最新「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」についての解説

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公開日:2022年3月7日 /最終更新日:2022年3月9日

2022年3月4日「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」のリリース

政府は新型コロナウィルスによる中小企業の債務の増大や赤字の拡大を受け、中小企業の事業再生について政策の検討を行ってまいりましたが、3月4日に「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」がリリースされました。
今回はこのガイドラインについて解説をしていたいと思います。

以下は、ガイドライン取りまとめの経緯の抜粋です。

一般社団法人全国銀行協会を事務局とする「中小企業の事業再生等に関する研究会」(座長:小林信明(長島・大野・常松法律事務所弁護士))は、令和3年6月に公表された「成長戦略実行計画」を受け、中小企業の事業再生等に関するガイドラインを策定するために、同年11月から、精力的に検討を行ってきました。

今般、検討の成果として「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)を取りまとめました。

本ガイドラインは、中小企業者の「平時」や「有事」の各段階において、中小企業者・金融機関それぞれが果たすべき役割を明確化し、事業再生等に関する基本的な考え方を示すとともに、より迅速に中小企業者が事業再生等に取り組めるよう、新たな準則型私的整理手続である「中小企業の事業再生等のための私的整理手続」を定めています。

本ガイドラインが、中小企業者の維持・発展や事業再生等を後押しし、日本経済・地域経済の活性化に資するものとなることが期待されます。

当庁としては、本ガイドラインの周知・広報に努めるとともに、金融機関に対して活用を促すことにより、本ガイドラインが浸透・定着していくよう努めてまいります。

 

今回のガイドライン改正の肝は?

従来も事業再生ガイドラインはありましたが、どの点が変わっているのでしょうか?
一読するとだいぶシンプルになっているようです。
まずは以下の通り、経済産業省の中小企業活性化パッケージから該当部分を抜粋しましたのでご確認ください。

中小企業の事業再生等のガイドラインの策定
(経営者退任原則、債務超過解消年数要件等を緩和)
➝ 数百人規模の民間専門家(弁護士等)を活用し支援
➝ ガイドラインに基づく計画策定費用の支援制度を創設

今までのガイドラインでは経営者責任や債務超過解消年数について厳しかったことから活用が活性化していなかったのではないか、という点で上記原則を緩和しようと考えたようです。
結論から言うと確かに緩和、というか経営責任を取らなくてもいいとする点について例外規定は記載されているものの、今までと大きな運用の違いはないのではないか、という印象を受けました。
むしろ役割が明記されることで厳しくなっているのではないかと考えます。

そのほか、事業再生計画を作成するにあたり、弁護士などの専門家を活用するなどが明記されているところが目新しいところです。
また後ほど触れますが、「債権50%以上を有する債権者(いわゆるメインバンク)は債務者から私的整理について相談を受けたら真摯に対応しないといけない」という趣旨の記載もあり、むしろメインバンクとして私的整理などに誘導していくのでは?という印象も受けています。

では、ガイドラインを紐解いていきたいと思います。
表紙や目次は割愛します。

重要な点については太字で記載しますのでご注意ください。

<第一部>

本ガイドラインの目的等

令和3年6月に公表された「成長戦略実行計画」を受け、中小企業者の事業再生・事業廃業(以下「事業再生等」という。)に関し、関係者間の共通認識を醸成し、事業再生等に係る総合的な考え方や具体的な手続等をガイドラインとし て取り纏めることを最終目標として、令和3年11月5日「中小企業の事業再生等に関する研究会」が発足した。
本研究会では、金融界・産業界を代表する者が、中立公平な専門家、学識経験者などとともに活発に議論を重ねてきたが、今般、その成果物を「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」として公表するものである。
我が国の中小企業数は、平成28年時点で約357.8万社となっており、我が国の企業数のうち99.7%を占めている。また、その従業者数は約3,220 万人で、全従業者数の68.8%を占めている。令和2年以降に世界的に拡大した新型コロナウイルス感染症は、我が国経済に対しても甚大な影響をもたらし たが、とりわけ中小企業者においてその影響は大きい。経営改善に取組む中小企業者がこうした難局を乗り切り、持続的成長に向けて踏み出していくためには、債務者である中小企業者と債権者である金融機関等が、お互いの立場をよく理解し、共通の認識の下で、一体となって事業再生等に向けた取組みを進めていくことが重要である。本ガイドラインが中小企業者の維持・発展や事業再生等を後押しし、日本経済・地域経済の活性化に資するものとなることを願う。

本ガイドラインは、二つの目的から構成されている。
一点目の目的は、中小企業者の「平時」、「有事」、「事業再生計画成立後のフォローアップ」、各々の段階において、中小企業者、金融機関それぞれが果たすべき役割を明確化し、中小企業者の事業再生等に関する基本的な考え方を示すことである。本ガイドラインと経営者保証に関するガイドラインの活用等を通じて、中小企業者と金融機関の間における継続的かつ良好な信頼関係の構築・強化、中小企業金融の円滑化及び中小企業者のライフステージ(創業、成長・発展、事業再構築、早期の事業再生や事業清算への着手、円滑な事業承継、新たな事業の開始等をいう。)における中小企業者の取組み意欲の増進を図り、中小企業者の活力が一層引き出されることを目的としている。本ガイドラインの第二部がこれに該当し、法的拘束力はないものの、債務者である中小企業者、債権者である金融機関等及びその他の利害関係人によって、自発的に尊重され遵守されることが期待されている。

二点目の目的は、令和2年以降に世界的に拡大した新型コロナウイルス感染症による影響からの脱却も念頭に置きつつ、より迅速かつ柔軟に中小企業者が 事業再生等に取り組めるよう、新たな準則型私的整理手続、即ち「中小企業の事業再生等のための私的整理手続」を定めることである。当該手続は、第三者の支援専門家が、中立かつ公正・公平な立場から、中小企業者が策定する事業再生計画や弁済計画の相当性や経済合理性等を検証すること等を通じて、中小企業者 や金融機関等による迅速かつ円滑な私的整理手続を可能とすることを目的としている。本ガイドラインの第三部がこれに該当し、当該手続は、中小企業者、金融機関等に対して準則型私的整理手続の新たな選択肢を提供するものである。
なお、第二部と第三部は中小企業者の事業再生等の実現という共通の理念を有するものの、第三部が準則型私的整理手続という債務整理実施のための手続として独立した性質を持つことに鑑み、第二部が、第三部の手続利用にあたっての前提条件とはなっていないことを念のため付言する。

本ガイドラインにおける対象企業である「中小企業者」は、中小企業基本法第2条第1項で定められている「中小企業者」(常時使用する従業員数が300人以下の医療法人を含む。)を指すものとし、「小規模企業者」は中小企業者のうち中小企業基本法第2条第5項に定義される事業者を指すものとする。本ガイドラインでは、特に小規模企業者を対象とした条項を個別に設けているが、その事業規模や実態等に照らし適切と考えられる限りにおいて、小規模企業者に適用される条項をこれに該当しない中小企業者に対して適用することを妨げないものとする。
第二部の「金融機関」は、中小企業者に対して金融債権を有する銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合、漁業協同組合及び政府系金融機関を指すものとする。
また、第三部の「対象債権者」は、原則として、銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合、漁業協同組合、政府系金融機関、信用保証協会(代位弁済を実行し、求償権が発生している場合。保証会社を含む。)、サービサー等(銀行等からの債権の譲渡を受けているサービサー等)及び貸金業者を指すも
のとする。但し、第三部に定める手続に基づく私的整理を行う上で必要なときは、その他の債権者を含むものとする。

重要な部分について太字で記載しましたが、

第一部要約

①第二部では中小企業者(従業員300人以下の医療法人も含みます)や金融機関が、「平時」や「有事」のフェーズでどうあるべきかを記載しています。
逆に言うと「有事」はもとより「平時」においても中小企業に求められることが記載されており、「有事」だけ特別な対応をとるだけでは足りないと言うことでしょう。つまり今回はコロナを想定していますが、コロナ前からガイドラインで謳われているような「果たすべき役割」を果たしていない中小企業者に対しては厳しいものがあるかもしれません。

