中小企業向け融資政策の状況

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公開日:2023年5月17日 /最終更新日:2023年5月17日

中小企業向け融資政策の状況

企業にとって現預金は血液に例えられますが、運転資金を融資によって賄っている中小企業は多くあると思います。
そこで今回は中小企業向けの融資政策の状況についてまとめてみました。

新型コロナウイルス感染症の影響と対策

新型コロナウイルス感染症の流行は、中小企業・小規模事業者にとって大きな経営課題となっています。
2022年版中小企業白書・小規模企業白書
1によると、令和3年度の中小企業・小規模事業者の売上高は前年度比8.1%減少し、経常利益率は6.21%と低下しました。
特に非製造業では飲食店や旅行・宿泊など感染症対策の影響を受けやすい業種が多く、厳しい状況が続いています。

こうした中で政府や日本銀行は、中小企業・小規模事業者の資金繰り支援や事業再構築支援などの融資政策を実施しています。
具体的には以下のような施策があります。

これらの施策は、中小企業・小規模事業者が低利率で資金調達しやすくなるだけでなく、事業再構築やデジタル化などの自己変革に向けた取組を促進する効果も期待されます。

中小企業向け融資政策の効果と課題

これまでに実施された中小企業向け融資政策は、一定の効果を上げています。
2022年版中小企業白書・小規模企業白書
1によると、令和3年度第2四半期末時点で、信用保証協会等から新型コロナウイルス感染症対応として保証された件数は約250万件、額は約50兆円となっており、セーフティネット保証制度等を活用した借入金残高は約15兆円となっています。
また日本銀行から公表されているデータ
3によると、令和4年3月末時点で、新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペから借り入れた資金残高は約110兆円となっており、貸出促進付利制度も約30兆円分が利用されています。

これらの施策は中小企業・小規模事業者の資金繰り難を緩和し、事業継続や再構築を支援する役割を果たしています。

しかし、一方で課題も残っています。例えば、

  • 資金調達だけでは不十分であり、経営改善や自己変革への取組が必要であるが、そのための支援体制やノウハウが不足している場合がある。
  • 資金調達が過剰になる可能性があり、将来的な返済負担や債務超過リスクが高まる恐れがある。
  • 資金調達先や条件によっては不公平感や競争歪みが生じる可能性がある。

以上のような課題に対処するためには、

  • 支援機関や専門家との対話を通じて、事業再構築計画やデジタル化計画などの策定や実行を支援する仕組みを充実させる。
  • 資金調達の適正化や返済負担の軽減を図るために、返済期間の延長や繰上げ返済の促進などの措置を講じる。
  • 資金調達先や条件に関する情報の透明性や公平性を高めるために、各種支援制度の内容や利用状況などの情報提供を強化する。

などの取組が必要と考えられます。

まとめ

新型コロナウイルス感染症の流行は、中小企業・小規模事業者にとって大きな経営課題となっています。
政府や日本銀行は中小企業・小規模事業者の資金繰り支援や事業再構築支援などの融資政策を実施していますが、一方で課題も残っています。
今後は資金調達だけでなく、経営改善や自己変革への支援体制やノウハウの充実、資金調達の適正化や返済負担の軽減、資金調達先や条件に関する情報の透明性や公平性の向上などの取組が求められます。
中小企業・小規模事業者は、日本経済の基盤であり、社会的な役割も大きい存在です。
新型コロナウイルス感染症からの回復と成長に向けて、中小企業・小規模事業者が活力ある経営を展開できるように、政府や日本銀行は引き続き支援していく必要があるでしょう。
引き続き中小企業の融資状況など、お役に立てる情報がありましたら提供してまいりますのでよろしくお願いします。

 

 

<ご参考>日本銀行貸高約定平均金利・貸出金推移

 

以上のように、2021年と2022年の間に中小企業への貸出は緩やかに拡大し、金利は低下傾向にあると言えます。

出典

: 中小企業庁「新型コロナウイルス感染症対策」https://www.chusho.meti.go.jp/sme_english/covid-19/index.html
: 経済産業省「2022年版中小企業白書・小規模企業白書」https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H33/h33_hakusho.html
: 日本銀行「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ等に関するQ&A」https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200420a.htm/

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