2024.03.22 M&A実務 プロセス手順

不動産仲介業の倒産急増とM&A戦略:事業承継と成長の道筋

不動産仲介業の倒産急増とは、2023年に過去最多の120件を記録した業界の厳しい現状を指します。転居需要の減少、企業の転勤見直し、大手との競争激化、DXの遅れなどが背景にあり、特に中小零細企業が経営難に直面しています。M&Aは、こうした課題を解決し、事業承継や成長を実現するための有効な戦略として注目されています。

📘 宅建業 M&A の全体像(中核ピラー)

業者数 13.2 万社・後継者不在率 61.3%・法改正三重苦・2026 年問題で変わる宅建業承継の選択肢——本記事の前提となる業界全体動向は なぜ今、宅建業を M&A すべきか で網羅解説しています。

不動産仲介業の倒産が過去最多に:背景と現状

帝国データバンクの調査によると、2023年の不動産仲介会社の倒産件数は120件に達し、前年比70%増加と過去最多を記録しました。この背景には、国土交通省のデータにも見られるように、転居需要の減少や引っ越し費用の高騰に加え、企業が従業員の転勤ポリシーを見直し、転居を伴う異動を減らす傾向が強まっていることがあります。

大手企業上位15社の仲介件数(自社管理物件に限る)は2018年から2023年の間で約12%減少しており、DX推進や築浅優良物件の囲い込みといった大手企業の戦略が功を奏している一方で、中小零細の不動産仲介会社は厳しい競争環境に置かれています。

なぜ不動産仲介業の倒産が急増しているのでしょうか?

中小企業が指摘するようなDX導入の遅れ、厚生労働省のデータにも表れる人材確保の難しさ、そして後継者問題や資金繰りの悪化といった具体的な課題が、中小零細の不動産仲介会社を経営難に追い込んでいます。賃料の平均単価が上昇しているとはいえ、仲介件数の減少を補うには至らず、賃貸仲介市場全体の規模は縮小傾向にあると考えるのが妥当でしょう。

M&Aは不動産仲介業の「成長戦略」となり得るか?

不動産仲介業界では、これまで「売上=社員数×仲介成約件数×平均単価」という方程式で規模拡大を目指す経営が一般的でした。しかし、市場環境の変化により、急激な拡大が固定費の増大を招き、経営を圧迫するケースが散見されます。安定収益源となる管理物件の確保は重要であるものの、手間がかかる割に単価が低いと見なされ、後回しにされがちでした。しかし、管理物件は顧客との継続的な接点となり、将来的な売買案件への発展も期待できるため、その重要性は再認識されています。

このような状況下で、M&Aは事業の再編や成長戦略として注目されています。M&Aを通じて、顧客基盤の拡大、サービスラインナップの拡充、コスト削減といったシナジー効果を追求することで、厳しい市場環境を乗り越え、持続的な成長を実現することが可能です。この際、売り手経営者の個人保証解除を検討する場合には、経営者保証に関するガイドラインの活用も視野に入れるべきでしょう。

不動産仲介会社のM&Aで買い手から評価されるポイントは何ですか?

M&A仲介会社が不動産仲介業のM&Aを行う場合、買い手から評価される主なポイントは以下の4点です。

  1. 管理戸数:安定した収益源となる管理物件は、買い手企業にとって最も魅力的な評価ポイントの一つです。管理戸数が多いほど、継続的な管理手数料収入が見込めるだけでなく、将来的な入居者からの売買仲介案件への発展も期待できます。日本財務戦略センター(JFSC)が支援したM&A案件の分析では、都市圏で管理戸数300件以上の企業が年間売上高の1.5倍から2倍程度、地方都市で管理戸数100件以上の企業が管理手数料収入の3年分相当で買収された事例が確認されています。
  2. 従業員数:不動産仲介業界は、厚生労働省の調査でも明らかになっている通り、慢性的な人手不足に直面しています。特に、宅地建物取引士などの国家資格保有者は貴重な人材であり、M&Aにおいて高い評価を受けます。買い手企業は、事業拡大や新規拠点展開の際に、即戦力となる人材、特に資格者を確保できる点を重視します。
  3. 保有資産:長年の事業活動を通じて保有する不動産(オフィス、店舗、賃貸物件など)は、M&Aにおいて重要な評価対象となります。特に、市場価値の高い立地にある物件や、安定した賃料収入を生み出す収益物件は、買い手にとって大きな魅力です。ただし、帳簿上の簿価と実際の時価との間に大きな乖離があることが多く、M&Aに際しては、不動産鑑定士による時価評価を事前に実施し、客観的な根拠に基づいて交渉を進めることが重要です。
  4. 宅建免許番号:宅地建物取引業の免許番号は、その企業の事業継続年数と信用力を示す指標となります。「(2)」や「(3)」といった番号が若い企業は、事業歴が長く、地域社会での信頼や実績が積み上がっていると評価されます。JFSCのM&A実績や業界の専門家による分析によると、免許番号が2以上の場合、企業価値評価において数%から10%程度のプレミアムがつくことが一般的です。

不動産仲介業界の未来とM&Aの役割

DX推進や市場変化にM&Aはどう対応しますか?

