2023.06.13 M&A実務

宮原博昭『M&A経営論:ビジネスモデル革新の成功法則』に学ぶ日本型M&A 17の原則|トップ面談・シナジー設計・PMIの実務知見

『M&A経営論:ビジネスモデル革新の成功法則』(宮原博昭著・東洋経済新報社・2023年3月)は、学研ホールディングス代表取締役社長がM&Aを活用したV字回復経験から導いた17の成功原則を体系化した実務書です。「日本型M&A」として、財務・法務だけでなく現場の声と人対人の信頼関係を重視し、トップ面談・シナジー設計・統合プロセス(PMI)までを貫く視点を提示しています。

本書はどのような視点で書かれているのですか?

本記事は、株式会社日本財務戦略センター 代表取締役 五十嵐悠一(M&Aアドバイザー)の監修のもと、中小企業庁「中小M&Aガイドライン第3版」に準拠して執筆しています。

『M&A経営論:ビジネスモデル革新の成功法則』は、学研ホールディングス代表取締役社長・宮原博昭氏が2023年3月に東洋経済新報社から上梓した書籍です。防衛大学校出身の経営者がM&Aを軸に学研を再生・成長させた経験を、17の原則として体系化しています。

学研は具体的にどのようなV字回復を遂げたのですか?

宮原氏が2009年に学研社長へ就任した当時、看板雑誌「学習」「科学」を失い売上は半減・赤字でした。M&Aを経営戦略の柱に据え、教育医療福祉領域へ積極参入。学研ホールディングスIR情報(2023年3月期決算短信)によれば、13期連続増収・8期連続増益でV字回復を実現しました。

「日本型M&A」と従来型M&Aは何が違うのですか?

本書が提唱する「日本型M&A」は、財務・法務面だけでなく、対等に融合してシナジーを高め合うことを志向し、現場の声・人対人の信頼関係を重視する点に特徴があります。中小企業のM&Aでは、経営者同士の人間関係や従業員のモチベーションが成否を握る場面が多く、人対人の信頼関係の構築こそが持続的シナジーの基盤となります。これは中小M&Aガイドラインが推奨する丁寧な対話・情報開示の精神とも整合します。

M&Aを成功させる17の原則とは?

  1. FAに任せきってはいけない
  2. 担当者は最後まで責任を持て
  3. 会社のトップこそ最前線に立て
  4. 候補の案件は自らリストアップせよ
  5. シナジーから考えよう
  6. 先方との面談は「30回」を前提に考えよ
  7. 「上から目線」は厳禁
  8. まずは相手の話を聞くことから
  9. デューデリジェンス①数字の裏を読め
  10. デューデリジェンス②先方の社員の声を聞け
  11. デューデリジェンス③質問は「いい点」と「悪い点」をワンセットで
  12. のれん代の償却期間は慎重に
  13. グループ・インした社員への説明を丁寧に
  14. 社内改革のタイミングを逃すな
  15. 経営陣を無理に送り込む必要はない
  16. 撤退戦も礼節を重んじて
  17. 個人知から組織知へ

トップ面談はなぜ「30回」を前提とするのですか?

本書では選定先の選び方からPMI後の経営陣選定まで多岐に触れる中、特にトップ面談に紙数が割かれています。30回という回数は競合候補がいる場面では現実的でないこともありますが、日本財務戦略センター(JFSC)でも事前情報収集と戦略的な面談設計を重視し、初回面談で譲渡企業の理念・文化・想いを深く理解する姿勢を最優先しています。複数回の面談を通じ、事業課題と潜在シナジーを深掘りすることで、短期間でも実質的な合意形成を目指せます。

「上から目線」厳禁、「まず相手の話を聞く」も同様に重要です。テーブルに乗せてもらえるかは好感度に依存し、複数回の面談で背景理解と論点すり合わせが進むほど、現地確認による伸びしろや社員状況の把握も精緻化します。トップが直接動くことでノウハウが蓄積し、案件選定の嗅覚も高まります。

中小M&A実務に活かせる示唆は何ですか?

停滞する老舗上場企業がM&Aと選択と集中で新陳代謝を実現した当事者ノンフィクションとして読めるだけでなく、買い手側にとって実践的な示唆が豊富です。代表自らが担当者時代から陣頭指揮を執ってきたからこその記述は、「なぜかなかなかM&Aが進まない」と悩む経営者にも有用です。一方、相手企業も他の買い手候補も存在するため、すべてが厳密に当てはまるわけではない点には留意が必要です。M&Aの買収戦略・FA業務については当社にもお気軽にご相談ください。

M&A実務の判断には専門家との相談が不可欠です。JFSC ではM&Aセカンドオピニオン無料相談を承っております

よくあるご質問

『M&A経営論』の17原則のうち、中小企業の買い手に最も実用的なものはどれですか?

「会社のトップこそ最前線に立て」「シナジーから考えよう」「相手の話を聞くことから」の3点が中小企業M&Aで特に効きます。中小企業では経営者同士の信頼関係が成否を分けるため、トップが直接動き、シナジー仮説を先に立て、相手の経営理念・文化を深く理解する姿勢が、価格交渉や統合作業の質を一段引き上げます。

本書のトップ面談「30回」は中小M&Aでも現実的ですか?

競合候補がいる中小M&A案件では30回を確保しにくいのが実情です。JFSCでは事前情報収集と戦略的な面談設計で密度を高め、初回から経営理念・文化・想いを深く聞き取り、複数回で論点を深掘りする運用を採っています。回数より、対話の質と現地確認の徹底度が重要です。

「日本型M&A」のPMIで重視すべき要素は何ですか?

経営陣を無理に送り込まず、現場の声を聞きながらグループ・インした社員に丁寧に説明することと、社内改革のタイミングを逃さないことです。撤退戦の礼節も含め、人対人の信頼関係を起点にPMIを設計することで、シナジーが持続しやすくなります。

公開日: 2023年6月13日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2023年6月13日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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