2020.08.27 M&A業界事情

M&A仲介会社が入る意味とは?利益相反リスクと日本特有の感情調整機能を構造分析

M&A仲介会社が入る意味とは、売り手と買い手の双方の利害を同一の主体が調整することで、特に中小企業の事業承継型M&Aにおいて、価格以外の感情面・非財務的要素の合意形成を支援する機能を指します。一方で、双方代理に近い構造のため利益相反リスクを内包しており、海外では制限される国もあります。形式の選択にあたっては、仲介とFAそれぞれの長所・短所を理解した上での判断が必要です。

【この記事の結論】仲介形式は利益相反リスクを抱えるため海外では禁止される国もありますが、日本では感情調整の面で一定の機能を果たしてきました。担当者の言動に違和感があれば代表者へ直接相談できる、組織としてのチェックアンドバランスが重要です。株式会社日本財務戦略センター 代表取締役の五十嵐悠一が、仲介とFAの構造を整理します。

そもそもM&A仲介とは何か?FA形式との違い

M&A仲介とは、同一の支援者が売り手と買い手の双方と契約し、双方から手数料を得て成約まで支援する形式です。一方でFA(フィナンシャルアドバイザー)形式は、売り手・買い手それぞれが自陣営のFAを別々に雇用し、自社利益を最大化する立場で交渉します。

シンガポールや米国など一部の国では、利益相反リスクへの懸念からM&A仲介形式が法的に制限される、あるいはFA形式が主流となっています。金融庁の公開資料や国際的なM&A実務でも、上場企業の大型案件では双方独立FA体制が一般的です。

なぜ海外ではM&A仲介が制限されるのですか?

仲介形式が制限される最大の理由は、中小M&Aガイドライン第3版でも指摘されているとおり、双方代理に近い構造に起因する利益相反リスクです。仲介者は売り手・買い手の双方から成功報酬を受け取るため、成約を優先するあまり、いずれかの当事者に不利な条件での合意を促す動機が働きやすくなります。

具体的には、片側に有利な情報を意図的に伝えない、契約条件のリスクを十分説明せずに署名を急がせる、といった行為が利益相反の典型例とされます。これらは中小M&Aガイドラインが定める「行動原則」にも反するため、業界としての規律強化が進められています。

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日本でM&A仲介が普及している理由は何か?

日本のM&A、特に中小企業の事業承継型案件では、価格や財務条件だけでなく、経営者の想い・従業員の雇用・取引先や地域との関係といった非財務要素が重視される傾向があります。事業承継・引継ぎ支援センターの活用例にも、こうした「ウェットな交渉」の側面が反映されています。

こうした場面では、双方独立FA体制で経済合理性のみがぶつかり合うと、感情面の納得感が損なわれて交渉が硬直するケースも少なくありません。仲介者が双方の立場を踏まえて条件と感情の両面を調整することで、「お互い、一緒にやっていきましょう」という合意形成が促される面があります。これが、日本でM&A仲介が広く普及してきた背景の一つです。

M&A仲介の利益相反リスクはどう顕在化するのか?

とはいえ、仲介形式が常に最善とは限りません。一部のM&A仲介会社が「業界最高水準のインセンティブ」「高額年収」を採用ページで強調する背景には、成約単価の高い案件を多数まとめることで利益を上げているビジネスモデルがあります。

担当者の報酬が成約に強く連動するほど、顧客の真の利益よりも成約優先で動くインセンティブが高まり得ます。中小M&AガイドラインやM&A支援機関協会の倫理規定でも、こうしたインセンティブ設計のリスクが議論されています。

「社内で売り手担当と買い手担当を分けている」と説明する仲介会社もありますが、最終的に同一組織に属している以上、組織全体の利益が優先される構造は変わらないという見方もできます。FA形式は利益相反リスクを下げる一方で、双方の主張がぶつかって交渉が硬直するリスクもあるため、形式の選択には案件特性に応じた検討が必要です。

M&A仲介会社を選ぶときに確認すべき5つのポイント

※契約・税務・労務に関する最終判断は、必ず弁護士・税理士・社労士など各分野の専門家にご相談ください。

株式会社日本財務戦略センターのチェックアンドバランス

株式会社日本財務戦略センターでは、担当者一人に判断を集中させず、代表取締役の五十嵐悠一を含む複数体制で案件を確認する運用をとっています。担当者の言動や提案内容に違和感があれば、お客様から代表者へ直接ご連絡いただける窓口を確保し、定期的な案件レビューを通じて利益相反リスクの早期発見を図っています。

他社で進行中のM&A案件にご不安がある場合も、セカンドオピニオンとしてご相談いただけます。

※M&A実務の判断には専門家との相談が不可欠です。セカンドオピニオン無料相談もご利用ください。

よくあるご質問

M&A仲介とFAでは、どちらを選ぶのが望ましいですか?

案件の規模・性質によって異なります。中小企業の事業承継型では仲介の感情調整機能が機能する場面も多く、上場企業の大型案件や利益相反リスクを徹底的に避けたい場面ではFA形式が選ばれる傾向にあります。形式そのものより、組織のチェックアンドバランスと担当者の誠実さで判断するのが現実的です。

M&A仲介の利益相反リスクは、どんな兆候でわかりますか?

重要な不利情報の説明が薄い、契約書の押印を急がせる、特定の買い手やファンドだけを強く推す、片側だけ強気の条件提示を続ける、といった兆候が見られたら利益相反リスクの可能性があります。違和感があれば、組織のトップや独立した専門家への相談を検討してください。

他社で進行中のM&Aについてセカンドオピニオンを取れますか?

はい、株式会社日本財務戦略センターでは進行中の他社案件についてもセカンドオピニオンとして相談を受け付けています。契約・税務など最終判断は弁護士・税理士などの専門家と組み合わせて確認することをおすすめします。

公開日: 2020年8月27日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2020年8月27日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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