2021.03.05 法令・税務

事業再生ADR制度の全貌:過剰債務企業の再建を導く準則型私的整理

事業再生ADR制度とは、過剰債務に悩む企業が、中立な専門家(特定認証紛争解決事業者)の調整を通じて、金融機関等の債権者と合意形成を図り、早期の事業再生を目指す準則型私的整理手続きです。産業競争力強化法に基づき、多様な支援措置が用意されています。

事業再生ADR制度とは?その法的根拠と特徴

事業再生ADR(Alternative Dispute Resolution)制度は、過剰債務に苦しむ企業の早期事業再生を支援するため、中立な専門家が債権者と債務者間の調整を行う制度です。経済産業省が主管し、産業競争力強化法に具体的に規定されています。この制度は、特定調停スキームと異なり、ADR法に基づく認証ADR制度として位置づけられ、その手続きの整備と多様な支援措置が特徴です。

事業再生ADRの手続きはどのように進むのか?

事業再生ADRの手続きは、以下の主要なステップで進行します。

  1. 申請・受理: 債務者が特定認証紛争解決事業者(一般社団法人事業再生実務家協会)に利用を申請し、受理されます。
  2. 一時停止通知: 債権者に対し、債権回収や法的整理の申し立てを一時停止する通知が発出されます。
  3. 債権者会議: 事業再生計画案の概要説明、協議、そして最終的な決議のための債権者会議が複数回開催されます。
  4. 合意形成: 全ての債権者が事業再生計画案に同意すれば私的整理が成立。同意が得られない場合は法的整理へ移行します。

なぜ事業再生ADRは高い合意率を誇るのか?

事業再生ADRは、他の私的整理と比較して非常に高い合意率を誇ります。経済産業省のデータ(2020年3月時点)では、累計253社の利用に対し、不成立はわずか11社(不合意率5%未満)に留まっています。この背景には、債務者と債権者の双方に円滑な解決を促す多様な支援措置が用意されている点が挙げられます。

日本財務戦略センター(JFSC)の視点:事業再生ADRの活用事例】
リーマンショック後の需要低迷で多額の債務を抱えた中堅製造業A社は、複数の金融機関に加え社債も発行しており、通常の私的整理では合意形成が困難でした。事業再生ADRを利用し、専門家による中立的な調整と社債元本減免の特例措置を活用。プレDIPファイナンスで運転資金を確保し、法的整理を回避して事業再生を果たしました。このように、複雑な債務構造を持つ企業にとって、ADRは非常に有効な選択肢です。

事業再生ADRの具体的な支援措置には何がある?

事業再生ADRには、企業の再建を強力に後押しする以下の支援措置が用意されています。(出典:経済産業省『事業再生ADR制度概要(令和2年版)』

事業再生ADRの費用負担と費用対効果は?

事業再生ADRの利用には、特定認証紛争解決事業者への制度利用費用が発生します。以下の表は、その費用の一例です。

対象債権者数対象債権者に対する債務額業務委託金業務委託中間金報酬金
20社以上100億円以上10,000,000円10,000,000円20,000,000円
10社以上20社未満20億円以上100億円未満5,000,000円5,000,000円10,000,000円
6社以上10社未満10億円以上20億円未満3,000,000円3,000,000円6,000,000円
6社未満10億円未満2,000,000円2,000,000円4,000,000円

この費用に加え、弁護士税理士といった専門家への報酬も考慮すると、一定の費用負担は避けられません。しかし、社債の元本減免、つなぎ融資の円滑化、法的整理回避による信用維持といった強力なメリットは、費用を上回る価値をもたらす可能性があります。特に多数の債権者や複雑な債務構造を持つ企業、上場企業にとっては費用対効果が高いと言えるでしょう。

JFSCでは、お客様の状況を詳細に分析し、事業再生ADRの費用対効果をシミュレーションいたします。また、専門家ネットワークを活用し、全体的なコストを最適化するためのアドバイスも提供可能です。

どのような企業が事業再生ADRの利用を検討すべきか?

事業再生ADRは、特に以下のような特徴を持つ企業に有効です。

これらの特徴に合致する企業は、事業再生ADRの利用を積極的に検討すべきタイミングと言えるでしょう。

事業再生ADRの検討は専門家への相談が不可欠

事業再生ADRは強力な制度ですが、その複雑性から専門的な知識と経験が求められます。弁護士や税理士といった専門家と連携し、自社にとって最適な再生スキームを選択することが成功の鍵です。JFSCでは、お客様の状況に応じた最適な事業再生戦略をご提案し、ワンストップで支援いたします。

よくあるご質問

事業再生ADRと他の私的整理(特定調停など)との主な違いは何ですか?

事業再生ADRは産業競争力強化法に基づく準則型私的整理であり、社債の元本減免やプレDIPファイナンス(つなぎ融資)の円滑化、企業再生税制など、多様かつ強力な支援措置が法的に整備されている点が大きな違いです。

事業再生ADRを利用する際の費用はどのくらいかかりますか?

特定認証紛争解決事業者への業務委託金や報酬金が発生し、債権者数や債務額に応じて数百万円から数千万円の費用がかかります。これに加え、弁護士や税理士などの専門家報酬も考慮する必要があります。

事業再生ADRを利用するメリットとデメリットを教えてください。

メリットは、高い合意率、法的整理回避による信用維持、社債減免や金融支援、税制優遇です。デメリットは、制度利用費用や専門家報酬が発生すること、また債権者全員の同意が得られない場合は法的整理へ移行するリスクがあることです。

公開日: 2021年3月5日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2021年3月5日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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