2022.09.06 M&A実務

M&Aに対する経営者の意識調査:世代間ギャップと事業承継の未来

M&Aに対するイメージとは、経営者が事業承継や成長戦略としてのM&Aをどのように捉えているかを示す意識のことです。特に中小企業では、世代や経験によってその認識に大きな差があり、事業の未来を左右する重要な要素となります。本稿では、最新の調査データに基づき、このイメージの変遷と実務上の課題を深掘りします。

中小企業のM&Aを専門に手掛ける日本財務戦略センター(JFSC)代表の五十嵐悠一です。これまで100件以上のM&A成約をご支援してきた経験から、ビジネスパーソン向け雑誌DIMEで発表された経営者500名を対象とした「経営課題・M&Aに関する意識調査」の結果を、M&Aアドバイザーとしての実務経験と独自の視点から深く考察します。M&Aは事業の継続・発展のための戦略的選択肢であり、従業員の雇用維持や取引先との関係性強化、さらには地域経済への貢献といった多面的なメリットを持つことを、本稿を通じてご理解いただければ幸いです。

この記事の結論:本稿では、当該テーマの実務上の論点判断材料を整理し、中小企業の経営者・後継者の方が次の一手を検討するための観点をまとめています。個別判断は、税理士弁護士等の専門家にご相談のうえご検討ください。

M&Aに対する「マイナスイメージ」の実態

なぜ約3割の経営者はM&Aに抵抗を感じるのか?

DIMEの調査によると、M&Aに対して26.5%の経営者がマイナスイメージを抱いていると回答しています。この数字は、M&Aが単なる「会社売却」や「身売り」といったネガティブなイメージで捉えられている可能性を示唆しています。多くの経営者は、M&Aが事業の継続・発展のための戦略的選択肢であり、従業員の雇用維持や取引先との関係性強化、さらには地域経済への貢献といった多面的なメリットを持つことを十分に認識していないのかもしれません。

特に、長年築き上げてきた会社を手放すことへの心理的抵抗や、M&A後の変化に対する漠然とした不安が、このマイナスイメージの背景にあると私自身の経験からも強く感じます。これは、M&Aプロセスにおける情報不足や、信頼できるアドバイザーとの出会いの機会が限られている現状も影響していると考えられます。M&Aは、適切なパートナーと戦略的な視点を持つことで、むしろ事業を次世代へ繋ぎ、さらなる成長を促すポジティブな選択肢となり得るのです。信頼できるM&Aアドバイザーや事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関の活用も、こうした誤解を解消し、M&Aを前向きに検討する上で非常に有効です。

中小企業庁がレコフに依頼して調査したデータが、2021年の中小企業白書に記載されています。また、M&Aの信頼性向上に向けた取り組みとしては、中小M&Aガイドラインも策定されており、M&Aを検討する際の重要な指針となります。

世代間で異なるM&Aへの意識変化

若手経営者ほどM&Aに前向きなのはなぜか?

中小企業白書 第2-3-54図は、経営者の年齢別に10年前と比較したM&Aに対するイメージの変化を示しています。これを見ると、買収・売却(譲渡)のいずれにおいても、経営者年齢が若い企業ほど「プラスのイメージになった」とする割合が高いことが分かります。特に買収については、全ての年代で「マイナスのイメージになった」とする割合は5%以下と低く、M&Aが成長戦略として広く認識されていることが伺えます。

売却(譲渡)に関しても全世代でイメージは良化していますが、経営者年齢が高まるほど「プラスのイメージになった」と「マイナスのイメージになった」の差が縮まる傾向にあります。これは、若年層が新しい環境への適応に比較的柔軟であるのに対し、中高年層では変化への適応に対する懸念が強まる傾向と相似形だと感じています。

ベテラン経営者が抱くM&A後の不安とは?

M&Aアドバイザーとして多くの経営者様とお話しする中で、特に事業承継を検討されるベテラン経営者の方々からは、「M&Aで会社を譲った後、従業員はどうなるのか」「自分の築き上げた文化が失われるのではないか」といった、M&A後の変化に対する漠然とした不安の声をよく耳にします。また、個人の連帯保証がM&Aによってどうなるのかといった、経営者保証ガイドラインに関する懸念も少なくありません。

こうした不安は、長年培ってきた事業への愛着や責任感の表れであり、M&Aが単なる金銭的な取引ではなく、人と事業、そして地域社会の未来を繋ぐものであることを示唆しています。

売り手経営者の不安を解消し、M&Aを成功させるには

買い手との事前議論で何を確認すべきか?

ベテラン経営者の不安を解消するためには、M&Aのプロセスだけでなく、譲渡後の事業運営や従業員の処遇について、買い手候補と事前に深く議論し、具体的なイメージを共有することが極めて重要です。例えば、先日ご支援した製造業B社のケースでは、譲渡契約書に従業員の3年間の雇用維持を明記し、さらに譲渡後も社長が1年間顧問として残ることで、現場の混乱を最小限に抑え、事業承継を円滑に進めることができました。また、買い手企業との間で、既存の事業所を維持し、地域経済への貢献を継続する旨の合意も得られ、売り手経営者様の長年の想いを形にすることができました。

信頼できるM&Aアドバイザーの役割とは?

M&Aを成功に導くためには、信頼できるM&Aアドバイザーの選定が不可欠です。私自身も、M&A後の統合プロセス(PMI)まで見据えたアドバイスを通じて、売り手経営者様の不安を軽減し、前向きな決断をサポートすることに注力してきました。JFSCは、M&A支援機関協会の会員として、中小M&Aガイドラインに則った公正かつ透明性の高いM&A支援をお約束します。M&A実務の判断には専門家との相談が不可欠です。JFSCではM&Aセカンドオピニオン無料相談を承っておりますので、ご遠慮なくお問い合わせください。

よくあるご質問

M&Aにマイナスイメージを持つ経営者はどれくらいいますか?

DIMEの調査によると、経営者の約26.5%がM&Aに対してマイナスイメージを抱いています。これは「会社売却」や「身売り」といったネガティブな捉え方や、M&A後の変化への不安が背景にあると考えられます。

世代によってM&Aへの考え方はどう違いますか?

中小企業白書によると、若手経営者ほどM&Aに対して「プラスのイメージになった」と回答する割合が高い傾向にあります。一方、ベテラン経営者は従業員の処遇や企業文化の維持など、M&A後の変化に対する不安を抱きやすい傾向が見られます。

M&A後の従業員や事業の継続が不安な場合、どうすれば良いですか?

M&A後の従業員の雇用維持や事業継続については、買い手候補と事前に深く議論し、具体的な合意を形成することが重要です。信頼できるM&Aアドバイザーと共に、譲渡契約書への明記やPMI(M&A後の統合プロセス)を見据えた計画を立てることをお勧めします。

公開日: 2022年9月6日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2022年9月6日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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