今後の不動産仲介業界は、テクノロジーの発展と社会構造の変化によって大きく変革されると予測されます。AIによる物件マッチング、VR/ARを活用したオンライン内見、電子契約の普及といったDX(デジタルトランスフォーメーション)の波は、顧客体験を向上させ、業務効率化を促進する一方で、これに対応できない企業は競争力を失う可能性があります。経済産業省もDX推進の重要性を強調しており、M&Aは、こうしたテクノロジーを持つ企業との統合や、DX推進のための投資を加速させる有効な手段となります。

また、交通インフラの整備や、地方都市の衰退、企業による拠点集約といった動きは、転居を伴う異動のニーズを減少させ、市場構造を変化させています。このような環境下で、M&Aは、新たな市場への参入、事業領域の拡大、あるいは特定の地域での事業基盤強化といった成長戦略を実現するための重要な選択肢となるでしょう。

専門家との連携でM&Aを成功させる

M&Aは、単なる事業の売買ではなく、企業の未来を左右する重要な経営判断です。公認会計士税理士弁護士といった各分野の専門家と連携し、M&A支援機関登録制度や中小M&Aガイドラインに準拠した透明性の高い支援を受けることで、複雑なプロセスを円滑に進め、最適なM&A戦略を実現することが可能です。ご不明な点がございましたら、M&Aの専門家へお気軽にご相談ください。

よくあるご質問

不動産仲介業の倒産が増えている中で、M&Aはどのようなメリットがありますか?

M&Aは、顧客基盤の拡大、サービスラインナップの拡充、コスト削減といったシナジー効果を通じて、厳しい市場環境を乗り越え、持続的な成長を実現するメリットがあります。また、後継者問題の解決や、DX推進のための投資加速にも有効な手段です。

不動産仲介会社のM&Aで特に評価される資産は何ですか?

安定した収益源となる「管理戸数」、宅地建物取引士などの資格保有者を含む「従業員数」、市場価値の高い「保有不動産」、そして事業継続年数と信用力を示す「宅建免許番号」が特に高く評価されます。

M&Aを検討する際、どのような専門家に相談すべきですか?

M&Aは法務、税務、会計など多岐にわたる専門知識を要します。公認会計士、税理士、弁護士といった各分野の専門家と連携し、M&A支援機関登録制度に登録されたM&A仲介会社に相談することで、適切な評価と円滑な手続きが期待できます。

関連調査データ

東京23区・不動産口コミ全数調査(3,829社・84,293件)

不動産仲介会社の企業価値を左右するGoogleマップ口コミの実態を、東京23区3,829社・84,293件で全数調査。捨て垢率・口コミ突然増加(バースト検出)・LocalGuide率のデータを区別に公開しています。M&A・事業承継で企業評価に用いる際の参考データとしてもご活用ください。

調査データを見る →
公開日: 2024年3月22日 / 最終更新日: 2026年5月22日
五十嵐 悠一

執筆者

五十嵐 悠一(いがらし ゆういち)

株式会社日本財務戦略センター 代表取締役

京都大学経済学部経営学科卒業。株式会社損害保険ジャパン本店営業部、東証上場M&A仲介会社を経て、2020年5月に日本財務戦略センターを設立。中小企業のM&A仲介・事業承継支援を専門とし、医療・介護・食品製造・流通卸・機械製造分野の成約実績を持つ。

資格:プロフェッショナルCFO(日本CFO協会)/M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース)

公的登録:中小企業庁 M&A支援機関 登録事業者/一般社団法人 M&A支援機関協会 正会員

メディア登壇:株式会社サイゾー Business Journal ウェブセミナー講師「【売り手向け】M&Aを成功させるための具体的な行動・プロセス・知識」(2022年6月)[公式告知]

専門家コラム寄稿:BATONZ(国内最大級M&A プラットフォーム)に M&A・事業承継 74本(2021年〜継続)[コラム一覧]

|LinkedIn|X (@jfsc2020)|BATONZ

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の案件における法務・税務・会計判断を提供するものではありません。法務・税務・会計の個別判断は、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。M&Aのスキーム設計・タイミング・買い手探し等のアドバイザリーは、株式会社日本財務戦略センターにご相談ください。記載内容は公開時点の情報に基づき、法令改正や市場変動により最新の状況と異なる場合があります。

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よくあるご質問(FAQ)

