「ゼロゼロ融資」借り換え政府創設原案について

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公開日:2022年11月1日 /最終更新日:2024年7月24日

ゼロゼロ融資政府原案

「ゼロゼロ融資」について10月31日の読売新聞より政府原案が判明したとの記事が出ました。
内容についてやや意外でしたが、内容について触れていきたいと思います。

ゼロゼロ融資、今回のポイントは?

ポイントは大きく分けて5つです。
①保証限度額が6000万円から1億円に設定
②100%保障の融資は借り換え後も保証を維持し、保証料は低水準に設定
③保証の対象期間は10年以内
④借り換えた場合の元本の返済は最長5年猶予する
⑤収益力を強化するための計画書を金融機関と策定することが条件

背景は?

何度か触れたように、ゼロゼロ融資の元本返済が始まったことで、体力がない企業の倒産は今後増加していくと考えられます。
そのままだと社会不安と景気の悪化を招くことが予想されます。
そのため借り換えを行い倒産を先送りにし、その間に事業構造を変換しすることで債務返還の余力を付けさせようと政府与党が考えていると思います。

とはいえ従来のようなゼロゼロ融資の継続だと、金融機関も政府保証がついていることから融資承認が甘く、単なる延命、問題の先送りにとどまってします。
生産性向上どころか、先送りにした結果、倒産した際の負債額が増え国民負担が高まることを回避しなければなりません。
そのため今回は金融機関も借り換え時に事業計画を共同で策定することで、責任の共有を図ろうと考えているということでしょう。

今回の政策についてどう思う?

上記の政策について結論から言うと、かなり面白い政策だなと思います。

中小企業庁によると、今年8月末時点の融資実績は政府系・民間金融機関を合わせて約243万件、約43兆円に上る。中小企業庁は近く有識者会議に制度の原案を示し、詳細に関する議論を行う。

と末尾で触れられてますが、現在、平均すると1社1,800万円弱のゼロゼロ融資を受けているという計算になります。
これらの企業をいつまでも融資漬けのままにはできませんが、急に市場原理に則った返済が始まったら、倒産が急増し、社会不安から政府批判につながります。
それを回避するため、まず保証枠を従来より増やすことで資金がショートしそうな企業であっても救済できる「余地」を残します。
この「余地」というのがポイントで、借り換えできるかは企業が金融機関と事業計画を共同で策定することを条件としています。
逆に言うと事業計画が立てられない企業は保証融資が受けられないため、市場から退出する圧力がかかります。
企業に対しては自己責任論を問えることから、完全な保護政策ではないということですね。

さらに事業計画自体も金融機関と立てることから、金融機関に対してもけん制機能が働きます。
特定の金融機関で破綻率が高かった場合、金融庁から指導される余地もあるのではないでしょうか。
そう考えると金融機関も安易な貸し出しはできなくなります。

また以前もお伝えした通り、中小企業事業再生等ガイドラインでは金融機関が保証融資であっても融資先に対して関係を持ち、場合によっては以下の通り私的整理などの提案も行わないといけません。
つまり事業計画を立て融資を受けると、金融機関の管理がさらに強くなると考えていいでしょう。

コラム抜粋

中小企業者のライフステージによりソリューションの提案や助言などを行うように促されています。
また④の予兆管理の部分で、「有事への段階的な移行過程にあることの認識を深めるよう働きかけ」という点が明記されているところも印象的です。
金融機関から危機的状況に移行していることについてアナウンスすることも求められるのでしょう。

どう向き合う?

とはいえインバウンドが増えてきている現在、構造を転換し収益を上げるチャンスだと思います。
また政府も夏場にオミクロン株の大流行を受けても緊急事態制限など発令しませんでした。
今後も同様に行動制限を発令し、助成金などを出すとは考えづらいことから、冬にコロナが流行しても耐えられるような事業構造にしておくことが必要でしょう。

金融機関との関係については以前のコラム、「事例でみる経営者保証の解除」でも記載したような以下のような対応を行っておけばいいのではないでしょうか。
1.法人個人の分離
2.財務基盤の強化
3.経営の透明性の確保
詳細はリンク先をご確認ください。

今後はどうなる?

冒頭「やや意外だった」と記載したように条件付き延命という、国全体の生産性の向上と個別企業の救済の落としどころとして面白い政策が出てきました。
金融機関のモニタリング付きで5年間の元本返済留保ということで、資本性劣後ローンのような意味合いを帯びている気がします。
(詳細は「コロナと資金調達と資本性劣後ローンの活用と」を参照してくて下さい)
そして1億の大台に乗ったことから、今後同様の政策が継続されるかは不明です。
返済に影響が出てきた場合、リスケジュールまでは許容されると思いますが、それ以上は厳しいでしょう。
そうすると先ほどのガイドラインに拠ると、以下の通り私的整理を進められるか、DESのような形でREVICのような政府系ファンドや金融機関系ファンドの参加に入り抜本的な立て直しがされることになる可能性があるでしょう。

コラム抜粋

②債務減免等の抜本的な金融支援が必要な段階
中小企業者が、条件緩和を受け、収益力の回復に努めてもなお、金融債務全額の返済が困難であり、やむを得ない場合には、事業再生を図るために必要かつ合理的な範囲で金融債務の減免その他債務の資本化等(DESを含む。第二部、第三部において、以下「債務減免等」という。)の要請を検討する。このとき、中小企業者は、経営責任と株主責任を明確化する。

 

結尾

解説していく中で感じたのは、資本性劣後ローンや中小企業事業再生等ガイドライン、またここでは触れませんでしたが、私的整理に関するガイドラインや経営者保証等に関するガイドラインなど、コロナが始まってから政府が諸々打ち出してきた各種の施策を踏まえた政策なのではないかということです。
そう考えると今回の保証融資原案は集大成と言えるものかもしれません。
今回を最後にして最大のチャンスととらえ、保証融資を活かしていくのはありだと思います。

現状は政府原案が出た状態なので、今後も内容の修正があるかもしれません。
その際はまた随時紹介していきたいと思います。

また現状についてご不安な点がありましたら是非お気軽にご相談ください。
他のガイドラインなどについては以下も参考にしてください。

ゼロゼロ融資の終焉とその後
最新「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」についての解説
企業再生スキームとM&A
債務超過企業と企業再生(準則型私的整理編)
【事業再生】特定調停スキームとは
【事業再生】事業再生ADR制度について
地域経済活性化支援機構(REVICとは)
事業承継時の「経営者保証に関するガイドライン」の特則
「経営者保証に関するガイドライン」とは
<金融機関の視点から見る>ポストコロナを見据えた救済型M&Aについて

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