M&A業界の活発化は日本経済の活性化に寄与する良い傾向ですが、M&Aアドバイザーには特定の資格や独占業務が定められていないため、玉石混交の業者が参入し、トラブルが発生するケースが後を絶ちません。経済産業省の中小M&Aガイドライン第3版(2023年9月策定)でも、M&Aにおけるトラブル事例や留意点が詳細に解説されており、M&A支援機関の適正な行動が強く求められています。このような市場において、売り手様が安心してM&Aを進められるよう、専門家として公正かつ専門的なアドバイスを提供します。
本記事では、「M&Aの検討を始めたばかり」という売り手様が、失敗を避け、納得のいくM&Aを実現するために、最初に確認すべき5つの重要点をお伝えします。
M&A売却の目的を明確にする重要性とは?
M&Aによる譲渡を行う根本的な目的を明確にすることは、成功への第一歩です。目的が不明確なまま進めると、交渉の途中で軸がぶれてしまい、破談になる可能性が高まります。M&Aは流動性が低く、一度破談すると同条件の相手が再び現れる保証はありません。また、目的が決まっていないと、相手に求めるものが多くなりすぎて交渉がまとまらないケースも少なくありません。
M&Aの交渉が決裂した場合、情報が広まるリスクや、相手が同業他社であればその後の事業運営に支障をきたす可能性も考えられます。適切な期間で納得のいくM&Aを実現するためには、目的をあらかじめ明確にし、主要な目的が満たされたら良しと考える方が、トータルとして良い結果につながるでしょう。
M&Aの目的となりうる要素には、以下のようなものがあります。
- 金銭の獲得
- リタイアしたい
- 本業に専念したい(全体収益向上)
- 事業を切り離したい(損失拡大の回避)
- シナジーのある先との資本業務提携による販路拡大や人材共有
- 経営者交代による企業の存続
- 経営者保証に関するガイドラインに基づく連帯保証からの離脱
M&A売却の最適な時期をどのように見極めるべきか?
M&Aを成功させる上で、時期の想定も重要な論点です。リタイアや事業承継、連帯保証からの離脱などを目的とする場合、金銭獲得以上に時期を優先的に考える必要があります。金銭獲得にこだわりすぎると、得られるはずだった収益を逃したり、損失が拡大し続けるリスクがあります。また、シナジー共有も相手やタイミングが重要な要素であり、時期を見過ごすと本末転倒になりかねません。
特にリタイアを目的とする場合は、交渉において足元を見られないよう、自分が思っているよりも早く動き始めることが賢明です。M&A後の関わり方によっては、現在のポジションを維持したまま数年残ることも交渉次第で可能です。しかし、経営状況が悪化しすぎると、譲り受け先が見つからない事態に陥ることもあります。時間も重要なファクターであることを念頭に置き、余裕のある経営を心がけることが、結果的に損をしないM&Aにつながります。
企業価値と売却価格についてどう考えるべきか?
M&Aの主要な要素の中で、最も注目されるのが価格です。しかし、価格と価値は異なる概念であることを理解することが重要です。譲り受け先が考える「価値」を超える「価格」では、現実的に成約することは難しいでしょう。中小M&Aガイドライン第3版でも、客観的な企業価値評価の重要性が強調されています。
ただし、赤字・債務超過で値がつかない案件を除き、最終的に調整できる部分は「価格」であるため、最初から安易に値を下げて進めるのはお勧めしません。安易な価格提示は、企業の本来の価値を低く見せるだけでなく、買い手側からの不信感にもつながりかねないからです。専門家は、企業の適正な価値評価に基づき、戦略的な価格交渉をサポートします。
M&Aにおける情報の出し方と管理の注意点とは?
