2023.10.18 M&A実務

債務超過寸前でもM&Aは間に合うか|廃業・自己破産を回避し顧問として残った経営者の手紙と中小企業庁ガイドラインの要点解説

債務超過寸前の経営者がM&Aで廃業・自己破産を回避できるかは、純粋な財務指標だけでなく、営業基盤・人材・取引先網などの「無形資産」が買い手から評価されるかで決まります。完全成功報酬型の仲介を選び、譲渡対価から手数料を充当できれば「費用持ち出しなし」の成立も可能で、経営者が顧問として残るアーンアウト的設計も中小M&Aの実務では珍しくありません。

【この記事の結論】債務超過寸前の経営者であっても、無形資産が評価されればM&Aで事業承継が成立し、廃業・自己破産を回避しうるケースがあります。費用持ち出しなしの成立条件、経営者保証ガイドラインの運用、顧問残留設計の実務を、株式会社日本財務戦略センター 代表取締役 五十嵐悠一が、実際に頂戴したお手紙を踏まえて整理します。

債務超過寸前でもM&Aで事業承継は本当に可能なのか?

会社経営において、市場環境の変化や予期せぬ事態により経営継続が難しくなるケースは少なくありません。中小M&Aガイドライン(経済産業省・中小企業庁)でも、後継者不在・業績悪化を抱える中小企業選択肢としてM&Aの活用が繰り返し言及されています。

本コラムでは、コロナ禍で売上が激減し、債務超過寸前まで追い込まれて廃業・自己破産を覚悟されていた経営者から株式会社日本財務戦略センターに頂戴したお手紙をもとに、「債務超過寸前でもM&Aは間に合うのか」「費用持ち出しなしはどんな条件で成立するのか」を実務目線で整理します。お手紙はご本人の許可を得たうえで、固有名詞等を一部修正して引用しています。

窮地を救ったM&A:ある経営者からの手紙

先日は弊社のM&Aを行っていただきありがとうございました。私は自分の会社を愛していましたが、だからこそ当時は何をすべきかわからず悩んでいました。何年も苦労してこの会社を育ててきましたし、従業員やお客様とも深い関係を築いてきました。会社がなくなるということを考えることができませんでした。ですが当時、会社は危機に瀕していました。

新型コロナウイルスの影響で売上が激減し、借入金も膨らんでいました。ゼロゼロ融資を最後に、銀行からの追加融資も期待できず、たぶん債務超過になりかけていたと思います。

このお手紙は、地域密着型のサービス業(従業員10名規模)を営まれていた経営者から頂いたものです。コロナ禍で売上が激減し、日本政策金融公庫等の実質無利子・無担保融資(いわゆるゼロゼロ融資)を活用したのち、その返済負担で資金繰りが圧迫されていきました。

廃業・自己破産には実は多額の費用がかかる

会社の将来に展望を見いだせず、廃業するべきか自己破産をしないといけないのか、いつも悩んでいました。どちらにしても、追加で多額の費用を支払う必要があることは薄々知っていました。廃業するにも借入金の返済や廃棄物処理の費用が必要ですし、自己破産するにも弁護士費用や手数料が必要です。

廃業の場合、従業員の退職金、在庫処分、原状回復、解体費用等が発生します。自己破産では弁護士法に基づく弁護士費用や裁判所への予納金が必要となります。経営者保証制度により経営者個人が連帯保証人となっていれば、会社の破産は個人の破産にも直結しかねません。経営者保証に関するガイドラインは保証債務整理の指針ですが、それでも個人の負担は決して軽くないのが実情です。

「費用持ち出しなし」のM&Aが成立した条件

そんな中、御社に相談することで私が費用を持ち出しせず、会社を引き継ぐことができると知りました。おかげさまでM&Aでいいお相手をご紹介して頂くことができ、従業員やお客様にも迷惑をかけることもなく、毎日悩んでいたあの日々が嘘の様です。