②第三部では第二部とは直接の関係はないとしつつ、新たな準則型の私的整理手続きについて示しています(今回の肝の部分でしょう)。弁護士を中心とした専門家を入れることでスピーディな解決を図ると考えています。今まで支援協議会スキームや特定調停スキームなどありましたが、さらにスピード感のある手続きを提示したと言うことでしょう。

③②に関連してですが、債権者について信用保証協会やサービサーまで拡大しています。これはメインバンクが信用保証協会を使った融資やサービサーに委託したからそれで関与が終了したとするのではなく、継続してメインバクの責任を果たすべきと考えているのではないでしょうか。これも後ほど出てくる部分です。

次に第二部についてみてみたいと思います。
重要なところは太字にしています。

<第二部>

中小企業の事業再生等に関する基本的な考え方

(1)平時の重要性
中小企業者と金融機関との取引においては、平時から、両者が適時適切な対応を取り、信頼関係を構築しておくことが極めて重要であり、そもそも有事(第二部2.柱書において定義する。)に移行しないことがお互いにとって望ましい。平時における適時適切な対応は、中小企業者が有事に陥ることを防止するという予防的効果があるのみならず、中小企業者が仮に有事に陥った場合でも、平時において両者間で築かれた信頼関係は、金融機関による迅速で、円滑な支援検討を可能とし、もって中小企業者の早期の事業再生等に資することになるという効果が期待される。
そのため、中小企業者と金融機関においては、平時からそれぞれ次の対応に努めることが望ましい。

(2)債務者である中小企業者の対応
中小企業者は、以下の対応に努めるものとする。
① 収益力の向上と財務基盤の強化
中小企業者は、事業計画を策定し、当該計画の実行・評価・改善を行うこと等で、本源的な収益力の向上を目指し、もって財務基盤及び信用力を強化する。これにより、中小企業者は、事業の維持・発展等に必要な資金を適時にかつ円滑に調達することが可能になるものである。

② 適時適切な情報開示等による経営の透明性確保
中小企業者は、経営の状況、損益の状況、財産(資産負債)の状況(保証人等のものを含む。)、事業計画・業績見通し及びその進捗状況等(以下「経営情報等」という。)に関して、正確かつ信頼性の高い情報を、自発的に又は金融機関からの要請に応じて、開示・説明することにより、経営の透明性を確保するように努める。また、開示・説明したのちに、経営情報等に関して重大な変動が生じた場合には、自発的に報告するなど金融機関に対する適時適切な開示・説明に努める。
なお、情報開示の信頼性の向上の観点から、法令に即した計算書類等を作成することはもちろん、中小企業庁、金融庁を事務局とする「中小企業の会計に関する検討会」が策定した「中小企業の会計に関する基本要領」や、中小企業の会計に関する指針作成検討委員会が策定した「中小企業の会計に関する指針」を積極的に活用することが望ましい。加えて、公認会計士や税理士等に対して経営情報等の検証を求め、その検証 結果と併せて開示を行うことが望ましい。
但し、小規模企業者については、その事業規模等に照らして可能な範囲で以上の対応に努めるものとする。

③ 法人と経営者の資産等の分別管理
中小企業者は、法人の業務、経理、資産等に関し、法人と経営者の関係を明確に区分・分離し、法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬・賞与、配当、経営者への貸付等)を、社会通念上適切な範囲を超えないものとする体制を整備するなど、適切な運用を図ることを通じて、法人と経営者の資産等を適切に分別管理するように努める。

④ 予防的対応
平時から有事への移行は、自然災害や取引先の倒産等によって突発的に生じるだけでなく、事業環境や社会環境の変化等に十分に対応できないことにより、段階的に生じることが十分に想定される。中小企業者は、有事へ移行しないように事業環境や社会環境の変化に的確に対応するように努めるとともに、有事へ移行する兆候を自覚した場合には、上記①~③の対応を取るのみならず、速やかに金融機関に報告し、金融機関や社外の実務専門家(以下、「実務専門家」という。)、公的機関や各地の商工会議所等の助言を得るように努める。併せて、中小企業者は、資金繰りの安定化を図りつつ、本源的な収益力の改善に向けた事業改善計画を策定して、実行することが重要である。また、計画の策定過程や実行過程において課題が生じた場合には、金融機関や実務専門家に早期に相談し、助言を得ることが重要である。

平時の中小企業者(小括)

従来のガイドラインと変わない部分もありますが、簡単にまとめると、
①金融機関と信頼関係を構築すること
②事業計画を策定し、収益力を強化し、財務体質を強くすること
③法人と経営者の資金のやり取りをきちんと分けること
④有事(後述)へ移行する兆候を自覚した場合は金融機関に報告し、金融機関や社外の実務家、公的機関や商工会議所の助言を得ること
となり、④が新設されています。
また②の事業計画の策定、③の法人と経営者の資金の分離については留意する必要があるでしょう。

 

(3)債権者である金融機関の対応
金融機関は、以下の対応に努めるものとする。
① 経営課題の把握・分析等
金融機関は、中小企業者との信頼関係の構築に努めるとともに、開示・説明を受けた経営情報等を基に、中小企業者の経営の目標や課題を把握するように努める。その上で、中小企業者の経営の目標や課題を分析し、中小企業者のライフステージや事業の維持・発展の可能性の程度等を適切に見極める

また、中小企業者が自らの経営の目標や課題を正確かつ十分に認識できるよう適切に助言し、中小企業者がその実現・解決に向けて主体的に取り組むように促す

② 最適なソリューションの提案
中小企業者の経営の目標の実現や課題の解決に向けて、メイン・非メイン先の別や、プロパー融資・信用保証協会保証付き融資の別にかかわらず、中小企業者のライフステージ等を適切に見極めた上で、当該ライフステージ等に応じ、中小企業者の立場に立って、適時、能動的に最適なソリューションを提案する。その際、必要に応じ、他の金融機関、実務専門家、外部機関等と連携するとともに、国や地方公共団体の中小企業支援施策を活用する。

③ 中小企業者に対する誠実な対応
中小企業者に対して1.(2)②の対応を促すため、経営情報等について中小企業者から開示・説明を受けた金融機関は、その事実や内容だけをもって中小企業者に不利な対応がなされることのないよう、情報開示に至った経緯やその内容等を踏まえ、誠実な対応に努めることとする。

④ 予兆管理
中小企業者の平時から有事への移行は、自然災害や取引先の倒産等に よって突発的に生じるだけでなく、事業環境や社会環境の変化に伴い段階的に生じることが十分に想定される。金融機関は、有事への段階的移行の兆候を把握することに努めるとともに、必要に応じて、中小企業者に対し、有事への段階的な移行過程にあることの認識を深めるよう働きかけ、事業改善計画の策定やその実行に関する主体的な取組みを促す。また、1.(2)④の助言を求められた場合には、事業改善計画策定支援(その後のフォローアップを含む。)や事業再構築に向けた支援を行うとともに、その過程で、課題が生じた場合には、その解決に向けて、実効性のある課題解決の方向性を提案する。

平時の金融機関の対応(小括)

中小企業者のライフステージによりソリューションの提案や助言などを行うように促されています。
また④の予兆管理の部分で、「有事への段階的な移行過程にあることの認識を深めるよう働きかけ」という点が明記されているところも印象的です。
金融機関から危機的状況に移行していることについてアナウンスすることも求められるのでしょう。

 

