この記事の要点
- 1.社会福祉法↗人は株式会社と違い、法律で売買が固く禁じられています。
- 2.法人の財産は個人のものではなく、解散時には国のものになるからです。
- 3.「実質的に買える」という話は危険で、贈収賄で逮捕された事例も。
【M&A|社会福祉法人、宗教法人】 結論「社福はダメ絶対!」な理由と、業界に突きつけられた自粛勧告
長年、地域のために尽くしてこられた大切な事業を、次の世代にしっかりと引き継ぎたい。そうお考えの中小企業のオーナー様へ。
まず結論から申し上げます。株式会社を売買するようなM&Aの手法で、社会福祉法人を売ったり買ったりすることは法律で固く禁じられています。 また、宗教法人についても株式会社が買収することはできず、同じ宗教法人同士の合併しか認められていません。
なぜなら、これらの法人は利益を追求する会社とは根本的に異なり、社会全体の利益(公益性)のために存在するからです。そのため、財産は個人のものではなく、安易な売買は絶対にできません。本記事では、その明確な理由と、法律で認められた正しい事業承継の方法を、わかりやすく解説します。
なぜ、適正な承継が「不適切な取引」へと変質し、重大な結果を招くのか?
弊社にも「後継者がいない社会福祉法人を買い取れないか」「宗教法人を譲り受けたい」といったご相談が寄せられることがございます。しかし、その都度、制度上の難しさをご説明しております。
一部のブローカーなどから「理事長を交代させれば、実質的に経営権を握れる」「法人の資産を自由に使える」といった、誤った情報や危険な提案がなされるケースがあるようです。しかし、こうした行為は法律の趣旨に反するだけでなく、最悪の場合、刑事事件に発展する極めて危険なものです。
1. 法律上「できること」(適正な手続き)
法律で認められている、透明性の高い「次世代への橋渡し」の方法は存在します。
社会福祉法人の場合 社会福祉法人同士であれば、合併や事業譲渡が可能です。これは社会福祉法 第48条で定められており、手続きの詳細は厚生労働省↗が公開する「合併・事業譲渡等マニュアル」に沿って進める必要があります。後継者不在の解決や経営基盤の強化を目的とした、正当な手続きです。
宗教法人の場合 宗教法人も、同じ宗教法人同士での合併が可能です。ただし、宗教法人法 第33条に基づき、都道府県知事や文部科学大臣といった所轄庁(しょかつちょう:監督する役所)の厳しい認証が必須となります。事業目的を変えるような合併は認められません。
2. 法律上「できないこと」(不適切な手口)
次に、絶対に手を出してはいけない不適切な手口です。これらは法人の私物化につながる行為であり、行政も厳しく監視しています。
- 株式会社による買収や、個人による「買取り」
- 理事長のポストを金銭で売買し、経営権を移す行為
- 法人の財産(不動産や預金など)を個人の利益のために流用すること
特に、理事長の交代を条件にお金を渡す行為は、法人の公益性を著しく損なうものです。実際に、社会福祉法人の理事長選任をめぐり、3,500万円もの金銭が動いた贈収賄事件で逮捕者も出ています。行政は「社会福祉法人の事業展開に係るガイドライン」などで健全な運営を求めており、違反した法人名を公表する制度(社会福祉法 第56条第5項)も存在します。これらは、業界全体に対する「自粛勧告」と言えるでしょう。
なぜ「社福の売買」は法律でブロックされているのか?
なぜ、株式会社のように簡単に売買できないのでしょうか。理由は大きく3つあります。
1. そもそも「売るもの(持分)」が存在しない
株式会社のM&Aは、会社の所有権である「株式(持分)」を売買することで成立します。しかし、社会福祉法人や宗教法人は非営利組織であり、そもそも売買の対象となる「持分」という概念が存在しません。 法人は誰か一個人の「持ち物」ではないのです。
2. 理事長への金銭授受は「贈収賄」のリスク
前述の通り、理事長のポストを金銭で譲り受けることは、法人の私物化そのものです。法人の代表という公的な立場を金で買う行為であり、贈収賄という重大な犯罪にあたる可能性があります。絶対に避けなければなりません。
3. 最後は「国」に帰属する運命
決定的な理由として、社会福祉法人が万が一解散した場合、残った財産(残余財産)は役員や関係者に分配されることはありません。社会福祉法 第47条第2項により、定款に特別な定めがなければ、すべて国庫(国の財産)に帰属すると定められています。つまり、法人の財産は、最後まで社会のために使われるべきものであり、決して私物化できない仕組みになっているのです。
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本稿の内容は一般的な情報提供を目的としており、特定の法人や個別の状況に対する法務、税務、会計上のアドバイスを提供するものではありません。具体的な事業承継をご検討の際は、必ず弁護士↗、税理士↗、社会福祉士などの専門家にご相談ください。
LAST UPDATED 2026年04月15日 最新の法令・税制、および業界の動向に基づき、情報を更新しています。
公開日: 2026年1月19日 / 最終更新日: 2026年5月22日
執筆者
五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)
株式会社日本財務戦略センター 代表取締役
京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。
資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)
公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員
メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]
専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]
代表挨拶|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。
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この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する5問の計15問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。
会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは
無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は
弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁
中小 M&A ガイドライン(
第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の
業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は
仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁
M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は
弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて
専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については
情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは
所在地を問わない無料相談をご利用ください。
本記事Q11. 社会福祉法人を株式会社のように売買できないとのことですが、具体的にどのような点が株式会社のM&Aと異なるのでしょうか?
A. 社会福祉法人は非営利組織であり、株式会社のような「株式(持分)」が存在しないため、所有権を売買するM&Aは成立しません。また、法人の財産は個人のものではなく、解散時には社会福祉法第47条第2項に基づき国庫に帰属する運命にあります。
本記事Q12. 記事で言及されている「理事長を交代させれば実質的に経営権を握れる」といった提案は、なぜ危険なのでしょうか?
A. 理事長のポストを金銭で売買する行為は、法人の公益性を著しく損なうものであり、贈収賄罪に問われるリスクがあります。実際に、過去には理事長選任をめぐる3,500万円もの金銭授受で逮捕者が出た事例も存在します。
本記事Q13. 後継者不在の社会福祉法人や宗教法人が、事業を次世代に引き継ぐための法的に認められた方法はありますか?
A. 社会福祉法人の場合、社会福祉法第48条に基づき、他の社会福祉法人との合併や事業譲渡が認められています。宗教法人も宗教法人法第33条により、同じ宗教法人同士の合併が可能ですが、都道府県知事や文部科学大臣といった所轄庁の厳しい認証が必要です。
本記事Q14. 社会福祉法人の不適切な運営や取引に対して、行政はどのような対応を取るのでしょうか?
A. 行政は「社会福祉法人の事業展開に係るガイドライン」などで健全な運営を求めており、違反した法人に対しては社会福祉法第56条第5項に基づき法人名を公表する制度も存在します。これは、業界全体に対する「自粛勧告」とも言えるでしょう。
本記事Q15. 社会福祉法人の事業承継を検討する際、どのような専門家に相談すべきでしょうか?
A. 社会福祉法人や宗教法人の事業承継は特殊な法規制が伴うため、一般的な株式会社のM&Aとは異なる専門知識が求められます。具体的なご検討の際は、必ず弁護士、税理士、社会福祉士などの専門家にご相談いただき、適切な手続きを踏むことが重要です。
📅 本記事の情報基準日
本記事は 2026年1月19日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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