【この記事の結論】株式会社日本財務戦略センター(JFSC)代表取締役・五十嵐悠一は、M&Aアドバイザーとして、Batonzの「M&A Batonz」(39万8千円〜)に自動付帯される表明保証保険を、定額化された買収監査と保険の組み合わせにより小規模M&A市場のリスクを軽減する革新的なスキームと評価しています。買い手にとっては個人M&A・小規模M&Aの選択肢として真摯に検討に値する仕組みです。
M&AプラットフォームのBatonzから「小規模M&A向け表明保証保険」がリリースされました。本記事では、この革新的な仕組みについてM&A実務に携わる立場から解説します。
Batonzの小規模M&A向け表明保証保険とは何ですか?
【小規模M&A向け表明保証保険「M&A Batonz」とは】
中小M&Aにおいて、譲渡企業の表明保証違反を理由とする買い手の損害を補償するための保険です。「バトンズDD(企業調査)」を実施した場合、追加費用なしで自動付帯されます。リスクが「バトンズDD」で事前に把握されたものを除き、表面化していなかったリスクによる損害が買収後に発生した場合に保険で補償されますので、買い手は安心してM&Aを進められます。譲渡契約書の表明保証条項のうち、税務と労務に関する項目が補償対象となり、300万円を上限として補償を受けることができます。
そもそもDDと表明保証の基礎を整理してください
買収監査(DDと呼ばれます)とは、M&A実行時において、企業価値を評価するために財務・法務・税務などの運営状況を確認し、企業評価を行う作業です。買収監査が行われたら売り手から正式に書面で諸条件が提示され、双方合意のうえで基本合意書が締結されるという、極めて重要なフェーズになります。
当社でもM&Aアドバイザーとして数多くの案件に携わってきた経験から、DDは単なるリスク洗い出しに留まらず、売り手と買い手がM&A後の事業統合を共有する「将来に向けた地図の共同作成」であると確信しています。一般的には金額調整の最終判断を行うための作業と考えられがちですが、中小M&Aガイドライン第3版(2023年9月改訂)でもその重要性が強調されている通り、M&Aの成否を分ける鍵となります。
では「表明保証」とは何でしょうか。シティユーワ法律事務所の解説を引用すると「表明保証とは、ある時点(通常は、契約時とクロージング時)における契約当事者に関する事実、契約の目的物の内容等に関する事実について、当該事実が真実かつ正確であることを契約当事者(主に売主側)が表明し、相手方に対して保証するものである」と定義されます。会社法に基づく株式取引の信頼性を担保するうえで重要な要素です。
例えば、従業員の給与残業代を大丈夫だと支払っていると買収監査時に説明されていたにもかかわらず、サービス残業として未払いとなっていた、というケースが該当します。実際、当社が関与したM&A案件でも、DD時に把握しきれなかった労務問題がクロージング後に顕在化し、表明保証違反として処理が必要になったケースが発生しています。このような事態は、買い手にとって予期せぬコストや事業運営上のリスクとなり得ます。
バトンズの表明保証保険スキームの位置付けは?
前置きが長くなりましたが、今回の小規模M&A向け表明保証保険は、その表明保証を保険によって担保するという商品です。
通常、M&A案件は複雑で個々の企業にスペシャリティがあり、個別の要素が多いため一般化することは困難で、小額の案件において金額の買収監査費用と金額の保険料を支払って担保する、という発想は実務上ハードルが高いものでした。今回、バトンズからは「小規模なM&Aはある程度買収監査を行うポイントは同じである(こちらが正しいかどうかではないでしょうか)」と割り切り、共通する部分を網羅する買収監査の指示書などをかたく作成し、買収監査のコモディティ化を行うと考えられます。
そして、こちらが保険としてユニークなところなのですが、保険を売るのではなく、買収監査にあわせて保険が付帯している(付帯保険と言います。クレジットカードに勝手についている損害保険みたいな感じですね)スキームを取り、概要のように買収監査で担保できる範囲について300万円を上限として保険をセットしました。
M&A実務の現場視点で整理すると、ある程度数こなすところは定型の保険で、超えてくる以上の金額や範囲については任意保険で、という区分けで言えば自動車保険と任意保険のような位置付けにあたると私は理解しています。Batonzご担当の大谷氏とのSNSでのやりとりからも、この理解は正しいと確認しています。
DD費用とバトンズの価格設定は妥当ですか?
