事業承継の後継者候補の状況

Pocket

公開日:2022年11月17日 /最終更新日:2022年11月17日

事業承継候補者状況は?

事業承継の後継者の状況について面白い記事が2つありましたので紹介したいと思います。

10月20日にTSRから発表された「「後継者難倒産」今年度上半期は最多の205件、代表者死亡が約6割」については後継者不在による倒産が増えているとの記載があります。

 2022年度上半期(4-9月)の後継者不在による『後継者難』倒産(負債1,000万円以上)は、205件(前年同期比13.2%増)だった。年度上半期としては3年連続で前年同期を上回り、調査を開始した2013年度以降では最多を更新した。また、負債1,000万円以上の企業倒産(3,141件)の6.5%(前年同期6.1%)を占めた。

これだけ見ると、後継者が不在のため倒産件数が増大しているようです。
他方、11月16日に帝国データバンクからリリースされた「後継者不在率、初の60%割れ 後継候補「非同族」が初のトップ、事業承継は「脱ファミリー」化が加速」では後継者不在率が、M&Aを含めて後継者への承継が進んでいるため過去最低となっていると示されています。

<調査結果(要旨)>
2022年の全国・全業種約27万社の後継者不在率は57.2%となり、コロナ前の2019年からは8.0pt、21年の不在率61.5%からも4.3pt低下し、5年連続で不在率が低下した。また、調査を開始した11年以降、後継者不在率は初めて60%を下回った
2022年の代表者の就任経緯では、買収や出向を中心にした「M&Aほか」の割合が20.3%と、調査開始以降で初めて2割を超えた。具体的な後継候補では、最も高いのは「非同族」の36.1%で、前年を2.9pt上回った。2011年の調査以降、後継者候補は「子供」の割合が最も高い状態が続いてきたものの、初めて「非同族」が首位となった

一見、矛盾しているように見える双方の記事ですが、いったいどういうことでしょうか?

まずトレンドとして後継者の探索を全国的に進めているというのは確かにあると思います。
帝国データバンクの以下の記事にもあるように第三者承継も一般的になってきていることも明らかでしょう。

2018年以降の過去5年間における事業承継について、先代経営者との関係性(就任経緯別)をみると、2022年の事業承継は「同族承継」により引き継いだ割合が34.0%に達し、全項目中最も高かった。しかし、前年からは4.7ptの低下となり、親族間の事業承継割合は急減している。一方、血縁関係によらない役員などを登用した「内部昇格」が33.9%となり、前年から2.5pt増加した。また、買収や出向を中心にした「M&Aほか」の割合が20.3%と、調査開始以降で初めて20%を超えた。一方で、同じ親族外の承継でも社外の第三者を代表として迎える「外部招聘」は7.5%にとどまった。事業承継は脱ファミリーの動きが鮮明となっているものの、第三者承継は自社社員かM&Aなど他社との吸収・合併によるものに二極化している。

反面、第三者承継が行われる場合は業績が順調である企業が選ばれることが多いことから、逆説的ですが、第三者承継を行っていない企業は業績は低迷しているため行うことができない可能性が高いと思われます。
業績が低迷していると親族や社員などの承継も二の足を踏まれてしまうでしょうから、代表者が頑張るしかありません。
元気なうちはいいのでしょうか、死亡や体調不良等の突発的な事象が発生してしまった際にバトンを渡す相手がいなく倒産してしまうと考えられます。

 要因別では、代表者の「死亡」が119件(構成比58.0%)、「体調不良」が57件(同27.8%)と、この2要因で『後継者難』倒産の8割超(同85.8%)に達した。

もっと言うなら業績が低迷している企業の場合は、経営者の健康リスクがそうでない企業より高いと考えられます。
業績がいい企業であれば、代表者にもしものことがあっても親族や第三者への承継がしやすいですが、低迷している企業の場合とっさに承継先を探すことが難しく、そのまま資金繰りなどに影響が出てしまうからです。

矛盾するようですが、業績が悪い企業ほど第三者承継を含めた後継者の探索を行う必要があると結論になります。
そのためには業績をよくするための取り組みはもちろん必要になってくると思いますが、並行して第三者承継を考える必要がより強いのではないでしょうか(親族や社内承継が難しいと考えられるため)。

まとめると

①全国的に後継者を見つけている企業が増えている
②後継者が見つからないことによって破綻している企業も増えている
③その理由としては業績が低迷しているからと考えられる
④業績が低迷している企業は代表者の健康リスクの影響が大きい
⑤したがって低迷している企業こそ第三者承継を長い時間がかかる前提で探索することが必要

でしょうか。
もう一つは事前に私的整理を行ってしまうのも一つの案かもしれません。
(私的整理についてはこちらのコラムもお読みください)

 形態別では、「破産」が193件(前年同期比17.6%増)で、3年連続で前年同期を上回った。構成比は94.1%(前年同期90.6%)で、年度上半期としては過去最高を更新した。一方、「民事再生法」は前年同期と同件数の1件にとどまった。
業績不振の企業は、後継者の育成や事業承継の準備が後回しになりがちだ。そのため、代表者に不測の事態が生じた場合、事業継続が困難となり、破産を選択するケースが多い。

破産の割合が圧倒的に大きいのはやはり時間が不足しているため、破産という選択肢をとらざるを得ないからでしょう。
逆に言えば健康なうちはやれることが多いはずです。
万が一のために備えておくことが必要でしょう。
ご心配な点がございましたら遠慮なくご相談ください。

ゼロゼロ融資の終焉とその後
最新「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」についての解説
企業再生スキームとM&A
債務超過企業と企業再生(準則型私的整理編)
【事業再生】特定調停スキームとは
【事業再生】事業再生ADR制度について
地域経済活性化支援機構(REVICとは)
事業承継時の「経営者保証に関するガイドライン」の特則
「経営者保証に関するガイドライン」とは
<金融機関の視点から見る>ポストコロナを見据えた救済型M&Aについて

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

過去ブログ抜粋

  1. 日本M&Aセンター 契約書偽造・不正計上問題とそこから学ぶべきこと

  2. NPO法人の事業承継の方法と課題

  3. 「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績について

  4. 弊社の設立経緯・理念について

  5. 買い手としての上場企業とオーナー企業

  6. 農林水産業M&Aに日本財務戦略センターが参入する理由