日本財務戦略センター(JFSC)のM&Aアドバイザーとして数百件の中小企業M&Aに携わってきた経験から、私は「なぜ中小M&AではFAS(Financial Advisory Service)ではなく、仲介形式が主流なのか」という疑問にしばしば直面します。この背景には、主に「手数料体系の制約」と「成約率の高さ」という二つの要因があります。
中小M&Aで仲介形式が主流なのはなぜですか?
中小規模のM&Aにおいて仲介形式が主流である理由は、主にコストと効率性にあります。米国では譲渡対価の10%程度が手数料として一般的ですが、日本では中小企業経営者の間でこの料率への心理的抵抗感が根強く、中小企業庁の意識調査でも示唆されています。譲渡対価が数千万円規模の案件では、売り手と買い手がそれぞれ独立したFASアドバイザーを雇うと、その報酬だけで取引の経済合理性が損なわれるケースが多々あります。日本政策金融公庫の存在も、中小企業のコスト意識に影響を与えていると言えるでしょう。
FAS形式では、双方のアドバイザーが十分な報酬を得るためには一定以上の案件規模が必要となり、小規模案件では専門的なプレーヤーが参入しにくい構造的な課題が生じます。総額手数料の観点から、FAS形式での小規模案件対応が難しいのが実情です。
M&A仲介の「成約率の高さ」はどのようなメリットをもたらしますか?
M&Aアドバイザーとしての実務経験からも、仲介形式の成約率の高さは強く実感しています。仲介者は売り手と買い手の双方から成功報酬を得るため、案件を成約させることへのインセンティブが非常に高く働きます。先日担当したIT企業のM&Aでは、条件交渉が難航しましたが、仲介者が双方の真意を汲み取り、落としどころを提案することで円満な成約に至りました。中小M&Aガイドライン第3版(2023年9月)でも、中小M&Aにおける仲介の役割と成約への寄与が示唆されています。限られたリソースの中で迅速な事業承継や成長戦略を実現したい中小企業にとって、これは現実的な解決策となり得ます。
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M&A仲介における利益相反のリスクはどのように考えれば良いですか?
仲介形式は、仲介者が売り手と買い手の双方から手数料を得る構造上、中小M&Aガイドライン第3版でも指摘されている通り、利益相反のリスクが潜在的に存在します。仲介者が「何が何でも成約させれば良い」という姿勢に陥り、一方の当事者に不利な条件での合意を促す可能性は否定できません。特に、経営者保証に関するガイドラインに沿った適切な調整が行われないリスクも考えられます。
しかし、M&Aが最終的に成立したということは、売り手と買い手の双方が、それぞれの立場から見て一定の経済合理性や戦略的意義を見出した結果であるとも言えます。市場原理から著しく乖離した条件であれば、仲介形式であろうとFAS形式であろうと、そもそもM&Aは成立しません。会社法に則り、両当事者の合意形成が不可欠です。
信頼できるM&A仲介者を見極めるためのポイントは何ですか?
中小規模のM&A案件において仲介形式が合理的な選択肢となり得る一方で、その合理性を享受するためには、信頼できる仲介者を見極めることが極めて重要です。M&Aの成否を分けると言っても過言ではありません。具体的には以下の点を重視すべきです。
- 中小M&Aガイドライン(2023年9月)に示されている「M&A支援機関の行動指針」を遵守しているか。
- 手数料体系が明確であり、成功報酬以外の費用(着手金、中間金など)についても事前に詳細な説明があるか。
- 過去の実績や専門分野が自社のニーズと合致しているか。同業種での成約実績や、特定の地域に強いかなども判断材料となります。
- 売り手と買い手の双方の利益を公平に調整しようとする姿勢があるか。一方的な条件提示ではなく、双方の意向を尊重した交渉を促すかが重要です。
- M&Aのプロセスにおいて、弁護士や税理士といった専門家との連携を適切に行う体制があるか。
結論として、中小規模のM&Aにおいて仲介形式は、その特性を理解し、信頼できる仲介者を選定すれば、売り手にとって合理的なスキームと言えるでしょう。成約への確実性とスピードを考慮すれば、現実的な解決策となり得ます。M&A支援機関協会に登録されている機関や、事業承継・引継ぎ支援センターといった公的機関の活用も視野に入れつつ、自社のM&Aを成功に導く真に信頼できるパートナーを見つけることが重要です。
※M&A実務の判断には専門家との相談が不可欠です。JFSCではM&Aセカンドオピニオン無料相談を承っております。
よくあるご質問
中小M&Aで仲介形式を選ぶ最大のメリットは何ですか?
コスト効率と成約率の高さです。独立アドバイザーを双方で雇うFAS形式に比べ、総費用を抑えつつ、仲介者が双方の調整役となることで合意形成が促進され、M&Aの実現可能性が高まります。
仲介形式における利益相反のリスクを避けるにはどうすれば良いですか?
中小M&Aガイドライン遵守、明確な手数料体系、実績、公平な調整姿勢、専門家連携の有無を確認することが重要です。複数の仲介者と面談し、信頼できるパートナーを選びましょう。
M&A仲介者を選ぶ際に、特に重視すべき点は何ですか?
自社の業界や地域に精通しているか、成功報酬以外の費用が明確か、そして弁護士や税理士といった専門家との連携体制が整っているかを重視すべきです。公的機関の活用も有効です。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。
よくあるご質問(FAQ)
📅 本記事の情報基準日
本記事は 2020年10月11日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。
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