なお小規模M&A向け表明保証保険「M&A Batonz」(という、買収監査保険付帯買収監査、と言ったほうが正確だと思います)の費用はなんと39万8千円。
M&A支援機関協会や中小企業庁が公開している統計、および買収監査・M&Aアドバイザーファームのウェブサイトで費用を調査したところ、一般的な小規模M&Aの買収監査費用は100万円から数百万円とされており、これを39万8千円という価格設定は、その半額以下であり、非常に費用対効果が高いと言えます。
もちろん定型的な買収監査では読み取れないところは保険対象外としていますというスキームではあるため、複雑性を持っている老舗の他社に適しているのか、というところはあるかと思いますが、ある一定のレベルにとっては十分な内容だと思います。
このスキームはM&A市場にどのような影響をもたらしますか?
このBatonzのスキームは、買収監査(DD)の標準化とコモディティ化により、これまでよりもM&A取引のトラブルなどは軽減できると思いますし、さらにマーケットの活性化につながると思います。これは経済産業省が推進する中小企業の事業承継・引継ぎ支援センターを通じた事業承継支援の観点からも、非常に意義深い取り組みと言えるでしょう。
もちろん、トラブルの大半の発生は損害金(損害金は支払われた保険金の発生額に比例します)があるので、今回DDに参加させてもらえなくなる中小は厳しい中小と認定され、淘汰される可能性もあります。また個別案件でしか発見できない複雑な要素を診る公認会計士・税理士や弁護士はさらに先頭部隊になっていくと考えられます。
まただいぶ話は戻りますが、買収監査で現在大きいトラブルが起きる要因については特別補償などで担保するなどの調整が必要になりますが、それができないお家芸が成り立つでしょう。
逆にバトンズからはトラブルを少ない(あるいは補償できる)案件を回せるということでさらにブランド力を高め、プラットフォーム上での案件を集約するでしょうし、プラットフォーム外からもDD及び保険の利用について問い合わせは増えると考えます。
当社ともこの流れについてはしっかりと寄り添いつつ、M&A市場の活性化に貢献していきたいと考えております。
株式会社日本財務戦略センター(JFSC)代表取締役・五十嵐悠一は、損害保険会社に勤務した経験から、M&Aにおけるリスクヘッジの重要性を肌で感じております。今回の動きは大手損害保険会社の意向の、その知識と経験に裏打ちされたものだと理解しております。当社でもM&Aセカンドオピニオンサービスをはじめ、買い手・売り手双方の立場でリスク管理を支援しております。
※M&A実務の判断には専門家との相談が不可欠です。JFSCのM&Aセカンドオピニオンも合わせてご相談を承っております。
よくあるご質問
「M&A Batonz」の保険はどこまで補償してくれるのでしょうか?
譲渡契約書の表明保証条項のうち、税務と労務に関する項目が対象で、上限300万円まで補償されます。バトンズDDで事前把握済のリスクは対象外で、買収後に発覚した未把握リスクによる損害が補償対象となります。詳細条件は契約時に必ず確認してください。
DDと表明保証保険はどう使い分ければよいですか?
DDは取引前のリスク特定と事業統合の事前準備のための作業、表明保証保険はDDで把握しきれなかったリスクが事後に顕在化した際の金銭的補償の仕組みと整理されます。両者は補完関係にあり、小規模M&Aではバトンズのように一体提供される設計が普及しつつあります。
39万8千円という価格は本当に安いと言えるのでしょうか?
一般的な小規模M&Aの買収監査費用が100万円から数百万円とされる中で、買収監査と表明保証保険がセットで39万8千円というのは費用対効果が極めて高い設定です。ただし定型化されたDDで読み取れない複雑な論点は対象外となるため、案件の特性に応じて公認会計士・税理士・弁護士など独占業務を担う専門家への追加相談を検討すべきです。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。
よくあるご質問(FAQ)
📅 本記事の情報基準日
本記事は 2020年10月22日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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