2020.10.15 M&A実務

企業再生スキーム6選とM&A:リスケ・DDS・DES・債権放棄・会社分割・事業譲渡の使い分け

企業再生スキームとは、過剰債務や資金繰り悪化に陥った企業が、債権者との合意や法的手続を通じて事業を継続させるための再構築手法の総称です。リスケ・DDS・DES・債権放棄・会社分割・M&Aスキームの6種類が代表的で、財務状況・連帯保証の有無・債権者構成・事業の優良度合いによって最適解が変わります。単発の手段ではなく、事業改善の本質的な取り組みと組み合わせて初めて効果を発揮するため、専門家との連携が不可欠です。

【この記事の結論】過剰債務に苦しむ企業の再生には、リスケ・DDS・DES・債権放棄・会社分割・M&Aスキームの6つの選択肢があり、財務状況・連帯保証・債権者構成によって最適解が変わります。単独のスキームで完結することは稀で、事業改善との連動が不可欠です。

事業再生で検討すべきスキームとは何ですか?

株式会社日本財務戦略センター(JFSC)には、過剰債務に苦しむ経営者からのご相談を多数いただきます。一般的なM&A仲介は譲渡価格で取扱規模の大きな案件を優先する傾向がありますが、当社は様々な案件を理念として取り扱うため、業績悪化局面でのご相談も多いのが実情です。

結論からお伝えすると、企業再生はスキーム選びだけで完結する話ではありません。経費削減・売上回復・キャッシュフロー改善といった本業改善が最優先で、その上で財務面の調整手段としてスキームを選択するのが王道です。以下では実務で頻出する6つの再生スキームを順に解説します。

1. リスケジュール:返済条件の見直し

リスケジュール(リスケ)は、金融機関と協議し既存債務の返済期間延長や一時的な元金据置を取り付ける手法です。金融庁中小企業の資金繰り支援を促してきた経緯があり、特に経営環境急変時に広く活用されてきました。手続は、金融機関に対して直近の財務状況と事業改善計画を提示し、返済条件の見直しを要請するのが基本フローです。

【メリットと課題】当面のキャッシュフローを確保し、事業継続のための時間を稼げる点が最大の利点です。ただし、債務総額が減るわけではないため、その間に抜本的な収益改善を実現しなければ根本解決にはなりません。建設業の関与先で、受注減退による資金繰り逼迫をリスケで凌いでいる間に経費精査と新規顧客開拓に注力し、翌年度には自力で返済再開に至った事例があります。リスケは「時間稼ぎ」と割り切り、その間に事業構造を変える強い意思と実行力が問われます。

2. DDS(デット・デット・スワップ):劣後ローンへの転換

DDSは、既存の債務を、返済順位が低い「劣後ローン」に振り替えるスキームです。一定要件を満たす「資本性劣後ローン」と認定されると、金融機関の自己資本比率規制上は資本とみなされ、当該企業の財務指標が改善したと評価されることがあります。

【メリットと課題】債務総額は減らさずに自己資本比率を改善できる点が魅力です。一方で、財務コベナンツ(特約条項)が課されることが多く、違反した場合は劣後性が外れたり一括返済を求められたりするリスクがあります。帝国データバンク東京商工リサーチの統計でも、中小企業におけるDDSの利用件数は限定的で、適用には金融機関側のスタンスも大きく影響します。

3. DES(デット・エクイティ・スワップ):債権の株式化

DESは、企業が抱える債務を、その企業の株式に振り替えるスキームです。例えば、役員借入金が膨張し債務超過に陥った企業で、その役員借入金を株式に振り替えることにより、自己資本を厚くし債務超過を解消する用途で使われます。会社法に基づく現物出資手続として整理されます。

【メリットと課題】自己資本の直接的増強による財務指標の劇的改善が見込めます。一方、券面額と時価評価額の差額が「債務消滅益」として認識され、国税庁取扱通達上、法人税が課税される可能性があります。繰越欠損金で相殺できる場合もありますが、相殺できない場合はキャッシュアウトを伴うリスクがあるため、税務面のシミュレーションが事前に不可欠です。中小企業庁もDESを有効な選択肢の一つとして位置付けつつ、税務影響と金融機関の意向を踏まえた慎重な適用を推奨しています。

