2020.11.21 M&A実務

M&Aによる会社譲渡を成功に導く専門家指南:失敗パターンと回避策

M&A(Mergers & Acquisitions)とは、企業の合併・買収を指し、近年では事業承継の有力な選択肢として中小企業も推進しています。特に会社譲渡においては、売り手にとって一生に一度の経験となることが多く、買い手との情報格差や交渉力の差から失敗に繋がるケースも少なくありません。本記事では、M&Aを成功に導くための具体的な戦略と注意点を専門家の視点から解説します。

M&Aによる会社譲渡は、経営者にとって人生で一度あるかないかの重要な決断です。後継者問題、事業再編、アーリーリタイアなど、その目的は多岐にわたりますが、初めての経験ゆえに多くの落とし穴が存在します。買い手側がM&Aの経験を重ねる一方で、売り手側はノウハウ不足から不利な状況に陥りやすく、望まない結果に終わるケースも少なくありません。本記事では、五十嵐悠一監修のもと、M&Aの専門家として、会社譲渡を成功に導くための具体的な失敗パターンとその回避策を、プロセスに沿って解説します。中小企業庁が推進するM&Aガイドラインも踏まえ、皆様のM&Aが円満に、そして最適な形で実現するよう支援します。

M&Aで会社を売却する際のよくある失敗例とその回避方法

M&Aは「一つとして同じケースはない」と言われるほど、個別の事情やタイミング、関係者の感情によって千差万別のアクシデントが発生します。しかし、よくあるアクシデントはパターン化できます。以下の8つの主要ステージにおける失敗例と回避策を事前に把握することで、M&A成功の可能性を高めることができるでしょう。

M&Aを検討せず廃業を選ぶとどのようなリスクがありますか?

M&Aを検討しないまま廃業を決断することは、従業員や取引先の承継機会を失うだけでなく、オーナーの手元に残る資金が大幅に減少するリスクがあります。廃業には退職金や違約金などの費用が発生し、法人に純資産があったとしても、M&Aを行った場合と比較して手取りが減る可能性は極めて高いです。中小企業庁もM&Aを事業承継の有力な選択肢として推進しており、政府の支援も手厚くなっています。実際に、後継者不在で廃業を考えていた地方の精密部品製造業(従業員約30名、売上高3億円)の社長様がM&Aを選択した結果、大手機械メーカーの子会社となり、従業員の雇用と技術継承を実現し、数千万円の譲渡対価も得られました。M&Aは「ハゲタカ」や「乗っ取り」といった旧来のイメージとは異なり、人手不足解消や拠点確保を目的とした円満な承継が主流です。

M&Aの検討はいつから始めるのが最適ですか?

納得感のあるM&Aを実現するためには、中小M&Aガイドラインでも言及されている通り、半年から1年程度の期間を見込むのが一般的です。健康上の理由などで期限が決まっている場合、「まだ1年ある」と悠長に構えていると、十分な買い手候補を比較検討する時間がなくなり、交渉で不利な立場に立たされる可能性があります。例えば、健康上の理由で半年以内に譲渡を希望した地方の建設業(従業員15名)の社長様は、検討開始が遅れたため、希望価格より20%低い価格で譲渡せざるを得ませんでした。また、2年後、3年後の譲渡を考えている場合でも、業界の売上低下や従業員の退職、経営環境の悪化といった突発的な事象を考慮すると、早期に検討を開始し、選択肢を広げることが賢明です。客観的な視点からアドバイザーに相談し、最適な時期を見極めることが重要です。

会社売却の目的を明確にしないとどうなりますか?

「何のためにM&Aで会社を売るのか」という目的を明確にしないと、買い手選定や交渉の軸がぶれ、後悔する結果に繋がりかねません。例えば、「従業員のため」にM&Aを検討したにもかかわらず、「譲渡価格」を最優先して異業種の買い手を選んでしまうと、統合プロセス(PMI)(M&A後の統合プロセス)がうまくいかず、事業縮小や従業員のリストラが発生するリスクがあります。実際に、従業員雇用維持を優先しつつ高額提示の買い手を選んだ結果、数年後に事業縮小に至った事例もあります。目的が「価格優先」であれば、その前提で交渉期間を長めに設定し、経営を維持する戦略が求められます。事前に目的を整理しておくことで、後述する「当初決めていた条件を変えてしまう」といった失敗も未然に防ぎ、一貫したM&A交渉が可能になります。

M&Aアドバイザーの選定で失敗しないためのポイントは何ですか?

M&Aを個人単独で進めることは、価格設定の妥当性判断、感情的な交渉、相手方の主張の検証、契約書チェックなど、多岐にわたる専門知識が求められるため、推奨されません。M&A仲介やFA(ファイナンシャルアドバイザー)の活用は、専門的な知見と経験に基づき、売り手の利益を最大化するために不可欠です。日本の中小企業M&Aでは、中小M&Aガイドラインでも言及されている通り、仲介形式が多く採用されます。これは、時価純資産価額をベースとした値決めが主流であり、価格交渉の幅が限定的であるため、人間関係を含め話がまとまりやすい仲介が成約率を高める傾向にあるためです。

アドバイザー選定の際は、以下の点に注意しましょう。

譲渡価格の設定で失敗しないためにはどうすれば良いですか?

譲渡価格の設定はM&Aの成否を左右する重要な要素です。日本財務戦略センター(JFSC)が独自に構築した過去5年間(2019年~2023年)の成約事例データベースの分析では、同業種・同規模の企業であっても譲渡価格が5倍程度変動するケースが確認されており、企業の無形資産、市場環境、交渉力など多様な要因が複雑に絡み合います。買い手企業は「相場感」を持っており、根拠のない高額な価格設定は、買い手候補の選定を困難にし、不必要に多くの買い手にアプローチする必要が生じ、情報漏洩のリスクを高めます。以前、相場とかけ離れた高額設定に固執した社長様が、半年以上買い手が見つからず、事業環境悪化により当初より低い価格でしか売却できなかった事例があります。専門家と連携し、客観的な企業価値評価に基づいた現実的な価格設定を行うことが、M&Aを成功に導く鍵となります。

よくあるご質問

M&Aの検討はいつから始めるべきですか?

納得のいくM&Aには半年から1年程度の期間を要します。健康上の理由や事業環境の変化を考慮し、余裕を持った早期の検討開始が、有利な条件を引き出す鍵となります。専門家への相談で最適な時期を見極めましょう。

M&A仲介会社を選ぶ際の重要なポイントは何ですか?

担当者の実績と専門性、手数料体系の透明性が重要です。M&A支援機関協会への登録有無も確認し、独占契約の解除条件も事前に確認しましょう。信頼できる仲介会社が成功への第一歩です。

会社売却の目的を明確にするメリットは何ですか?

目的を明確にすることで、買い手選定の軸が定まり、交渉中の条件変更による失敗を防げます。「従業員の雇用維持」や「創業者利益の最大化」など、優先順位を明確にし、後悔のないM&Aを実現しましょう。

公開日: 2020年11月21日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2020年11月21日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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