中小企業者は、収益力の低下、過剰債務等による財務内容の悪化、資金繰りの悪化等が生じたため、経営に支障が生じ、又は生じるおそれがある場合(本ガイドラインにおいて「有事」という。)には、その置かれた状況に応じて、早期に経営改善を図るとともに、事業再生等を検討し実行することが望ましい。かかる考え方に基づき、平成13年の私的整理ガイドライン策定以降、有事に対応する 各種の準則型私的整理手続が整備されてきたが、これまで私的整理手続を進めるにあたっては、中小企業者と金融機関のそれぞれの判断に拠っている面もあった
しかしながら、有事に至っている中小企業者が円滑に事業再生等を図っていくにあたっては、中小企業者、金融機関双方がお互いの立場をよく認識し、共通の理解の下で、一体となって事業再生等に向けた取組みを進めていくことが重要である。よって、本項では、中小企業者の迅速かつ円滑な事業再生等を図るべく、中小企業者と金融機関が事業再生等に取り組む上での基本的な考え方を示すこととする。

(1)債務者である中小企業者の対応

中小企業者は、有事に至った場合、原則的には以下の対応を行うことが求め られる。
① 経営状況と財務状況の適時適切な開示等
中小企業者が事業再生等を図るためには、金融機関に対して、正確かつ丁寧に信頼性の高い経営情報等を開示・説明することが求められる。 また、開示する経営情報等の信頼性の向上の観点から、公認会計士、税理士等による検証を経て、その検証結果と合わせた開示を行うことが望ましい。加えて、開示・説明したのちに、事業計画・業績見通し等に重大な変動が生じた場合は、平時以上に、自発的に金融機関に報告するなど適時適切な開示・説明に努める必要がある。

② 本源的な収益力の回復に向けた取組み
令和3年6月の政府の「成長戦略実行計画」でも指摘されている通り、事業再生には様々な手法がある。金融支援はそのオプションの一つであり、有事においては、本源的な収益力の回復が重要である。事業再生を進めるにあたっては、中小企業者が自律的・持続的な成長に向け、本源的な収益力の回復に取り組むことが必要である。

③ 事業再生計画の策定
中小企業者は、自ら本質的な経営課題を認識し、事業再生に向けて主体的に取り組んでいくためにも、必要に応じて、実務専門家等に相談し、その支援・助言を得つつ、自力で事業再生計画を策定することが望ましい。
事業再生計画の内容は、中小企業者の置かれた状況に応じて異なるが、金融債務の減免等を求める必要がある場合には、実行可能性のある内容であること、金融支援を求める必要性・合理性があること、金融債権者間の衡平や金融機関にとっての経済合理性が確保されていること、さら に、経営責任や株主責任が明確化されていることが求められる。

④ 有事における段階的対応
有事における対応は、中小企業者を取り巻く事業環境のみならず、事業再生計画、金融支援及びスポンサー支援の有無やその内容によって様々であり、そのあり方や推移の態様は一様ではなく、必ずしも下記イからロ、ハ、ニと順番に推移するものではないが、以下に典型的な段階とそれに応じた必要な対応を記載する。
イ 返済猶予等の条件緩和が必要な段階
中小企業者は、事業改善計画の策定・実行を通じて、本源的収益力の回復に向けた自助努力や非事業用資産の換価・処分等を行ってもなお、債務について約定の元本返済が困難となり、やむを得ない場合には、資金繰りの安定化のために、金融機関に対して、元本返済猶予その他債務の返済条件の緩和等(以下、第二部において、「条件緩和」という。)の要請を検討し、また急激な資金流出の抑制のために必要があるときは、元本返済の一時停止・一時猶予の要請を検討する。
中小企業者は、条件緩和を受けた場合には、金融機関や実務専門家の支援・助言等を得つつ、有事に至った原因を明らかにし、事業再生計画の策定・実行を通じて、収益力の回復に努める。

ロ 債務減免等の抜本的な金融支援が必要な段階
中小企業者が、条件緩和を受け、収益力の回復に努めてもなお、金融債務全額の返済が困難であり、やむを得ない場合には、事業再生を図るために必要かつ合理的な範囲で金融債務の減免その他債務の資本化等(DESを含む。第二部、第三部において、以下「債務減免等」という。)の要請を検討する。このとき、中小企業者は、経営責任と株主責任を明確化する。

ハ 上記イ、ロの対応策を講じてもなお事業再生が困難な場合
中小企業者は、イ、ロの対応を経てもなお事業再生が困難である場合で、スポンサー支援や経営の共同化により迅速・確実に事業再生を実行できるときは、これらの対策を真摯に検討する。
スポンサー支援を求める場合、金融機関や実務専門家の支援・助言を得つつ、透明性のある手続でスポンサーを選定するように努める。

ニ 上記イ、ロ、ハの対応策を講じてもなお事業再生が困難な場合
中小企業者は、条件緩和や債務減免等の金融支援を受け、収益力の回復に努めてもなお、赤字が継続し、資金流出を止めることができないときには、事業廃止(廃業)を検討する。
具体的には、スポンサー支援により赤字を脱却し事業継続を図 ることができる場合には、スポンサーへの事業譲渡等も検討することとし、スポンサー支援も得られる見込みのない場合には、早期に事業を廃止し、清算することを検討する。

(2)債権者である金融機関の対応
金融機関は、中小企業者が有事に至った場合、原則的には以下の対応を行うことが求められる。なお、信用保証協会、金融機関から債権を譲り受けたサービサー等、貸金業者、リース債権者においても、同様の対応を行うことが望ましい。
① 事業再生計画の策定支援
有事に陥った中小企業者が事業再生計画を策定するにあたっては、中小企業者が本質的な経営課題を認識し、経営改善に向けて主体的に取り組んでいく必要がある。その際、金融機関は、政府の計画策定支援に係る事業に基づくものを含め、事業再生計画の合理性や実現可能性等について、中小企業者と協力しながら確認する。また、中小企業者が自力で事業再生計画を策定できないと判断される場合には、中小企業者の理解を得つつ、事業再生計画の策定を積極的・継続的に支援する。

② 専門家を活用した支援
金融機関単独では事業再生計画の策定支援が困難であると見込まれる場合や、支援にあたり債権者間の複雑な利害調整を必要とする場合には、当該支援の確実性と実効性を高める観点から、実務専門家や外部機関の第三者的な視点、専門的な知見・機能の積極的な活用を促し、計画策定を積極的に支援する。また、中小企業者に直接貸金債権を有する金融機関は、必要に応じて、これを保証している信用保証協会に対し、計画内容や対応状況について共有し、連携した対応を行う。

③ 有事における段階的対応
中小企業者が、2.(1)①の適切な情報開示、②の本源的な収益力の回復、③の事業再生計画の策定等に向けて誠実に取り組んでいる場合には、中小企業者の置かれた状況に応じて、以下のような対応を検討する。
イ 中小企業者から条件緩和の申出を受けた場合条件緩和により事業再生の可能性があり、必要性・合理性が認められる場合には、条件緩和等の要請について誠実に検討する。

ロ 中小企業者から債務減免等の申出を受けた場合
金融債務の減免等により事業再生の蓋然性があり、債務減免等の必要性と金融機関にとっての経済合理性があり、金融機関間の衡平が確保され、かつ、経営責任と株主責任が明確化されている場合には、経営規律の確保やモラルハザードの回避といった観点も総合的に勘案しつつ、債務減免等の要請について誠実に検討する。

ハ 上記イ、ロの対応策を講じてもなお、中小企業者の事業再生が困難で、中小企業者から、スポンサー支援を求める旨の申出を受けた場合中小企業者の意向を踏まえつつ、適切なスポンサー支援の探索に可能な範囲で協力することが期待される。

ニ 中小企業者から廃業の申出を受けた場合
中小企業者から廃業の申出があった場合は、スポンサーへの事業譲渡による事業継続可能性も検討しつつ、中小企業者の再起に向けた適切な助言や中小企業者が廃業を選択するにあたっての取引先対応を含めた円滑な処理等への協力を含め、中小企業者自身や経営者を含む関係者にとって望ましいソリューション(第三部「5.廃業型私的整理手続」の適用を含む。)を提供するよう努める。その際、中小企業者の納得性を高めるための十分な説明に努めることとする。

