2020.08.27 M&A実務

個人M&A成功の鍵は「価格」より「経営力」:低価格案件の落とし穴とデューデリジェンスの重要性

個人M&Aとは、個人が事業承継や新規事業参入を目的に中小企業や小規模事業を買収する手法です。近年、「300万円M&A」といった低価格案件が注目を集めますが、その真の成功は初期の譲渡価格の安さではなく、買収後の経営手腕と事業を成長させる能力に大きく依存します。安易な価格追求はリスクを伴うため、事業の本質的な価値と自身の経営能力を冷静に見極めることが不可欠です。

【この記事の結論】個人M&Aにおいて、譲渡価格の安さは魅力的に映るかもしれませんが、真に重要なのは「買収後の事業を経営し、成長させる力」です。初期の価格は、その後の経営努力によって十分にキャッチアップ可能であり、安さに飛びつく前に自身の経営覚悟と体制を整えることが成功への第一歩となります。

なぜ「低価格M&A」が注目されるのでしょうか?

「300万円で会社を買おう!」といった書籍が話題となる背景には、深刻化する中小企業の事業承継問題があります。中小企業庁の調査でも、後継者不在を理由とした廃業が増加傾向にあり、M&Aがその解決策の一つとして期待されています。M&A仲介の現場では「300万円では手数料にもならない」という意見も聞かれますが、M&Aは相対取引であり、売り手と買い手の合意があれば、それが価格となります。

しかし、仮に「300万円」で譲り受けができたとしても、次に問われるのは「その会社を経営できるか」という根本的な問題です。もし経営に自信がなければ、売り手も安心して会社を託すことは難しいでしょう。価格の安さだけに目を奪われると、その後の事業継続性や成長性という本質を見失うリスクがあります。

M&A成功の鍵は「譲渡価格」より「経営力」にあるのはなぜですか?

M&Aにおけるバリュエーション(譲渡価格)は、譲渡後の経営努力によって収益や利益を増やし、十分にキャッチアップできるものだと私は考えています。中小M&Aガイドライン第3版でも、M&Aの成功には譲渡後の統合プロセス(PMI)が極めて重要であると指摘されています。つまり、M&Aの真の価値は、初期の譲渡価格だけでなく、その後の経営努力によって創出されるものなのです。

これは、譲受企業様が「経営ができる(ハンドリングができる)」ことが大前提となります。事業承継・引継ぎ支援センターなども、M&A後の円滑な事業運営に向けた支援の重要性を強調しています。私自身、過去には価格面での合意を優先し、譲渡後のPMIが計画通りに進まず、譲受企業様が苦戦されるケースを目の当たりにしました。この経験から、価格以上に「譲受企業様がその事業を本当に運営できるのか」という、経営の継続性と成長性を見極めることの重要性を痛感しています。

当社のM&A支援では、たとえ双方が合意していても、譲受企業様が長期的に事業を成長させられると判断できる場合に限り、案件を進めます。大手企業やPEファンドがM&A案件を評価する際も、単なる価格だけでなく、事業の持続可能性、シナジー効果、そして何よりも譲受側がその事業を「経営できるか」という視点を重視していることを確認しています。

適切なM&Aを実現するために買い手は何を重視すべきですか?

「300万円」かどうかという話ではなく、自分自身で「経営できる」と思う案件でなければ、安易に手を出さない方が賢明です。弊社では、買い手様にも「安く買おう」という視点ではなく、きちんと成長性のある会社を探す、という趣旨でM&Aをご支援しております。

「M&A成約ありき」で動く担当者には、私もかなりシビアな眼で対応します。M&A支援機関協会が定める倫理規定にもあるように、M&A支援は公正かつ誠実に行われるべきです。私たちは「締結ありき」で話を進めることなく、幅広く双方が検討し、トラブルやハレーションがないM&Aが行われることが理想だと考えております。

買収監査(デューデリジェンス)はなぜ不可欠なのでしょうか?

ある公認会計士の先生やPEファンドのマネージャーとの会食で、「300万で買うのではなく、1円で買って買収監査費用として300万支払え」という話を聞いたことがあります。これは、価格の絶対値ではなく、その妥当性を判断するために、買収監査(デューデリジェンス、DD)が不可欠であるという趣旨だと私は理解しています。

M&Aにおけるデューデリジェンスは、取引の透明性と公正性を確保し、潜在的なリスクを特定するために不可欠なプロセスです。中小M&Aガイドライン第3版金融庁も、適切な情報開示とリスク評価の重要性を強調しています。DDは単なるコストではなく、M&A後のリスクを低減し、事業価値を最大化するための重要な投資と捉えるべきです。専門家による詳細な監査は、その後の経営判断に不可欠な情報を提供します。

弊社も買収監査についてはM&Aの買収監査をメインに行なっている公認会計士の先生をご紹介できます。他の仲介会社では、価格より買収監査に費用をかけよという話はまずないと思いますが、弊社は成約ありきではなく、適切な仲介を行うことを目的に経営を行なっております。

M&A実務の判断には専門家との相談が不可欠です。ご不明な点がございましたら、遠慮なくお問い合わせください。

よくあるご質問

個人M&Aで「300万円」といった低価格案件は本当に存在するのでしょうか?

はい、M&Aは相対取引であるため、売り手と買い手の合意があれば低価格での譲渡も理論上は可能です。しかし、重要なのは価格の安さだけでなく、その事業を継続・成長させるための経営力と、潜在的なリスクを適切に評価するプロセスです。

M&Aにおいて、譲渡価格よりも経営力が重要とされるのはなぜですか?

初期の譲渡価格は、買収後の経営努力によって生み出される収益や利益で十分に回収・上回ることが可能です。M&Aの真の価値は、買収後の事業統合(PMI)と経営手腕によって創出されるため、経営能力が成功の決定的な鍵となります。

買収監査(デューデリジェンス)は個人M&Aでも必要ですか?

はい、個人M&Aにおいてもデューデリジェンスは極めて重要です。事業の潜在的なリスクや隠れた負債、将来性を正確に把握するために不可欠なプロセスであり、専門家による監査は、安易な買収による失敗を防ぎ、長期的な事業成功のための投資と考えるべきです。

公開日: 2020年8月27日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2020年8月27日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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