事例でみる経営者保証の解除

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公開日:2022年9月28日 /最終更新日:2022年9月28日

経営者保証に関するガイドライン

以前、本コラムでも取り上げましたが、政府も企業の競争力を高めるため、金融機関から借り入れを行う際、連帯保証である経営者保証を必須とはしないようガイドラインを出しています。
また今まで連帯保証を付けていた融資も連帯保証を解除できるようガイドラインでも触れています。
今回は経営者保証解除のため、どのような点がみられているのかについて触れてみたいと思います。

経営者保証解除の事例集

2022年9月20日に中小企業庁から、営者保証を解除した事例集が出されました。
重視されているのは以下の3点です。

1.法人個人の分離
2.財務基盤の強化
3.経営の透明性の確保

ガイドラインで上記の3点を重視しているのは、金融機関は経営者保証を付けることで融資先の経営に対し規律を与えようとするが、きちんと経営がなされており、今後もその傾向がある企業に対して経営者保証を付けるのはロジックとしておかしいのではないか、という考え方と思われます。

では先ほどの点について順にみていきます。

法人個人の分離

経営者が株主の場合、法人と個人の関係があいまいなことが多いでしょう。
指摘されているケースとして、
①経営者と法人の間で役員借入金や役員貸付金が発生している
②個人で所有している土地の上に事業所を建てて賃料を受け取っている
などが挙げられています。
経営に対する規律を求める観点からこの是正を求められます。

解決策としては、

①法人と個人との間で貸し借りをしている債権を整理
②土地については法人に売却するなど

により、個人と法人の資産の分離を行い解除へ結び付けています。
借入金が多い場合DESによる資本化も手段として挙げられています。

財務基盤の強化

今後、安定して経営ができるかどうか(融資に個人保証を付ける必要があるか)財務基盤について検証されます。
①直近3期のEBITDA有利子負債倍率を10倍を切っているか
②債務超過ではないという点
が重視されているようです。
なお2022年8月31日付で、保証制度のEBITDA有利子負債倍率の要件が10倍から15倍に緩和されました。
これにより現在の実務上の運用は変わっている可能性があります。

ところでEBITDA有利子負債倍率とは、有利子負債がキャッシュフローの何倍あるのかを表す指票です。
具体的な計算式としては
EBITDA有利子負債倍率=(借入金+社債-現預金)÷(営業利益+減価償却費)
と表されます。

このほか、
①経営計画を見直し売上げや利益率の向上
②経営課題の見直しを外部専門家や金融機関と行う
③経費削減や不要資産の売却などを行い財務基盤の強化を行う
などの事例が紹介されています。

経営の透明性の確保

 

金融機関への情報開示についての事例が紹介されています。
決算期の報告だけでは透明性の要件を充足しておらず、
①試算表の作成
②試算表の毎月ないしは四半期ごとの開示によりタイムリーな財務情報の伝達
③決算書に計上されている資産状況の説明を外部評価を含め行う
ことにより、金融機関に対して経営の透明性を高めています。

事例では経営者保証を外すことで事業承継を行うことが可能になったり、新しい事業へチャレンジしたりと次のステップへ進んだケースが紹介されています。
まさに経営者保証を解除することで、政府が目指す生産性向上につながったと言えるでしょう。
ガイドラインでも金融機関に対し、経営者保証を外すよう債務者に求められた場合、真剣に検討し、外せない場合はその理由を適切に説明しないといけないしています。
政府も金融機関に対して真摯に対応するようくぎを刺しています。

またガイドラインに沿い経営者保証を外す過程で経営の透明性を高め、企業を自立させることにもつながります。
進めることで個人にとっても法人にとってもメリットがあると思います。
今お困りでない方も、企業強化のために一度検討してみてもいいのではないでしょうか。

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