2026.04.25 M&A実務

仲介契約 vs FA契約 — 「仲介=悪、FA=善」は一面的、成約時フィーが発生する限り構造は同じ。両手仲介で顧客本位を担保する5つの条件

M&A の業界記事は「中小 M&A は仲介契約が標準、FA 契約は大企業向け」「仲介には利益相反がある、FA は売り手の味方」と説明します。確かに大手 4 社(日本 M&A センター・M&A 総研・M&A キャピタルパートナーズ・ストライク)はすべて仲介契約。しかし弊社が現場で売り手のオーナー様と対話してきた経験では、「仲介=悪、FA=善」と二分する説明は一面的 です。成約時フィーが発生する限り、FA も成約させたいインセンティブは仲介と同じ。本記事では、中小 M&A ガイドライン第 3 版(2024 年 8 月改訂)が明文化した利益相反開示義務を踏まえ、両手仲介でも顧客本位で運用するための 5 つの条件を整理します。なお弊社は両手仲介ですので、本記事は「ポジショントーク」と言われることは否定しません。それも含めて、現場のスタンスをお伝えします。

1. 「中小 M&A は仲介契約が標準」は半分嘘

仲介契約と FA(ファイナンシャル・アドバイザー)契約は、報酬体系・利益相反構造・業務範囲が根本的に異なる契約形態です。

項目仲介契約FA 契約
契約の相手方売り手・買い手 双方売り手 または 買い手 一方のみ
手数料の受領双方から受領依頼者一方から受領
利益相反構造構造的に存在(GL 第 3 版が明文化)原則なし(依頼者の利益最大化)
中小 M&A 実務大手 4 社含め大半入札型・複雑案件で活用

業界の通説は「中小 M&A は仲介、FA は大企業」ですが、実態は 案件特性 によります。さらに「仲介には利益相反がある、FA は売り手の味方」と説明されることも多いですが、これも一面的な見方です。本記事では 中小 M&A ガイドライン第 3 版 をベースに、売り手の選択基準を整理します。

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2. 通説論難 — 仲介 vs FA 4 つの誤解

誤解 1:「仲介と FA は似たようなもの」

前述の表のとおり、契約の相手方・手数料受領・利益相反構造が 根本的に異なります。「どっちでも同じ」という認識で契約すると、後から「自分はどちらの利益を最大化されているのか分からない」状態になります。

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仲介の場合は 双方代理 的構造が前提なので、最初から「仲介者は中立調整役」と理解する必要があります。FA の場合は依頼者一方の利益を最大化する立場なので、相手方との交渉では明確に対立構造になります。

誤解 2:「仲介は利益相反があるから悪、FA が善」

これが最も 一面的な誤解 です。確かに利益相反バイアスのある仲介者がいることは否定しません。中小企業が指摘する構造的問題として、

これは事実です。GL 第 3 版もリピーター買い手優遇・追加手数料便宜供与を明示禁止しました。

ただし反対側にも事実があります。FA も成約時フィーが発生するなら、成約させたいインセンティブは仲介と同じ です。タイムチャージ報酬の FA ならともかく、成功報酬制の FA は構造的に「成約させたい」バイアスを持ちます。これは仲介と本質的に変わりません。

「仲介 = 悪、FA = 善」と二分する説明は、この成功報酬構造を見落としています。弊社が売り手のオーナー様にお話しすると、皆様も経営者ですので、その感覚は理解いただけることが多いです。

誤解 3:「FA は大企業案件だけ」

FA が中小 M&A でも有効なケースは存在します。

逆に、仲介が有効な中小 M&A は:

「中小 M&A はすべて仲介」「中小に FA は不要」という二分も実態に合いません。

誤解 4:「仲介を使えば手数料は安い」

仲介は売り手・買い手 双方 から手数料を取るため、案件全体の手数料総額は重くなります。FA は一方のみから取るため、単独手数料は仲介より高めですが、案件総額では仲介と大差ないケースもあります。

「仲介の方が安い」と思い込まず、案件全体の手数料総額で比較する視点が必要です。

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3. 弊社のスタンス — 両手仲介で顧客本位を担保する 5 つの条件

本セクションを読まれる前に一点、率直に申し上げておきます。弊社は両手仲介ですので、本記事の主張は「ポジショントーク」と言われることは否定しません。それも含めて、現場のスタンスをお伝えします。

弊社は両手仲介としての構造的限界を理解した上で、以下の 5 つの条件で顧客本位の運用を担保しています。

(1) 手数料開示義務の徹底(GL 第 3 版準拠)

中小 M&A GL 第 3 版が新設した手数料開示義務に従い、相手方の手数料の 算定基準・料率・最低手数料・支払タイミング を売り手に事前開示します。手数料変更(増額)の場合も都度開示します。

(2) リピーター買い手優遇の禁止(GL 第 3 版禁止行為)

GL 第 3 版が明示禁止した利益相反行為(譲り受け側からの追加手数料取得+便宜供与、リピーター買い手への便宜供与)に該当しない運用を徹底します。利益相反開示義務を契約書に明記しています。

