2022.06.08 M&A実務

コロナ禍後の倒産増加局面で中小企業はどう動くべきか?ゼロゼロ融資・インボイスを踏まえたM&A・事業再生戦略

コロナ禍後の倒産増加局面とは、政府の資金繰り支援策で抑制されていた企業倒産が、ゼロゼロ融資の利払い開始やインボイス制度導入を契機に表面化し始めた局面を指します。中小企業は、これまでの「資金繰りで凌ぐ」段階から、M&Aによる事業基盤の確保や私的整理を含む事業再生スキームの活用へと、選択肢を切り替える判断局面を迎えています。

【この記事の結論】政府の資金繰り支援策で抑制されていた中小企業の倒産は、ゼロゼロ融資の利払い開始とインボイス制度導入を境に表面化し始めています。資金繰りが厳しさを増す前に、M&Aや事業再生スキームを早期に検討することが、事業継続と経営者個人の保証問題回避の鍵となります。株式会社日本財務戦略センター 代表取締役の五十嵐悠一が、実務で見えてきた論点を整理します。

※本記事は2022年6月時点の東京商工リサーチ発表データに基づいて執筆しています。最新の倒産動向は各機関の発表をご確認ください。

2022年5月度の倒産件数はどう推移したのか?

東京商工リサーチが発表した2022年5月の企業倒産件数(負債1,000万円以上)は前年同月比11.0%増の524件で、2か月連続で前年を上回りました。新型コロナウイルス関連倒産は前年同月比54.0%増の191件で、2020年2月の調査開始以降2番目の高水準です。

政府の資金繰り支援策で抑制されていた倒産が、いよいよ表面化し始めたシグナルと読むのが妥当です。

ゼロゼロ融資の終焉とインボイス制度はなぜ転換点なのか?

ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)は段階的に新規受付が終了し、利払いの開始フェーズへと移行しています。日本政策金融公庫のコロナ関連融資も、受付終了や条件変更が進められており、企業の資金繰りは徐々に厳しさを増しています。

政府がコロナで疲弊した企業を救済するフェーズから、市場原理に基づいた整理・統合のフェーズへ舵を切り始めている、と読むこともできるでしょう。

あわせて、国税庁が所管するインボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入も、特に免税事業者であった中小企業に大きな影響を与える可能性があります。制度対応のためのコスト増や、取引先からの契約見直しに耐えられない事業者は、廃業・解散を選択せざるを得ないケースも出てくるでしょう。

倒産増加の背景にある業種別ストレスとは?

倒産企業の内訳を見ると、サプライチェーンの影響を強く受ける製造業や、原材料費の高騰・物流コスト増の打撃を受けやすい業種が目立ちます。

飲食業では人手不足が深刻化する一方で、売上はコロナ前の水準に戻らない(特に深夜需要の消失)という二重の制約に直面しています。人件費上昇と売上不足の挟み撃ちは、現場ではかなり厳しいストレスです。

経済産業省中小企業庁日本銀行も物価上昇を織り込んで政策運営を進めるなか、競争力の弱い企業にとっては厳しい状況が続く可能性が高いと考えられます。

経営者が選択肢として検討すべきM&A・事業再生は?

マクロ経済レベルでは資源を集約させる必要な流れですが、経営者個人にとってはその後の人生がかかります。早期に経営戦略を再設計することが不可欠です。

選択肢の一つは、M&A(合併・買収)や資本業務提携を通じて、より強固なグループに加わり、事業継続・雇用維持経営者保証の解除・新たな成長機会の獲得を狙うルートです。

製造業のケース:早期M&Aで雇用維持に成功した事例

当社が支援したある製造業のケースでは、コロナ禍で売上が半減し、ゼロゼロ融資で何とか事業を継続していました。利払いが開始され、原材料費の高騰も重なり資金繰りが限界に近づいたタイミングで、早期にM&Aを決断したことで事業は存続し、従業員の雇用も守ることができました。半年遅れていたら、選択肢は大きく狭まっていた可能性が高い案件です。

サービス業のケース:インボイスを契機に事業譲渡へ

別のサービス業の事例では、インボイス制度導入を機に主要取引先から契約条件の見直しを打診され、自社単独での対応が困難と判断。事業譲渡という形で、より強固なグループに加わることを選択しました。経営者個人の保証も解除され、新たなスタートを切ることができた案件です。

活用できるガイドラインと支援機関は?

M&Aや事業再生を検討する際は、以下のガイドライン・支援機関の活用が有効です。なお、契約条項・税務上の取り扱い・債務整理の個別判断については、弁護士税理士など各分野の専門家にご相談ください。

株式会社日本財務戦略センターからのまとめ

これらの経済状況や政策動向を踏まえると、企業倒産・廃業のトレンドは今後も増加局面に入ったと考えるのが妥当です。現状維持ではなく、積極的に経営の変革を模索する姿勢が求められます。

株式会社日本財務戦略センターでは、大手法律事務所との連携により救済型M&Aを軸とした企業再生にも取り組んでいます。代表取締役の五十嵐悠一が、財務・税務・法務の論点を実務目線で整理し、貴社にとっての最適な「次の一手」をご一緒に検討します。

※M&A実務の最終判断には、弁護士税理士公認会計士など専門家への相談が不可欠です。日本財務戦略センター(JFSC) のM&Aセカンドオピニオン無料相談もぜひご活用ください。

よくあるご質問

ゼロゼロ融資の利払いが始まると、中小企業の経営はどう変わりますか?

実質無利子の据置期間が終わると、毎月のキャッシュアウトが増え、収益力が回復していない企業ほど資金繰りが急速に厳しくなります。返済計画の再設計や、必要に応じて私的整理・M&Aといった選択肢を、税理士・弁護士・金融機関と早期に相談することが重要です。

インボイス制度導入は、M&A検討にどう影響しますか?

免税事業者であった中小企業は、取引先から契約条件の見直しを求められ、収益構造の悪化リスクが高まります。自社単独での対応が難しい場合、事業譲渡や資本業務提携で強固なグループに加わる選択肢が現実的になり、M&A検討のきっかけとなるケースが増えています。

倒産を回避するためのM&A・事業再生は、どのタイミングで動くべきですか?

資金繰りが完全に逼迫してからでは、買い手にとっての魅力も交渉余地も大幅に減少します。売上減少や利払い負担の増加を感じた段階で、M&A支援機関や事業承継・引継ぎ支援センターに早期相談し、選択肢を整理しておくことが、経営者個人の保証問題回避にもつながります。

公開日: 2022年6月8日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2022年6月8日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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