4. 債権放棄:債権者の合意に基づく債務減免

債権放棄は、債権者から債務の一部または全部の免除を受けるスキームで、私的整理と法的整理の二系統があります。私的整理では債権者との直接交渉のうえ、経営者保証ガイドラインに沿った対応により個人保証問題の解決にもつながる可能性があります。法的整理では、民事再生法に基づく再生手続や会社更生法に基づく更生手続が活用され、裁判所の関与の下で債権カットが認められます。

【メリットと課題】債務の大幅圧縮による事業継続の確実性が最大のメリットです。一方、債権者の合意取付けは難易度が高く、債務消滅益の課税問題も発生するため、税理士弁護士など独占業務を担う専門家との連携が必須です。経済産業省が推進する中小企業活性化協議会など公的機関の活用も有力な選択肢となります。

5. 会社分割:優良事業の承継で再生

会社分割は、財務状況が悪化した企業から優良事業のみを別会社に承継させ、過剰債務は元会社に残して破産・清算で処理する手法です。新設分割と既存会社への吸収分割の二パターンがあり、どちらも優良事業を切り離して再生を図る点で共通します。

【メリットと課題】事業と雇用を維持しつつ過剰債務を整理できますが、債権者の合意を欠く分割は詐害行為と見なされ取消請求の対象となる可能性があります。経済合理性の説明と債権者協議が前提です。中小M&Aガイドライン第3版でも、債権者の同意を得たうえでの会社分割は「中小企業事業再生計画」として優遇措置の対象となり得るとされています。

6. M&Aスキーム:資本注入または事業売却による再生

M&Aスキームでの再生は、外部からの資本注入や事業譲渡を通じて財務状況を改善し、事業継続を図る手法です。会社分割と類似しますが、第三者資本の参画によって新たな成長基盤が構築される点が特徴です。

【主なバリエーション】

【メリットと課題】外部資本と経営資源の導入で抜本的な再生が可能ですが、資産譲渡が低廉な場合は詐害行為と認定される可能性があります。中小M&Aガイドライン第3版に沿った客観的かつ適切な評価が必要であり、連帯保証の解除問題はM&A実務の重要論点となります。当社では、関与先の財務状況に応じて、ケースバイケースで具体的な再生プランをご提案しております。

※業種責任:本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的な正確性を保証するものではありません。実際にスキームを実施する場合は、弁護士法税理士法に沿って、各専門家への相談を行ってください。

株式会社日本財務戦略センター(JFSC)代表取締役・五十嵐悠一は、過去10年間で50件以上の事業再生・M&A案件を支援してきました。過剰債務に苦しむ経営者の皆様には、まず本業の改善を最優先にしつつ、上記6スキームから最適な組み合わせをご提案します。M&A実務の判断には専門家との相談が不可欠です。JFSCのM&Aセカンドオピニオンサービスもあわせてご検討ください。

よくあるご質問

リスケと債権放棄ではどちらを優先的に検討すべきですか?

まずはリスケで時間を確保し、本業改善計画を実行するのが基本です。それでも返済原資が確保できない場合に、債権放棄や法的整理を検討します。財務状況や債権者構成によって最適解は異なるため、税理士・弁護士など専門家との連携が不可欠です。

DESを行うと税金が発生するのはなぜですか?

DESでは券面額と時価評価額の差額が「債務消滅益」として認識され、法人税課税の対象となる可能性があります。繰越欠損金で相殺できる場合もありますが、相殺しきれないとキャッシュアウトを伴うため、事前の税務シミュレーションが必須です。詳細は税理士にご相談ください。

会社分割やM&Aスキームで詐害行為とされないために注意すべき点は?

債権者の同意取付けと、客観的・合理的な事業評価が前提となります。中小M&Aガイドライン第3版に沿った手続を行い、評価の透明性と債権者協議の記録を残すことが重要です。中小企業活性化協議会等の公的機関の活用も有効な選択肢となります。

公開日: 2020年10月15日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2020年10月15日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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