この章のポイント
日本財務戦略センターへのご相談に関する共通の10問と、本記事に関する0問の計10問。
共通Q1. 日本財務戦略センターはどのような会社ですか?
A. 株式会社日本財務戦略センター(JFSC)は、中小企業オーナーの M&A・事業承継を「自分事として最後まで完結する」ためのご相談先です。仲介の独断ではなく、売り手の判断材料を整える立場を貫いています。会社概要もご覧ください。
共通Q2. 相談したら、必ず M&A しなければいけませんか?
A. いいえ、ご相談のみで結構です。相談後に「今回は見送ります」と判断いただいても問題ありません。M&A 以外の選択肢(廃業・親族承継・事業再生)も含めてご一緒に整理します。まずは無料相談からお気軽にどうぞ。
共通Q3. 相談料・着手金は発生しますか?
A. 初回相談・簡易査定・進行中の段階まで、すべて無料です。日本財務戦略センターは完全成功報酬制を採用しており、M&A 成約時のみご報酬が発生します。着手金・中間金・月額顧問料は一切いただきません。なお、案件特性により外部専門家への依頼や登記等の実費(例:司法書士の登記費用、外部監査法人による資産査定、譲受企業側からの弁護士・公認会計士による DD 費用 等)が発生する場合は、必ず事前にご相談・ご同意のうえ進めますので、不意の費用負担は生じません。詳細は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q4. 一般的な M&A 仲介会社と、どこが違いますか?利益相反はどう開示されますか?
A. M&A 仲介は売主・買主の双方から報酬を得る「両手仲介」が業界慣行で、構造的な利益相反のリスクがあります。そのうえで、業界には「誘い込む仲介」と「公開する仲介」の二類型があると当社は考えています。日本財務戦略センターは後者の立場で、契約締結時に重要事項説明書を交付し、両手仲介の構造を含めて文書でご説明したうえで、売り手の判断材料となる情報を整え、買い手の都合で交渉を急がせない姿勢を貫きます。これは経済産業省・中小企業庁中小 M&A ガイドライン第 3 版・2024 年 8 月改訂、手数料算定基準の開示・買い手信用調査等を留意事項として明示)に則った対応です。二類型化の根拠は弊社独自の業界 20 社研究レポート、構造論の詳細は仲介契約 vs FA 契約の構造分析もご参照ください。
共通Q5. どれくらいの規模から相談できますか?
A. 年商数千万円規模の小規模事業から、数億円規模まで対応します。業界の多くの仲介会社では最低手数料を 2,000 万円以上に設定している傾向で、各社の最低手数料は中小企業庁M&A 支援機関登録制度・登録情報で確認いただけます。日本財務戦略センターの最低手数料は 700 万円で、小規模案件もお引き受けしています。具体的な報酬構造は弊社の報酬体系をご確認ください。
共通Q6. 税金・法律のことを詳しく教えてもらえますか?
A. 税務・法務は税理士法・弁護士法により、具体的な提案は弁護士・税理士等の専門家のみが行えます。当社は業界慣行の一般論をご説明した上で、顧問の先生方にご確認いただく形でご案内します。必要に応じて専門家ネットワークのご紹介も無料で行っています。
共通Q7. 家族や従業員に知られたくないのですが、可能ですか?
A. ご相談段階から NDA(秘密保持契約)を締結し、徹底管理します。社名を公開せずに買い手候補へ打診する「ノンネーム打診」の進め方も可能です。守秘義務体制については情報管理ポリシーでご確認いただけます。
共通Q8. 成約までどれくらいの期間がかかりますか?
A. 標準的には 3〜6 ヶ月程度を目安としてお考えください。買い手候補と事前に綿密な調整を行い、売主オーナー様のペースで進行します。スピード優先で売主の利益を損なう進め方は致しませんが、売主オーナー様のご事情・ご要望に応じて、最短 60 日での成約実績もございます。
共通Q9. デューデリジェンス(DD)では、どのような立場をとりますか?
A. 日本財務戦略センターは、売主オーナー様の利益を最優先に検討する立場を貫きます。仲介業の構造的な利益相反論点については仲介契約 vs FA 契約の構造分析で詳述しており、DD 費用負担の判例実務は東京地裁 DD 費用判決の射程でご確認いただけます。必要に応じて第三者の公認会計士・弁護士・税理士等の専門家をご紹介し、買い手寄りに偏らない査定体制を整えます。中小企業庁中小 M&A ガイドラインの遵守事項に則り、適切な情報開示を行います。
共通Q10. 対応エリアは限られますか?
A. 全国対応可能です。首都圏はもちろん、各地方都市でもご相談実績があります。オンライン面談と現地訪問を組み合わせ、所在地を問わず売主様のペースで進行します。まずは所在地を問わない無料相談をご利用ください。

📅 本記事の情報基準日

本記事は 2024年3月22日 公開時点の情報に基づきます。税制・法令等は改正される場合があるため、最新の制度・税制は公的機関の公式情報をご確認ください。

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