【この記事の結論】政府の資金繰り支援策で抑制されていた中小企業の倒産は、ゼロゼロ融資の利払い開始とインボイス制度導入を境に表面化し始めています。資金繰りが厳しさを増す前に、M&Aや事業再生スキームを早期に検討することが、事業継続と経営者個人の保証問題回避の鍵となります。株式会社日本財務戦略センター 代表取締役の五十嵐悠一が、実務で見えてきた論点を整理します。
※本記事は2022年6月時点の東京商工リサーチ発表データに基づいて執筆しています。最新の倒産動向は各機関の発表をご確認ください。
2022年5月度の倒産件数はどう推移したのか?
東京商工リサーチが発表した2022年5月の企業倒産件数(負債1,000万円以上)は前年同月比11.0%増の524件で、2か月連続で前年を上回りました。新型コロナウイルス関連倒産は前年同月比54.0%増の191件で、2020年2月の調査開始以降2番目の高水準です。
政府の資金繰り支援策で抑制されていた倒産が、いよいよ表面化し始めたシグナルと読むのが妥当です。
ゼロゼロ融資の終焉とインボイス制度はなぜ転換点なのか?
ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)は段階的に新規受付が終了し、利払いの開始フェーズへと移行しています。日本政策金融公庫のコロナ関連融資も、受付終了や条件変更が進められており、企業の資金繰りは徐々に厳しさを増しています。
政府がコロナで疲弊した企業を救済するフェーズから、市場原理に基づいた整理・統合のフェーズへ舵を切り始めている、と読むこともできるでしょう。
あわせて、国税庁が所管するインボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入も、特に免税事業者であった中小企業に大きな影響を与える可能性があります。制度対応のためのコスト増や、取引先からの契約見直しに耐えられない事業者は、廃業・解散を選択せざるを得ないケースも出てくるでしょう。
倒産増加の背景にある業種別ストレスとは?
倒産企業の内訳を見ると、サプライチェーンの影響を強く受ける製造業や、原材料費の高騰・物流コスト増の打撃を受けやすい業種が目立ちます。
飲食業では人手不足が深刻化する一方で、売上はコロナ前の水準に戻らない(特に深夜需要の消失)という二重の制約に直面しています。人件費上昇と売上不足の挟み撃ちは、現場ではかなり厳しいストレスです。
経済産業省や中小企業庁、日本銀行も物価上昇を織り込んで政策運営を進めるなか、競争力の弱い企業にとっては厳しい状況が続く可能性が高いと考えられます。
経営者が選択肢として検討すべきM&A・事業再生は?
マクロ経済レベルでは資源を集約させる必要な流れですが、経営者個人にとってはその後の人生がかかります。早期に経営戦略を再設計することが不可欠です。
選択肢の一つは、M&A(合併・買収)や資本業務提携を通じて、より強固なグループに加わり、事業継続・雇用維持・経営者保証の解除・新たな成長機会の獲得を狙うルートです。
製造業のケース:早期M&Aで雇用維持に成功した事例
当社が支援したある製造業のケースでは、コロナ禍で売上が半減し、ゼロゼロ融資で何とか事業を継続していました。利払いが開始され、原材料費の高騰も重なり資金繰りが限界に近づいたタイミングで、早期にM&Aを決断したことで事業は存続し、従業員の雇用も守ることができました。半年遅れていたら、選択肢は大きく狭まっていた可能性が高い案件です。
サービス業のケース:インボイスを契機に事業譲渡へ
別のサービス業の事例では、インボイス制度導入を機に主要取引先から契約条件の見直しを打診され、自社単独での対応が困難と判断。事業譲渡という形で、より強固なグループに加わることを選択しました。経営者個人の保証も解除され、新たなスタートを切ることができた案件です。
活用できるガイドラインと支援機関は?
M&Aや事業再生を検討する際は、以下のガイドライン・支援機関の活用が有効です。なお、契約条項・税務上の取り扱い・債務整理の個別判断については、弁護士や税理士など各分野の専門家にご相談ください。
- 中小M&Aガイドライン:中小企業のM&Aを円滑に進めるための指針
- 経営者保証に関するガイドライン:経営者保証に依存しない融資慣行・保証債務整理の指針
- 事業承継・引継ぎ支援センター:事業承継・M&Aに関する相談・支援窓口
- M&A支援機関協会:M&A支援機関の質向上と中小M&A活性化
株式会社日本財務戦略センターからのまとめ
これらの経済状況や政策動向を踏まえると、企業倒産・廃業のトレンドは今後も増加局面に入ったと考えるのが妥当です。現状維持ではなく、積極的に経営の変革を模索する姿勢が求められます。
株式会社日本財務戦略センターでは、大手法律事務所との連携により救済型M&Aを軸とした企業再生にも取り組んでいます。代表取締役の五十嵐悠一が、財務・税務・法務の論点を実務目線で整理し、貴社にとっての最適な「次の一手」をご一緒に検討します。
※M&A実務の最終判断には、弁護士・税理士・公認会計士など専門家への相談が不可欠です。日本財務戦略センター(JFSC) のM&Aセカンドオピニオン無料相談もぜひご活用ください。
よくあるご質問
ゼロゼロ融資の利払いが始まると、中小企業の経営はどう変わりますか?
実質無利子の据置期間が終わると、毎月のキャッシュアウトが増え、収益力が回復していない企業ほど資金繰りが急速に厳しくなります。返済計画の再設計や、必要に応じて私的整理・M&Aといった選択肢を、税理士・弁護士・金融機関と早期に相談することが重要です。
インボイス制度導入は、M&A検討にどう影響しますか?
免税事業者であった中小企業は、取引先から契約条件の見直しを求められ、収益構造の悪化リスクが高まります。自社単独での対応が難しい場合、事業譲渡や資本業務提携で強固なグループに加わる選択肢が現実的になり、M&A検討のきっかけとなるケースが増えています。
倒産を回避するためのM&A・事業再生は、どのタイミングで動くべきですか?
資金繰りが完全に逼迫してからでは、買い手にとっての魅力も交渉余地も大幅に減少します。売上減少や利払い負担の増加を感じた段階で、M&A支援機関や事業承継・引継ぎ支援センターに早期相談し、選択肢を整理しておくことが、経営者個人の保証問題回避にもつながります。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。
よくあるご質問(FAQ)
📅 本記事の情報基準日
本記事は 2022年6月8日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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