M&Aプロセスにおける情報管理は極めて重要です。仲介会社の中には、多数の譲り受け候補先に情報を出すことで価格上昇を狙う「あてる」という手法を用いる担当者もいます。しかし、この手法は情報流出のリスクを高めるだけでなく、仮に重複して同じ候補先に情報が届いた場合、「売り急いでいる」「出回り案件」と判断され、本来の価値よりも低い価格で評価されてしまう可能性があります。
M&Aにおける情報管理の重要性は、中小M&Aガイドライン第3版でも、秘密保持契約(NDA)の締結と適切な情報開示プロセスが強調されています。情報開示の範囲やタイミング、候補先の選定基準などについて、アドバイザーと事前に綿密な打ち合わせを行い、合意形成をしておくことが不可欠です。NDAの締結は情報漏洩リスクを低減する上で必須ですが、それでも情報が拡散されるリスクはゼロではありません。情報の出し方一つで、M&Aの成否や条件が大きく左右されることを理解し、慎重な対応が求められます。
M&Aアドバイザリー契約書で確認すべき重要事項は何か?
M&Aアドバイザリー契約書の内容確認は、M&Aプロセスにおいて最も重要な事項の一つです。なぜなら、一度契約を締結すると、会社法など関連法規に基づく契約内容に拘束されてしまうからです。
実際に、契約前には一般的なレーマン方式の説明しか受けていなかったにもかかわらず、契約書締結段階で「最低手数料2,000万円」という条項が突如提示され、十分に検証しないまま契約してしまったというケースが報告されています。例えば、1億円で譲渡できた場合、レーマン方式であれば500万円程度の手数料となるはずが、最低手数料が適用され2,000万円もの手数料を支払うことになり、残る金額に大きな差が生じます。モデルとなる譲渡価格ではレーマン方式が適用されても、実際の譲渡価格でみたら割高になってしまうことは往々にしてありますので、事前に譲渡価格について打診した上で、その場合の手数料額を具体的に聞くことを強くお勧めします。
また、契約後に不当な条項に気づき、解除を申し入れたものの、契約書に解除ができない旨の記載があったり、「2年間は他社で成約した場合でも当該M&A会社に手数料を支払う」といった、売り手にとって極めて不利な条項が盛り込まれていたケースも報告されています。このような契約トラブルを避けるためにも、中小M&Aガイドライン第3版では、アドバイザリー契約の内容を十分に確認し、不明点があれば専門家に相談することを強く推奨しています。秘密保持契約を兼ねている場合でも、専門家への相談は不可欠です。
M&Aにおける売り手様の立場に立ち、公正かつ透明性の高い支援を心がける専門家は、M&Aの検討段階から契約締結、そして実行に至るまで、専門的な知見と豊富な経験に基づき、最適なアドバイスを提供します。お客様が「安心」して「成功する」M&Aを行えるよう、全力でサポートいたします。
M&Aアドバイザリー契約の内容に不安がある場合や、現在依頼しているM&Aの営業担当者が上記のような注意点を十分に説明しないまま契約を締結してしまったという場合でも、セカンドオピニオンサービスなどを活用することで、より望んでいたM&Aに近づけることは可能です。ぜひご検討・ご相談ください。
※M&A実務の判断には専門家との相談が不可欠です。日本財務戦略センター(JFSC) ではM&Aセカンドオピニオン無料相談を承っております。
よくあるご質問
M&Aの目的が不明確だとどのようなリスクがありますか?
交渉の軸がぶれ、破談に至る可能性が高まります。M&Aは流動性が低く、一度破談すると同条件の相手が見つかりにくい上、情報が広まるリスクや、決裂後に事業運営がやりにくくなる可能性も生じます。目的を明確にすることで、交渉を円滑に進め、納得のいく結果を得やすくなります。
M&Aアドバイザーとの契約で特に注意すべき点は何ですか?
最低手数料、解除条項、専任期間は必ず確認すべきです。契約書に「最低手数料2,000万円」のような予期せぬ条項や、不当な解除制限、長期間の専任期間が盛り込まれているケースがあります。契約前に譲渡価格を打診し、その場合の手数料額を具体的に確認し、不明点は専門家に相談することが重要です。
企業価値と売却価格はどのように違うのですか?
企業価値は客観的な評価に基づいた企業の本来の価値を指し、売却価格は交渉によって最終的に合意される金額です。買い手が考える「価値」を超える「価格」では成約は困難ですが、安易な価格提示は企業の価値を低く見せ、買い手からの不信感にもつながります。適正な価値評価と戦略的な価格交渉が成功の鍵です。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。
よくあるご質問(FAQ)
📅 本記事の情報基準日
本記事は 2021年2月17日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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