(1)保証債務の整理
中小企業者の債務について私的整理手続を実施する場合において、当該債務 にかかる保証人が保証債務の整理を図るときは、保証人は経営者保証に関するガイドラインを積極的に活用する等して、主債務と一体整理を図るよう努めることとする。なお、中小企業者が法的整理手続(第三部1.(1)において定義する。)を実施する場合も、保証人は経営者保証に関するガイドラインを活用する等して、当該保証債務の整理を行うことが望ましい。

(2)各種手続の選択並びに手続間の移行
中小企業者、金融機関が私的整理手続・法的整理手続を検討する場合、お互いに誠実に協議し、中小企業者の置かれた状況等に適合した手続の利用が期待される。
また、中小企業者の選択した私的整理手続の協議が不調に終わり、結果的に法的整理手続や、他の私的整理手続に移行する場合がある。こうした場合、中小企業者の円滑な事業再生等を図るためにも、中小企業者と金融機関は双方誠実に協力し、手続間の円滑な移行に努めることとする。加えて、中小企業者と金融機関は、移行後の民事再生手続若しくは会社更生手続又は他の私的整理手続において、移行前の私的整理手続における合意事項又は同意事項等を法の趣旨に反しないことに留意しつつ尊重するものとする。

(1)債務者である中小企業者の対応
① 事業再生計画の実行に向けた取組み
中小企業者は、自らの経営資源を最大限活用し、債務の条件緩和・債務減免等の前提となった事業再生計画の実行及び達成に誠実に努める。

② 金融機関への適時適切な状況報告
中小企業者は、事業再生計画の実行期間中は、その達成状況に関して、 正確かつ丁寧に信頼性の高い経営情報等を開示・説明するとともに、開示・説明したのちに、事業再生計画・業績見通し等に重大な変動が生じた場合にも、自発的に報告するなど適時適切な開示・説明に努める。

(2)債権者である金融機関の対応
金融機関は、債務の条件緩和、債務減免等の実行後においても、必要に応じて連携先の実務専門家等と協力しながら、事業再生計画の達成状況を継続的に モニタリングするとともに、経営相談や経営指導を行うなど、達成状況を適切に管理する。また、進捗状況の管理を行っている間に、策定当初に予期しえなかった外部環境の大きな変化が生じた場合には、必要に応じて、事業再生計画の見直しの要否等について、中小企業者や連携先の実務専門家等とともに検討を行うとともに、そうした変化や見直しの必要性等を中小企業者が認識できるよう適切な助言を行った上で、計画の見直しを提案し、中小企業者や連携先と協働する。

(3)計画と実績の乖離が大きい場合の対応
有事において中小企業者・金融機関・実務専門家等が真摯に検討し、策定した事業再生計画であっても、その後、必ずしも計画通りに業績が推移するとは限らない。そのため、事業再生計画実行開始年度から起算して、概ね3事業年度を経過するまでに、中小企業者と金融機関等は、事業再生計画の達成状況を確認することが望ましい。
達成状況を確認した結果、事業再生計画と過年度の実績の乖離が大きい場合、 中小企業者と金融機関は、相互に協力して乖離の真因分析を行い、計画を達成するための対策について誠実に協議することとする。協議の上、当初計画の達 成が困難と見込まれる場合は、経営規律の確保やモラルハザードの回避といっ た点を踏まえ、抜本的再生を含む計画の変更や、法的整理、廃業等への移行を行うことが望ましい。

有事にあたっての小括

まず「有事」の定義が初めて出てきています。
「有事」とは「収益力の低下、過剰債務等による財務内容の悪化、資金繰りの悪化等が生じたため、経営に支障が生じ、又は生じるおそれがある場合」と定義されており、コロナなど特定の感染症の流行などを想定しているわけではなく、個々の企業について訪れる経営に支障が起きている状態を指しています。

さてその上で、債務者(中小企業者)についてみていきます。
①事業計画や状況について税理士や公認会計士の検証を経ての開示をすることが望ましい
②金融支援はあくまでもオプションで本源的な収益力向上を行うことが望ましい
③金融債務の減免を求めるときは経営者責任、株主責任を明確化すること

とされております。
今回、「株主責任」の明確化という概念が新しく出てきました。
また後ほど触れますがDESも今回のガイドラインで何度も出てくる概念であることから、減資を行うことで株式の持分を減らす(喪う)ということを想定しているのでしょう。

さて、有事の際の支援については以下のステップで債務者が求められることが変わってきています。

①条件緩和の検討の段階
元本返済猶予その他債務の返済条件の緩和等(以下、第二部において、「条件緩和」という。)の要請を検討し、また急激な資金流出の抑制のために必要があるときは、元本返済の一時停止・一時猶予の要請を検討する。

このタイミングでは事業計画について求められていて、それ以上については触れられていません。

②債務減免等の抜本的な金融支援が必要な段階
中小企業者が、条件緩和を受け、収益力の回復に努めてもなお、金融債務全額の返済が困難であり、やむを得ない場合には、事業再生を図るために必要かつ合理的な範囲で金融債務の減免その他債務の資本化等(DESを含む。第二部、第三部において、以下「債務減免等」という。)の要請を検討する。このとき、中小企業者は、経営責任と株主責任を明確化する。

ここで経営責任と株主責任について出てきています。
また債務の減免だけではなく、債務の資本化(DES)についても触れられています。
実は金融機関の現場ではDESについては実質的に債務の減免と同様の扱いであり、上場企業でなければ査定も難しいことから忌避されることが多かったようです。
ただ今回のガイドラインで株主責任まで触れられていることから、より扱う事例が多くなると思います。
そしてその「責任」の取り方は原資かコントロール化に置くために金融機関ないしはその指示する先への無償譲渡なのでは、と推察しています。

ハ 上記イ、ロの対応策を講じてもなお事業再生が困難な場合
中小企業者は、イ、ロの対応を経てもなお事業再生が困難である場合で、スポンサー支援や経営の共同化により迅速・確実に事業再生を実行できるときは、これらの対策を真摯に検討する。
スポンサー支援を求める場合、金融機関や実務専門家の支援・助言を得つつ、透明性のある手続でスポンサーを選定するように努める。

透明性について触れています。
これは今まで債権者に伝えないまま事業譲渡を行うような、詐害行為的な動きをした債務者がいたことに対する牽制でしょう。逆に金融機関の助言を求めなかった場合、特にペナルティは明記されていませんが、金融機関との関係が冷え込んでしまう可能性が高いでしょう。
仮に債務者が自発的にスポンサーを探してきたとしても、金融機関から選定の妥当性について指摘されてしまう可能性があります。
M&Aで行うなら譲渡金額の妥当性やプロセスについて説明することが必要でしょう。

ニ 上記イ、ロ、ハの対応策を講じてもなお事業再生が困難な場合
中小企業者は、条件緩和や債務減免等の金融支援を受け、収益力の回復に努めてもなお、赤字が継続し、資金流出を止めることができないときには、事業廃止(廃業)を検討する。
具体的には、スポンサー支援により赤字を脱却し事業継続を図ることができる場合には、スポンサーへの事業譲渡等も検討することとし、スポンサー支援も得られる見込みのない場合には、早期に事業を廃止し、清算することを検討する。

最後に廃業についての話が出てきていますが、この時点でできることはもうないので割愛します。
個人再生がメインになってくるステージだと思われます。
個人再生とは破産とは異なり、信用情報は維持され、生活するための現金も破産より多く手元に置けることから、早期の個人の復帰を促すための施策です。

金融機関に求められていることはこの裏表で、適切なモニタリングや事業計画の策定支援などですが、保証債務の整理を「経営者保証に関するガイドライン」に則って対応するよう明記されていることから、破産よりもプラスな着地点を模索するようなイメージでしょうか。

