【この記事の結論】コロナ禍では(1)変化対応企業と(2)被害蓄積企業の二極化が進みました。被害企業は早期の事業切離・M&Aによる傘下入りが、独自路線固執より経営者・従業員・取引先にとってメリットが大きい局面が多く、利益が残るうちの意思決定が条件交渉力を決定づけます。
コロナ禍が産業構造にもたらした二極化とは何ですか?
コロナ禍では、リーマンショックのような流動性危機とは異質の「人の行動を制約する需要ショック」が発生しました。中小企業庁の中小企業白書等でも示されているように、外食・百貨店・インバウンド関連を中心に幅広い産業に影響が及び、居酒屋中堅チェーンの私的整理のような事案も顕在化しました。食品卸の経営者からは「売上30%減でもまだましな方」という声も寄せられました。
変化に対応し、利益を確保する企業群の共通項
同じ環境下でも利益を維持・増加させた企業には、(1)既存販路がスーパー等のコロナ影響を受けにくい先だった、(2)売上減少が見え始めた早期段階で環境適応の打ち手を打った、という共通項がありました。M&Aアドバイザリーとして数多くの相談を受けるなかで、早期の対応着手こそが企業の存続と成長に直結する決定要因だと痛感しています。
日本財務戦略センター(JFSC)支援事例:早期意思決定で雇用を守ったケース
当初は事業売却に強い抵抗があったものの、最終的に事業の一部切離とM&Aによる資本提携に踏み切ったケースでは、(1)採算悪化が見込まれる事業の切り離しによるキャッシュ流出抑制、(2)利益率は下がるが大口納品が見込まれる先への販路拡大、(3)B2C事業への参入による新たな収益源確保、を組み合わせて事業再構築と雇用維持を両立しました。
コロナ禍後の展望:被害企業は元に戻れるのですか?
ホテル・運輸等のインバウンド関連を除き、コロナ前水準への回復シナリオには懐疑的に見ています。観光庁「旅行・観光消費動向調査」等を見ても、出国や移動に対する制度的・心理的抵抗の払拭には相当の時間を要するとされています。
二極化が加速する構造
変化対応企業群は、傷まなかったバランスシートを活かして被害企業の買収にどん欲に動いています。一方、被害企業は日本政策金融公庫等の緊急融資で借りた負債が重しとなり、経営者保証ガイドラインに則った対応を検討しつつも返済で手一杯になり、効率化投資まで回らず立ち遅れる悪循環に陥りやすい構造です。
今、考えるべきM&Aという選択肢
収益が出る企業形態・事業構造へ組織を変化させること—これが目的の核心です。資本がある企業であれば事業ドメインを変えるためにM&Aを行うのは有力な選択肢ですし、持続的経営に不安がある企業は事業承継・引継ぎ支援センターの活用も含め、事業の切り離しでキャッシュ流出を最小化しつつ、事業構造を収益が出る形に変えていく必要があります。
倒産・企業再生・M&Aの比較
倒産は従業員・取引先・債権者に甚大なダメージを及ぼします。企業再生では一部関係者にダメージは出るものの、企業は存続できます。M&Aであれば会社法に基づき企業は存続を前提に、基本的に同条件でオーナーが変わり、その後で環境適応のための人員配置や取引先開拓が進められます。
なぜ日本のM&Aは「失敗が多い」と言われるのですか?
JALやダイエー再生に携わった冨山和彦氏が「コーポレート・トランスフォーメーション」で指摘する論点は二点に集約されます。
- 「カイシャの論理」による売却判断の遅れ:少しでも黒字なら「なぜ黒字で売るのか」という社内論理で動けず、赤字転落後にようやく動くため二束三文で叩かれる。
- 統合プロセス(PMI)人材の不足:買い手側もPost Merger Integrationを実行できる人材を育てておらず、立て直しが進まない。
逆に言えば、買い手側の人材育成は売り手にコントロールできなくとも、利益が残っている段階で譲渡を判断すれば、事業体は存続し、経営者として残れる可能性も高まります。
JFSCの支援体制
M&A実務の判断には専門家との連携が不可欠です。財務・税務面は税理士法に則り提携税理士・公認会計士と、法務面は弁護士法に則り提携弁護士と連携して支援します。当社は中小M&Aガイドライン第3版とM&A支援機関協会の倫理規定に則り、PEファンド連携先の紹介も含めた多角的な選択肢提示が可能です。お困りの際はJFSC のM&Aセカンドオピニオン無料相談をご活用ください。
よくあるご質問
コロナ禍で被害を受けた企業はなぜ早期にM&Aを検討すべきなのですか?
利益が残っている段階での譲渡と、赤字転落後の譲渡では条件交渉力が大きく異なります。緊急融資の返済負担で効率化投資まで回らなくなる前に動けば、事業体として残せる選択肢の幅が確保でき、経営者として残れる可能性も高まります。
倒産・企業再生・M&Aはどう違いますか?
倒産は従業員・取引先・債権者に最大級の損害を与えます。企業再生は一部関係者にダメージは出るものの企業は存続。M&Aは会社法に基づき企業存続を前提に基本同条件でオーナーが変わり、その後環境適応の打ち手を入れる形となります。
日本のM&Aで失敗が多いと言われる根本原因は何ですか?
冨山和彦氏が指摘するように、(1)黒字段階での売却を社内論理で躊躇し赤字転落後に二束三文で叩かれる、(2)買い手側にPMI人材が不足し統合後の立て直しが進まない、の二点が構造的要因です。売り手は前者を、買い手は後者を意識する必要があります。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。
よくあるご質問(FAQ)
📅 本記事の情報基準日
本記事は 2021年2月16日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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