M&A の業界記事は「中小 M&A は仲介契約が標準、FA 契約は大企業向け」「仲介には利益相反がある、FA は売り手の味方」と説明します。確かに大手 4 社(日本 M&A センター・M&A 総研・M&A キャピタルパートナーズ・ストライク)はすべて仲介契約。しかし弊社が現場で売り手のオーナー様と対話してきた経験では、「仲介=悪、FA=善」と二分する説明は一面的 です。成約時フィーが発生する限り、FA も成約させたいインセンティブは仲介と同じ。本記事では、中小 M&A ガイドライン第 3 版(2024 年 8 月改訂)が明文化した利益相反開示義務を踏まえ、両手仲介でも顧客本位で運用するための 5 つの条件を整理します。なお弊社は両手仲介ですので、本記事は「ポジショントーク」と言われることは否定しません。それも含めて、現場のスタンスをお伝えします。
1. 「中小 M&A は仲介契約が標準」は半分嘘
仲介契約と FA(ファイナンシャル・アドバイザー)契約は、報酬体系・利益相反構造・業務範囲が根本的に異なる契約形態です。
| 項目 | 仲介契約 | FA 契約 |
|---|---|---|
| 契約の相手方 | 売り手・買い手 双方 | 売り手 または 買い手 一方のみ |
| 手数料の受領 | 双方から受領 | 依頼者一方から受領 |
| 利益相反構造 | 構造的に存在(GL 第 3 版が明文化) | 原則なし(依頼者の利益最大化) |
| 中小 M&A 実務 | 大手 4 社含め大半 | 入札型・複雑案件で活用 |
業界の通説は「中小 M&A は仲介、FA は大企業」ですが、実態は 案件特性 によります。さらに「仲介には利益相反がある、FA は売り手の味方」と説明されることも多いですが、これも一面的な見方です。本記事では 中小 M&A ガイドライン第 3 版 をベースに、売り手の選択基準を整理します。
仲介手数料の業界相場と弊社の水準を比較
仲介・FA いずれを選ぶにせよ、まず手数料の業界相場と弊社の水準を比較いただくと、利益相反リスクの大きさを把握できます。
2. 通説論難 — 仲介 vs FA 4 つの誤解
誤解 1:「仲介と FA は似たようなもの」
前述の表のとおり、契約の相手方・手数料受領・利益相反構造が 根本的に異なります。「どっちでも同じ」という認識で契約すると、後から「自分はどちらの利益を最大化されているのか分からない」状態になります。
仲介の場合は 双方代理 的構造が前提なので、最初から「仲介者は中立調整役」と理解する必要があります。FA の場合は依頼者一方の利益を最大化する立場なので、相手方との交渉では明確に対立構造になります。
誤解 2:「仲介は利益相反があるから悪、FA が善」
これが最も 一面的な誤解 です。確かに利益相反バイアスのある仲介者がいることは否定しません。中小企業庁が指摘する構造的問題として、
- 売り手 = 一回限りのビジネス
- 買い手 = 複数回のビジネス(リピーター)
- → 仲介者は買い手の意向を強く反映する誘因を持つ
これは事実です。GL 第 3 版もリピーター買い手優遇・追加手数料便宜供与を明示禁止しました。
ただし反対側にも事実があります。FA も成約時フィーが発生するなら、成約させたいインセンティブは仲介と同じ です。タイムチャージ報酬の FA ならともかく、成功報酬制の FA は構造的に「成約させたい」バイアスを持ちます。これは仲介と本質的に変わりません。
「仲介 = 悪、FA = 善」と二分する説明は、この成功報酬構造を見落としています。弊社が売り手のオーナー様にお話しすると、皆様も経営者ですので、その感覚は理解いただけることが多いです。
誤解 3:「FA は大企業案件だけ」
FA が中小 M&A でも有効なケースは存在します。
- 競合入札プロセス:売却価格最大化を最優先する場合
- 複数買い手候補との並行交渉:売り手の交渉力を最大化したい場合
- スキーム複雑化案件:上場企業・PE 絡み・株式交換等
逆に、仲介が有効な中小 M&A は:
- 友好的 M&A:売り手・買い手ともに同族中小企業の場合
- 成約スピード優先:仲介の方が交渉がまとまりやすい
- 売り手 = 株主の同族企業:意思決定が単純な場合
「中小 M&A はすべて仲介」「中小に FA は不要」という二分も実態に合いません。
誤解 4:「仲介を使えば手数料は安い」
仲介は売り手・買い手 双方 から手数料を取るため、案件全体の手数料総額は重くなります。FA は一方のみから取るため、単独手数料は仲介より高めですが、案件総額では仲介と大差ないケースもあります。