さてここまで、中小企業者と債権者の「平時」や「有事」の関係についてみてきました。
上記のようなフェーズを辿って再建が難しい場合の私的整理手続きについて新たな指針が出ていますので内容についてみてみましょう。

以下、重要な部分は黒字にしています。

<第三部>

中小企業の事業再生等のための私的整理手続
(中小企業版私的整理手続)

(1)本ガイドライン第三部で以下に定める中小企業の事業再生等のための私的整理手続(以下「本手続」という。)は、準則型私的整理手続の一つである。即ち、経営困難な状況にある中小企業者である債務者を対象に、破産手続、民事再生手続、会社更生手続又は特別清算手続等の法的整理手続(以下「法的整理手続」という。)によらずに、債務者である中小企業者と債権者である金融機関等の間の合意に基づき、債務(主として金融債務)について返済猶予(以下、第三部において「債務返済猶予」という。)、債務減免等を受けることにより、当該中小企業者の円滑な事業再生や廃業を行うことを目的とする私的整理手続であり、中小企業者に対して金融債権を有する債権者で、後記4.及び5.に基づいて作成される事業再生計画(再生型の場合)や弁済計画(廃業型の場合)が成立した場合に権利を変更されることが予定されている対象債権者(なお、廃業型の場合、第一部3.の定めにかかわらず、リース債権者も対象債権者に含まれる。)が関わることを前提とするものである。

(2)本手続は、中小企業者の特性を考慮し策定した、中小企業者のための準則型私的整理手続に関する金融界・産業界のコンセンサスを得たものである。中小企業者が策定する事業再生計画案や弁済計画案の内容、その成立要件、計画成立のための手続、金融機関の対応及び計画成立後のモニタリングについては、他の準則型私的整理手続において具体的定めがない場合には、中小企業者及び対象債権者は、本手続を参照すべき拠り所として活用することが期待されている。本手続は、準則型私的整理手続を中小企業者に対して適用する場合に広く準用できる考え方を示すことを目指したものでもある。

(1)本手続は、中小企業者が私的整理を公正かつ迅速に行うための準則であり、金融界・産業界を代表する者が、中立公平な専門家、学識経験者などとともに、協議を重ねて策定したものであって、法的拘束力はないものの、債務者である中小企業者、債権者である金融機関等及びその他の利害関係人によ って、自発的に尊重され遵守されることが期待されている。

(2)本手続における中小企業者の事業再生や廃業は、私的整理手続によった方が法的整理手続と比較し、事業価値や資産等の毀損が少ない等、中小企業者 と対象債権者双方にとって相当性や合理性があることを前提としている。

(3)また、本手続は、対象債権者に債務返済猶予・債務減免等の協力を求める前提として、中小企業者自身が事業再生のための自助努力を行うことはも とより、自然災害や感染症の世界的流行等にも配慮しつつ、その経営責任を明確にすること、また、債務減免等を求める場合は、株主もその責任を明確にすることを予定している。なお、本手続は主に株式会社等が利用することを前提とし、手続のための各要件を定めているものの、個人である中小企業者が利用するにあたっては、本手続の趣旨に反しない限りにおいて、適宜、必要な範囲内の読替(例:株主責任等の適用有無)を行うことを妨げない。

(4)本手続は、公正衡平性の尊重及び透明性の確保を旨とする。

(5)対象債権者のうち、債務者に対する金融債権額が上位のシェアを占める債権者(金融債権額のシェアが最上位の対象債権者から順番に、そのシェアの合計額が50%以上に達するまで積み上げた際の、単独又は複数の対象債権者をいい、廃業型ではリース債権額も金融債権額に含まれる。以下「主要債権者」という。)は、中小企業者から本手続の利用を検討している旨の申出があったときは、誠実かつ迅速にこれを検討し、主要債権者と中小企業者 は、相互に手続の円滑で速やかな進行に協力する。なお、主要債権者は、手続の初期段階から信用保証協会と緊密に連携・協力する。

(6)対象債権者は、本手続に誠実に協力する。

(7)対象債権者と中小企業者は、本手続の過程において共有した情報につき相互に守秘義務を負う。

(1)本手続のうち、「4.再生型私的整理手続」は、以下の全ての要件を充足する中小企業者に対して適用される。
① 収益力の低下、過剰債務等による財務内容の悪化、資金繰りの悪化等が生じることで経営困難な状況に陥っており、自助努力のみによる事業再生が困難であること。

② 中小企業者が対象債権者に対して中小企業者の経営状況や財産状況に関する経営情報等を適時適切かつ誠実に開示していること。

③ 中小企業者及び中小企業者の主たる債務を保証する保証人が反社会的勢力又はそれと関係のある者ではなく、そのおそれもないこと。

(2)本手続のうち、「5.廃業型私的整理手続」は、以下の全ての要件を充足する中小企業者に対して適用される。
① 過大な債務を負い、既に発生している債務(既存債務)を弁済することができないこと又は近い将来において既存債務を弁済することができないことが確実と見込まれること(中小企業者が法人の場合は債務超過である場合又は近い将来において債務超過となることが確実と見込まれ る場合を含む。)。

② 円滑かつ計画的な廃業を行うことにより、中小企業者の従業員に転職の機会を確保できる可能性があり、経営者等においても経営者保証に関するガイドラインを活用する等して、創業や就業等の再スタートの可能性があるなど、早期廃業の合理性が認められること。

③ 中小企業者が対象債権者に対して中小企業者の経営状況や財産状況に関する経営情報等を適時適切かつ誠実に開示していること。

④ 中小企業者及び中小企業者の主たる債務を保証する保証人が反社会的勢力又はそれと関係のある者ではなく、そのおそれもないこと。

私的整理ガイドライン小括(1)

主要債権者についての定義が出ています。簡単に言うと債権総額を多い債権者から積み上げて50%に達成する間に含まれる債権者が対象になります。
そして主要債権者は初期の段階から保証協会と連携することが求められているので、プロパー融資ではなく保証協会融資だからと言う理由で関与しない、という姿勢は批判されてしまうのでしょう。
また廃業型手続きについては従業員の転職の機会があることについて触れられているところが興味深いです。
同業他社の場合であればより説明しやすいのではないでしょうか。

(1)再生型私的整理の開始
① 中小企業者は、本手続の利用を検討する場合、必要に応じて専門家(弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士等の専門家をいう。以下「外部専門家」という。)と相談しつつ、第三者である支援専門家(弁護士、公認会計士等の専門家であって、再生型私的整理手続及び廃業型私的整理手続を遂行する適格性を有し、その適格認定を得たものをいう。以下「第三者支援専門家」という。)の候補者を公表されたリストから選定する。

② 中小企業者は、主要債権者に対して、再生型私的整理手続を検討している旨を申し出るとともに、第三者支援専門家の選任について、主要債権者全員からの同意を得る(第三者支援専門家は、中小企業者及び対象債権者との間に利害関係を有しない者とする。)。なお、上記①にかかわらず、対象債権者全員から同意を得た場合は、リストにない第三者支援専門家を選定することも可とする。

③ 中小企業者は、第三者支援専門家に支援を申し出ることができ、第三者支援専門家は、中小企業者からの申出に対して、誠実に対応する。第三者支援専門家は、主要債権者の意向も踏まえて、再生支援を行うことが不相当ではないと判断した場合には、中小企業者の資産負債及び損益の状況の調査検証や事業再生計画策定の支援等を開始する。

私的整理ガイドライン小括(2)

士業を中心とした「外部専門家」とは別に「第三者支援専門家」という専門家が出てきています。後述しますが、「弁護士、公認会計士等の専門家」とありますが、第三者支援専門家には最低一人弁護士がいないといけないので、弁護士が中心になってくるのではないでしょうか。
リストがあるようなので実際はそのリストの中から主要債権者が選ぶことになります。
対象債権者全員が同意した場合はリストにない第三者支援専門家を選定しても構わないようですが、金融機関が主要債権者の場合、恣意的に専門家を選ぶことになる本シチュエーションについてあまりイメージできません。

