉に与える影響も考慮すべきです。特にウィズリコースの場合、偶発債務として企業価値評価にマイナスに働く可能性があります。中小M&Aガイドライン第3版(2023年9月)で示される適切な情報開示の原則に従い、事前に影響を考慮し、適切なタイミングと方法で情報開示を行うことが、買い手側の懸念を払拭し、円滑な交渉を進める上で極めて重要です。
ファクタリングの利用を検討する際は、税務・財務の専門家(税理士↗など)や法務の専門家(弁護士↗など)に相談し、具体的な影響について確認することが重要です。日本政策金融公庫↗などの公的金融機関による融資も選択肢として比較検討し、総合的な資金戦略を構築することが賢明です。
よくあるご質問
ファクタリングはM&Aのどのタイミングで活用できますか?
M&A前後の資金繰り対策として活用できます。特に買収後のPMI期間における運転資金確保や、事業承継時のキャッシュフロー安定化に有効です。
ファクタリングの利用はM&Aの企業価値評価に影響しますか?
はい、影響する可能性があります。特にウィズリコースの場合、偶発債務として評価にマイナスに働くことがあります。手数料も将来キャッシュフローを減少させる要因です。
ファクタリングを利用する際に、どのような専門家に相談すべきですか?
税務・財務の専門家(税理士など)にコストや税務上の影響を、法務の専門家(弁護士など)に契約内容やリスクについて相談し、総合的な判断を仰ぐべきです。
公開日: 2024年7月8日 / 最終更新日: 2026年5月22日
執筆者
五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)
株式会社日本財務戦略センター 代表取締役
京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。
資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)
公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員
メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]
専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]
代表挨拶|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。
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この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。
会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは
無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は
弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁
中小 M&A ガイドライン(
第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の
業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は
仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁
M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は
弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて
専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については
情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは
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📅 本記事の情報基準日
本記事は 2024年7月8日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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