「仲介の方が安い」と思い込まず、案件全体の手数料総額で比較する視点が必要です。
仲介選定の交渉を事前にシミュレーション
仲介・FA の選択、手数料の交渉、利益相反開示の確認、セカンドオピニオン取得など、仲介選定プロセスを弊社の M&A 交渉ロープレシミュレーター で事前に練習いただけます。
3. 弊社のスタンス — 両手仲介で顧客本位を担保する 5 つの条件
本セクションを読まれる前に一点、率直に申し上げておきます。弊社は両手仲介ですので、本記事の主張は「ポジショントーク」と言われることは否定しません。それも含めて、現場のスタンスをお伝えします。
弊社は両手仲介としての構造的限界を理解した上で、以下の 5 つの条件で顧客本位の運用を担保しています。
(1) 手数料開示義務の徹底(GL 第 3 版準拠)
中小 M&A GL 第 3 版が新設した手数料開示義務に従い、相手方の手数料の 算定基準・料率・最低手数料・支払タイミング を売り手に事前開示します。手数料変更(増額)の場合も都度開示します。
(2) リピーター買い手優遇の禁止(GL 第 3 版禁止行為)
GL 第 3 版が明示禁止した利益相反行為(譲り受け側からの追加手数料取得+便宜供与、リピーター買い手への便宜供与)に該当しない運用を徹底します。利益相反開示義務を契約書に明記しています。
(3) M&A 支援機関協会・特定事業者リスト閲覧資格の活用
弊社は 一般社団法人 M&A 支援機関協会(M&A 支援機関協会) 正会員として、特定事業者リスト の閲覧資格を保有しています。悪質買い手の構造的排除に活用します。
(4) アドバイザリー契約書の自主的チェック
弊社は アドバイザリー契約書に GL が求める形で利益相反開示等を明記 しています。さらに M&A 支援機関協会 に弊社のひな型を提出してチェックを受けて おり、現状、問題点を指摘されたことはありません。第三者による継続的な品質確認を受けています。
(5) セカンドオピニオン許容と提供
GL 第 3 版が売り手の権利として明示したセカンドオピニオンを、契約書に明記して許容 しています。さらに、弊社もセカンドオピニオン対応を求められれば提供 しています。第三者の目で交渉条件を確認したいというご希望は、両手仲介の利益相反を補完する重要な仕組みです。
運用方針
- 中小企業庁 M&A 支援機関登録事業者 として GL 第 3 版を遵守
- 株式譲渡契約書(SPA) 同様 意向ヒアリング → ひな形提供 → 売り手確認 で非弁行為リスク回避
- 顧問弁護士チェック必須推奨
- 重要事項説明書(GL 第 3 版で標準化)で利益相反構造を売り手に事前開示
仲介選定でお悩みの売り手オーナー様へ
仲介・FA の選択、手数料の妥当性、利益相反開示の確認など、仲介選定の段階でご相談いただくのが最も効果的です。弊社のスタンスをご説明し、他社との比較材料もお出しします。
初回相談無料・秘密厳守・完全成功報酬制。中小企業庁 M&A 支援機関登録事業者・M&A 支援機関協会正会員(特定事業者リスト閲覧資格保有)。
4. 数年後に振り返って気づくこと
「仲介と FA の構造的な違いを知らずに署名した」「『仲介 = 悪、FA = 善』という単純化された情報を信じて、案件特性に合わない選択をした」「両手仲介の利益相反開示を確認しなかった」が、後悔した売り手の典型的な声です。
仲介・FA はどちらも一長一短です。重要なのは、成約時フィーが発生する限り、いずれも「成約させたい」インセンティブを持つ という構造を理解した上で、案件特性に合わせて選ぶこと。両手仲介を選ぶなら、手数料開示・利益相反開示・セカンドオピニオン許容を契約書に明記する仲介者 を選ぶことが核心です。
本記事は両手仲介である弊社のポジショントークの面もありますが、それも含めて透明に開示することが、信頼に足る仲介・FA の最低条件だと考えています。
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免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。
よくあるご質問(FAQ)
📅 本記事の情報基準日
本記事は 2026年4月25日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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