 

(2)一時停止の要請
中小企業者は、上記③以降のいずれかのタイミングで、資金繰りの安定化のために必要があるときは、対象債権者に対して一時停止の要請を行うことができ、対象債権者は、以下の全ての要件を充足する場合には、一時停止の要請に、誠実に対応するものとする。
① 一時停止要請が書面によるものであり(但し、全ての対象債権者の同意がある場合はこの限りでない。)、かつ、全ての対象債権者に対して同時に行われていること。

② 中小企業者が、手続開始前から債務の弁済や経営状況・財務状況の開示等に誠実に対応し、対象債権者との間で良好な取引関係が構築されて いること。

③ 事業再生計画案に債務減免等の要請が含まれる可能性のある場合は、再生の基本方針が対象債権者に示されていること(債務減免等の要請を含まない事業再生計画案を作成することが見込まれる場合は、その旨を一時停止の要請書面に記載すること。)。

(3)事業再生計画案の立案
① 中小企業者は、自ら又は外部専門家から支援を受ける等して、相当の期間内に、後記(4)記載の内容を含む事業再生計画案を作成する。

② 中小企業者、外部専門家、第三者支援専門家及び主要債権者は、経営・財務及び事業の状況に関する調査分析や事業再生計画案作成の進捗状況に応じて適宜協議・検討を行う。この協議・検討には、必要に応じて、主要債権者以外の対象債権者、スポンサー候補者等も参加させることができる。

一時停止について誠実に対応することが明記されているので、リスケジュールがやりやすくなるかもしれません。
またスポンサー候補者がいる場合は協議に参加させることも可能です。
私的整理を申し立てるタイミングで候補者として金融機関(特に主要債権者)と調整することが必要でしょう。

 

(4)事業再生計画案の内容
① 事業再生計画案は、次の内容を含むものとする。
イ 自助努力が十分に反映されたものであるとともに、以下の内容を含むものとする。
・企業の概況
・財務状況(資産・負債・純資産・損益)の推移
・保証人がいる場合はその資産と負債の状況(債務減免等を要請する場合)
・実態貸借対照表(債務返済猶予の場合は必須としない)
・経営が困難になった原因
・事業再生のための具体的施策
・今後の事業及び財務状況の見通し
・資金繰り計画(債務弁済計画を含む)
・債務返済猶予や債務減免等(以下、併せて「金融支援」という) を要請する場合はその内容
ロ 実質的に債務超過である場合は、事業再生計画成立後最初に到来する事業年度開始の日から5年以内を目途に実質的な債務超過を解消する内容とする(企業の業種特性や固有の事情等に応じた合理的な理由がある場合には、これを超える期間を要する計画を排除しない。)。
ハ 経常利益が赤字である場合は、事業再生計画成立後最初に到来する事業年度開始の日から概ね3年以内を目途に黒字に転換する内容 とする(企業の業種特性や固有の事情等に応じた合理的な理由がある場合には、これを超える期間を要する計画を排除しない。)。
ニ 事業再生計画の終了年度(原則として実質的な債務超過を解消する年度)における有利子負債の対キャッシュフロー比率が概ね10倍以下となる内容とする(企業の業種特性や固有の事情等に応じた合理的な理由がある場合には、これを超える比率となる計画を排除し ない。)。
ホ 対象債権者に対して金融支援を要請する場合には、経営責任の明確化を図る内容とする。また、債務減免等を要請する場合には、株主責任の明確化を図る内容とするとともに、経営者保証があるときは、保証人の資産等の開示と保証債務の整理方針を明らかにすることとする。
ヘ 事業再生計画案における権利関係の調整は、債権者間で平等である ことを旨とし、債権者間の負担割合については、衡平性の観点から、個別に検討する。
ト 債務減免等を要請する内容を含む事業再生計画案である場合にあっては、破産手続で保障されるべき清算価値よりも多くの回収を得られる見込みがある等、対象債権者にとって経済合理性があることとする。なお、債務減免等を必要とする場合の減免を求める額(DES総額を含む。)の算定については、その前提となる情報等について誠実に開示するものとする。
チ 必要に応じて、地域経済の発展や地方創生への貢献、取引先の連鎖倒産回避等による地域経済への影響も鑑みた内容とする。

② 上記Ⓒの規定にかかわらず、小規模企業者が債務減免等の要請を含まない事業再生計画案を作成する場合には、次のイ及びハ、又はロ及びハの内容を含むことにより、上記Ⓒのロからニの内容を含めないことがで きるものとする。
イ 計画期間終了後の業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がない状態等となる計画であること
ロ 事業再生計画成立後2事業年度目(事業再生計画成立年度を含まない。)から、3事業年度継続して営業キャッシュフローがプラスに なること。
ハ 小規模企業者が事業継続を行うことが、小規模企業者の経営者等の生活の確保において有益なものであること。

かなり長いのですが、簡潔にみてみると、
①基本的に5年以内に債務超過解消となるような事業計画にする
②3年以内に黒字化するようにする
③再生計画の最終年度、キャッシュフロー×10<債務となるようにする

再生計画が必要です。
ただしこの過程で金融支援以上を求める場合、経営者責任や株主責任の明確化も必要になります。
債権放棄や追加支援を求める場合、経営者責任として私財の供出やDESを行う際に併せて減資などが必要になってきます。

ただし例外規定があり、

イ 計画期間終了後の業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がない状態等となる計画であること
ロ 事業再生計画成立後2事業年度目(事業再生計画成立年度を含まない。)から、3事業年度継続して営業キャッシュフローがプラスになること
ハ 小規模企業者が事業継続を行うことが、小規模企業者の経営者等の生活の確保において有益なものであること

の場合、経営者責任を問わないことから、リスケジュールだけで営業キャッシュフローを翌々年度からプラスにできるのであればそのまま代表者交代を行うことなく、経営者が経営できると言う規定でしょう。
これは冒頭紹介した経済産業省の「経営者退任原則の見直し」につながってきます。

(5)事業再生計画案の調査報告
Ⓒ 第三者支援専門家は、債務者である中小企業者及び対象債権者から独立して公平な立場で事業の収益性や将来性等を考慮して、事業再生計画 案の内容の相当性及び実行可能性等について調査し、原則として調査報告書を作成の上、対象債権者に提出し報告する。なお、債務減免等を要請する内容を含む事業再生計画案の場合は、調査報告書の作成は必須とし、かつ、その際の第三者支援専門家には弁護士が必ず含まれるものとする。

② 調査対象は、次のイからニの内容を含むものとし、債務減免等を要請する内容を含む事業再生計画案の場合、イからホの内容を含むものとする。また、事業再生計画案に記載がある場合は、ヘを含むものとする。
イ 事業再生計画案の内容の相当性(中小企業者が3.(1)の要件に該当することを含む。)
ロ 事業再生計画案の実行可能性ハ 金融支援の必要性
ニ 金融支援の内容の相当性と衡平性
ホ 破産手続で保障されるべき清算価値と比較した場合の経済合理性
(私的整理を行うことの経済合理性) ヘ 地域経済への影響

(6)債権者会議の開催と事業再生計画の成立
Ⓒ 中小企業者により事業再生計画案が作成された後、中小企業者、主要債権者及び第三者支援専門家が協力の上、原則として全ての対象債権者による債権者会議を開催する。債権者会議では、対象債権者全員に対し て、事業再生計画案を説明し、第三者支援専門家は、債権者会議で、対象債権者全員に対し、事業再生計画案の調査結果を報告するとともに、事業再生計画案の説明、質疑応答及び意見交換を行い、対象債権者が再生計画案に対する同意不同意の意見を表明する期限を定める。なお、債権者会議を開催せず、事業再生計画案の説明等を持ち周りにより実施することは妨げない。