(3) M&A 支援機関協会・特定事業者リスト閲覧資格の活用

弊社は 一般社団法人 M&A 支援機関協会(M&A 支援機関協会) 正会員として、特定事業者リスト の閲覧資格を保有しています。悪質買い手の構造的排除に活用します。

(4) アドバイザリー契約書の自主的チェック

弊社は アドバイザリー契約書に GL が求める形で利益相反開示等を明記 しています。さらに M&A 支援機関協会 に弊社のひな型を提出してチェックを受けて おり、現状、問題点を指摘されたことはありません。第三者による継続的な品質確認を受けています。

(5) セカンドオピニオン許容と提供

GL 第 3 版が売り手の権利として明示したセカンドオピニオンを、契約書に明記して許容 しています。さらに、弊社もセカンドオピニオン対応を求められれば提供 しています。第三者の目で交渉条件を確認したいというご希望は、両手仲介の利益相反を補完する重要な仕組みです。

運用方針

仲介選定でお悩みの売り手オーナー様へ

仲介・FA の選択、手数料の妥当性、利益相反開示の確認など、仲介選定の段階でご相談いただくのが最も効果的です。弊社のスタンスをご説明し、他社との比較材料もお出しします。

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初回相談無料・秘密厳守・完全成功報酬制。中小企業庁 M&A 支援機関登録事業者M&A 支援機関協会正会員(特定事業者リスト閲覧資格保有)。

4. 数年後に振り返って気づくこと

「仲介と FA の構造的な違いを知らずに署名した」「『仲介 = 悪、FA = 善』という単純化された情報を信じて、案件特性に合わない選択をした」「両手仲介の利益相反開示を確認しなかった」が、後悔した売り手の典型的な声です。

仲介・FA はどちらも一長一短です。重要なのは、成約時フィーが発生する限り、いずれも「成約させたい」インセンティブを持つ という構造を理解した上で、案件特性に合わせて選ぶこと。両手仲介を選ぶなら、手数料開示・利益相反開示・セカンドオピニオン許容を契約書に明記する仲介者 を選ぶことが核心です。

本記事は両手仲介である弊社のポジショントークの面もありますが、それも含めて透明に開示することが、信頼に足る仲介・FA の最低条件だと考えています。

公開日: 2026年4月25日 / 最終更新日: 2026年5月23日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する5問の計15問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。
本記事Q11. 貴社が両手仲介で顧客本位を担保する5つの条件を挙げられていますが、具体的にどのような点で売り手にとってメリットがあるのでしょうか?
A. 弊社では、中小M&Aガイドライン第3版に準拠した手数料開示の徹底や、リピーター買い手優遇の禁止を明示しています。これにより、売り手オーナー様は透明性の高い情報に基づき、不当な条件での成約を回避できる可能性が高まります。また、アドバイザリー契約書の自主的チェックやセカンドオピニオンの許容を通じて、より納得感のある意思決定を支援いたします。
本記事Q12. 記事で「FAは大企業案件だけ」という誤解を指摘されていますが、中小企業がファイナンシャル・アドバイザー(FA)契約を選ぶべきケースはどのような場合でしょうか?
A. 中小企業においても、売却価格最大化を最優先する競合入札プロセスや、複数の買い手候補との並行交渉で売り手の交渉力を高めたい場合にファイナンシャル・アドバイザー(FA)契約が有効となることがあります。また、上場企業やプライベートエクイティ(PE)ファンドが絡むスキーム複雑化案件では、FAの専門性が特に役立つ可能性があります。
本記事Q13. 「仲介は利益相反があるから悪、FAが善」という通説は一面的な見方だと指摘されていますが、成功報酬型のファイナンシャル・アドバイザー(FA)契約にも注意すべき点はありますか?
A. 成功報酬型のファイナンシャル・アドバイザー(FA)契約においても、成約時フィーが発生する限り、アドバイザーには案件を成約させたいというインセンティブが構造的に存在します。これは仲介契約と本質的に変わらない側面があり、必ずしも依頼者の利益最大化のみを追求するとは限りません。契約内容や報酬体系を十分に理解し、アドバイザーとの間で目的を明確に共有することが重要です。
本記事Q14. 中小M&Aガイドライン第3版で明文化された利益相反開示義務や禁止行為は、売り手にとって具体的にどのような影響がありますか?
A. 中小M&Aガイドライン第3版では、M&A支援機関に対し利益相反の開示義務が課され、リピーター買い手優遇や追加手数料便宜供与が明確に禁止されました。これにより、売り手オーナー様は仲介者の中立性についてより透明性の高い情報を得られるようになり、不当な扱いを受けるリスクが低減されることが期待されます。
本記事Q15. 「仲介を使えば手数料は安い」という誤解について、案件全体の手数料総額を比較する際の注意点を教えてください。
A. 仲介契約は売り手・買い手双方から手数料を受領するため、案件全体の手数料総額としてはファイナンシャル・アドバイザー(FA)契約よりも重くなるケースがあります。単独の手数料だけでなく、案件全体で発生する総費用を考慮し、複数のM&A支援機関から見積もりを取得して比較検討することが重要です。具体的な手数料体系や費用については、必ず各支援機関に確認し、不明な点は専門家にご相談ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2026年4月25日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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