2021.02.16 M&A実務

コロナ禍が突き付けた経営戦略:二極化局面で「利益が残るうちに動く」M&Aの合理性

コロナ禍におけるM&Aは、需要構造の急変で生じる「変化対応企業」と「被害蓄積企業」の二極化を前提に、被害企業側が事業の一部切離・他資本への統合を通じて存続と従業員雇用を確保する経営戦略です。利益が残っている段階での意思決定が条件交渉力を左右し、赤字転落後の譲渡では二束三文の条件を呑まざるを得なくなる構造があります。

【この記事の結論】コロナ禍では(1)変化対応企業と(2)被害蓄積企業の二極化が進みました。被害企業は早期の事業切離・M&Aによる傘下入りが、独自路線固執より経営者・従業員・取引先にとってメリットが大きい局面が多く、利益が残るうちの意思決定が条件交渉力を決定づけます。

コロナ禍が産業構造にもたらした二極化とは何ですか?

コロナ禍では、リーマンショックのような流動性危機とは異質の「人の行動を制約する需要ショック」が発生しました。中小企業庁中小企業白書等でも示されているように、外食・百貨店・インバウンド関連を中心に幅広い産業に影響が及び、居酒屋中堅チェーンの私的整理のような事案も顕在化しました。食品卸の経営者からは「売上30%減でもまだましな方」という声も寄せられました。

変化に対応し、利益を確保する企業群の共通項

同じ環境下でも利益を維持・増加させた企業には、(1)既存販路がスーパー等のコロナ影響を受けにくい先だった、(2)売上減少が見え始めた早期段階で環境適応の打ち手を打った、という共通項がありました。M&Aアドバイザリーとして数多くの相談を受けるなかで、早期の対応着手こそが企業の存続と成長に直結する決定要因だと痛感しています。

日本財務戦略センター(JFSC)支援事例:早期意思決定で雇用を守ったケース

当初は事業売却に強い抵抗があったものの、最終的に事業の一部切離とM&Aによる資本提携に踏み切ったケースでは、(1)採算悪化が見込まれる事業の切り離しによるキャッシュ流出抑制、(2)利益率は下がるが大口納品が見込まれる先への販路拡大、(3)B2C事業への参入による新たな収益源確保、を組み合わせて事業再構築と雇用維持を両立しました。

コロナ禍後の展望:被害企業は元に戻れるのですか?

ホテル・運輸等のインバウンド関連を除き、コロナ前水準への回復シナリオには懐疑的に見ています。観光庁「旅行・観光消費動向調査」等を見ても、出国や移動に対する制度的・心理的抵抗の払拭には相当の時間を要するとされています。

二極化が加速する構造

変化対応企業群は、傷まなかったバランスシートを活かして被害企業の買収にどん欲に動いています。一方、被害企業は日本政策金融公庫等の緊急融資で借りた負債が重しとなり、経営者保証ガイドラインに則った対応を検討しつつも返済で手一杯になり、効率化投資まで回らず立ち遅れる悪循環に陥りやすい構造です。

今、考えるべきM&Aという選択肢

収益が出る企業形態・事業構造へ組織を変化させること—これが目的の核心です。資本がある企業であれば事業ドメインを変えるためにM&Aを行うのは有力な選択肢ですし、持続的経営に不安がある企業は事業承継・引継ぎ支援センターの活用も含め、事業の切り離しでキャッシュ流出を最小化しつつ、事業構造を収益が出る形に変えていく必要があります。

倒産・企業再生・M&Aの比較

倒産は従業員・取引先・債権者に甚大なダメージを及ぼします。企業再生では一部関係者にダメージは出るものの、企業は存続できます。M&Aであれば会社法に基づき企業は存続を前提に、基本的に同条件でオーナーが変わり、その後で環境適応のための人員配置や取引先開拓が進められます。

なぜ日本のM&Aは「失敗が多い」と言われるのですか?

JALやダイエー再生に携わった冨山和彦氏が「コーポレート・トランスフォーメーション」で指摘する論点は二点に集約されます。

逆に言えば、買い手側の人材育成は売り手にコントロールできなくとも、利益が残っている段階で譲渡を判断すれば、事業体は存続し、経営者として残れる可能性も高まります。

JFSCの支援体制

M&A実務の判断には専門家との連携が不可欠です。財務・税務面は税理士法に則り提携税理士公認会計士と、法務面は弁護士法に則り提携弁護士と連携して支援します。当社は中小M&Aガイドライン第3版M&A支援機関協会の倫理規定に則り、PEファンド連携先の紹介も含めた多角的な選択肢提示が可能です。お困りの際はJFSC のM&Aセカンドオピニオン無料相談をご活用ください。

よくあるご質問

コロナ禍で被害を受けた企業はなぜ早期にM&Aを検討すべきなのですか?

利益が残っている段階での譲渡と、赤字転落後の譲渡では条件交渉力が大きく異なります。緊急融資の返済負担で効率化投資まで回らなくなる前に動けば、事業体として残せる選択肢の幅が確保でき、経営者として残れる可能性も高まります。

倒産・企業再生・M&Aはどう違いますか?

倒産は従業員・取引先・債権者に最大級の損害を与えます。企業再生は一部関係者にダメージは出るものの企業は存続。M&Aは会社法に基づき企業存続を前提に基本同条件でオーナーが変わり、その後環境適応の打ち手を入れる形となります。

日本のM&Aで失敗が多いと言われる根本原因は何ですか?

冨山和彦氏が指摘するように、(1)黒字段階での売却を社内論理で躊躇し赤字転落後に二束三文で叩かれる、(2)買い手側にPMI人材が不足し統合後の立て直しが進まない、の二点が構造的要因です。売り手は前者を、買い手は後者を意識する必要があります。

公開日: 2021年2月16日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

▼ ご検討前のご参考に
M&A セルフ診断ツール 5種 (完全無料・登録不要)
10分診断・自社把握度・企業価値試算・手数料比較・売却ロープレ
無料で診断する →

よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2021年2月16日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

関連の最新情報:中小企業庁国税庁金融庁e-Gov 法令検索

RELATED関連する記事