② 事業再生計画案に対して不同意とする対象債権者は、速やかにその理由を第三者支援専門家に対し誠実に説明するものとする。

③ 中小企業者、主要債権者及び第三者支援専門家は、対象債権者等と協議の上、必要に応じて事業再生計画案を修正し、対象債権者の合意形成に努める。

④ 全ての対象債権者が、事業再生計画案について同意し、第三者支援専門家がその旨を文書等により確認した時点で事業再生計画は成立し、中小企業者は事業再生計画を実行する義務を負担し、対象債権者の権利は、成立した事業再生計画の定めによって変更され、対象債権者は、金融支援など事業再生計画の定めに従った処理をする。

事業再生計画案について全ての対象債権者から同意を得ることができないことが明確となった場合は、第三者支援専門家は、本手続を終了させるものとする。なお、本手続が終了したときは、対象債権者は一時停止を終了することができる。

第三者支援専門家が弁護士が必要であると言うことと、第三者支援専門家が入ることでスピーディーな解決を図ろうとしています。
ただし事業再生計画案については主要債権者の同意ではなく、すべての債権者から同意を取ることを明記しているため、この部分のハードルの高さは依然として残っています。

(7)保証債務の整理
中小企業者の債務について再生型私的整理手続(債務減免等の要請を含む事業再生計画に限る。)を実施する場合において、当該債務にかかる保証人が保証債務の整理を図るときは、保証人は、誠実に資産開示をするとともに、原則として、経営者保証に関するガイドラインを活用する等して、当該主債務と保証債務の一体整理を図るよう努めることとする。

政府としても経営者保証ガイドラインを利用させることで破産を回避しようとしていますね。

(8)事業再生計画成立後のモニタリング
Ⓒ 事業再生計画達成状況等のモニタリング
イ 外部専門家や主要債権者は、事業再生計画成立後の中小企業者の事業再生計画達成状況等について、定期的にモニタリングを行う。但し、債務減免等の要請を含まない事業再生計画の場合には、主要債権者が中小企業者の協力を得て、モニタリングを行うことで足りる。
ロ モニタリングの期間は、原則として事業再生計画が成立してから概ね3事業年度(事業再生計画成立年度を含む。)を目途として、企業の状況や事業再生計画の内容等を勘案した上で決算期を考慮しつつ、必要な期間を定めるものとする。
ハ 主要債権者は、モニタリングの結果を踏まえ、中小企業者に対し、事業再生計画の達成に向けた助言を行う。
ニ 主要債権者は、モニタリングの期間が終了したときには、中小企業者の事業再生計画達成状況等を踏まえ、その後のモニタリングの要否を判断する。

② 事業再生計画の変更等
上記Ⓒイのモニタリングの結果、事業再生計画と実績の乖離が大きい場合、中小企業者・主要債権者は乖離の真因分析を行うこととする。そ の上で、中小企業者・主要債権者は、経営規律の確保やモラルハザード の回避といった点を踏まえつつ、その真因分析を踏まえた対応、例えば、事業再生計画の変更や抜本再建、法的整理手続、廃業等への移行を行うことを検討する。また、廃業を選択することが適切と中小企業者及び主要債権者が判断する場合には、中小企業者と主要債権者双方が誠実に協力し、「5.廃業型私的整理手続」の利用の検討を含めて、手続間の円滑な移行に努めることとする。

事業計画がいかに良くできていても、信憑性がないようであれば廃業の検討も必要ということなのでしょう。
以下は廃業型私的整理手続きについてですが、この段階でできることはないため説明については割愛します。
破産よりプラスのものがない場合、破産に移行してしまう可能性があるため、何かしらのメリットを持って廃業型私的整理を行った方が傷はまだ浅いのかもしれません。

(9)廃業型私的整理手続との関係
再生型私的整理手続を検討する過程において、第三者支援専門家や主要債権者が事業の継続可能性が見込まれないと判断し、かつ、中小企業者からも廃業 の申出があった場合は、中小企業者、第三者支援専門家、主要債権者は協力の上、「5.廃業型私的整理手続」の適用も含めて、可能な対応を行う。また、再生型私的整理手続から廃業型私的整理手続に移行する場合で、かつ、主要債 権者全員からの合意を得たときは、中小企業者及び外部専門家は、廃業型私的整理手続の途中段階(例:弁済計画案の策定等)から手続を行うことができ、併せて、必要に応じて、再生型私的整理手続の検討時において関与した第三者支援専門家の支援を継続して得ることができる。

(1)廃業型私的整理の開始
Ⓒ 中小企業者は、外部専門家とともに、主要債権者に対して、廃業型私的整理手続を検討している旨を申し出ることができる。

② 外部専門家は、主要債権者の意向を踏まえて、中小企業者の資産負債及び損益の状況の調査検証や弁済計画策定の支援等を開始する。

③ 中小企業者及び外部専門家は、必要に応じて、上記②以降のタイミングで、主要債権者全員からの同意を得た場合は、一時停止の要請を行うことができ、対象債権者は、 以下の全ての要件を充足する場合には、一時停止要請に、誠実に対応するものとする。なお、対象債権者が一時停止に応じた場合、中小企業者及び外部専門家は、相当の期間内に後記(3) の弁済計画案を策定し対象債権者に提示するものとし、これが適切になされない場合や、弁済計画案の策定状況について対象債権者からの求めに応じた適切な経過報告がなされない場合には、対象債権者は一時停止を終了することができる。
イ 一時停止要請が書面によるものであり(但し、全ての対象債権者の同意がある場合はこの限りではない。)、かつ、全ての対象債権者に対して同時に行われていること。
ロ 中小企業者が、手続開始前から債務の弁済や経営状況・財務情報の開示等に誠実に対応し、対象債権者との間で良好な取引関係が構築されていること。

(2)弁済計画案の立案
Ⓒ 中小企業者は、自ら又は外部専門家から支援を受ける等して、相当の期間内に、廃業に向けて資産の換価等必要な対策を立案し、弁済計画案 を作成する。

② 中小企業者、外部専門家及び主要債権者は、経営・財務及び事業の状況に関する調査分析や弁済計画案作成の進捗状況に応じて適宜協議・検討を行う。この協議・検討には、必要に応じて、主要債権者以外の対象債権者も参加させることができる。

(3)弁済計画案の内容
Ⓒ 弁済計画案は、次の内容を含むものとする。
イ 自助努力が十分に反映されたものであるとともに、以下の内容を含むものとする。
・企業の概況
・財務状況(資産・負債・純資産・損益)の推移
・保証人がいる場合はその資産と負債の状況
・実態貸借対照表
・資産の換価及び処分の方針並びに金融債務以外の債務の弁済計画、対象債権者に対する金融債務の弁済計画
・債務減免等を要請する場合はその内容
ロ 弁済計画案における権利関係の調整は、対象債権者間で平等である ことを旨とし、債権者間の負担割合については、衡平性の観点から、個別に検討する。
ハ 破産手続で保障されるべき清算価値よりも多くの回収を得られる

見込みがある等、対象債権者にとって経済合理性があることとする。ニ 必要に応じて、破産手続によるよりも、当該中小企業者の取引先の連鎖倒産を回避することができる等、地域経済に与える影響も鑑みた内容とする。

(4)弁済計画案の調査報告
Ⓒ 中小企業者は、外部専門家とともに、第三者支援専門家の候補者を公表されたリストから選定する。

② 中小企業者は、第三者支援専門家の選任について、主要債権者全員からの同意を得る(なお、第三者支援専門家は、中小企業者及び対象債権者 との間に利害関係を有しない者とする。)。なお、上記Ⓒにかかわらず対象債権者全員から同意を得た場合は、リストにない第三者支援専門家を選定することも可とする。

③ 中小企業者は、第三者支援専門家に支援を申し出ることができ、第三者支援専門家は、中小企業者からの申出に対して、誠実に対応する。第三者支援専門家は、債務者である中小企業者及び対象債権者から独立して公平な立場で弁済計画案の内容の相当性及び実行可能性等について調査し、調査報告書を作成の上、対象債権者に提出し報告する。なお、債務減免等を要請する内容を含む弁済計画案の場合は、第三者支援専門家には弁護士が必ず含まれるものとする。