「費用持ち出しなし」のM&Aは、主に次の構造で実現します。

仲介報酬体系については、中小M&Aガイドラインに沿って透明性の高い手数料を提示しているM&A支援機関を選ぶことが重要です。

顧問として会社に関わり続ける選択

会社を手放したことは少し寂しいですが、気持ちが楽になったことはそれを差し引いても余りあります。おかげさまで今でも顧問として会社に携わることができますし、相談した決断は間違っていなかったと思います。

中小M&Aでは、譲渡後も売り手経営者が顧問として一定期間残ることが珍しくありません。経営者個人のノウハウ・人脈が事業の核となっているケースが多く、買い手側にとっても円滑な事業承継のために重要だからです。形式上はM&A、実質はアーンアウト的な役員留任設計と捉えられる事例も多く、売り手にとっては愛着ある会社との繋がりを保てるメリットがあります。

債務超過寸前のM&Aを成功させる3つの条件

条件1:早期に専門家へ相談すること

このお手紙の経営者が「聞くは一時の恥」と語られたように、悩みを一人で抱え込まず、早期に専門家へ相談することがM&A成功の最重要要因です。経営状況が悪化しきる前に相談することで、買い手候補の選択肢が広がり、より良い条件での成立が見込めます。事業承継・引継ぎ支援センターのような公的機関も初期相談の窓口として有効です。

条件2:適切な専門家チームを組成すること

M&Aには法務・税務・財務・労務など多岐にわたる専門知識が必要です。M&A仲介会社、弁護士(弁護士法)、税理士(税理士法)など、信頼できる専門家チームの組成が成功への近道です。中小企業のM&Aでは特に、中小M&Aガイドライン遵守とM&A支援機関協会登録の有無が選定基準として有用です。

条件3:プロセスを理解し意思決定の主導権を握ること

M&Aは概ね、相談・戦略策定 → 企業価値評価 → 買い手候補探索(秘密保持契約(NDA)締結) → 基本合意 → デューデリジェンス → 最終契約 → クロージング、という流れで進みます。各段階で売り手側として何を確認すべきかを理解しておくことで、専門家任せにせず、納得感のある意思決定ができます。

株式会社日本財務戦略センターの考え方

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役の五十嵐悠一は、公認会計士・中小企業診断士として、債務超過に近い案件であっても、無形資産(顧客基盤・従業員ノウハウ・地域内ブランド)を丁寧に整理することで買い手側評価が変わるケースを多数見てきました。M&Aは単なる会社の売買ではなく、経営者の人生・従業員の生活・事業の未来を左右する重要な決断です。一人で抱え込まず、信頼できる専門家と共に最善の道を探されることを願っています。

※M&A実務の最終判断、特に税務・法務・破産関連の論点は、税理士・弁護士・公認会計士など各分野の専門家にご確認ください。セカンドオピニオン無料相談もご活用ください。

よくあるご質問

債務超過寸前でも本当にM&Aは成立しますか?

純粋な財務指標で債務超過に近い状態であっても、顧客基盤・人材・地域内ブランドなどの無形資産が買い手から評価されれば成立する余地はあります。早期に相談し、買い手候補の幅を確保することで成立確率は上がります。

「費用持ち出しなし」のM&Aはどんな仕組みで実現するのですか?

完全成功報酬型仲介で譲渡対価から手数料を充当する形が基本です。加えて、買い手側がデューデリジェンス費用を負担する設計や、事業譲渡スキームの活用により、売り手の手元持ち出しを抑えることが可能となります。

M&A後も経営者として会社に関わり続けることはできますか?

中小M&Aでは譲渡後も売り手経営者が顧問・相談役として一定期間残るケースが少なくありません。経営者個人のノウハウや人脈が事業の核となっているため、買い手にとっても円滑な事業承継のために望ましい設計となります。

公開日: 2023年10月18日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2023年10月18日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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