2020.10.11 M&A業界事情

M&A仲介とFAS、中小企業が選ぶべきは?成約率とコストで見る最適解

M&A仲介とは、売り手と買い手の間に立ち、双方の調整を行う形式です。一方、FAS(Financial Advisory Service)は、売り手と買い手がそれぞれ独立したアドバイザーを立てる形式を指します。中小M&Aでは、手数料体系や成約率の観点から仲介形式が主流となっています。

日本財務戦略センター(JFSC)のM&Aアドバイザーとして数百件の中小企業M&Aに携わってきた経験から、私は「なぜ中小M&AではFAS(Financial Advisory Service)ではなく、仲介形式が主流なのか」という疑問にしばしば直面します。この背景には、主に「手数料体系の制約」と「成約率の高さ」という二つの要因があります。

中小M&Aで仲介形式が主流なのはなぜですか?

中小規模のM&Aにおいて仲介形式が主流である理由は、主にコストと効率性にあります。米国では譲渡対価の10%程度が手数料として一般的ですが、日本では中小企業経営者の間でこの料率への心理的抵抗感が根強く、中小企業庁の意識調査でも示唆されています。譲渡対価が数千万円規模の案件では、売り手と買い手がそれぞれ独立したFASアドバイザーを雇うと、その報酬だけで取引の経済合理性が損なわれるケースが多々あります。日本政策金融公庫の存在も、中小企業のコスト意識に影響を与えていると言えるでしょう。

FAS形式では、双方のアドバイザーが十分な報酬を得るためには一定以上の案件規模が必要となり、小規模案件では専門的なプレーヤーが参入しにくい構造的な課題が生じます。総額手数料の観点から、FAS形式での小規模案件対応が難しいのが実情です。

M&A仲介の「成約率の高さ」はどのようなメリットをもたらしますか?

M&Aアドバイザーとしての実務経験からも、仲介形式の成約率の高さは強く実感しています。仲介者は売り手と買い手の双方から成功報酬を得るため、案件を成約させることへのインセンティブが非常に高く働きます。先日担当したIT企業のM&Aでは、条件交渉が難航しましたが、仲介者が双方の真意を汲み取り、落としどころを提案することで円満な成約に至りました。中小M&Aガイドライン第3版(2023年9月)でも、中小M&Aにおける仲介の役割と成約への寄与が示唆されています。限られたリソースの中で迅速な事業承継や成長戦略を実現したい中小企業にとって、これは現実的な解決策となり得ます。

📊 公開データで確かめる

中小企業庁登録 M&A 支援機関 3,394 社の公開手数料を機械整理。あなたの譲渡価格でレーマン方式手数料を試算し、客観データで比較できます。

💴 手数料を試算・比較する →📈 企業価値を試算する →
※ 公開情報の機械整理であり、特定社の推奨・勧誘・優劣を示すものではありません。

M&A仲介における利益相反のリスクはどのように考えれば良いですか?

仲介形式は、仲介者が売り手と買い手の双方から手数料を得る構造上、中小M&Aガイドライン第3版でも指摘されている通り、利益相反リスクが潜在的に存在します。仲介者が「何が何でも成約させれば良い」という姿勢に陥り、一方の当事者に不利な条件での合意を促す可能性は否定できません。特に、経営者保証に関するガイドラインに沿った適切な調整が行われないリスクも考えられます。

しかし、M&Aが最終的に成立したということは、売り手と買い手の双方が、それぞれの立場から見て一定の経済合理性や戦略的意義を見出した結果であるとも言えます。市場原理から著しく乖離した条件であれば、仲介形式であろうとFAS形式であろうと、そもそもM&Aは成立しません。会社法に則り、両当事者の合意形成が不可欠です。

信頼できるM&A仲介者を見極めるためのポイントは何ですか?

中小規模のM&A案件において仲介形式が合理的な選択肢となり得る一方で、その合理性を享受するためには、信頼できる仲介者を見極めることが極めて重要です。M&Aの成否を分けると言っても過言ではありません。具体的には以下の点を重視すべきです。

結論として、中小規模のM&Aにおいて仲介形式は、その特性を理解し、信頼できる仲介者を選定すれば、売り手にとって合理的なスキームと言えるでしょう。成約への確実性とスピードを考慮すれば、現実的な解決策となり得ます。M&A支援機関協会に登録されている機関や、事業承継・引継ぎ支援センターといった公的機関の活用も視野に入れつつ、自社のM&Aを成功に導く真に信頼できるパートナーを見つけることが重要です。

※M&A実務の判断には専門家との相談が不可欠です。JFSCではM&Aセカンドオピニオン無料相談を承っております。

よくあるご質問

中小M&Aで仲介形式を選ぶ最大のメリットは何ですか?

コスト効率と成約率の高さです。独立アドバイザーを双方で雇うFAS形式に比べ、総費用を抑えつつ、仲介者が双方の調整役となることで合意形成が促進され、M&Aの実現可能性が高まります。

仲介形式における利益相反のリスクを避けるにはどうすれば良いですか?

中小M&Aガイドライン遵守、明確な手数料体系、実績、公平な調整姿勢、専門家連携の有無を確認することが重要です。複数の仲介者と面談し、信頼できるパートナーを選びましょう。

M&A仲介者を選ぶ際に、特に重視すべき点は何ですか?

自社の業界や地域に精通しているか、成功報酬以外の費用が明確か、そして弁護士や税理士といった専門家との連携体制が整っているかを重視すべきです。公的機関の活用も有効です。

公開日: 2020年10月11日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

▼ ご検討前のご参考に
M&A セルフ診断ツール 5種 (完全無料・登録不要)
10分診断・自社把握度・企業価値試算・手数料比較・売却ロープレ
無料で診断する →

よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2020年10月11日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

関連の最新情報:中小企業庁国税庁金融庁e-Gov 法令検索

RELATED関連する記事