④ 調査対象は、次の内容を含むものとする。また、弁済計画案に記載が ある場合は、トを含むものとする。
イ 廃業の相当性(中小企業者が3.(2)の要件に該当することを含む。)
ロ 弁済計画案の内容の相当性ハ 弁済計画案の実行可能性ニ 債務減免等の必要性
ホ 債務減免等の内容の相当性と衡平性
ヘ 破産手続で保障されるべき清算価値と比較した場合の経済合理性
(私的整理を行うことの経済合理性)
ト 地域経済への影響

(5)債権者会議の開催と弁済計画の成立
Ⓒ 中小企業者により弁済計画案が作成された後、中小企業者、主要債権者及び第三者支援専門家が協力の上、原則として全ての対象債権者によ る債権者会議を開催する。債権者会議では、対象債権者全員に対して、弁 済計画案を説明し、第三者支援専門家は、債権者会議で、対象債権者全員に対し、弁済計画案の調査結果を報告するとともに、弁済計画案の説明、質疑応答及び意見交換を行い、対象債権者が弁済計画案に対する同意不同意の意見を表明する期限を定める。なお、債権者会議を開催せず、弁済計画案の説明等を持ち周りにより実施することは妨げない。

② 弁済計画案に対して不同意とする対象債権者は、速やかにその理由を第三者支援専門家に対し誠実に説明するものとする。

③ 全ての対象債権者が、弁済計画案について同意し、第三者支援専門家がその旨を文書等により確認した時点で弁済計画は成立し、中小企業者は弁済計画を実行する義務を負担し、対象債権者の権利は、成立した弁 済計画の定めによって変更され、対象債権者は、債務減免等など弁済計画の定めに従った処理をする。

④ 弁済計画案について全ての対象債権者から同意を得ることができないことが明確となった場合は、第三者支援専門家は、本手続を終了させる ものとする。なお、本手続が終了したときは、対象債権者は一時停止を終了することができる。

(6)保証債務の整理
中小企業者の債務について廃業型私的整理手続を実施する場合において、当 該債務にかかる保証人が保証債務の整理を図るときは、誠実に資産開示をする とともに、原則として、経営者保証に関するガイドラインを活用する等して、当該主債務と保証債務の一体整理を図るよう努めることとする。

(7)弁済計画成立後のモニタリング
外部専門家と主要債権者は、弁済計画成立後の中小企業者による計画達成状況等について、モニタリングを行う。

<附則>
1.本ガイドラインは、令和4年4月15日から適用することとする。

2.本ガイドラインに基づく取扱いを円滑に実施するため、中小企業者、金融機関及び行政機関等は、広く周知等が行われるよう所要の態勢整備に早急に取り組むとともに、各々の準備が整い次第、本ガイドラインに即した対応を開始することとする。
以 上

総括

以上、駆け足で見て参りましたが、個人的には今までのガイドラインより厳しくなったのではないかという印象です。
経営者責任もリスケジュール程度であれば責任を問わないという内容で現状の現場運用の追認のように思えますし、金融機関の関与や株主責任について触れていることはむしろ積極的にモニタリングを促し、整理をしやすくしているような印象も受けます。
また債権者の同意を得て(透明性を持って)スポンサーを探す必要があることについて触れている点は、恣意的なスポンサー選定を経てその後の経営者責任を軽減させようとすることを防ごうとしている意図も感じられるので、金融機関とはより誠実な対応を行うことが求められると思います。
反面、経営者保証に関するガイドラインについて明記することで自己破産を防ごうという点はポジティブに評価されると思います。ただ個人資産の扱いが軽減されているわけではないので、家の売却などに対してはリースバックなど、もうすこし使い勝手の良い指針を打ち出してもいいのではないでしょうか。

<2022年3月9日追記>
東京商工リサーチの記事も出ているので参考にしてください。
QAについて興味深いので引用した上で見てみましょう。
以下、重要そうな部分を黒字で強調しています。

Q. 従来の私的整理ガイドラインとの違いは
A. (1)第三者支援専門家の関与、(2)中小企業の実態に即した基準への変更(債務超過解消を3年以内から5年以内へ変更、経営者退任を必須としないなど)、(3)計画案に反対する債権者に対して誠実な説明を求めることの明記、が主に挙げられる。中小企業と金融機関、どちらか一方でなく、双方に負担をしてもらうことでバランスの取れたガイドラインになったと考えている。

Q. 「平時」と「有事」を分けた理由は
A. 「平時」と「有事」を区別することで、有事になる前に、中小企業が金融機関と協力して経営改善ができる。有事に至らないための予防効果や、万が一有事に至った場合でも早期の事業再生を目指すことが狙いだ。

Q. 法的整理との違いは
A. 法的整理に入る前に私的整理で対応できれば、事業価値の毀損も少なく、取引先への影響も小さく済むという利点がある。

Q. 中小企業再生支援協議会とのすみ分けは
A. (ガイドライン適用開始前の)最初の段階から分ける必要はないと考えている。今後、実際に使われていくなかで、それぞれの利点をもって判断されていくものだろう。

Q. 「廃業型私的整理手続」を策定した理由は
A. 廃業すべき企業を、放置や破産などに向かわせるのではなく、透明性のある手段で私的整理する目的があった。すべての企業が事業再生できるわけではなく、なおかつすべての事業者が事業再生を目指しているわけではないという前提で、中小企業の実態を踏まえたものにするため策定した。

Q. リスケ対応先の私的整理を進めるのか
A. リスケ先を私的整理に移行するということは考えていない。ただし、リスケを継続したまま放置されている事業者のなかには早期の対応をしたほうがよいケースもあり、ガイドラインは対応の一助になると考えられる。

説明会では、「新型コロナウイルス」関連支援としても利用されている「セーフティネット保証4号」について言及があった。現在の100%保証から、金融機関に伴走支援を促すような制度への見直しの必要性も示唆された。
また、事業再生のなかで法的整理や廃業の検討を明記したことは特筆される。

債務超過の解消期間を3年以内から5年以内へと修正しています。
逆にいうと5年経っても債務超過が解消できないような企業の場合、事業再生の対象外となるという事でしょう。

「全ての企業が事業再生できるわけではなく」という記述からも再生する企業、廃業させる企業を分けていこうという意図が感じられます。
リスケ先を私的整理に移行することは考えていない、と言っていますが、「放置されている事業者」といういい方は金融機関に対して暗にプレッシャーをかけていると言えるでしょう。
過去、政府は悪名高い「金融庁監査マニュアル」で金融機関に対して債権を杓子定規に管理させたことで中小企業の倒産が相次ぎました。
その反省から民主党政権の時に金融円滑法を制定し、中小企業を支援しようとしましたが、ゾンビ企業が増加して生産性が上がらないという批判もあり、軌道を修正しようとしているのだと考えられます。
関連支援政策でも伴走支援を促していることから、政府としても金融機関に対して「有事」にある企業の管理を促してるように読み取れます。
どのタイミングで金融機関から経営内容を指摘されるかはこれからまた動きがあると思いますが、「有事」になりかけている企業は早めの対応が必要と考えます。

 

なお私的整理など事業再生(企業再生)については以下のコラムも参考にしてください。
弊社では大手法律事務所と救済型M&Aをベースにした企業再生にも取り組んでおりますので、ご関心ある方はお気軽にご相談ください。

企業再生スキームとM&A
債務超過企業と企業再生(準則型私的整理編)
【事業再生】特定調停スキームとは
【事業再生】事業再生ADR制度について
地域経済活性化支援機構(REVICとは)
事業承継時の「経営者保証に関するガイドライン」の特則
「経営者保証に関するガイドライン」とは
<金融機関の視点から見る>ポストコロナを見据えた救済型M&Aについて

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